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21/09/01(水)00:04:05 宝塚記... のスレッド詳細

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21/09/01(水)00:04:05 No.841322705

宝塚記念のウイニングライブが終わった。 無事にレースを終えて、初めてのG1タイトルでステージに立ったマーベラスサンデーは、会場に笑顔を振りまき元気いっぱいに踊って見せた。 初めての教え子のウイニングライブはトレーナーの目にも非常に鮮やかに映り、まるで夢を見ているような心地だった。 「お疲れ様、マベちゃん」 舞台袖までわざわざ出迎えに来たトレーナーに 「ありがと☆トレーナーちゃん☆」 とマーベラスサンデーは笑顔で応える。 「すっごく良かったよ、ウイニングライブ!」 笑顔で応えるトレーナーの目には涙が映る。 「えへへ☆」 そう笑うマーベラスサンデーだが、心の中では、少しだけ後ろめたいような気分が広がっていた。目の前の小さな真面目な若いトレーナーは、最初から最後まで自分の身を案じてくれていた。それを気づくことなく、ライバルの出場しない宝塚記念を退屈なレースだと思ってしまったことに、若干の後悔の念が芽生えていたのである。

1 21/09/01(水)00:05:11 No.841323050

「汗でびっしょりだね、早く着替えないと風邪ひくよ」 そうトレーナーに促され 「うん☆」 マーベラスサンデーが元気よく答える。 2人は並んで控室に向かう。その身体に、レースとライブの余韻の熱を残したまま。 控室に到着し、マーベラスサンデーが着がえ始めると、トレーナーはパイプ椅子に座り、ぼんやりと今日一日の出来事を述懐していた。 初めてのG1レースでの優勝。マーベラスサンデーが無事に帰ってきたこと。そして初めてのG1のウイニングライブ。 その記憶はとめどなくさかのぼり始める。そして気づけば、マーベラスサンデーを受け持った時のことをぼんやりと思い出していた。担当するウマ娘が居なくて右往左往していた自分についてきてくれた彼女。抜群のセンスを持ちながら、遅れたメイクデビュー。そして骨折で棒に振ったクラシック。 「なんか…遠い所まで来たみたい…」 その思い出は決して明るいものばかりではなかった。時に辛く苦しいこともあった。それが今ではG1ウマ娘。ようやく手にした栄光が、彼女の心にうすぼんやりとともり、それが実感に変わり始めていた。

2 21/09/01(水)00:05:29 No.841323157

「トレーナーちゃーん!」 ふとマーベラスサンデーが彼女を呼び、 「なにー?」 と返事をする。 「汗で湿って服がぬげなーい!」 その言葉に苦笑し 「はいはい!」 とトレーナーが着替えを手伝おうと椅子から立ち、彼女の方に足を向けた。 見ると上着が抜けずじたばたしているマーベラスサンデー。 それにトレーナーは苦笑し彼女の上着をつかんだ。 「じゃ、行くよ」 「うん!」 そう声を掛け合い 「せーのっ!」 勢いよく上着を脱がせようとしたその時だった。

3 21/09/01(水)00:05:47 No.841323250

「あっ!!!」 マーベラスサンデーがバランスを崩し転倒する。 「え!?」 驚いた声を上げて、ぽかんとするトレーナー。 「いっ………!!!!」 その瞬間、彼女の目に飛び込んできたのは、苦痛にゆがんでいるマーベラスサンデーの顔。 転倒した彼女は右足をかばうようにそこに座り込み、動こうとしなかった。ライブの時に流れた汗ではない、明らかに異質な汗が彼女の顔から吹き出し始める。 「マ、マベちゃん!?」 驚いたトレーナーは汗に濡れた上着をほっぽりだし、そして彼女に座って寄り添う。 そして右足の様子を見て、すぐに彼女は気づいた。 「嘘……」 それは3回も経験した症状だった。ジュニアクラスの9月に1回目。クラシッククラスの3月に2回目。そしてクラシッククラスの9月に3回目。骨折である。

4 21/09/01(水)00:06:07 No.841323334

すぐにトレーナーとマーベラスサンデーは救急外来を尋ねた。 そして診断の結果は 「折れてますね、関節骨折です」 右足関節骨折。それが医師から出された診断内容だった。 「着替えの時にバランスを崩したとのことですが、直接の原因ではないように思います。恐らくですが…、本日のもっと早い段階で骨折していたのでしょう」 そう医師は付け加えた。 「今日は…大事なレースがありまして…」 トレーナーがそう言ったのを聞いて 「知っています。宝塚記念ですね。私もテレビで見ていました」 と医師が淡々とした調子で答えた。 「マーベラスサンデーさん、G1タイトル獲得おめでとうございます」 「あ、ありがとうございます☆」 突然の医師からの祝福の言葉に、少し面食らった様子でマーベラスサンデーは笑顔を返す。

