虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。新しいログはこちらにあります

21/08/10(火)21:53:40 死ぬか... のスレッド詳細

削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。

21/08/10(火)21:53:40 No.833482858

死ぬかもしれない。 耳に響く鉄板を焼き焦がす音を耳にしながら、覚悟をする。 周りを見やれば青い顔をしたゴルシやドリジャ達が正座をしていた。 目の前にはちゃぶ台と人数分の茶碗や皿が並んでいる。 視線をそっと音の発生源に向ければ、 「……あ”、なんだよトレちゃん。大人しく待ってろって」 眉根を寄せてフライパンを振るうリョテイに睨みつけられた。 全てのコンロに鍋やフライパンがかけられ、電子レンジも稼働中。 分かったと呟き、俺はまた視線をちゃぶ台に落とした。 こっそり横目を向けると、みんな項垂れたまま口を閉ざしている。

1 21/08/10(火)21:55:52 No.833483835

手持ち無沙汰にも関わらずフェスタもドリジャもは青い顔をしてスマホを弄らず。 オルフェに至っては若干泣きそうになっていた、分かるよ。 台所から鍋とお玉が擦る音が届き、リョテイが振り返った。 「おい、そろそろ料理が出来るからな」 「「「「「は、はい!」」」」」 声が揃う、そして俺達の気持ちも今一つだろう。 どうしてこうなった、だ。 恐る恐る顔を上げて、リョテイの背中に声をかける。 「な、なぁリョテイ? 何か手伝おうか?」 「そ、そうだぜオヤジ! 後は――――」

2 21/08/10(火)21:56:33 No.833484116

「うるせぇ! 大人しくしてろ!!」 一喝され、俺は立ち上がりかけた膝をまた正座に戻した。 手伝おうかと言っただけなのに……怖い。 何故リョテイが料理を作っているのか? ぼんやりとこうなった原因、今日の昼を思い出す。 先日の罰ゲームとして俺が作った弁当を皆と中庭で食べていると、 『甘やかしてばかりいると、料理一つ作れなくなるんじゃない?』 通りかかったトプロがそんな事を言ったのだ。 怒ったリョテイは噛みつく寸前だし、ゴルシ達は余計なお世話だと騒ぎ出す。 色々と彼女とは因縁があるのは分かっている。

3 21/08/10(火)21:57:53 No.833484682

が、ディクタさんから『よろしくな♪』と言われている以上、騒ぎも好ましくない。 見守っていたかったが、立ち上がって両者の間に割って入る。 『いいんだよ、リョテイが出来ない事をサポートするのが俺の役割だ』 確かそんな事を言ったと思う、そして地雷を踏んだ。 思えば兆候自体はあった。 たしかフェスタとかが『出来なくても問題ねーよ』等と言った時点で無言だったし。 すっくとリョテイが何も言わず立ち上がると、俺の襟を掴む。 『えっ? おいどうしたんだ?』 『……いいから来い。フェスタにゴルシ、おめぇら全員もだ』 低い、押し殺した声に俺達は無言で頷いた。トプロは放置された。

4 21/08/10(火)21:58:37 No.833484988

そのまま昼休憩中にスーパーまで車を出さされて買い出しをして、 「そして今がこれか……」 「おら、てめぇら食え」 叩き付けるようにリョテイが机に料理皿をどんどん並べる。 明らかに怒っている彼女が出すブツだ。 どんな罰なのか、オルフェ達と恐る恐る皿を覗き込む。 「……回鍋肉に棒棒鶏、炒飯?」 「中華料理、だよな?」 顎に手を当てたゴルシが思っていた事を口にしてくれた。 他にもいくつも料理が出されて、どれも美味そうに見える。香りも良い。 束ねた髪をかき上げると、リョテイがどっかりとソファーに寝ころんだ。

5 21/08/10(火)21:59:10 No.833485210

「何ぼーっとしてんだ。冷める前に食え……埋めるぞ」 「「「「「いただきますっ!!」」」」」 脅しに屈したわけじゃないけど一斉に手を合わせた。 料理が冷めたら作り手に失礼だからね! 思い思い好きな料理を取り皿に盛っていく、が量はまちまちだ。 俺が一番多いし……あれ、皆こっちを見てる? 「トレちゃん、トップバッターだぜ! ナイスなコメント期待してっぞ!」 全員を代表するようにゴルシがいい笑顔を浮かべて親指を立てた。 あ、一番槍というか毒味役ね。 ウマ娘達からの懇願の視線に苦笑しつつ、意を決して料理を口に放り込む。 頼むリョテイ! 食べられる範囲の辛さとかであってく――――ん?

