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    21/08/13(金)00:31:29 No.834303008

    4月中旬、阪神競バ場。 土曜日、第10レース。明石特別。芝2000m。 天候は晴、バ場は良。 マーベラスサンデーはこの日、阪神競バ場のターフの上に立っていた。 度重なる怪我によりクラシックのシーズンをすべて棒に振った彼女。今回のこのレースだが、前回の走ったゆきやなぎ賞から一年一か月ぶりのレースである。 ゲートに入ってふと彼女はぼんやりと控室にてトレーナーに言われたことを思い出していた。 「まずは、無事に完走することを目標としてください」 彼女からの指示はそれだけだった。実戦経験に乏しいトレーナーからすれば、特にアドバイスする事がなかったのかもしれないが、それ以上に怪我が多かった彼女の事を思ってだろう、そのような言葉が第一に出たのは。

    1 21/08/13(金)00:32:39 No.834303473

    (マーベラスなレース…できるといいなぁ…) そんな彼女の言葉をかみしめつつも、彼女はレースに対してぼんやりとした期待を抱いていた。。ターフの上に輝く晴天。そしてただよう雲を見ているうちに、少し冬の残り香を乗せた風が彼女の身体を抜けていく。 その風の冷たさを感じるうちに 『さぁ、ゲートが開いた!』 明石特別が幕を開け、ウマ娘たちが一斉に走り出した。

    2 21/08/13(金)00:32:56 No.834303559

    今回のレースの参加者は15人。ゲートを出たマーベラスサンデーは十一番手につける。今回は差しでレースを展開する予定のようである。マーベラスサンデーは前を走るウマ娘をぼんやりと俯瞰する。ホームストレッチを抜け、第一コーナーに入っていく。 『さぁ先頭はミーティアハンター!ミーティアハンターがレースを引っ張ります!続くのはターフレインボー!三番手にゴールデンタイムがつけています!しかしバ群は一塊!これからの展開はどうなるのでしょうか!』 実況が叫ぶ通りだった。 逃げウマのポジションとなったウマ娘がレースを引っ張るものの、そこまで全体の足色に変化はない。誰もが様子を見ているような、そんな展開だった。 そしてそれは第二コーナーを抜け、向こう正面に入っても変わらなかった。全員が全員、順位をほぼキープしてターフを走り抜けていく。

    3 21/08/13(金)00:33:15 No.834303656

    (なんか、妙ね…) 観客席からレースを見ているトレーナーはその展開を見て、違和感を感じていた。向こう正面のホームストレッチ。それは格好の位置取りを上げるポジションにも拘わらず、順位変動があまり起こっていない。それに頭をひねりながらレースを観戦する彼女。 (順位がそんなに変動しない…。つまり、ここで位置を上げる必要がない…ってこと?) 自分なりに考えを整理しはじめる彼女。レースの折り返しで皆が順位を上げる必要がないと考えるのはどういうことか。 (逃げウマのミーティアハンターさん…彼女がペースを作っているようだけど…、彼女がばてるのを待っているということ?) だがそれにしては妙なのだ。後続のウマ娘も順位を上げようとしていない。 全てのウマ娘が順位をキープして走っている状況、そして後続が順位を上げようとしない状況。それを頭の中で考えるうち 「あ!」 トレーナーはようやく何かに気が付いた。

    4 21/08/13(金)00:33:55 No.834303925

    (マベちゃん!気づいて!!!) そして身を乗り出し、ターフのマーベラスサンデーを必死に見つめる。 (このレース…ほとんど差しウマの子ばっかり!!!) 順位を中間地点で上げようとしない。なおかつ自分のペースを保ち様子を伺うウマ娘。最後に差し切るつもりで走るウマ娘ばかりがそろえば、当然順位変動は起こるはずはない。最後で力を出し切ればいい。皆がそう考えるのであれば、仕掛けるタイミングはほぼ皆同じになる。 それは、第四コーナーを抜けた後のホームストレッチ。ここで、最後のストレートで、当然ウマ娘たちは全力で駆けだすだろう。その時出来るものは何か。トレーナーはそれを容易に思い浮かべることができた。ウマ娘が横いっぱいに広がるウマ娘の壁である。 現在15人中、十二番手で走るマーベラスサンデーにとって、最悪の位置取りとなっていた。

    5 21/08/13(金)00:34:12 No.834304044

    『さぁ、第三コーナーから第四コーナーへ差し掛かります!ミーティアハンター!依然として先頭!しかし後続も虎視眈々と様子を伺っています!』 相変わらず順位変動は起こらず淡々とレースは進む。 そんな中、十二番手を走るマーベラスサンデーはどこか迷いのある気持ちを抱いていた。 前を走るウマ娘たちに差しウマが多いことは彼女も気づいていた。しかし、誰をマークすればいいのか分からない。 皆が皆、体力が余っているように見える。そこそこの実力があるように見える。 (あの子かな) 目の前のウマ娘を見ては (この子じゃない) と思い (じゃあこの子かな) と別のウマ娘を見ると (この子も…違う) そう彼女が視線を泳がせている間に、第四コーナーを抜け 『さぁ、ここからはホームストレッチ!残り400mを切りました!』 遂にホームストレッチ、最後の勝負の舞台が目の前に迫っていた。

