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21/08/16(月)01:47:50 6月初旬... のスレッド詳細

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21/08/16(月)01:47:50 No.835625491

6月初旬、東京競バ場。 土曜日、第10レース。G3、エプソムカップ。芝1800m。 天候は曇、バ場は良。 『東京競バ場、G3重賞競走、エプソムカップがもうすぐ始まります。芝の1800m、。ちょっと東京の空は曇って参りました。雨が果たして降るかどうか。雲行きがやや怪しくなってきた感じではありますが、現在は良バ場。このままでいけば絶好のバ場状態でレースが行われる見通しです』 実況の穏やかな語り口が会場に響く。どんよりとした雲が空いっぱいに満ち、梅雨ごろ特有の纏わりつくような湿度の高い空気が漂っている。ただ過ごすのにも不快さを引きずりがちな雰囲気である。そんな東京競バ場、出走ウマ娘の控室にて、パイプ椅子に座り、ひきつった顔をして顔を顰める若き女性がいる。マーベラスサンデーのトレーナーだった。両足をそろえ、その膝の上には固く握られた両手が乗せられている。 「どうしたの、トレーナーちゃん」 そう声を掛けるのはマーベラスサンデー。トレーナーとは打って変わっていつもの様子と変わりない。 トレーナーはその言葉にはすぐに答えず、ゆっくりと首を彼女のほうに向けると 「…緊張する」 と一言。

1 21/08/16(月)01:48:09 No.835625570

何も彼女が何かをするわけではない。走るのはマーベラスサンデーだ。ただ、若きトレーナーにとって、今回のエプソムカップが初めてのG3レースの挑戦である。どうもそのプレッシャーを必要以上に感じているらしい。 「大丈夫だよ☆アタシはいつもみたいに走ってくるだけだから☆」 「うん…」 元気いっぱいに励ますように話すマーベラスサンデーと、硬い表情のトレーナー。これではどちらがトレーナーか分からない光景である。 そんな中 「よしっ!」 と自分の顔を一回叩き気合を入れると、顔をすっきりとさせたトレーナー。 そして 「レース前に、アドバイスしたいんだけど、いいかな」 と精悍な目つきで彼女は自分のウマ娘を見なおった。 「マーベラース☆」 手を振り上げて返事をしたマーベラスサンデーは、彼女と向かい合うようにパイプ椅子に座りなおした。

2 21/08/16(月)01:48:27 No.835625632

「それでは」 と一言区切り。 「今日のレース、先行策でお願いします」 と一言。 「どうして?」 と問うマーベラスサンデーに、少しだけトレーナーは躊躇った様子を見せた。しかし 「今回の有力ウマ娘ですが、サイレントジョイさんと私は見ています」 とその理由を口にし始める。 「サイレントジョイさん。前走は芝2000mの新潟大賞典で7着と冴えませんでした。しかし、4月に行われた芝1600mのダービー卿チャレンジでは二着、そして3月の芝1800mの中山記念では3着と好成績を残しています」 「中山記念で…」 マーベラスサンデーの口から思わず漏れた言葉に、トレーナーも深く頷く。 今年の中山記念、一着を取ったのは、彼女たちのよく知る春の天皇賞ウマ娘のスリゼローレルである。そして二着は皐月賞ウマ娘のジュラルミン。つまりレース自体がかなりハイレベルなものだった。

3 21/08/16(月)01:48:45 No.835625690

「今回のエプソムカップ、会場は異なりますが、中山記念同様、距離は芝1800mです。芝2000mの新潟大賞典が不発に終わったことを考えると、サイレントジョイさんの適正距離は恐らくマイルまで。1800mがどうにか実力を発揮できる最長距離だと思います」 「フーン…」 「そして…今回マベちゃんに先行策を取ってほしい理由なんですけど…」 「うん」 「…彼女は、追い込みウマ娘です」 追い込みウマ娘。その言葉に一瞬間を置いたマーベラスサンデーだったが 「なるほどね☆」 と言い、彼女は目を細めた。瞳の奥で、金星のような金色が輝く。 トレーナーはマーベラスサンデーをまっすぐに見つめ、 「率直に言います。彼女を意識しすぎるのは止めてください。以前の明石特別で学んだ、前方集団を塊として見てください。そして自分の勝てるレースをしてください」 と強い語気で言い放つ。