6 21/08/10(火)21:59:45 No.833485456

「……美味い」 「え?」 「これ凄く美味しいよ、うん。リョテイ、凄く美味しい」 美食コメントを求められたが、けどそれ以外に言葉がなかった。 ソファーに目を向けるが、リョテイはこっちに背を向けて振り返らない。 彼女の背中から机へと視線を戻すと、ドリジャ達が顔を見合わせていた。 そして頷くと一斉に料理に手を伸ばす。 「マジだ、美味いぞコレ?!」 「……ホントっスね! 肉も多くて助か、ってドリジャてめぇ!!」 「早い者勝ちよ」 「隠し味は何だ? 市販の調味料じゃねぇな……こりゃ果物、か?」 「ほらほら喧嘩するな」

7 21/08/10(火)22:00:17 No.833485671

リョテイが作った料理を求めて争うウマ娘達を仲裁する。 幸いな事に全員がそこそこ満足できる量はちゃんと用意されていた。 というかウマ娘数人が満腹になる量を一人で賄うのは難題だろう。 皆に満遍なく行き渡るよう配膳し、俺も料理に舌鼓を打つ。 ……うん、美味いな。 目隠しされてリョテイと料理屋の味比べをさせられたら、俺じゃ区別がつかない。 戦場もかくやという位ギャーギャーと騒ぎながら、料理を消化していく。 「――――てめぇら美味いか?」 いつの間にか笑みを浮かべたリョテイが寝そべったまま俺達を眺めていた。 ちゃぶ台を囲む俺達を、頬杖をついた姿勢で睥睨するのは様になっている。 見下ろすリョテイに対し、俺は笑顔で首を縦に振った。

8 21/08/10(火)22:00:37 No.833485782

「ああ、凄く美味い! 作ってくれてありがとうな!」 「そいつはよかった。で、だ」 少しだけ表情を綻ばせるが、すぐにリョテイはジト目に戻った。 あ、あれ? なんかまだ機嫌悪い? そこでふと何故こんな事になったのか原因に思い至り、 「てめぇらよぉ~、なーんかオレに言う事があるんじゃねぇか?」 憮然とした顔でリョテイが小さく首を傾げた。 食事を止めて全員が一斉に顔を見合わせ、そして頷く。 皆と共に箸を机に置くと、ソファーの前に正座して並んだ。 「「「「「料理できないとか言って、ごめんなさい」」」」」 「よし」

9 21/08/10(火)22:01:34 No.833486182

土下座する俺達に、リョテイのお許しがかけられる。 あっさり溜飲が下がったのを疑問に思っていると、頭をしばかれた。 「いつまでアホな事やってんだ、料理が冷めちまうだろうが」 言うだけ言うとリョテイはまたソファーに腰かけた。 視線で促されるまま、俺達も食事を再開する。 指摘通り料理は少し冷めていたけど、やっぱり美味い。 同じ事を思ったのだろう、ゴルシがリョテイに振り返る。 「オヤジ~料理出来んのに、なんで外食ばっかだったんだ?」 「……別に。作る気分じゃなかったってだけだ」 疑問に思う俺達の視線から逃れるように、リョテイは天井を仰いだ。

10 21/08/10(火)22:03:02 No.833486784

「……なぁお前ら、美味いか?」 「あ、ああ。そりゃ美味かったぜ」 問の意味が分からず、こわごわとフェスタが代表するように頷いた。 この返答が正解かどうかわからないのだろう。 理知的とはいえ、ちょっとだけリョテイは気難しい。 だから見えないところに地雷があったりもする。 でも今回は違ったらしい。 「そうか……今回は上手く出来てたか。なら、それで良い」 「へ?」 「これからはまた気が向いたら作ってやるよ」 素っ気なく呟きながら、肩の荷が下りたように優しくリョテイが微笑んだ。

11 <a href="mailto:s">21/08/10(火)22:04:40</a> [s] No.833487496

シルバーコレクター会会長のリョテイは大体の事はそつなくこなせるよねって妄想 それでは一旦失礼する

12 21/08/10(火)22:05:18 No.833487782

素晴らしいよオヤジ…

13 21/08/10(火)22:05:49 No.833488003

出来なくても陰ながら努力してできるようにしちゃうのがリョテイ

14 21/08/10(火)22:10:16 No.833489936

かわいい...