5 21/09/01(水)00:06:30 No.841323462

「これは医師としての直感なのですが、恐らく骨折したのはレースの最中でしょうね。そのあとウイニングライブがあり、目の前の状況をこなすのに必死だったため、感覚が麻痺していたのでしょう」 そう付け加えた医師の言葉をただ黙って2人は聞いていた。 「さて、これからの事ですが…」 医師が言葉を切り出そうとするのを聞いて、マーベラスサンデーは思った。恐らく2ヶ月もすれば快方に向かい日常に支障がなくなる程度に動ける。そして3か月もすれば骨が頑丈になり、また練習が出来るようになる。そういう言葉が出てくるな、と。今まで、3回も骨折を経験した彼女である。そう思うのも無理のないことだった。 しかし 「完治まで5ヶ月です。それと…外科手術を強くお勧めします」 「ご…!?」 思ってもみない、答えにトレーナーが目を点にし、マーベラスサンデーがぽかんと口を開ける。

6 21/09/01(水)00:07:56 No.841323892

「ど、どういうことですか!?」 慌てた様子で尋ねるトレーナーに 「関節骨折の場合、治療の目的は骨がつながるのを待つだけではありません。足関節の骨のずれを戻すことが必要になります。そこで、骨折した部位を元に戻し、ボルトやネジで固定する必要が出てきます。手術はそのために必要です」 「完治まで5ヶ月っていうのは…」 「それだけ今回の症状が重篤なんですよ。今回の宝塚記念が悪いわけではありません。それだけではここまでは酷くならない。今まで走ってきたレースでの疲労が蓄積したのが、今日爆発したんでしょうね。何か、思い当たる節はありませんか?」 そう聞かれて、マーベラスサンデーもトレーナーもはっとした。 最近行った、最も負担のかかったレース。文字通り死闘となった、そんなレースに心当たりがあった。そしてその名前を2人は同時に思い浮かべる。

7 21/09/01(水)00:08:10 No.841323956

「春の…天皇賞…」 そして、その言葉を口にしたのは、マーベラスサンデーだった。 トレーナーが見た彼女の顔は、いつものように元気いっぱいのそれでなく、どこか能面のような表情の読めないものだった。 「原因をとやかく言うつもりはありません。今日は一日入院していただき、手術の段取りはまた明日打合せしましょう」 そう言われ、足を固定されたマーベラスサンデーには車椅子が用意された。 しばらくして部屋が用意され、車椅子に乗ったマーベラスサンデーをトレーナーは押して、その部屋に向かう。 しかし廊下を歩む二人の間に会話は全く生まれなかった。手術と5ヶ月の治療期間。その現実をまだ2人とも受け止められずにいた。

8 21/09/01(水)00:08:30 No.841324057

「5ヶ月…か…」 マーベラスサンデーに着替えを届け、病院を後にしたトレーナーは、自分の愛車、トヨタ・ポルテにてトレーナー寮までの家路についていた。 そこまで長い骨折は今回が初めて。だが不幸中の幸いだったのが、マーベラスサンデーが大事故につながることがなかったこと。もし、故障からの事故につながったことを考えると、思わず身震いしてしまう彼女である。 ぼんやりと考えているうちに、いつの間にかトレーナー寮に到着していた。 (漫然運転…よくないな…) と思う反面、頭の中はマーベラスサンデーのことでいっぱいである。 車を降りて、自室に入り、着替えもせず、化粧も落とさずにそのままベッドに倒れこむ。 これからどうしようか。マーベラスサンデーのために何ができるだろう。そう考えているうちに、彼女の脳内には、完治まで5ヶ月という時間の長さに焦点が集まり始めていた。

9 21/09/01(水)00:09:11 No.841324239

「しばらく多分車椅子で過ごすのよね…マベちゃん…」 そうつぶやくと、彼女は不意に、スマートフォンを取り出して何かを調べ始めた。 「あ…。あった…」 思いつきで何かを調べていた彼女だが、目的のものがどうやら見つかったようである。 しばらくそのページを確認し、唸っていた彼女であるが 「よし!」 と自分に気合を入れるように身体を起こし、何か決意したようなきらめきを瞳に宿したのだった。