4 21/08/16(月)01:49:19 No.835625809

これはトレーナーにとってある種の賭けでもあった。有力ウマ娘のことを彼女に話すこと。そして勝てるレースをしてほしいと念押しすること。 マーベラスサンデーが持つ、物見のクセ。走っている最中、他のウマ娘の様子を見すぎてしまう悪癖。それは依然として解消されていない。もし、走っている最中にサイレントジョイが気になってしまえば、自然と彼女の位置取りは追い込みのポジション、つまりバ群後方に位置せざるを得ない。そうすると最後の直線で差し切れるかどうかが勝負になる。しかし、骨折のリスクを避けるため、脚に負担のかかる芝コースでのトレーニングの回数を絞っていたこともあり、マーベラスサンデーには出せる最高速には頭打ちがあると、トレーナーは感じていた。さらに今回は1800m。マイルと中距離の境目ということもあり、自然と速度は速くなることが予想される。それであれば、追い込みウマ娘をマークし、後方につけるというのは、マーベラスサンデーの脚質には全くあっていないというのがトレーナーの考えだった。バ群先団-中団につけなければ勝機はない、と。

5 21/08/16(月)01:49:52 No.835625928

問題はこの情報を素直に渡して、マーベラスサンデーが素直に言うことを聞いてくれるか。この点にもトレーナーは迷いを感じていた。彼女の言う『マーベラスなレース』というのが、まだトレーナーには理解が出来ていなかったのだから。 少し心配そうな瞳の色を覗かせるトレーナーに 「大丈夫だよ☆」 とマーベラスサンデーは歯を見せて笑う。 「ちゃんと走ってくるから☆」 そう言う彼女の瞳を見つめ、 「お願いします!」 とトレーナーは頭を下げた。

6 21/08/16(月)01:50:19 No.835626043

打合せが終わった頃には、バ場入場をするいい頃合いの時間帯となっていた。 お互いパイプ椅子から腰を浮かせると、控室から地下バ道に向かうたため、控室を出ようとした。 「あっと」 トレーナーがドアを開けたところ、ドアの先、廊下の方から声がした。どうやらドアの先に誰かいたようだ。 「あ!すいません!」 トレーナーが謝った先に居たのは一人のウマ娘だった。どうやら彼女もエプソムカップの出場者らし。 「いえ…」 トレーナーの謝罪に短く返事をし、彼女の方を向いたその時だった。 「あ」 マーベラスサンデーが彼女の顔を見て声を上げる。 「ども…」 マーベラスサンデーに気づいたウマ娘も、彼女の顔を見て頭を軽く下げた。 その簡単な会釈だけで2人の会話は終わり、ウマ娘とそのトレーナーは地下バ道の方へと歩き去っていった。

7 21/08/16(月)01:50:35 No.835626102

「マベちゃん、知り合い?」 とトレーナーが聞くと 「うん。ユーヴィクトリーさん。同級生」 と一言。 「へぇ…」 とトレーナーが言葉を漏らし、それっきりで会話は終わった。 そして 「じゃ、私たちも行こっか」 とトレーナーが声をかけ 「うん☆」 いつもの笑顔を見せたマーベラスサンデーとトレーナーはともに地下バ道へと歩み始めるのだった。

