虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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    21/08/19(木)00:38:38 No.836657345

    10月中旬、中山競バ場。 日曜日、第11レース。G2、オールカマー。芝2000m。 天候は晴、バ場は重バ場。 第三コーナー。 『さぁ第三コーナーに入りまして!マヤノトップガン先団につけています!』 第三コーナーに入り、マヤノトップガン先頭から三番手。逃げウマとペースを合わせつつ、脚を溜めてコーナーを駆けていく。彼女の顔は真剣そのもの。むしろ若干の焦りを含んだ張りを持った顔である。G2レースにも拘わらず、その顔に宿るひりつく感情の原因。それは彼女のすぐ後ろにあった。 『マヤノトップガンのすぐ後方にはスリゼローレル!彼女のすぐ後ろに張り付きぴったりとマーク!』 春の天皇賞で完敗させられた相手がすぐ後方で彼女をマークしている。その足色には十分余裕がありそうだ。

    1 21/08/19(木)00:38:54 No.836657418

    (今日は…今日こそはマヤが勝つんだから…!) 心に強い信念を。しかしその心にもたらされた鋼のように固いものではなく、触れたら手が傷つきそうな諸刃のような鋭いもの。 『さぁ、第三コーナーを抜け第四コーナー!ウマ娘達、疾風のように一段となり駆けていきます!』 もうすぐ直線。最後の舞台。中山の短い直線、そして急坂。 このオールカマー、秋の天皇賞の前哨戦。マヤノトップガンにとっても、スリゼローレルにとっても負けられない最後のホームストレッチがすぐそばまで迫っていた。 『さぁ直線を向いて!外からマヤノトップガン先頭!!!』 ホームストレッチに向かい、伸びてきたのはマヤノトップガン。抜け出し準備を整え、ゴール版目指して加速する。 (このまま!このまま突き放すんだから!!!) 内からは2人の逃げウマがいる。それを大まくりして直線を加速する構えを見せた。 マヤノトップガンがふと後ろを振り向く。後ろのスリゼローレルとの差を確認するために。そして彼女のラインを確認し、攪乱するように走る。マヤノトップガンはそう考えていた。

    2 21/08/19(木)00:39:49 No.836657740

    しかし (あれ…!?) 彼女は目を疑った。先ほどまでいたスリゼローレルが後ろにいない。 どういうことか困惑した一瞬 『スリゼローレル!!!内側に入った!!!』 スリゼローレルは内側に位置取りを変更していた。 そして目の前に走る2人のウマ娘の真ん中。狭い狭いその隙間をこじ開けるように走り、そして 『なんとなんと!!!中を割ったスリゼローレル!!!』 先頭を立ち走り始めた。 「うそ…」 その力強い走りに呆気にとられるマヤノトップガン。呆けているうちに彼女の脚が、先行策を取っていたその脚色がためらいを見せてしまったことに、マヤにトップガンが気づいたのは、残り100mを切ったその時だった。

    3 21/08/19(木)00:40:05 No.836657828

    しまった、と考えて再度加速するがもう時は既に遅すぎた。 マヤノトップガンの目の前にはスリゼローレルの背中が映る。彼女の瞳に映るフランスの桜は、坂をもろともしない力強いトルクで伸びていき、そして 『一着はスリゼローレル!!!天皇賞の前哨戦であるこのオールカマー!!!万全完璧の脚色で制しました!!!』 文句なしの一着を取ったのだった。 マヤノトップガンは四着。ゴール板を走り抜けた彼女の心に、先ほどまで立ち込めていた意思の柱。それが無残にも崩れていく。笑顔を見せ観客席に向かって手を振るスリゼローレルの姿を、マヤノトップガンは歯を食いしばって見るより他になかった。

