21/08/23(月)00:02:01 燦々と... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1629644521554.jpg 21/08/23(月)00:02:01 No.838160204
燦々と輝く太陽の下、駅へと続く道を、みらいちゃんは駆けていた 今日は待ちに待った、週に一度のリコがナシマホウ界を訪れる日 待ちきれなかったみらいちゃんは、家を飛び出し、駅までリコを迎えに行くことにしたのだ 走りながら、みらいちゃんは頭の中で、今日はリコと何をしようか考える ―…せっかく駅前まで来たのだから、今日はこのまま買い物に行こう 映画を観るのもいいかもしれない その後は美味しいものを食べて、家に帰ったら、今週あった楽しい出来事をふたりで語り合って、それから…― みらいちゃんの頭の中に次々と湧いてくる、楽しい想像。胸はときめき、ワクワクが止まらない 今日はきっと、最高の一日になる。…みらいちゃんは、そう考えていた …だが。みらいちゃんのその考えは、すぐに打ち壊される事となる 「…あ!お~い、リコ~!」 駅にたどり着いたみらいちゃんは、その出入り口付近にリコの姿を確認し、そちらに向かい駆けていく するとリコの隣に、見覚えのある男性がひとり、立っている事に気が付いた 「…え。こ、校長先生!?」
1 21/08/23(月)00:02:32 No.838160372
リコの隣に居たのは、なんと魔法学校の校長だった ふたりはみらいちゃんの姿に気づくと、そちらに向き直り、手を振りながらみらいちゃんに挨拶する 「あ、おはよう、みらい!」 「おはよう、みらい君。こうして直接会うのは、随分久しぶりじゃな」 「…え、えと…は、はい、おはよう、ございます…?」 みらいちゃんはふたりに挨拶を返しながらも…しかしその表情には、戸惑いが隠せない …何故校長が、リコと一緒にこちらの世界に来ているのか 状況を理解できないみらいちゃんは、校長に直接聞いてみる事にする 「…あ、あの…校長先生、今日は、どうしてこちらに…?」 「ああ、それはね」 みらいちゃんの問いに、校長の代わりに答えたのはリコだった 「彼、最近仕事が立て込んでて、随分疲れを溜めてたみたいだから。だから私が、提案したのよ “たまには羽を伸ばして、ナシマホウ界にデートに行かないか”って。 彼もその提案に乗ってくれて。だから今日はふたりで一緒に来たのよ」
2 21/08/23(月)00:02:54 No.838160498
「……え?」 …リコの言葉に、みらいちゃんの表情が凍り付く (え…え?リコ、今、何を言ったの…?校長先生と、デート…?それって、どういう事…?) 己の耳を疑う、衝撃的なリコの一言 だが、リコは今間違いなく、『校長とデートにやって来た』と、そう言った その真意を確かめるべく、みらいちゃんはリコに質問を続ける 「リ、リコ…校長先生とデートって…それって、どういう事…?」 「?どういう事、って。言葉通りの意味だけど?」 「え、え…だ、だって、デートって、お付き合いしてる相手とする事でしょ…? リコと校長先生は、そういう関係じゃないよね…?」 「…?私と校長は、付き合ってるけど?」 「!!!!!!!!!」
3 21/08/23(月)00:03:33 No.838160711
その一言に、みらいちゃんはまるで金槌で頭を殴られたかのような衝撃を受ける 「う、嘘…だって、そんなの…!リコは、私と付き合ってるでしょう…!?」 「えぇ?何言ってるのよ。この前、別れましょうって話をしたじゃない」 「!そ、そんなの、私、聞いてない…!」 「…正直、みらいってちょっと子供っぽすぎるのよねぇ。オトナの私とはちょっと合わないって言うか… オトナな私の相手には、同じくオトナな人の方が相応しいでしょう? その辺校長は、私にぴったりじゃない」 「…嘘…嘘…!」 …それは、あまりに衝撃的過ぎる展開だった 信じたくないみらいちゃんだったが、しかし目の前のリコの言動が それが紛れもない“現実”である事を、まざまざと突き付けてくる ぐわんぐわんと痛む頭 胸の奥から込み上げてくる吐き気を懸命にこらえながら、みらいちゃんは声を絞り出す 「…嘘、だよね、リコ…?冗談でしょう…?私をからかって、愉しんでるんだよね…?」