8 21/08/16(月)01:50:55 No.835626176

「じゃ、行ってらっしゃい!」 「うん☆」 地下バ道までトレーナーはマーベラスサンデーを見送ると、マーベラスサンデーは元気いっぱいに駆け足でターフの方へ向かっていった。 途中、振り向いて手を振るマーベラスサンデーに、トレーナーも笑顔で右手を振り返す。 会場の光にマーベラスサンデーが飲み込まれ、姿を消すと、ようやくトレーナーは右手を下ろし、誰もいなくなった地下バ道を眺めていた。 これから自分の出来ることは何もない。後はマーベラスサンデーを信じるのみだ。そう思う彼女の胸にはまだ緊張の重さが残っていたが、 「よし!」 と自分に気合を入れるように声を出すと、観客席に向かうため、自分のウマ娘の晴れ舞台を見るために、地下バ道に背中を向けた。 その時だった。 「トレーナーちゃーん!!!」 彼女の背中の方から声がした。 「え?」 と振り向くと、一人のウマ娘が地下バ道から駆けてくる。紛れもなくそれは 「マベちゃん!?」 マーベラスサンデーだった。

9 21/08/16(月)01:51:48 No.835626345

「トレーナーちゃん!」 「何、どうしたの!?」 ひょっとして脚の具合が急に悪くなったのか、それともお腹の具合がさえないのか。そう彼女の脳裏に悪い不安が立ち込めたその時 「おしっこ!!!」 とマーベラスサンデーは叫んだ。 「へ?」 間抜けな顔をしたトレーナーに 「おしっこ!!!漏れちゃう!!!」 と足をその場でじたばたさせ、ちょっと焦った様子のマーベラスサンデー。 「はぁ!?」 「トイレ!!!トイレどこ!?」 と言う彼女を見て、 「も、もう何やってるの!こっちこっち!!」 とトレーナーは廊下を走りだす。

10 21/08/16(月)01:52:18 No.835626458

その後ろにマーベラスサンデーが続き、 「あったぁ!」 トイレの看板を見つけたことに安堵するマーベラスサンデーの声がトレーナーの後ろから響いた。 「ありがとー☆トレーナーちゃん☆」 「いいから!早くしてきなさい!」 「はーい!」 トイレの前までつくと、マーベラスサンデーは勢いよくドアを開け、トイレに入っていった。 「全く…」 久しぶりに走ったのだろう、息を整えながらため息をつくトレーナー。 それでも怪我でなくて、突然の疝痛でなくてよかった、と安堵する心地を彼女は覚えていた。 そして心に落ち着きを取り戻し始めると、 「…ん?」 続いてある違和感に彼女は襲われた。

11 21/08/16(月)01:52:41 No.835626531

何かがおかしいことに気づき、トレーナーはその場で記憶をたどり始める。 (地下バ道に背を向けたらマベちゃんが走ってきて、トイレに行きたいって言った) 何らおかしい所はない。 (走ってトイレに案内して、マベちゃんはトイレに入っていった) ここにもおかしいところはない。 ふと、マーベラスサンデーの入っていったドアを見つめるトレーナー。 「ぁぁぁあ!!!」 そして突然叫び声をあげた。 マーベラスサンデーが入って行ったトイレは男性用だった。それにようやく気付いたのだ。 「マベちゃん!?」 トイレ間違えてる!と言おうと、なりふり構わず男性用トイレのドアを開けたトレーナー。 その時彼女が見たものは 「え、どうしたの?トレーナーちゃん」 男性用小便器で立ったまま用をたすマーベラスサンデーの姿だった。

12 21/08/16(月)01:53:02 No.835626605

「な…ななななな!!!!!」 顔を真っ赤にして叫ぶトレーナーに対して 「もうすぐ終わるから待ってて」 と言い、マーベラスサンデーは、彼女を一切意に介することなく用を足す。 そして 「ふー……」 どうやらそれは終わったらしい。自動で水が流れ始める。 その様子をトレーナーはただ見ているより他になかった。口を大きく開けて、顔を耳まで真っ赤に染めたまま。 そしてマーベラスサンデーは大便器の方に入る。トイレットペーパーを巻き取る音がして、何かを拭く音が続き、最後に大便器から水を流す音がした。 マーベラスサンデーは何食わぬ顔で手を洗い、そして男性用トイレから出ていこうとした。 「トレーナーちゃん、ちょっとどいて」 と彼女は言い 「あっ…」 トレーナーを少し押しのけるように手を出し、そのまま地下バ道へ再び歩み始めた。