15 21/08/10(火)22:15:16 No.833492235

休日におかんが出掛けて急に料理を作り出すオヤジっぽい

16 <a href="mailto:s">21/08/10(火)22:15:52</a> [s] No.833492512

料理をそこそこ程度に作れるのは大した理由じゃない。 昔、料理の練習をした事があったからだ。 食わせたかったのは……親父とお袋だった。 今思えば赤面もんだし、バカな真似は止めとけというだろう。 けどガキのオレは本かなんかで『そーいう話』を知ってやりたくなった。 で、お付きの連中に付き合わせて料理『っぽい』物を作ったっけ。 意気揚々と親父たちに見せて、さぁ食ってくれと自信満々で言ったな。 食堂に呼び出されてアレを見せられた時の顔は一生の思い出だ、笑える。 しばらく二人は顔を見合わせ、無言でオレの初料理を口にした。 一通り食べた後、なんて言ったと思う? 普通は褒めるだろ。けど、

17 21/08/10(火)22:17:22 No.833493181

『……不味い』 『料理くらいシェフに作らせればいい』 呆れるように一言ずつ残して、あいつらは去っていった。 ……あの屈辱はそうそう忘れられるもんじゃねぇ。 だから見返してやろうと、必死になって練習したさ。 けど結局仕事や進学の都合でもう一度食べさせる機会はなかった。 そっからは色々ごたごたして、実家自体からだいぶ遠ざかちまったし。 こんな素人レベルだが、こいつらが美味いと思ってくれたなら……まぁいいだろう。 「また気が向いたら作ってやるよ」 「そっかー……俺は毎日でも食べたいけど、仕方ないな」 「ブッ!?!?」

18 21/08/10(火)22:18:41 No.833493789

不意打ち気味に呟かれたトレちゃんの言葉に思わず噴き出した。 えっ……ま、毎日食べたい!? オレの料理を!? おべっかや太鼓持ちかと思ったが、かなりの本気顔だ。 ……そんなに気に入ってくれたのか。 あ、ちょっと顔が熱い。ヤバ、多分赤くなってる。 慌てて顔を背けるが、遅い。 一瞬だが満面の笑みになったゴルシ達の顔が見えた。 「いや~本当美味ぇよ、アタシの焼きそばに並ぶ美味さだぜ」 「ほんとほんと、毎日食べられる奴は幸せもんだ」 聞こえるように囃し立てるゴルシにフェスタ……て・め・ぇ・ら!

19 21/08/10(火)22:19:12 No.833494017

む!

20 21/08/10(火)22:19:58 No.833494384

アーイイ...

21 21/08/10(火)22:20:00 No.833494405

もっといちゃいちゃしろ…

22 21/08/10(火)22:20:24 No.833494580

拳を握りしめ堪えるが、調子に乗ってドリジャやオルフェも加わり出す。 いくら温厚でトレちゃんの前でも流石に堪忍袋の緒が切れた。 クッションに腕を叩き付け、ソファーに立ち上がる。 「またって言っただろうが! 明日か来年か、十年後か知らねぇけどな!」 ついでに言えば、アホ共には一分後もねぇがな! 腕捲りしつつソファーから飛び降りると、バカな舎弟共が息を呑んだ。 どう料理してやろうかと思案していると、トレちゃんが苦笑する。 「分かった分かった。それでいいよ」 「あん?」 「だから――――また作ってくれるその日を楽しみにしとくって話だろ」 ――――……へっ?

23 21/08/10(火)22:21:04 No.833494884

真顔でぬけぬけと言うトレちゃんの顔を、オレはまじまじと見つめた。 こいつ、今自分が何言ったか分かってんのか? 「じゅ、十年後かも知れねぇぞ!」 「じゃあ十年後を楽しみにしとくよ」 「~~~~っ! お、おう! そうしろ!」 上擦り気味そう言うのが、精一杯だった。 十年後を、ってことはつまり、それまで一緒に居ていいって訳で!? 思考が錯乱していると、トレちゃんにそっと手を曳かれた。 敷かれた座布団の上に、ぽすんと座り込む。 「ほらリョテイも一緒に食べよう、って作ったのはリョテイだけど」 「いやオレは別に……」

24 21/08/10(火)22:22:41 No.833495678

「夕飯作るだけで食べてないだろ。一緒に食べた方が美味いよ」 笑いながらトレちゃんが箸と皿を差し出すが……オレは顔を背けた。 困惑する顔を横目にしつつ、口を開く。 「……回鍋肉」 「え?」 「だから回鍋肉!」 叫ぶように告げて、ようやくトレちゃんは理解したらしい。ったく。 箸で運ばれてきた肉料理を雛のように口にし、咀嚼した。 自分で作った物だから分かるが、やっぱり高級中華より味は落ちる。 けど昔とは何かが違う気もして、 「……まぁ、そこそこ美味い、かな」

