21/08/10(火)02:07:54 「えっ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1628528874267.jpg 21/08/10(火)02:07:54 No.833221568
「えっ、じゃあマックイーンのトレーナーさん此処でも働いてるんですか?」 「んだ。住み込みの使用人としてこちらでご厄介になってますです。寮費もかからねっし、おかげさまで人生で初めて十三人の兄弟みんなにクリスマスプレゼントを買ってやれましただよ」 「じゅ、十三人…」 メジロ家でご厄介になって、もうあっという間に一週間以上が経とうとしていた。何故だかマックイーンのトレーナーなのにメイド姿で毎日見かけるのでふと思い切って聞いてみると、そんな答えが返ってきた。 マックイーンのトレーナーであり、メイドであり、運転手でもあるこの人はまさに四六時中、担当と一緒で中々なハードスケジュールをこなしているようである。 「メジロ家である私のトレーナーでもあろう方が、こんな壁に穴が開いているような部屋で寝泊まりなんて。とその日のうちに決めてしまったんですだ。きっとほっとけなかったんですだな、優しい方ですだ」 そういうと、トレーナーさんはアタシたちが腰かけている広い庭園の噴水の縁から、手伸ばして中の水をかき混ぜるように動かすとため息を吐いた。
1 21/08/10(火)02:09:28 No.833221866
「ジャパンカップ、勝たせたかったんだけんどなぁ」 ジャパンC、それは数日前に行われた海外からも招いて行われる強豪ウマ娘たちが集まる国際レースだ。マックイーンもそれに参加したんだけれど、惜しくも四位で敗れていた。世界の壁、強者たちの壁、それはあのマックイーンであろうとも超えることは簡単じゃない。 それでも走っていたマックイーンはとても輝いて見えて、脚が疼いたどっちつかずな自分にため息を漏らした。 「とと、いっけね。つい気分が! もう、今はネイチャさんとのお喋りなんですから、もっと明るくいかねとな! それで、ネイチャさんの小さいころにお兄さん達と出会ったんですだな」 「えっと最初は初めてウマ娘用のシューズを買いに来た時のことで、そこのおじさんと一緒に兄貴たちがいて、上の方の兄貴と下の方の兄貴がアタシのシューズを巡って喧嘩し始めて…」 「あらま」 気を取り直したマックイーンのトレーナーさんに、小さなころの思い出を語っていく。これはトレーナーさん達が提案してくれたことで、他人と会話を交わしながら少しずつ思い出なんかを聞かせ合うことによって心の傷を癒す一種のカウンセリングのようだった。
2 21/08/10(火)02:09:50 No.833221946
最初はもういない兄貴のことを思い出して、苦しかったけど自分の感情を交えたりしながら語っていくうちに、少しずつ心が楽になっていくのを感じている。やっぱりフクキタル先輩の言う通り、誰かに話しを聞いてもらうというのは心を軽くしてくれるみたいだ。 「それから、おじさんの方はウチの店の常連だったし、一緒についてきていた時もあるしで、その年上の男の子たちと仲良くなって…一緒に遊んだり、走り方を教えてくれたり、三人ずっと一緒だったらいいなって…そう…思って…」 「ネイチャさんは二人のことが大好きだったんですだな」 柔らかく微笑んでそう言ってくれるおっとりとしたトレーナーさんに無言で頷く。 「もう一人のお兄さんもトレーナーさんと聞きましたが…お会いにはならねぇんですか?」 また同じように顔を振る。もうどちらとも会えない、会う資格なんてない。アタシが選んだから、選んでしまったから。 それ以上はアタシの様子を見て相手もまだ踏み込むべきではないと思ったのか、そうですだか、と言ってから空を見て話題を変えた。
3 21/08/10(火)02:10:11 No.833222030
「トレーニングの課題は毎日よくこなして偉いって、ライアンさんのトレーナーさんが褒めていましただよ。桐生院さんたちも元気にしてると報告したら安心してましただ。ネイチャさんはみんなから好かれていて羨ましいですだ、人徳…ウマ娘徳ってもんでしょか」 「いやいや、そんな大層なものじゃないですって。ただ気軽に接しやすいウマ娘っていうか、庶民的っていうか…マックイーンとかライアン先輩に比べたらもう地味娘ですよアタシゃ」 「またまた~、ネイチャさんだって可愛いんですから~でもそーいう所もまた好きな人がいたりするんですだな~、ファンだってそりゃトウカイテイオーさんみたいだ爆初的人気じゃあなかったけど、十分クラシック級からみるとすっごい多いんですだよ。ほらもっど胸さ張っで!」 「熱意すごっ…でも、今はほらアタシのファンも離れただろうし、名実共にモブウマ娘と申しますか…」 「ならもっけぇやり直せばいいんだ! すぐにネイチャさんならまた人気になれますだ! もー下向きな言葉をいう口はこれだかー?」 「あひゃひゃ、やめふぇ」