13 21/08/16(月)01:53:44 No.835626764

「あ…」 ようやく一連の流れに思考停止していたトレーナーが我を取り戻した。 そして 「マベちゃん!!!」 と叫び、彼女に追いつく。そして早足で歩むマーベラスサンデーと肩を並べて歩きはじめる。 「何?」 と聞き返すマーベラスサンデーに 「おしっこはあらかじめしてよ!」 とトレーナーは叫び、言葉を返す。 「うん☆これから気を付けるね☆」 「…じゃなくて!どこでおしっこしてるの!?」 「えへへ~☆」 「えへへ、じゃないでしょ!!!ちゃんと座って…じゃなくて!!!」 「あ☆トレーナーちゃん☆アタシちゃんと女の子だから安心してね☆」 「何言ってるのもう!!!」

14 21/08/16(月)01:54:14 No.835626871

顔を真っ赤にして起こるトレーナーと、どこ吹く風のマーベラスサンデー。二人は並びながら地下バ道への廊下を歩んでいく。 もうすぐエプソムカップが始まろうとしていた。

15 21/08/16(月)01:54:39 No.835626975

15時40分。 『さぁスタートしました!』 エプソムカップが遂に始まりを迎えた。 一周2083mの東京競バ場。1800mのレースである今回は、第二コーナーからのスタートとなり、参加した14人のウマ娘たちが一斉にコーナーを回っていく。 『内の方からフライングワイバーン!ぽーんと絶好のスタートを切りました!』 絶好のスタートを切った逃げウマに対し、マーベラスサンデーは七番手に位置取りをした。 『最後方の2人はサイレントジョイとオギノリアルクイーンであります!』 そしてトレーナーが有力ウマ娘と見たサイレントジョイは予想通り最後方。得意の追い込み策を取るようである。 『前半は先頭から最後方まで約15バ身といったところで向こう正面!最初の600m通過タイムは34秒から35秒!ちょっと早いペースでしょうか!?』 そしてあっという間に向こう正面。早め早めの展開でレースが進んでいく。

16 21/08/16(月)01:54:59 No.835627025

(よかった…これで後方の位置だったら、かなり苦しい展開になってたはず…) 観客席にてトレーナーはマーベラスサンデーの様子を見守っている。 バ群中段にて位置取りしているからいいものの、もしこんなハイペースで後方からの位置取りであれば、おそらく彼女にとってかなり不利なレースになっていただろう。 「こんにちは」 ターフを真剣に見守るトレーナーの後ろから聞きなれた声がした。 「あ!先生!スリゼローレルさん!」 彼女が振り向くと、そこには50台の女性トレーナーと春の天皇賞ウマ娘のスリゼローレルの姿があった。 いつもスリゼローレルの応援に駆け付けていたマーベラスサンデーとそのトレーナーであるが、今回はそのお礼も兼ねて、2人がマーベラスサンデーのレースの観戦に訪れたのだった。

17 21/08/16(月)01:55:27 No.835627131

「やってるわね」 とターフを見るベテラントレーナーに対し 「あ…トレーナーさん、あの子…」 とスリゼローレルが、ターフを走るウマ娘の一人に指をさした。 「あら、出てるのね。ユーヴィクトリーさん」 と、集団後方に位置取りするウマ娘の名前を出した。 そして 「勝負に出たわね」 「えぇ、本当ですね」 と、ベテラントレーナーとスリゼローレルは口々に話す。 「あの…」 意図が分からず、トレーナーは彼女たちに遠慮がちに声をかけた。

