虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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    21/09/01(水)23:03:22 No.841633388

    彼は何時の事だったかしら。夏が終わりを見せてゆっくりと秋へと歩を進めた頃だと思いますの。 わたくしは何かの諸用…恐らくは、談話室へ物を置き忘れたのを持ち帰りに出たか、シオン先輩辺りの部屋に少しお邪魔していたか… きっと、多分、恐らくは、そんな所。とどのつまり、当て処も無く、他愛ない出来事。 日毎に夜風が少しずつ涼しくなるのを肌で感じつつ廊下を歩いていると不意に、ポロロン…と柔らかい音が耳に届きましたわ。 ふと辺りを見渡せば、寮の中庭のベンチに腰掛けて丸いリュラを爪弾くウマ娘の姿…彼女は私達の友人、ハープスター… 奏でられる楽曲は、パッヘルベルのカノン…

    1 21/09/01(水)23:04:35 No.841633973

    「…ご機嫌よう。お嬢」 「ご機嫌ようですわ。ハープ。…こんな時間に演奏会…?」 「落ち着かない時とか、頭の中を少しでも空っぽにしたくてね。お嬢だって、そう言う事あるでしょ? 我武者羅に筋トレしたり、打ち込みやったり…」 「…何だか筋肉ばかり取り上げられている気がしますが、概ね同意しますわ。それで…? 今貴女は何の為に…?」 ポロン…と音色が変わる。今度は、モーツァルトの眠り唄… 「そうね。私達が何れ星に成る頃、私達ウマ娘はどんな風に過ごして、レースをして、進化して居るのかなって。ウマ娘と人間はどんな風に互いに生活しているのかな、なんて」 「何ともまぁ…哲学めいた事を」

    2 21/09/01(水)23:04:59 No.841634190

    「ウマ生は、ウマ生を賭けた哲学だよ。レースその物だってそう。遠い遠い昔私達から西の海の向こうで暮らしていたヒトとウマ娘は神話を語り、星に神と事象を形作り、世界を知ろうとしたんだもの。やがて原初のウマ娘のレジェンドレース、オリンピックだって産まれた。世界は変わり続けるの。良い方向にも、悪い方向にも。ねぇ…そう考えると気にならない?」 「気にならないと言えば嘘ですわ。ですが」 わたくしはぴしゃりと切りましたわ。 「わたくし達には、志同じくした、ライバルと、しのぎを削る明日が、そして毎日がありますわ。何時かやがて星に成るその時まで、悠長にゴール板まで歩いていてはお婆ちゃんになって居ましてよ。それに」 わたくしはピッと指先を夜空へと向けて 「星の速さは毎秒30万メートル! 此れ程の史上最強のステイヤーが居るかしら!? 誰もが憧れましてよ!」

    3 21/09/01(水)23:05:22 No.841634391

    わたくしはそう宣言すると、ハープスターは小さくケタケタと笑って、優しく弦を撫でましたわ。 「ホント、貴女らしくて素敵だね、お嬢は」 「褒めても何も出ませんわよ。それと折角なのだから貴女、もっとハープの腕前を皆に披露なさったら良いのに」 「リュラだよ。広い目で見たらハープだけだね。まぁ、気が向いたらね」 そう言うとハープスターはベンチから立ち上がり、わたくしとすれ違い様に 「愛しの彼女とも仲良くね。カリニフタ(お休みなさい)」 ポロロン…と弦を弾いて行きますの。…んもう! その後少ししてから、あの娘は談話室でもリュラを持ち込むように成りましたの。 そして何故かアグネスデジタル氏が死んでましたわ。

    4 21/09/01(水)23:06:54 No.841635123

    尾終い ポンッとちょっと不思議ちゃんチックなハープスターってどうよ?と形が出来ました。 出番が無いプフ~とかモグモグ~だけじゃ物足りなかったので それでは私は我が友のベッドに行って来ます