4 21/08/10(火)02:10:34 No.833222115
アタシの頬をぐにぐにと引っ張ってくすくすと笑うマックイーンのトレーナーさんは、指導者というより仲のいい年上のお姉さんって感じで、気軽に色んな会話ができる人だった。こっちじゃ殆どメイド服ってのも大きいけど。 「随分と楽しそうにネイチャさんの頬を好き勝手なさっているようですわね」 「ひゃいっ!」 ついでに頬をもちもちとされていると、館へと続く綺麗に舗装された道からマックイーンの声が聞こえてきて、そのまま空まで飛んでいくような勢いでその担当トレーナーは飛び上がった。掴んだまま飛びあがたので頬が洗濯ばさみで引っ張られたみたいに痛い。 「私の髪を梳かす時にはそれはもう、ガラス細工を触るような手つきなのに、ネイチャさんには遠慮なく気軽にほっぺをむぎゅむぎゅと。私にはそんなこと一回もしたことありませんのに」 それは怒っているというより、やきもちに近い言い方でマックイーンにも意外と可愛らしい一面があるんだなと思わずくすりと笑ってしまった。マックイーンは意外と焼き餅屋という所があるというのはここにきてから初めて知れたことだ。
5 21/08/10(火)02:11:57 No.833222424
「も、申し訳ごぜぇません! 今度からはネイチャさんもお嬢様のように、丁重に接しますだ!」 「そ、そういうことではなくて…もう、とりあえずその話は置いておいて。ナイスネイチャさん、少しお話が…」 「えっ、うん。どうしたの…?」 失礼しますと、アタシの横に座ったマックイーンはカバンからある雑誌を取り出した。トゥインクルシリーズやウマ娘を扱う有名な専門誌だ。その表紙にはなぜかアタシの姿が見える。 バッシングかと思ったけど、それも違う。悲劇やら、不幸やらそんなことがかかれていてどっちかというと擁護よりの印象が強い。 「アタシが、庇われてる…?」 「それよりも、中を。お伝えしなければいけないと思って…」 言われるがままにアタシのページを開くと、そこにはアタシのトレーナーさんの写真が合って思わず雑誌を地面に落としてしまう。
6 21/08/10(火)02:12:24 No.833222520
「心半ばで散ったトレーナーの悲劇。夢を継ぐナイスネイチャの覚悟のレース」そんな題名と共に、アタシと下の兄貴とのことが中にはたっぷりと一面に書かれていた。 兄貴の事故の事や、アタシたちの出会いのことまで、中には関係者と書かれた人の好意的なインタビューが並び、お涙頂戴のような文の最後には書いている人間の同情的なコメントが綴られている。 「なに…これ…なんで、トレーナーさんのことが…アタシ、こんなの知らない…」 「実はほんの一昨日から、殆どのレース誌や、テレビでのコメンタリー、芸能人のラジオに至るまで全てナイスネイチャさん一色になっているのです。この前とは違い、好意と声援に塗れていますが…」 「分かんない…みんなつい前までアタシにあんなに怒って、学校だって査問とか制裁とか…それで此処に来ているのに…テイオーのファンとかは怒らないの、こんなの見て…」 「それが、もともとネイチャさんの批判は中身は二の次の感情論優先なものだったからでしょうか、ゴールドシップさんが言うにはそうした人達の方が手のひらを返していると。おかげで騒ぎは収まっていくようで、学校側も一安心といった所でしょうけど…」
7 21/08/10(火)02:13:13 No.833222701
「んーだ…もともと形のない批判ってのもあったんでしょうが、みんな悪役にはなりたくねぇんですだな」 アタシが持っている雑誌の中身を横から覗きながらそういった、担当トレーナーの言葉にマックイーンが首を傾げた。 「悪役?」 「見るにメディアはネイチャさんを悲劇のヒロイン、打ちのめされたヒーロー、天才に挑む努力家として広めたいみたいですだ。みんなそういうのは好きだすし、報われるのを期待するものですだよ。そんな娘に悪口叩こうものなら、それこそ前までのネイチャさんみたいに悪役にされるだ。みんな悪口を言われる方にはなりたくないもんです」 「アタシは!」 一気に吐き出した言葉があたりに響いて、近くの鳥が飛び去った。 「アタシは、そんなこと望んでない! 誰かに、アタシたちの事を分かってもらおうとか、同情とか望んでない! あの人の…兄貴の思いなんて誰も何も知らないくせに!」 兄貴のことを悲しんでもらうのはいい、だがそれを娯楽にしてほしくない。死んだあの人は、誰かを楽しませるために死んだんじゃない。アタシだって、誰かを楽しませるために悲しんでいるわけじゃない!