18 21/08/16(月)01:55:56 No.835627230

トレーナーも彼女のことを調べてはいた。今年は既に4走し、4戦3勝。しかし勝ったのは、1月にオープン戦・芝2500mの初春賞とG3レース・芝3200mのダイヤモンドステークス。2月にG3・2500mの目黒記念。いずれも2500m以上の長距離レースだった。そして負けたレースは、スリゼローレルが勝った芝3200mの天皇賞(春)。ここで7着だったのだ。つまり脚質は長距離型のステイヤーである。そのため、なぜ1800mのマイル・中距離の境目の本レースに彼女が挑むのか、トレーナーには理解できなかった。だからG2ウマ娘とはいえ、有力ウマ娘ではないと判断したのだが、どうやらベテラントレーナーとスリゼローレルには別の視点があるようである。 「ユーヴィクトリーさんの、『勝負に出た』って、どういうことか…教えてもらえませんか?」 とベテラントレーナーに質問する。 「多分調べてるだろうけど、あの子中長距離向きなのは気づいた?」 「あ!はい!」 「それともう一つ。今まで勝ったレースの特徴があるんだけど、それには気づいた?」 「…いえ」 少しうつむき気味に話すトレーナーに、ベテラントレーナーはやさしく微笑みかける。

19 21/08/16(月)01:56:14 No.835627295

そして 「東京競バ場。左回り」 と一言言葉を掛けた。 「今年、ユーヴィクトリーさんが勝った新春賞、ダイヤモンドステークス、そして目黒記念。全て東京競バ場のレースなの。それとあの子、左回りのレースに滅法強いみたい。今回のエプソムカップは本来の距離適性を無視しているように見えるけど…、あの子なりの賭けなのね。これで好成績なら、コースを限定すればどうにか1800mまでは走れるって証明になるから」 その考えを気かされてトレーナーははっとした。マークをすべきウマ娘がもう一人いたかもしれないと、心に焦りを感じながら。 そしてターフに目を移すと、すでにレースは佳境に差し掛かろうとしていた。

20 21/08/16(月)01:56:29 No.835627374

『おおっとここでサフラングローリーが先頭に変わります!二番手はフライングワイバーン!』 第三コーナー手前で順位変動が起こった。 逃げウマがコーナー手前でスピードを緩め、最後の直線に向け足を溜め始めたのである。 『マーベラスサンデー!ぐぐっと上がっていく構えです!』 逃げウマとは対照的に、位置取りを押し上げようとするマーベラスサンデー。第三コーナーを回っているにも拘わらず、そのライン取りに乱れはない。 そして第三・第四コーナーの中間点。大ケヤキを超える手前。徐々にバ群が縮まり始める。 第四コーナーを走るころにはすっかりウマ娘たちが一塊に密集する。 マーベラスサンデーは周りを見て心をときめかせる。 (もうすぐ直線…!マーベラスなレースをしようね…☆) 初めてのG3レースへの期待を抱え、マーベラスサンデーの目の前に東京競バ場の広く長いホームストレッチが姿を現した。

21 21/08/16(月)01:56:51 No.835627448

マーベラスサンデーは外に抜け出す。前には誰もいない、絶好の位置取りをである。 (あーもう!) (やられた…!) 後続のウマ娘がほぞをかむ。 密集したバ群がストレートを向けば、あとは一直線に駆けるだけ。そのために重要なのは、いかに早く直線に向き、自分の足色を輝かせられるか。 つまり位置取りと向き変えが最も重要になる局面。マーベラスサンデーはトレーナーの言うことを守り切った結果、絶好の位置取りを手にすることができた。 『直線コースに向いて!サフラングローリー先頭でありますが!後は横に広がりました!!!』 そして後続のウマ娘たちは外に外に対応し、横いっぱいに広がっていく。 『続いてプライムシアターが上がっていこうとしている!!!』 内側から抜け出したのはプライムシアター。 『そして!外を通ってマーベラスサンデー!!!』 そして中を割って走り出したのはマーベラスサンデー。

22 21/08/16(月)01:57:23 No.835627567

(いっくよォォーッ☆☆☆) その構えは低く、足色が強く輝く。まさに直線巧者の構えである。 『マーベラスサンデーが一気に駆ける!一気に坂を上り切りました!!!』 有り余ったスタミナで、坂を上り切り他のウマ娘たちをごぼう抜きにするマーベラスサンデー。 『残り200を切った!残り200!!!マーベラスサンデー先頭!!!プライムシアター2番手粘れるか!?』 後続のウマ娘も必死に走るが、マーベラスサンデーの末脚に何とか食らいつくのが精いっぱいの様子である。 そんな中である。 『ここでユーヴィクトリー!!!ユーヴィクトリー!!!この距離でもユーヴィクトリーが伸びてきた!!』 大得意の東京競馬場・左回り。ステイヤーの看板を蹴り飛ばし、なんと伸びてきたのはユーヴィクトリー。 (この距離でも走りきる!!!) 末脚を炸裂させ、マーベラスサンデーのすぐ後方までつけた。 『前が変わるか!前が変わるか!マーベラスサンデー僅かにリード!!!』 その様子をマーベラスサンデーは背中から感じている。すぐ傍まで迫られている、左回りの申し子に。