4 21/08/23(月)00:03:50 No.838160813
…これは嘘なのだと。何かの間違いなのだと 目に涙を浮かべながら、そう、最後の希望に縋りつくみらいちゃん …だが。みらいちゃんのその希望は、次の瞬間、無残にも粉々に打ち砕かれる 「…はぁ。嘘じゃないわよ。そんなに信じられない? しょうがないわね、じゃあこれが紛れもない現実だって事、見せてあげるわ」 リコは呆れたようにひとつ溜息を零した後、隣に立つ校長の方へと向き直る そして校長の腰に手を回しながら、そっと目を閉じた 「…ねぇ。みらいに、私たちの愛を見せつけてあげましょうよ」 「む、今、ここで?…ふふ、全く、仕方がない子じゃな、リコ君は」 …この後、何が起こるのか。みらいちゃんは瞬時に察知する 「…やだ…ダメ…やめて…!!」 震える声で、みらいちゃんがふたりに懇願する だが無情にも、みらいちゃんの声を無視して、ふたりの顔はゆっくりと近づいていき… 目の前で起きる絶望的な光景に、みらいちゃんお悲痛な悲鳴が響き渡る 「ダメええええええわああああああやだあああああああああ!!!!
5 21/08/23(月)00:04:13 No.838160942
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6 21/08/23(月)00:04:59 No.838161205
ああああああああああああ!!!!……あ?」 …そこでみらいちゃんは、その目を開ける 暗闇の中で体を起こし、きょろきょろと辺りを見回したところで…ようやく今までの出来事が 全て夢の中での出来事だったことに気づくのだった 「はぁ、はぁ…ゆ、夢…?……よ、よかったぁ~~~~…」 荒い呼吸を繰り返しながらも、全てが夢だったことに安堵し、へにゃへにゃと身体から力が抜けていくみらいちゃん 「ん…んん…なぁに、急に大きな声を出して…どうしたのみらい…?」 みらいちゃんの声を聞き、みらいちゃんの隣で寝ていたリコも目を覚ます 「!…リコ…!」 みらいちゃんは、今しがた夢の中で自分のもとから去っていきそうになっていた、愛しい恋人の姿を確認し 感極まり、その体をぎゅうっと強く抱きしめる
7 21/08/23(月)00:05:30 No.838161378
「ふぇぇぇぇぇん!リコぉぉぉぉ!!」 「きゃっ!…なぁに。怖い夢でも見たの…?」 突如抱きついてきたみらいちゃんを、優しく抱き返しながら リコは何かあったのかと、みらいちゃんに問いかける 「…ぐすっ…うん、あのね…」 目尻から涙をちょちょ切らせながら、みらいちゃんは今しがた起きた出来事を、ゆっくりとリコに語り聞かせていく 「…くっ…くくっ…」 …事の顛末をみらいちゃんから聞かされたリコは お腹を手で押さえ、漏れ出そうになる笑い声を、懸命にこらえていた 「…も、もぉ~!なんで笑うの、リコ!」 リコの態度が不満で、頬を膨らませりみらいちゃんだが しかしリコはどうしたって、笑いを抑える事ができない 「くすくす…だって、私が校長先生と、なんて。あまりにあり得なさすぎるでしょう。 それが本当だったら、私今頃、クシィさんから殺されてるわ」 「むぅ~…でも私、本当にショックだったんだから…」
8 21/08/23(月)00:05:58 No.838161526
