ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/08/23(月)23:45:15 No.838489094
ふとアタシは、見慣れた和室に可愛いドレス姿で座っていた。 ドレスはアタシが小さい頃に着ていた物を大人らしく仕立て直した物で、嗚呼…此れは夢なんだな、と認識した。 認識出来たからと言って、夢をコントロールする事は出来ない。アタシはただ、映画のフイルムを眺める事しか出来ない。そう言う類いの夢だった。 その時不意に、コンコンコン、と引き戸を叩く音がした。アタシはただ「良いぞ」と素っ気なく答えて、一拍置いてから引き戸が開かれた。 「お待たせ致しました、お嬢様。朝食をお持ちしました」 其処に居たのは、額の髪に星を煌めかせた鹿毛の少女。執事服のジャスタウェイだった。贔屓目に見ても「あ、コイツ顔の良さで一目惚れした女の子を不幸にする奴だ」って思った。
1 21/08/23(月)23:46:27 No.838489531
「本日の朝食は焼き鮭、出汁巻き玉子、ほうれん草のお浸し、豆腐のお味噌汁に水茄子のお漬物、最後に鯛出汁茶漬けの掻っ込みご飯となります」 嗚呼、アタシ好みのアッサリした味のご飯。ゆっくり箸を運ぶと…うん、アタシ好みの味付け。何時だったか食べた、懐かしい味に少しだけ目尻に涙が浮かぶ。 時間を掛けてご飯を食べ終えたら、アタシはジャスタに「次のレースで使う蹄鉄を選びましょう」って言われて手を引かれた。 屋敷の窓から見えるのは思い出の其れその物で、懐かしい反面何処か怖くも感じた。アタシはやがて庭に出た。 差異のある蹄鉄が付けられた其れ其れのブーツをアタシはジャスタに履かされて、庭を軽く駆ける。ブーツを履き替える度に跪く姿は、主従の関係を強く思わせて何だかドキドキした。
2 21/08/23(月)23:46:49 No.838489681
結局アタシはお気に入りの蹄鉄を良い塩梅にチューンしてブーツを整えた。そしたらジャスタは「そろそろお風呂の準備が整った頃でしょう。参りましょう、お嬢様」って言ってアタシに手を差し出すのさ。アタシは言われるが儘に手を取って歩く。 お屋敷は本当に広くて、その広さを感じる気持ちは小さい頃と何も変わりなくて…アタシは裸に成ると薔薇を散らしたバスタブに浸かった。少しだけの間、ぶくぶくとお湯の中で息を吐いた。この夢の終着点は何処なのだろうかと。 「失礼しますねお嬢様。お体のお手入れに参りました」 そう言ってきたジャスタは上着とチョッキを脱いでシャツの腕をまくって現れた。アタシは為されるが儘。
3 21/08/23(月)23:47:20 No.838489832
手足を洗われ、お腹を撫でられる様に洗われ、手際よく長い芦毛を洗われてシャワーを流されると、フカフカのバスタオルで体を隈無く拭かれて、バスローブを着て洒落た椅子に座らされるとジャスタからヘアドライヤーで丁寧に髪を乾かされた。序でにヘアオイルで上品な香りを付けられてアタシの髪は艶々になった。 アタシはもう一度仕立て直された昔のドレスをジャスタに着せられて、何処かの寛げる部屋に通された。アタシはちょん、と座らされ「お手を拝借」と言われてはジャスタに手足の指を丁寧に丁寧に仕立て上げられて、アタシにぴったりの、鮮やかなマニキュアとペディキュアを塗ってくれた。
4 21/08/23(月)23:47:45 No.838489976
其れ等が乾くまでの間、ジャスタはアタシが退屈しないようにとヴァイオリンを取り出すと「四季」の「夏」を演奏してくれた。意外と器用な所がある彼奴の事だから、アタシは自然とヴァイオリンを演奏する姿がしっくり来た。 やがてマニキュアとペディキュアも乾くと、アタシはシルクの靴下を履かされ、キュートなヒールの靴を履かされると、ジャスタに手を引かれて車に乗せられた。 「行ってらっしゃいませ。お嬢様」 その言葉を聞いて、アタシは「アンタは来ないのかよ」って考えが浮かんで、そう思っている内に車は走り出して、アイツと、小さい頃に見覚えのある屋敷からどんどん遠ざかっていって……