23 21/08/16(月)01:57:42 No.835627628

しかしそのプレッシャーも彼女にとって心地いいものだった。1800mという距離。実はもう彼女には短すぎる距離だった。脚に負担を掛けないように多めに行ってきたトレーニングはプールと坂道。プールは心肺機能を増強させ、スタミナを伸ばしていた。坂道トレーニングは筋肉量を増やし、瞬発力とトルクを伸ばしていた。だからもうこの状況でも、レースの最終局面でも、彼女には余裕が十分あった。 目の前にゴール版が迫る。背中から懸命に走るウマ娘の鼓動が聞こえる。 そして 「マーベラァァァス☆☆☆」 彼女はゴール版を駆け抜け笑顔で叫ぶ。  『マーベラスサンデー!!!一着でゴールイン!!!』 マーベラスサンデーは一着でエプソムカップを終えた。二着のユーヴィクトリーとの差は1/2バ身差だった。

24 21/08/16(月)01:58:05 No.835627698

会場に大歓声が巻き起こる。 そんな中、マーベラスサンデーのトレーナーは、口をぽかんと開けてただターフのウマ娘を見ていた。 「やったわね、マーベラスサンデーさん」 そう話しかけるベテラントレーナーの言葉も耳に入ってないようである。 「貴方」 とベテラントレーナーに、右肩をとんとんと叩かれて 「……やった」 と低い声を出したのもつかの間 「やったやったやった!!!やったぁぁぁぁぁああああ!!!!!」 笑顔になった彼女は大声をあげて大はしゃぎし始めた。 初めてG3レースに挑戦し初勝利を得たのである。そのはしゃぎようは全力のもの。 「マーべちゃーん!!!マベちゃーーーん!!!!!」 満面の笑顔でターフに向かって手を振る若きトレーナー。 そんな姿をあきれるように、そしてどこか懐かしむようにベテラントレーナーは微笑み、腰に手をやりその様子を見ていた。

25 21/08/16(月)01:59:09 No.835627935

そんな中 「あの、トレーナーさん」 スリゼローレルがベテラントレーナーに話しかけてきた。 「次のレース、申し訳ないですけど秋の天皇賞でお願いできませんか?」 その言葉に続けて、ターフを見るスリゼローレル。その視線の先には、観客に手を振るマーベラスサンデーの姿があった。 「マベちゃんが…私との約束を今年、果たしてくれそうなんです」 約束。それは彼女が両足を骨折した時にマーベラスサンデーと交わしたもの。いつか一緒に春秋両方の天皇賞に出るというもの。 スリゼローレルからのに苦笑したベテラントレーナーは 「分かったわ。あの話は来年に考えましょう」 と言葉を返し 「ありがとうございます!」 とスリゼローレルは満面の笑みを見せたのだった。 こんな話を私は読みたい 文章の距離適性があってないのでこれにて失礼する

26 21/08/16(月)01:59:21 No.835627976

fu252602.txt

27 21/08/16(月)02:08:05 No.835629626

良いね

28 21/08/16(月)02:16:54 No.835631339

全然分かんないから原作調べてから出直してきます

29 21/08/16(月)02:28:44 No.835633358

レース描写が濃厚なのすごくいい…

30 21/08/16(月)03:30:31 No.835641886

マベちゃんまさかの男子トイレで立ちション!! それはマスいよマベちゃん!! (原作では以降ルーティン化します)

31 21/08/16(月)03:47:42 No.835643552

おしっこネタはそう解釈したか…

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