25 21/08/10(火)22:23:50 No.833496208

「そこそこか? 俺は凄く美味しいと思うけど」 「なら次はもっとスゲェのを食わせてやるよ」 「ん、楽しみに待ってるよ」 「っ……あ! 炒飯くれ」 何か失言した気がしたので、慌てて次の料理を催促する。 鈍いトレちゃんは何も気付かず、言われるがままだ。 こっちのペースに合わせて食べさせて貰いながら、ふと思う。 間に合わせの素人料理。それでも昔よりは上手くなったのだろうか? ――――今度の長期休暇は、実家に帰ってみるか。 久しぶりにトレちゃんや、よければゴルシ達を連れて実家に行くのも悪くない。 そして親父に料理を食わせてやっても良いかなと、思った。

26 21/08/10(火)22:24:12 No.833496368

    ((((な、何を見せられてるんだ……? 甘ったるくて胸焼けする……))))    

27 21/08/10(火)22:24:26 No.833496492

リョテイ…幸せになれ…

28 21/08/10(火)22:25:41 No.833497023

いいねぇ…なリョテイさんがどんどん出てくる

29 <a href="mailto:s">21/08/10(火)22:26:01</a> [s] No.833497168

これで幻覚は全て出したので失礼する 分かり難いけど隠れ萌えポイントは『例の気性』で知られるリョテイの両親が 不味そうな料理を無言で最後まで食べて、素直な感想を言った部分です

30 21/08/10(火)22:26:03 No.833497182

日曜日な親父もこれにはにっこり

31 21/08/10(火)22:26:15 No.833497259

このトレちゃん随分強いな

32 21/08/10(火)22:28:00 No.833497998

強くないとリョテイのトレちゃんは勤まらない

33 21/08/10(火)22:29:22 No.833498569

ありがとうトプロ…

34 21/08/10(火)22:29:52 No.833498761

中華料理ってこんなに甘ったるい味するんだな…また見たくなる不思議な味わいだ

35 21/08/10(火)22:30:15 No.833498938

リョテイのトレちゃんは何度騙されてもプールに飛び込む熱血漢だし

36 21/08/10(火)22:31:48 No.833499604

両親はまあうん…常人と感覚が違うから…

37 21/08/10(火)22:32:07 No.833499755

何度でも助ける 何度でも愛を囁く リョテイのトレーナーとはそういうものだ

38 21/08/10(火)22:32:11 No.833499785

ナチュラルにお嬢様

39 21/08/10(火)22:32:52 No.833500089

トレちゃんがリョテイ特効すぎる

40 21/08/10(火)22:35:21 No.833501141

リョテイはいいお母さんになるよ…

41 21/08/10(火)22:35:39 No.833501251

トプロは毎回いいアシストしてくれるな…

42 21/08/10(火)22:37:30 No.833502100

原作じゃアレな仲だけどウマ娘世界だとトプロとは、ゴルシとジョーダンみたいな関係なんだろうな

43 21/08/10(火)22:41:10 No.833503671

なんで自然とオヤジ呼ばわりされてなんの違和感もないんだろうな…

44 21/08/10(火)22:41:33 No.833503837

ステイゴールド君ですよね?

45 21/08/10(火)22:41:43 No.833503900

リョテイは中華料理似合うな…

46 21/08/10(火)22:49:41 No.833507144

……………

47 <a href="mailto:s">21/08/10(火)22:51:08</a> [s] No.833507739

>リョテイはいいお母さんになるよ… 「ってな訳でよぉ、最近ガキ共の進路に悩んでんだよ」 「は、はぁ大変ですねリョテイさん」 「し、心中お察しします」 相槌を打つスぺとグラスに「だろ?」と溜息を吐いてみせる。 そろそろトレセン学園への進学も視野に入る歳になったガキ共。 トレちゃん……もとい旦那は自主性に任せるって言ってるけど、 「あいつらクソガキだからなぁ。ったく誰に似たんだか」 たぶん遊びに来るゴルシ達の影響だな、今度〆るか。 仕置きを決意していると、二人の料理皿が目に留まる。 「おいオレの奢りだから遠慮せず、もっと食えよ」

48 21/08/10(火)22:52:24 No.833508280

「「い、いえ大丈夫です!!」」 「そ、そうか?」 ((い、言えない……リョテイさんの前だと食欲が落ちるだなんて言えない)) おしまい

↑Top