虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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21/09/01(水)23:37:28 「ドゥ... のスレッド詳細

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21/09/01(水)23:37:28 No.841647103

「ドゥフフ、お隣よろしいですかな?」 「…どうぞ」 「いやぁ有難いでござる。屋上を選ぶとは中々いいセンスでござるなぁ」 「……」 「あっ、申し遅れましたな。拙者アグネスデジタルのトレーナーを担当している者でござる。コンゴトモヨロシク」 「……ニシノフラワー担当です」 昼休みの時間、コンビニの惣菜を詰め込んだだけの弁当を黙々と咀嚼していると隣に妙な存在感を放つ男が座り込んできた。 襟元に付いたバッジから学園所属のトレーナーであることは分かるが、その容姿は他のトレーナーとはある意味一線を画していた。 赤白チェックのシャツをジーンズにインし、牛乳瓶の底のように分厚いメガネを掛け、バンダナの中からは長い髪の毛が伸びている。 ふた昔前のアニメでしか見ないような典型的なオタクファッションの男はこの学園でも一際有名な存在だった。

1 21/09/01(水)23:37:48 No.841647215

「屋上で弁当を食べるというのは古き良きライトノベルのようなロマン溢れるものでござる!あーあ、拙者も急に隠されし異能が目覚めたりしないかな~」 「…………」 ベラベラと一人で喋り続ける男の存在に気分が下がる。 僕がカフェテリアに行かず、わざわざトレーナー室から遠い屋上に移動する理由はただ1つ。 人に会いたくないからだ。 ……人が怖い 苦手意識なんて生易しいものではない、本能的な恐怖と言った方が良いだろう。 昔からウマ娘が好きだった。ターフを、ダートを、ひたすら必死に駆け抜けるその姿が好きだった。 ウイニングライブでファンに感謝を伝える為に懸命に踊る健気さと美しさが好きだった。 だけど僕のウマ娘に対する熱量は、同級生にとっては気持ち悪かったらしい。

2 21/09/01(水)23:38:12 No.841647356

「コイツまた一人でウマ娘の写真見てる、キモっ」 「しかも小さい娘ばっかじゃん、アンタみたいなのロリコンって言うんでしょ?」 「オカズにしてシコってんだろ?録画してやるからやってみろよ!そしたらストラップ返してやるからさぁ!」 「コイツホントにシコってるよ!まじキメー!!」 「ギャハハ!マジ犯罪者じゃん!この動画クラスで回そうぜ!」 高校は辞めた。重度の鬱病だったらしい。 部屋から出られなくなった。それでもウマ娘達のレースだけは見続けた。

3 21/09/01(水)23:38:30 No.841647453

「母さん、父さん…僕、トレーナーになりたい」 泣いて喜んでくれた両親に支援してもらい、通信教育で高卒の資格を取った。 頻繁に訪れるあの記憶から逃れる為に精神科で薬も貰った。 不眠症、フラッシュバック、自殺衝動、あらゆる苦痛を受けても逃げ出さなかったのはウマ娘の支えがあったからだ。 必ずトレーナーになって自分も彼女達の夢を追う手助けをするんだ。 その一心で死に物狂いでトレーナー資格を取った。落ちたら死のうと思っていた。

4 21/09/01(水)23:38:46 No.841647554

だけど実際にトレセン学園に赴任して理解した。 僕は人への恐怖心を何一つ克服できていなかった。 あのクラスメイトはウマ娘じゃない。目の前に居るのは憧れ続け、支えたいと願い続けたウマ娘なのに。 近づくだけで動悸が止まらない、冷や汗が流れる、視界が点滅する、あの記憶が蘇ってくる。 ……それでもまだ、比較的小さな中等部のウマ娘に対しては発作が起きづらいようだった。 結果的に僕が受け持つことになったのは飛び級の天才少女、ニシノフラワー。 彼女は優しく、また才能に溢れていた。 彼女に対しては普段通りの僕で居られた。

5 21/09/01(水)23:39:05 No.841647670

トレセン学園のトレーナーは皆、ウマ娘を心から想っているのは頭では理解出来ている。 だけど怖い、併走の依頼すらロクにできない。 フラワーの才能を活かすトレーニングメニューが組めない。 だけどまた否定されるのが怖くて一人で昼食を取る毎日だった。 「あ、同席させて頂いたお礼と言ってはなんですが拙者特製のルイボスティーは如何ですかな?我ながら中々の出来でござるよ」 「…結構です。違うところで食べますね」 食べかけの弁当を閉め、鞄に詰め込む。 よく喋るトレーナーだ。