5 21/08/23(月)23:48:15 No.838490160
… …… ……… 時間は、夜が少し明ける前。ほんのりと空が明るみを見せた所。 アタシは、ボンヤリとした意識でスヤスヤと眠るジャスタの横顔を見ていた。 …ジワジワと寂しさが込み上げてきたアタシは、ジャスタの体にむぎゅぅ…と抱き付いた。其れに気が付いたジャスタはぼんやりと目を覚まして、アタシに微笑んでくれた。 「早起きですね…どうかしましたか…? 我が友」 「…なんか漠然と寂しい夢を見た」 アタシが正直にそう言うと、ジャスタはアタシを抱き締め返して 「じゃあ、目一杯、寂しくないように過ごさないといけませんね」 「…朝風呂して、お洒落して、美味しいご飯食べに行きたい」 「えぇ、えぇ、我が友の通りに」 「…お手々握ってて」 「勿論ですよ、我が友」 そう言って額にキスしてくれるジャスタに、アタシはホロリと小さく涙を流した。
6 21/08/23(月)23:50:29 No.838490928
尾終い 夢の中で、普段見せない大事な人の一面を垣間見るって、とてもドキドキすると思います。 そしてその物語の筋書きが、何処か切ないとより意識してしまったり… 夢の中のお屋敷はシップがお婆ちゃん(お爺ちゃん)の所にお邪魔した所です
7 21/08/23(月)23:53:30 No.838491894
お嬢様ゴルシいいね…
8 21/08/23(月)23:56:30 No.838492996
>お嬢様ゴルシいいね… 良いですよね… お外で見掛けたお嬢様シップを見ていたら怪文書が出来上がって居ました
9 21/08/24(火)00:16:49 No.838499508
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
10 21/08/24(火)00:18:29 No.838500109
芦毛のお嬢様…いいですね…
11 21/08/24(火)00:19:57 No.838500606
>No.838499508 やはりジャスタはイケメン…
12 21/08/24(火)00:20:18 No.838500707
>芦毛のお嬢様…いいですね… とても良い物です…
13 21/08/24(火)00:28:08 No.838503401
>「…朝風呂して、お洒落して、美味しいご飯食べに行きたい」 >「えぇ、えぇ、我が友の通りに」 >「…お手々握ってて」 >「勿論ですよ、我が友」 >そう言って額にキスしてくれるジャスタに、アタシはホロリと小さく涙を流した。
14 21/08/24(火)00:30:10 No.838504079
>No.838503401 ウワーッ! 名画来たヨ!
15 21/08/24(火)00:31:16 No.838504424
誰よりも近いのに遠いジャスタの幻影を見て今の繋がりに不安を感じてしまうシップはかわいいですね…
16 21/08/24(火)00:34:10 No.838505354
>誰よりも近いのに遠いジャスタの幻影を見て今の繋がりに不安を感じてしまうシップはかわいいですね… そして寂しさを素直に吐露して甘えにいったのも良いですね…
17 21/08/24(火)00:38:59 No.838506852
ここのゴルジャスはいつも隣で寝ていますね… 寝台同士の距離すら惜しいのですね
18 21/08/24(火)00:40:46 No.838507491
>ここのゴルジャスはいつも隣で寝ていますね… >寝台同士の距離すら惜しいのですね 我が友とシップですから ソウルの頃からの仲良しですし
19 21/08/24(火)00:43:34 No.838508460
夜遅くにお付き合い頂き有難う御座いました 芦毛の導きのままに