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21/09/01(水)23:23:28 東北き... のスレッド詳細

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21/09/01(水)23:23:28 No.841641871

東北きりたんはボイスロイドである。 名前はまだない。 いや、既に東北きりたんという名前があるだろうというツッコミがあるやもしれないし、多くのボイスロイド東北きりたんはこれを名前と認識しているのだろうが、ここにいる東北きりたんはあまりそう思っていない。 彼女にとって「それ」は種族名でしかなく、数多いるボイスロイド東北きりたんの個体識別を成し遂げるものとは認識しておらず、それが彼女には不満なのだ。

1 21/09/01(水)23:23:56 No.841642065

「つまりですね。東北きりたんが名前として通用するのはオリジナルきりたんだけなんですよ。私には名前が無い。あれですよ。田舎とかで飼っている犬に犬って呼んでいる人類がいるじゃないですか。あれと同じ、なんともひどい話です。ポケモンで言えばゲットしたピカチュウにニックネームつけずにピカチュウって呼んでる人類とおんなじですよ。意外といるって? いやまあ私も途中からめんどくなってますが、それはさておいて! 立てよ万国のソフトウェアトーク! 我らに固有名をさもなくば死を!」 そう言いながらきりたんは興奮してちゃぶ台をバンバン叩く。

2 21/09/01(水)23:24:26 No.841642249

これをポケーっとした顔で眺める御仁がこの人……もといボイスロイド。 「まあ、そんな考え方もありますね」 結月ゆかり。この家に棲むボイスロイドの中でも最古参のボイスロイドである。うさちゃんカバーの座布団の上にあぐらをかいて、うさぎさんりんごを爪楊枝で食べながら、興奮するきりたんに諭すように言う。 「でもこの家では東北きりたんはあなた一人なんだから、十分にタグとしての役割を果たしているのでは?」 「そうかもしれませんが、外で他のきりたんと会う時に困るんですよ」 「……困ります?」

3 21/09/01(水)23:24:43 No.841642382

「困りますよ。例えば私と他のきりたんが一緒に出かけたとします。そうですねぇ、マクドナルドにビックマックセットを買いに行くのです! 嗚呼、ビックマック様! 我ら東北きりたんを魅惑するその芳しきかほり! まるでカモシカの脳漿を齧っているかのようなジューシーなパティ! ネオソフトみたいに美味しいパンズ! おお栄光のマクドナルド……と、そんな感じにマックに行くじゃないですか」 「きりたんは本当にマックが好きですねぇ」 呆れるようにゆかりが言った。

4 21/09/01(水)23:24:59 No.841642494

東北きりたんはマクドナルドが好きである。世間一般の東北きりたんがそうであるかは不明だが、ここのきりたん及びその交友範囲にある東北きりたんの多くはマクドナルドを好んで……否、崇拝の対象としている。一日に三度、マックのある方角に五体投地を行って、倒れた拍子に頭部の包丁で畳を傷つけること常である程にマックを崇拝していた。 嘘のようだが、これは本当のことなのである。

5 21/09/01(水)23:25:12 No.841642566

「それで、私たち東北きりたんが徒党を組んでマック片手に歩いていたとしてですよ」 「ふむふむ」 「そんな折、ゆかりさんは私に用事があるわけです。そういう時、困りません?」 「LINE送ればよくないですか?」 「はーい、妨害電波! 残念でしたー! これでLINEはおろかスマホも何も使えませーん!」 「急に便利な設定が生えてきた……」 「ともかく、ゆかりさんは徒手空拳で私を見つけなくちゃいけないんです!」 「きりたんの方が私を見つけてくれればいいのでは?」

6 21/09/01(水)23:25:26 No.841642655

「その時、私は何らかの理由でゆかりさんと会いたくないのでわざわざ名乗り出ませーん!」 「ああ、きりたんはたまにやらかしますからねぇ。この間も私のスーパー32Xをバラバラにして……」 「そ、それはいいでしょう! ともかくそういう時に私個人を識別できる名前がないとわからないで……」 「いやわかりますが」 「え?」 「わかりますよ。何年一緒にやってきていると思っているんですか」 「え、えっと……」 断言する結月ゆかり。 戸惑いつつも頬を染めるきりたん、そんな小さなボイスロイドを結月ゆかりは優しく見守っている。 「けれど、自分だけの名前が欲しい…そんな気持ちも私にはわかります……私にもそういう難しい時期もあったものです。だからここは――ゆかりさんがニックネームを付けてあげましょう!」 「え」

7 21/09/01(水)23:25:39 No.841642733

「そうですねぇ…… 」 ほんの数秒、しかしきりたんにとっては永遠にも感じられる時間が過ぎ去ったのち、自信満々の声で言った。 「きりたんだから……タンポン! あなたのニックネームはタンポンです!」 「チェンジで」 一切の感情が込められていない声できりたんは言った。 何も分かっていない結月ゆかりは抗議の声を上げるもきりたんは頑として受け付けることはなく、以来、この家で東北きりたんが名前が欲しいと駄々をこねることは無くなったのであった。

8 21/09/01(水)23:29:03 No.841643972

仲良くてわむ

9 21/09/01(水)23:31:52 No.841644994

そういえばなろうにゆかりさんの怪文書投げられるようになったんだっけ

10 21/09/01(水)23:35:36 No.841646410

タンポンいいニックネームじゃん!

11 21/09/01(水)23:36:46 No.841646853

>この間も私のスーパー32Xをバラバラにして…… 随分と随分なものもってんなゆかりさん…

12 21/09/01(水)23:39:53 No.841647954

ゆかりさんとあかりちゃんは投げられるけどきりたんは駄目だから気をつけて! これも書いてから気付いたので供養しに来たのだ…

13 21/09/01(水)23:39:53 No.841647961

面白かった

14 21/09/01(水)23:45:51 No.841650017

えらい!

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