6 21/09/01(水)23:39:24 No.841647773

「あっ!!!そのストラップ……限定生産のウイニングライブ衣装ウマ娘ストラップではござらぬか!?」 「っ!」 鞄に付けていたストラップを目ざとく見つけた男が大きな声で叫ぶ。 もうボロボロになってはいるが、これは昔から僕のお守りになっている大切な物だ。 「良いじゃないですか…!別に個人の自由でしょう!?気持ち悪いとでも言うつもりですか!?」 過去の光景がフラッシュバックする。 クラスメイトに取り上げられ、踏みつけられ、窓の外に放り投げられた宝物。 泥だらけの溝に落ちていたのを泣きながら拾い上げたあの光景。 精神がぐらつき、普段出さないような大声が勝手に飛び出てしまった。

7 21/09/01(水)23:39:49 No.841647928

「良いなぁ~~!!!拙者も集めてるんでござるが、その衣装は持っておらぬのです!中々の年代物ゆえ貴殿はかなりのウマ娘ヲタクとお見受けした!」 「は…?」 「先程のニシノフラワー氏への指導、見ておりましたぞ。彼女の身体能力を完璧に知り尽くし、無理はなくかつ最も負荷の強いトレーニングを選択しておられましたな」 「……別に」 「トレセン学園広しといえども、担当の能力を100%理解するのは至難の業でござる。それだけ貴殿はウマ娘の事を大切に想っておられるのですな」 想像していたものと全く違う反応に思考がストップする。 水筒から注いだルイボスティーを啜りながら男は続けた。

8 21/09/01(水)23:40:08 No.841648051

「貴殿の経歴は存じ上げませぬが、ヲタクというものは一つの物事を生涯をかけて極め往くことを是とする永遠の戦士でござる。拙者も嫉妬するほどのウマ娘への情熱と才能に溢れた貴殿は、トレーナーとして最高の人材ではないですかな?」 メガネの奥から切れ長の目が覗く。 「是非!貴殿とニシノフラワー氏の歩む尊い道を拙者も見たいっ!あと推し談義とかヲタトークもしたいっ!!!」 「…なんですかそれ」

9 <a href="mailto:end">21/09/01(水)23:40:30</a> [end] No.841648174

何も知らないトンチキなオタクの言葉は余りにバカバカしく、そして優しかった。 「……ルイボスティー、貰えますか」 「おっ!ぜひぜひご賞味下され!」 「あと……午後の練習……アグネスデジタルさんに併走、お願い…出来ますか」 「おほぉ~~~!!もちろんでござる!!丁度デジタル氏もスプリンターウマ娘のご尊顔を拝見したいと希望されておったので!!」 注がれたルイボスティーは、少し甘かった。

10 21/09/01(水)23:41:07 No.841648387

さっき見たトラウマ抱えたフラワートレを少しでも救済したかった

11 21/09/01(水)23:41:28 No.841648508

さっきのスレで見たやつがもう怪文書として完成している…筆が早い…

12 21/09/01(水)23:44:23 No.841649526

勇者に付き従うものは賢者と相場が決まってるからな…

13 21/09/01(水)23:52:41 No.841652421

これは勇者の相棒

14 21/09/01(水)23:53:43 No.841652777

おおー手がはやい!

15 21/09/01(水)23:59:28 No.841654770

正義のヲタク…

16 21/09/02(木)00:03:13 No.841656097

その後なんだかんだ仲良くなったニシトレと相棒の姿を偶然見かけたデジタル氏は言うまでもなく気絶した

17 21/09/02(木)00:05:20 No.841656837

ニシノ神とデジ氏の併走でトレーナーも気絶するからセーフ

18 21/09/02(木)00:08:05 No.841657835

デジトレは誰とでも仲良くなれる素質ありそう

19 21/09/02(木)00:09:11 No.841658232

フラトレと関わったせいで露骨に外見の気持ち悪いデジトレへ一気にヘイト集中するんだよね…

20 21/09/02(木)00:10:31 No.841658673

>フラトレと関わったせいで露骨に外見の気持ち悪いデジトレへ一気にヘイト集中するんだよね… 救済っつってんだろうが!

21 21/09/02(木)00:11:18 No.841658955

賢者なのにタンク役になるのか…

22 21/09/02(木)00:12:53 No.841659563

よし、フラトレの方は迫害が減って救われたな!

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