    4 21/08/19(木)00:40:49 No.836658046

    10月中旬。オールカマーの翌日。月曜日。 マーベラスサンデーはトレーナー室にてトレーナーと打合せをしていた。 「昨日のオールカマーですが、スリゼローレルさんが勝利を見事収めましたね」 「マーベラース☆」 それに喜ぶマーベラスサンデー。春の天皇賞からレースに出ていなかったスリゼローレルであるが、久しぶりのG2レースで快勝。秋の天皇賞に参戦するのはもう確実である。 「これまでマベちゃんがレースで走った相手も、続々と出走登録の申請をしているようです。今回の天皇賞、結構、豪華な顔ぶれになりそうですね」 「そーなんだ☆すっごくマーベラスなレースになりそうで楽しみ☆」 それに興奮したように話すマーベラスサンデー。その様子は初めてのG1レースにも拘わらず、緊張した素振りが全く見られない。まるで心から走るのを楽しんでいるようにトレーナーには思えた。その態度を見て安心する、というよりトレーナーは自分の心を安心させようとしていた。

    5 21/08/19(木)00:41:16 No.836658166

    何せ彼女も新人トレーナー。初めて受け持ったウマ娘が目の前のマーベラスサンデー。G1レース出走自体が初めてのことである。気になるのは彼女の悪癖、物見のクセ。ただ、それをどうするというより、目の前の自分のウマ娘が絶好調であることをいいように考えるしか彼女にはないようだった。 「さて、マベちゃん。ちょっと手伝ってほしいことがあるんだけど」 そうトレーナーが切り出し、席を立つ。 その態度に首をかしげるマーベラスサンデー。トレーナーはロッカーに向かい、クリーニングされた服をもって彼女の前に現れる。 「あ!!!」 その服を見てマーベラスサンデーの瞳が輝いた。 それは彼女の勝負服。昨年8月にトレーナーに新調してもらって以降、一切袖を通す機会がなかった憧れの衣装である。 本当は菊花賞でお披露目できたかもしれない。だが菊花賞直前、9月上旬に足を怪我したマーベラスサンデーはトレーナーとの話し合いの上、レースを回避した。それは2人にとって苦渋の決断であった。いつかこの衣装に袖を通そう。栄光の舞台にいつか立とう。そう考えて、そう想いを強くして、遂に2人の目の前に、その機会が訪れたのだ。

    6 21/08/19(木)00:41:38 No.836658293

    「一年ぶりだし、着てもらっていい?変なところがあったら手直しに出したいし…」 そのトレーナーの言葉に 「マーベラース☆☆☆」 マーベラスサンデーは飛び上がって喜びを全身で表現した。 そして、勝負服に着替え終わったマーベラスサンデーは 「ねぇ、トレーナーちゃん」 トレーナーに話しかける。 「ん?」 首を傾げたトレーナーに 「ちょっときついかも」 と言い、彼女はトレーナーに向き直った。 その姿を見てトレーナーはひきつった笑いを浮かべた。浮かべざるを得なかった。 彼女に立つ目の前のマーベラスサンデーは、自分の両胸に手を当て、内へ内へ押していた。彼女が「きつい」といったその場所、それは上半身に纏ったブラウスだった。マーベラスサンデーが胸から手を離すと、ブラウスが横に広がり、ボタンがはち切れそうになりながらも何とか持ちこたえている。

    7 21/08/19(木)00:42:17 No.836658498

    昨年まではぴったりだったこの服だが、どうやら1年経って、マーベラスサンデーも成長したらしい。 (成長…しすぎでしょ…) トレーナーはふと自分の胸元に手をやってみる。若干控えめなその胸元を改めて実感し、その瞬間、彼女の瞳の光が消えた。 トレーナーが勝手に絶望しているうちに 「あ!」 とマーベラスサンデーが叫び 「へ?」 と顔を彼女の方に向けたトレーナー。

