虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

1 21/08/23(月)23:11:17 No.838477012

「……先生？」 当番生徒としてシャーレに来てみれば、執務室で先生が倒れていた？ 「どうされたんですか？」 しゃがんで先生とその周囲の様子を見る。床に突っ伏した先生と、床にぶちまけられたコーヒー。あとは、それが入っていたと思わしきマグカップが近くに転がっていた。 先生はといえば、息こそしているが顔色が悪い。仰向けになるよう転がしても軽く頬を触ってみても反応がなく、随分深く寝入ってしまっていた。 けれど幸い、ざっと全身を見ても、外傷等は見受けられなかった。 以上から察するに── 「過労、でしょうか……？」 ひとりごちながら、執務室の机に目をやる。決裁待ちらしい書類やら何やらが山積みになっていた。 どうやら、大方予想通りの顛末らしい。 「せっかく色々と先生に悪戯をしようと用意してきたのですが……これでは仕方ありませんね」

2 21/08/23(月)23:11:47 No.838477218

床に転がったマグカップをテーブルに置き、雑巾で床に広がるコーヒーを拭う。何度か雑巾を洗っては拭いてを繰り返し、床のコーヒーを全て拭き取った。 その後、もう一度先生の様子を診る。 前髪を払い、額に手を置く。汗でじっとりとしていたけれど、熱はなさそうだった。 次に手を取って、手首に指を当ててみる。少しごつごつとして筋張った、大人の男の人の手。こうしてしっかりと触れたことはなかったから、少し新鮮な感じがする。 「脈にも異常はなさそう…ですね」 救護騎士団の人であればもう少し詳しい判断ができるのかもしれないが、あいにく私にはそんな知識も技量もない。けれど、まあ、急いで救急車を呼ばなくてはいけないような大事ではなさそうだ。 となればあとは、人を呼ぶべきか。或いは、どこか落ち着いて眠ることのできる場所にでも運ぶべきか。 シャーレにも医務室はあったはずだし、呼べば運びにも来てくれるだろう。 けれど──

3 21/08/23(月)23:12:19 No.838477445

「もう少し、このままでいましょうか」 眠っている先生の顔を見ていると、起こしてしまうのは申し訳ない気がして。 流石に床に転がったままでは申しわけがないので私もその場に座り込んで先生の頭を膝に乗せる。 「今は、悪戯はしないでおきますね」 ずっと眠っているようなら、流石に起こしてしまうかもしれないけれど。 「──」 先生の寝息を聞きながら、ここに来るまでに図書館で借りた本をぱらぱらと捲って流し読む。シャーレの当番に来て手持ち無沙汰な時のルーティーン。 小説、エッセイ、新書、ライトノベル。本の種類にこだわりはないのだけれど、官能小説は先生があまりいい顔をしないので当番の時は控えている。 今日借りてきたのは、占いや呪いについて書かれた本。そういうものに興味が強いわけではなかったけれど、故あって図書委員に追われる中で表紙が偶然目についたから借りたものだ。水着姿でカウンターに行った時の図書館委員の顔はなかなかの見ものだった。

4 21/08/23(月)23:12:53 No.838477669

見るともなしにいくつか項目を読み流す中で、夢占いについての項を見つけた。 「先生は……今、夢を見ているでしょうか？」 眼下の先生に、小さく囁きかけてみる。けれど、深い眠りについた彼が目を覚ます気配はまるでなかった。 「夢占いって、結構面白いんですよ」 構わず、小さな声で話しかける。 「たとえば、噴水でお友達と遊ぶ夢。これは、相手と楽しい時間を共有できることの暗示なんだとか。先生はよく見ていらっしゃるかもしれませんね？」 「──」 頁をめくって、続ける。 「たとえば、倉庫に隠れる夢。これは、隠し事があったり、周りから距離を起きたがっている時に見る夢なんだとか。ストレスが溜まっているかもしれませんから、先生も気をつけてくださいね？」 「──」 頁をめくって、続ける。 「たとえば、靴下を脱ぐ夢。これは、自分がとても抑圧されていて、少し自棄になってしまっていることを暗示しているとか。……でもまさか、先生に限ってはそんな夢は見そうにないですね。ふふっ」 「──」 頁をめくって、続ける。

5 21/08/23(月)23:14:10 No.838478253

「……たとえば、雨宿りをする夢。これは──」 「うん……」 先生が小さく呻き、身じろぎをする。それから、ゆっくりと瞼を開いた。 「……ハナコ？」 「おはようございます、先生。……うるさかったでしょうか？」 答えながら、微笑んでみせる。残念ながら、夢占いの時間はおしまいだ。 「ううん、そんなことは。って──」 状況を把握したらしい先生が、少し慌てた様子で私の膝から頭をどかし、立ち上がる。 「ごめん、どれくらいこうしてた？」 「大丈夫です、まだ30分ほどですから」 「そっか……膝枕、してくれてたんだね。膝、痛くない？」 「平気ですよ、寝ている間の先生、とても大人しくされていましたし。それより、顔を洗って来られてはどうですか？私が来た時、床に倒れて寝ていたんですよ、先生」 「うん……そうするよ」 まだ眠気が残っているのか、少しふらつきながら先生は出口に歩いていく。

6 21/08/23(月)23:14:45 No.838478470

「ところで、先生」 その背中に、声をかける。 「どうしたの？」 「眠っている間、何か夢は見ましたか？」 「夢……？そうだなあ……」 先生は少し首を傾げ、考え込んでから呟いた。 「……確か、何かの鳥を助ける夢を見ていたような……」 「鳥、ですか？」 「うん。具体的に何の鳥かまではわからないけど……それがどうかしたの？」 「いえ、何も。では、私はここで待っていますから」 「……？」 首を傾げながら、先生は執務室を出ていく。 「……鳥を助ける夢は、助けた相手と縁が深まることを意味してるんだとか」 その姿を見送った後、私は誰に言うでもなくひとりごちる。 「その鳥は、一体誰のことなんでしょうね？」

7 21/08/23(月)23:15:59 No.838479036

fu274640.png 終わり えっちなのはないです

8 21/08/23(月)23:20:42 No.838480698

やはりハナコはお清楚……

9 21/08/23(月)23:24:15 No.838482003

>水着姿でカウンターに行った時の図書館委員の顔はなかなかの見ものだった。 何してんの！？

10 21/08/23(月)23:27:16 No.838483102

バカですけべでごめんなさいって言え！

11 21/08/23(月)23:27:37 No.838483218

エロいことしてこないときのハナコいいよね…

12 21/08/23(月)23:33:23 No.838485197

迷惑かけたお詫びに靴下のプレゼントを…って言っておきながら そこで更に悪戯仕掛けて迷惑重ねるハナコは正直先生に嫌われても仕方ないよね

13 21/08/23(月)23:34:23 No.838485524

>迷惑かけたお詫びに靴下のプレゼントを…って言っておきながら >そこで更に悪戯仕掛けて迷惑重ねるハナコは正直先生に嫌われても仕方ないよね でも先生は雨の中そんなハナコを探して走ってくるんだ

14 21/08/23(月)23:37:01 No.838486381

…ハナコ攻略完了してた？

15 21/08/23(月)23:38:54 No.838486991

>バカですけべでごめんなさいって言え！ そんな「コハル」じゃあるまいし…

16 21/08/23(月)23:46:43 No.838489642

ハナコのストレス解消イタズラって結局イライラして万引きしましたくらいの感覚なのかな… なんかお色気ギャグっぽい雰囲気で流されてるけど…