8 21/08/10(火)02:13:42 No.833222792
「ネイチャさん…そうですわね、あまりにも勝手すぎます。私の考えが浅はかでした、ネイチャさんの気持ちも考えずに、お見せしなければということだけしか頭になくて…」 耳を後ろにして、アタシの肩に手を振れるマックイーンにそっと手を重ねてから、雑誌の中に映っているアタシを見る。。 みんなアタシをどうしたいの。走るなといったり、走れといったり。兄貴のことを持ち出してまで。 アタシはこんな人たちのために走らなきゃいけないの。 ウマ娘とはいったいこの人達にとって何なの。 「だけんども、参っただな…」 水の奥深くに沈み込むような感覚に陥っていると、ふとマックイーンのトレーナーさんの声が悩まし気に響いて意識が浮上する。 見ればトレーナーは大きな胸に手を置いて、うんうんと唸っていた。 「どうされたのです、トレーナー。まだ何か懸念が…」 「ネイチャさんは療養申請は出しましたけんど、休養申請は出してねぇです」
9 21/08/10(火)02:15:02 No.833223044
「それって、何か違いがあるんですの…?」 「療養は期間ごとの申請が必要な代わりに期間中でもレースに出れますだ」 その言葉にアタシとマックイーンは顔を見合わせた。レースに出れるからどうなるというのだろうか、確かにこの騒動でファンが増減するだろうけど、アタシはもう今年はレースに出る予定もないから影響があるとは思えない。 「アリマ記念の投票期間、始まりますだよ」 「あっ…」 その意味に気づいたのは、またマックイーンと同時だった。 「お嬢様もですが、ネイチャさん恐らくこのままでは確実に入りますだ。どうされます、今からでも休養にするか、あらかじめレースを辞退する意思を見せますだか?」 こちらをじっと捉えたトレーナーさんの瞳に、アタシははいともいいえともいえず、ただレース誌をぎゅっと握りしめて皺を付けることしかできなかった。
10 <a href="mailto:s">21/08/10(火)02:16:20</a> [s] No.833223295
長くなりましたし二日も開けてしまって同お詫びすればいいのかわかりませんが考えてみれば全てスリーゴッデスのせいなので私は悪くありませんでした許してください
11 21/08/10(火)02:22:42 No.833224588
今日は少し早かったな!
12 21/08/10(火)02:27:15 No.833225601
理解ある大人って大事だな…それが居てもどうしようもないことはあるが…
13 21/08/10(火)02:30:05 No.833226053
ネイチャにとっちゃまざまざとファンとかの悪い部分見せられてる感じだからなぁ…
14 21/08/10(火)02:34:39 No.833226922
ネイチャにフレンドリーなトレーナーみてちょっとヤキモチ妬くマックイーン可愛い…
15 21/08/10(火)02:35:33 No.833227079
むぅ…芋っぽい巨乳メイド…
16 21/08/10(火)02:39:58 No.833227807
幼馴染がトレーナーやってるとか事故のくだりとかは調べりゃわかるだろうけど出会いのことまで知ってる奴が情報漏らしてるのすげえやだな…
17 21/08/10(火)02:41:37 No.833228047
>幼馴染がトレーナーやってるとか事故のくだりとかは調べりゃわかるだろうけど出会いのことまで知ってる奴が情報漏らしてるのすげえやだな… マヤ分かっちゃったこれ上の兄貴が漏らしたんじゃないかって疑ってしまうやつだ
18 21/08/10(火)02:45:03 No.833228560
でも学園側の外側玉虫色っぽい対応に商店街が思うところがあったら誘導でいくらでも情報出てきちゃいそう…
19 21/08/10(火)03:15:04 No.833232869
有馬どうするのかと思ったらそう来たか
20 21/08/10(火)03:18:01 No.833233161
これで有馬降りたら兄の意思を裏切ったとかで叩かれるやつだ
21 21/08/10(火)03:39:56 No.833235076
若い娘に人のドス黒い面見せちゃだめだよ!
22 21/08/10(火)05:09:27 No.833240190
叩かれてるネイチャを助けようと商店街が喋ったのかな そして地の文だけどゴルちゃんはシリーズ初登場かな