10 21/09/01(水)00:09:35 No.841324366

1週間後。7月上旬。 マーベラスサンデーの手術は無事に終わり、退院の日を迎えた。 医師にお礼を言って、車椅子を押して病院の駐車場に向かうトレーナー。 「あれ?」 トレーナーの手に揺られて駐車場まで来たマーベラスサンデーが目にしたもの。それは赤色の見慣れないミニバンだった。トヨタ・シエンタ。いつものトレーナーの水色のポルテではない。それに少しだけ、普通の車より車高が低い。 「トレーナーちゃん、これ…?」 と首をかしげるマーベラスサンデーに、 「あぁ…買ったの。中古だけど…」 頬をかいて照れくさそうにトレーナーは答えた。 「ちょっと待っててね」 とトレーナーが声を掛け、ハッチバックドアを開く。そして慣れた手つき造ったのはスロープだった。 「じゃ、行くよ!」 とトレーナーが言い、マーベラスサンデーの乗った車椅子を押し始める。

11 21/09/01(水)00:10:03 No.841324491

「え?え?」 何が何だか分からないうちにマーベラスサンデーはトレーナーに車椅子を押され 「よいしょー!」 トレーナーの掛け声とともに、車椅子ごと車の中に入ってしまった。 そして 「これだな…」 とトレーナーが車椅子の固定バンドを引き出し、マーベラスサンデーの乗った車椅子を固定する。 続いてスライドドアを開き、 「ちょっとマベちゃん、ごめんね」 と声を掛け、3点式のシートベルトを彼女に掛けた。 そして 「よし!」 満足そうにトレーナーは笑い、スライドドアを閉め、スロープをしまう。通院に使った荷物を積み込むと 「じゃ、出発するよ」 と、後部座席にいるマーベラスサンデーに声を掛けた。

12 21/09/01(水)00:10:43 No.841324658

「う、うん」 いつの間にか車に乗せられていた戸惑いをそのままに、マーベラスサンデーを乗せて、トレーナーの車が走り出す。 マーベラスサンデーが後部座席から見た、運転席に座るトレーナーの顔は、どこかはつらつとした笑顔を浮かべていた。 しばらく車椅子生活になるのであれば、車椅子で乗り降りのしやすいウェルキャブの方がマーベラスサンデーのためになる。怪我が多かった彼女を見ている立場からすると、少し遅すぎる考えでもあったが、思い切って車を買い替えることにしたトレーナーである。マーベラスサンデーの退院までに中古車のウェルキャブを手に入れることを決意した。そして宝塚記念の翌日に有給申請を出して、中古車巡り。現在に至る。 「ねぇ、マベちゃん」 トレーナーがそう話しかけ 「何、トレーナーちゃん」 とマーベラスサンデーが応える。 「明後日から、夏合宿行きたいんだけど、大丈夫?」 とトレーナーが問いかけ 「え!?」 驚きの声色でマーベラスサンデーが叫んだ

13 21/09/01(水)00:11:11 No.841324787

トレーナーはその声色に少しだけ笑い 「いいじゃない。怪我してても。5月頃からバケーションレンタルの宿もとっちゃってるし、キャンセルしてないの」 と陽気に話しかけた。 「だから、何もしない夏合宿しよう、ね?」 そう問いかけるトレーナーの声色は、非常に明るいものだった。 その時、マーベラスサンデーは改めて気づかされた。この車も、何もしない夏合宿も、そして明るくふるまうトレーナーの態度も。自分のことだけを考えて起こしてくれた行動なのだと。 だから彼女は 「トレーナーちゃん」 「なーに、マベちゃん?」 「行こう!夏合宿☆☆☆」 目いっぱいの笑顔で、トレーナーに応えたのだ。 心の中で、 (トレーナーちゃん、いつもありがとう) と感謝の言葉を口にしながら。

14 21/09/01(水)00:11:45 No.841324979

こんな話を私は読みたい 文章の距離適性があってないのでこれにて失礼する fu300446.txt

15 21/09/01(水)00:21:14 No.841327823

僕も読みたいから適正距離から逃げるな

16 21/09/01(水)00:36:33 No.841332446

適正Sだろこれ以上求めるな

17 21/09/01(水)00:53:20 No.841337245

マベちゃんの心が戻ってきた… ところでシエンタいいよね

18 21/09/01(水)01:01:16 No.841339466

トヨタの回し者来たな…

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