    8 21/08/19(木)00:42:33 No.836658585

    その目の前に飛んできたのはブラウスのボタンだった。そして 「ぅあ!」 それはトレーナーの額に直撃し、彼女は思わず仰け反る。 「あいたた…」 そう額をさするトレーナーの目の前には、胸元がもろに露出したマーベラスサンデーの姿。フジキセキの勝負服のようになったな、とマーベラスサンデーは思い 「…えへへ~」 歯を見せてトレーナーに笑いかけた。 「あはは…」 力なくトレーナーは笑い、 「…明日、仕立て屋さんに行こっか、マベちゃん」 と話しかけるよりほかにないのだった。

    9 21/08/19(木)00:43:33 No.836658914

    10月。天皇賞(秋)、一週間前。トレセン学園、栗東寮にて。 マーベラスサンデーは自室にて、上機嫌で本を読んでいた。それはいつも彼女が目を通す世界遺産や古代遺跡の本ではない。次回の秋の天皇賞を占う雑誌記事だった。 つい先日、マーベラスサンデーは生まれて初めて取材を受けた。その際、同席したウマ娘がいる。スリゼローレルだった。スリゼローレルは天皇賞春秋連覇がかかり、一番人気のウマ娘。かたやマーベラスサンデーはG1優勝の実績はないものの、この半年で6連勝。うちG2レース2勝・G3レース2勝という十分な成績を収めている。その評価もあり二番人気。人気が集中する2人に取材の話が舞い込んだのである。そして、スリゼローレルとマーベラスサンデーのインタビュー記事が、この雑誌には載っていたのだ。 「マーベラス、楽しそうだね」 そう声を掛けるのは、同室のウマ娘、ナイスネイチャだった。 「うん☆」 元気にそう返事をするマーベラスサンデー。 その顔を見て、ついナイスネイチャの目じりも細くなる。何せ雑誌が発売されてから、彼女は何度もその雑誌を読み返していたのだから。

    10 21/08/19(木)00:43:56 No.836659042

    「そんなに楽しみ?次の天皇賞」 「うん☆すっごく楽しみ☆絶対マーベラスなレースになるよ☆」 「へぇ~…そっか。それってローレルさんが出るから?」 「もちろん☆それにマヤちんも☆」 オールカマーでは実力が出し切れなかったマヤノトップガンだが、彼女も天皇賞(秋)に出走することが決まっていた。夏合宿で一緒に練習をして以来、1年も一緒のレースで走れなかった。その機会がついにやってきたのだ。 そんなマーベラスサンデーの姿を見て 「へぇ~…所で、出走登録者のリスト出たんだけど、見たの?」 とナイスネイチャは話しかける。 「ううん☆」 そう断言するマーベラスサンデーに、乾いた笑いを浮かべると 「はい」 と、ナイスネイチャは出走登録者のリストを手渡した。

    11 21/08/19(木)00:44:46 No.836659288

    「えっ!?」 そこにある文字を見て、マーベラスサンデーが驚きの声を上げる。そしてナイスネイチャの顔を見た。 「アタシも出るの、天皇賞。ま、ヨロシクね」 そう頬をかいて、視線を逸らし、照れくさそうにナイスネイチャは笑っていた。 「マーベラァァァアアス☆☆☆」 そんな彼女に、マーベラスサンデーは飛び跳ねるように抱き着き、喜びを全身で表現するのだった。 こんな話を私は読みたい 文章の距離適性があってないのでこれにて失礼する fu259857.txt

    12 21/08/19(木)01:13:20 No.836667229

    おい待てェ マーベラスに抱きつかれながら失礼するんじゃねェ

    13 21/08/19(木)01:28:53 No.836671036

    決戦が近い

    14 21/08/19(木)01:29:30 No.836671150

    この「」距離適性合い過ぎじゃない…?

    15 21/08/19(木)01:33:03 No.836671941

    マベネイの供給ありがたい…

    16 21/08/19(木)01:48:43 No.836675135

    ここに来て同室のネイチャ参戦とは盛り上げてくれる...