茶化すようなリコの態度に、とうとうへそを曲げ、そっぽを向いてしまうみらいちゃん リコはくすりと笑いながら、そんなみらいちゃんを、優しく抱き寄せる 「…ほら、みらい。こっちにいらっしゃい」 「……」 リコに抱きしめられても、みらいちゃんは唇を尖らせたまま リコはまるで小さな子供をあやすようにそっとみらいちゃんの頭をなでながら、優しい声色で語り始める 「もう。バカね。私がみらい以外の人とそんな風になるなんて、そんなの、あるわけないじゃない」 「…ぅ~。それは、わかってるけど…でも、すごくショックだったんだもん…」 リコによしよしされて、少し機嫌がよくなったみらいちゃんは 唇を尖らせつつも、そっとリコにしなだれかかる
9 21/08/23(月)00:06:30 No.838161686
「…ぎゅってして」 「はいはい」 みらいちゃんに言われるままに、リコはみらいちゃんをぎゅっと強く抱きしめる 「…チュッてして」 「はいはい」 みらいちゃんに言われ、リコは今度はみらいちゃんの頬に、チュッと口づける …その後もリコは、みらいちゃんに頼まれるままに、みらいちゃんへの奉仕を続け… 「…ね?これでわかったでしょう?私がこんな事をするのは、世界中で、みらいだけなんだから」 「…うん」 リコからの愛を全身に受けたみらいちゃんは、ようやくその顔に笑顔を取り戻すのだった
10 21/08/23(月)00:06:46 No.838161770
まるでしがみつくように抱きついてくるみらいちゃんの体を、リコは優しく抱き返す 「…そう。それならもう、安心ね」 「…うん。もう大丈夫。…大丈夫、だけど、ね。 …リコの事は信じてるけど。…でも、あんな夢を見ちゃって、やっぱりまだ少し。少しだけ、心配だから… …だから、ね…?」 「…もう、しょうがないわね」 …そっと目を閉じたみらいちゃんが、ゆっくりと顔を近づけてくる リコは同じく、ゆっくりと目を閉じると みらいちゃんが行う行為を、静かに全身で受け入れるのだった
11 21/08/23(月)00:07:09 No.838161900
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12 21/08/23(月)00:08:28 No.838162311
翌日。魔法界 「やぁ。おはよう、リコ君」 「あ、校長先生。おはようございます」 魔法学校へと向かう道すがら。リコはばったりと、校長と出くわす 「今日も良い天気じゃな」 「あは。何言ってるんですか。ここは春島なんだから、そんなの当り前じゃないですか」 「ふふ、それもそうじゃな、ははは」 とりとめのない会話を交わしながら、魔法学校へと向かう校長とリコ 「…む?」 …と、その時。校長がある事に気づく 「…リコ君。何だか、首に虫刺されのような痕が、大量にできとるようじゃが…?」
13 21/08/23(月)00:09:00 No.838162478
…そう。リコの首には、おびただしい数の“痕”が付いていた リコはぽっと頬を染めながら、首の痕のひとつに、そっと指先で触れる 「…あ、ああ。これはですね、何と言うか… 魔除けと言うか、人除けと言うか…ま、まぁ、ある種のおまじないのようなものです」 「……?」 どこか曖昧なリコの説明に、校長は小さく首を傾げる 「あ、あの!私、授業の準備がありますので!先に行きますね! そ、それでは、失礼します!」 更なる追及が来ることを恐れたリコは、校長に一声かけ、足早にその場を後にする
14 21/08/23(月)00:09:19 No.838162584
足早に学校へ向かいながら、リコは心の中でひとり愚痴をこぼした (…もう!みらいったら、こんなにたくさん痕を付けるなんて聞いてないわよ! こんなの、絶対学校でもみんなに指摘されちゃうじゃないの!) …そう。リコの全身に刻まれた“それ”は みらいちゃんによって付けられた、リコがみらいちゃんのものだという証だったのだ (…まったく、みらいったら。本当に私の事、愛しすぎなんだから!) 小さく溜息を零しながらも、しかしリコは みらいちゃんからつけられた愛の証を、愛おし気に指先で撫で 笑顔で、魔法学校へと続く道を駆けていくのだった