ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/08/26(木)22:34:28 No.839483646
空を気ままに揺蕩う雲を見上げて、草のベッドに寝ころぶ。たまに授業をサボって来るここで考えることは何もなく、ただゆっくりと眠るだけ。昼頃のチャイムが私の目覚ましとなって、横に座る少女に気づく。彼女が差し出したお弁当をつまみながら、ゆっくりぼーっと空を眺める。 「…スカイさん?最近ずーっとぼーっとしてらっしゃいますけど、何かあったんですか?」 「ん~?…あ~、いや、トレーナーさんのことでね。最近ず~っと彼のことを考えると頭がぼーっとしちゃってさ。なんでなんだろうね?」 彼女の質問に、そう答える。ま、分かるわけないかといった具合に寝転んで土の感触を確かめる。ふかふかの私だけのベッドを楽しんでいると、ふと呆れた様子でフラワーはこう返した。 「…それ、トレーナーさんのこと好きなんじゃないですか?」 聞いた途端に顔の周囲が熱くなって、草に顔を埋めるようにばたつく。が、苦しくなりぶはっと顔を上に向けて、腕を額に当てる。あつい。 「…い、いや…ははは、そんな…」
1 21/08/26(木)22:34:52 No.839483805
慌てて否定しようとするも、それを否定するまでには至らない。何故なら、薄く気づいてはいたからである。彼のどこに惹かれたのだろう、と思案すると思いのほかたくさん出てきてしまうことからも、それは明らかだった。 「…そう、なのかもね。にゃはは…」 私もなんだかんだ、少女らしい恋はするもんなんだな、と思う。それに彼が答えるかは別だけれど、それでも私の初恋にはぴったりだ。気遣い上手とからかい上手、とでも形容すればいいのかは分からないけど、なんだかとても胸を撫で下ろせる、そんな気持ちになった。 「…ふふ。」 突然にこやかに、彼女は笑った。私の普段から乖離した様子に可笑しさを感じたのか、少しムッとなって彼女に言葉を投げる。 「…もう、笑わないでって…」 「いえいえ。ほほえましいな、と思いまして。」 なんだか全てを見透かされてるような、そんな気分になる。それがいけなかったのかもしれない。 唐突に私は、高らかに宣言するように立ち上がった。 「もう、なんなら今すぐ告白してきてもいいよ。思い立ったが吉日っていうもんね!?」 明らかに焦りが見えていた私を、彼女は慌てて静止するように手を振る。
2 21/08/26(木)22:35:17 No.839483949
「ああいや、気を悪くされたのなら…」 「フラワーがあっと驚く結果を持ってきてみせるよ。…待ってて。」 やたらとかっこつけて、彼女のもとから去っていく。最後に何か聞こえた気がしたけど、気にしなくてもいいかとその場を後にした。 トレーナー室の前に立ち、深呼吸を1回。2回。3回。すればするほど踏ん切りがつかなく、よしと思っても足が竦んで前に進まない。もやもやとしたままその場に立ち尽くしていると、後ろから聞きなじみのある声が聞こえてきた。 「…スカイ?珍しく早く来たな?」 後ろをゆっくり振り返ると、優しい笑みをこぼしながら私の頭を撫でてくる私のトレーナーさんがいた。その事実と、立ちすくんでいた理由とがぶつかり合って私の脳はオーバーヒートを起こす。ふしゅるるる、という音が出そうなほどに蒸気を出して、一度意識がぷつりと途切れた。
3 21/08/26(木)22:35:37 No.839484089
起きるといつものソファの上で、タオルケットをかけられて寝かされていた。首が痛くならないように、最近買った枕に頭を埋めながら、天井の照明をぼんやりと見つめる。ふと横を見て、空の暗さにはっと飛び起きると、美味しそうなにおいを漂わせながらトレーナーさんが料理を作っていた。 「お?起きたかスカイ。突然倒れるからびっくりしたぞ。調子悪いと思って今日はトレーニング中止にしといたからな。」 そう言うと一度料理を中断して、私のほうに歩いてくる。手に水とコップを持って、まずは一杯私に手渡す。んぐ、と一息ついてから時計を確認すると、もう門限をとっくに過ぎていた。 「あっ、門限…」 「ああ、理事長に掛け合わせて今日はトレーナー室泊まり込みで構わないって言われたから大丈夫。さ、ちょっと遅くなったけど夕飯でも食べよう。立てるか?」 私に手を差し出す。おっきい手に引かれるまま起き上がり、そのまま椅子に腰かけられる。目の前に並んでいたのは、鍋料理だった。 「この時期にこれはちょっとって思うかもしれんが、これしかできなくてな。さ、食べよう」