    6 21/08/13(金)00:35:14 No.834304449

    『先頭は未だミーティアハンター!ミーティアハンター!!!』 先頭のウマ娘がなおも粘り、ゴール目指して加速する。 (分かってんだよ!みんな差すつもりだんだろ!!!) ミーティアハンターは心の中でそう叫び、全力で直線を駆け抜け始める。逃げウマである彼女ですら気づいていた。後続が差しウマばかりだと。 予想以上の逃げウマの粘りに後続の差しウマたちがより一層の加速をし飛んでくる。 しかし (あーもう邪魔!) (もー!前走んないでよ!) 皆が皆懸命に走る反面、差しウマであるということ。それはラインどりをするため直線が大混戦になり、結果としてウマ娘達はターフに対して横いっぱいに広がっていく。 『ミーティアハンター!逃げる逃げる!後続のウマ娘たち、広く広がって!皆が皆!差す構えです!』

    7 21/08/13(金)00:35:54 No.834304704

    そんな中で抜け出したウマ娘が2人いた。 『突っ込んできたのはアドマイヤヒロイン!そしてミラーズナイン!』 しかし 『ミーティアハンター!粘る粘る!』 逃げ切ってやるという根性の走りであごを上げながら走るミーティアハンター。 『残り200mを切った!ここからは坂!ここからは坂がある!』 先頭集団が200mに入り、坂道を登り始めたその瞬間だった。 『おおっとここで!マーベラスサンデー!マーベラスサンデーもいい脚で伸びてきた!』 ようやく先頭目指して加速し始めたマーベラスサンデー。 「ち、ちくじょ~~~」 遂にミーティアハンターがスタミナ切れを起こしスピードが落ち始める。

    8 21/08/13(金)00:36:17 No.834304851

    その瞬間 『先頭変わった!ミラーズナイン!続いてアドマイヤヒロイン!』 先頭集団の順位変動がついに起こった。 (間に合え!間に合え!!!) そしてそれに縋りつくようにマーベラスサンデーも加速をつづける。 200mを切り坂道が立ちはだかっても、彼女の足色は衰えなかった。 後続のウマ娘をどんどん引き離し、四位まで浮上した。 しかし 『ミラーズナイン!一着でゴール!!!』 マーベラスサンデーは間に合わなかった。 彼女は一年と一ヶ月ぶりのレースを四着で終えた。

    9 21/08/13(金)00:36:52 No.834305070

    控室にて。 「お疲れ様でした」 ターフから帰ってきたマーベラスサンデーを出迎えたトレーナー。タオルを彼女に差し出し、やさしく声をかけた。 そして 「どうだった、久しぶりのレース」 と問うと、マーベラスサンデーはにっこり笑い 「消化不良☆」 と言い放った。 その言葉に一瞬ぽかんと目を見開いたトレーナーだったが 「…ふふ」 とうつむいたのもつかの間 「あはははは!!!」 と声を上げて笑い始めた。 「えへへ~☆」 それに応えるようにマーベラスサンデーもへらへらと笑う。

    10 21/08/13(金)00:38:15 No.834305625

    ターフから帰ってきたマーベラスサンデーの息は荒れていなかった。足にも異常があるようには思えない。つまり体にはまだまだ余裕が残っており、体も健康そのものだ。そして最後に見せた、十二番手から四番手まで急浮上した、疾風のような末脚。もし位置取りさえ間違えなければ間違いなく一着だっただろう。一着は取れなかったものの、それが十分わかったレースだった。 また、何よりも久しぶりのレースを無事に終えられたことが、どこか彼女たちに穏やかな雰囲気をもたらしていた。ようやく、怪我という呪縛から少しだけ解放された気分に2人は包まれていた。 「あー…」 ひとしきり笑ったトレーナーだったが 「まずは、完走ありがとうございました。次は一着がとれるよう頑張りましょう」 と声をかける。 「うん☆…と言うよりね、トレーナーちゃん」

    11 21/08/13(金)00:38:41 No.834305795

    「今回、誰をマークすればいいか分かんなかったの。でも最後の直線で気づいたんだ。誰もマークする必要はなかったんだって。だってみんな同じように走ろうとしてるんだもん。こういう時は、前で走る娘たちを『集団』もしくは『塊』として見ればよかったのにね」 と、淡々と話した。 その時、トレーナーは改めて気づかされた。 (この子の一番の長所は…頭の良さだ) と。 レース経験は少ないとはいえ、今回のレースを除くと、彼女は前をふさがれたことがない。コース取りがとにかくうまく、タイミングが速すぎる加減速や、掛かりを起こしたこともない。 そして、すぐに自分のレースを振り返り、次に向かって反省できる。

    12 21/08/13(金)00:39:28 No.834306090

    そんな彼女を見て 「その調子です。次のレースは5月上旬の鴨川特別です。頑張りましょう」 と、トレーナーは声をかけた。 その言葉にすぐさまマーベラスサンデーは 「うん☆次はマーベラスなレースにしたいな☆」 と満面の笑顔をトレーナーに向けたのだった。 こんな話を私は読みたい 文章の距離適性があってないのでこれにて失礼する fu243402.txt

    13 21/08/13(金)00:49:17 No.834309849

    おい待てェ 次回も楽しみにしてます

    14 21/08/13(金)00:53:07 No.834311304

    もしかしてオリレース?