4 21/08/26(木)22:36:23 No.839484396
いただきます、という声を揃えてから目の前の馳走にありつく。味付けも何もかもが男らしい濃いものになっていたけど、なんだかそれが異様に安心できて。次々と進む箸をよそに、トレーナーさんはちゃちゃっと片付けて皿を洗っていた。 「食べ終わったらここに入れておいてくれな、あとで洗っとくから。」 トレーナーさんはいつも通り、私を気遣ってくれていた。それに申し訳ない気持ちが湧いてきて、ふと口をついた。 「…すいません、何から何まで。」 椅子からぺこりと頭を下げて、トレーナーさんに謝罪する。こんなことなら、最初からあんな啖呵切らなければ良かった、と思う。しかし、次に聞いた言葉がそんな後悔を吹き飛ばした。 「いいよいいよ、愛するスカイのためならこれぐらい。」 「…えっ?」 「ん?どうしたスカイ。」 「…い、今、愛してるって…」 「…あっ、言っちゃってたか?」 「…はい。」 二人の間に微妙な空気が流れる。ただトレーナーさんは覚悟を決めるように、一度深呼吸をしてから私に向き直ってこう言った。
5 21/08/26(木)22:37:02 No.839484617
「…あぁ、そうだとも。俺はスカイを、世界の誰より愛しているよ。」 真剣なまなざしで、吸い込まれるように頭がくらつく。困惑もあったけど何より嬉しさが勝って、目からは自然と涙がこぼれた。 「あー…その、嫌だったか?」 「そっ…そんなわけ、ないじゃないですか…!」 「…そっか。」 「…私も、愛してます…!トレーナーさんっ…!」 「ああ。…いつか、籍も入れたい。今後が楽しみだな、スカイ?」 「…はいっ、そうですねっ…」 そのまま私たちは抱き合って、数分数十分と二人の時間を共有する。トレーナーさんの大きな体と、手と、そして匂いとが複雑に絡み合って、私の脳を侵していく。けれどそれに不快感はなく、むしろ幸福に満ちたように血液を通して体中を駆け巡っていくような、そんな感覚を得た。そしてそのままトレーナーさんを見上げて、目を閉じる。そのあとにくっついてきた柔らかな唇が私を求めてくるので、小さく返す。それを何度も続けて、終わるころには互いに息を吐き出していた。 「…愛してるよ、スカイ。」 「…私も、です。」 私の初恋が、実を結んだ瞬間だった。
6 21/08/26(木)22:37:18 [s] No.839484715
セイちゃん可愛いね
7 21/08/26(木)22:40:21 No.839485922
HAPPY END
8 21/08/26(木)22:41:16 No.839486269
両方掛かり気味なのいい
9 21/08/26(木)22:41:22 No.839486317
むぅ…ラッコ鍋…
10 21/08/26(木)22:46:17 No.839488190
もっと幸せになれ…
11 21/08/26(木)22:55:38 No.839491986
勢い込んで告白に向かったスカイさんが部屋に連れ込まれて翌日朝帰りしてきた…
12 21/08/26(木)23:05:17 No.839495669
>勢い込んで告白に向かったスカイさんが部屋に連れ込まれて翌日朝帰りしてきた… その後なんか顔を赤くしてふにゃってる…
13 21/08/26(木)23:06:29 No.839496137
(青空にフェードアウトする黄金世代とニシノ神)
14 21/08/26(木)23:12:34 No.839498421
やったんですか!?
15 21/08/26(木)23:15:34 No.839499548
(告白を)ばっちりやっちゃいました!
16 21/08/26(木)23:17:52 No.839500397
(学園中の噂になる二人)
17 21/08/26(木)23:33:43 No.839506101
(礼賛する黄金世代)