虹裏img歴史資料館

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21/08/09(月)03:01:52 fu23241... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1628445712768.jpg 21/08/09(月)03:01:52 No.832857535

fu232417.png ブルアカ 社長 ムツキ SS

1 <a href="mailto:s">21/08/09(月)03:03:00</a> [s] No.832857723

「よし、うまく誘えたわね……」 便利屋68の事務所。 何をするでもなくソファに寝転がっていたら、社長席でスマホを熱心に見つめていたアルちゃんが嬉しそうに顔を綻ばせた。 「なになにアルちゃん、いいことあったの?」 「な、なんでもないわ!仕事の約束を取り付けただけよ!」 「ふ~ん?」 「あ、ちょっと!」 ソファから飛び起き、アルちゃんの後ろに回り込むと、モモトークの画面が見えた。どうやら、先生と会う約束をしたらしい。 「へぇ~、アルちゃん先生とデートする約束したんだ?やるじゃ~ん!」 「デ、デデデデデートなんかじゃないわよ!ムツキも今度の依頼のことは知ってるでしょ!?ほんとに……ただの下見なんだから……」 「はいはい、わかったわかった」 そんなことを言っているけど、アルちゃんの態度からは下心が透けて見えている。 とはいえ、誘えただけでここまで舞い上がっている辺り、他のことには気が回っていなさそうだ。 ……ここはひとつ、幼馴染としてちょっとからか──もとい、助け舟を出してあげようか。

2 <a href="mailto:s">21/08/09(月)03:03:52</a> [s] No.832857859

「それで、当日はどんな格好で行くの?」 「え?」 私の質問に、案の定アルちゃんがポカンとした顔をする。 「え?じゃなくてさ。まさかその格好で行くわけ?」 「仕事なんだから当たり前でしょ?」 「あのさ、下見に行くってことは今の段階で顔が割れたらまずいわけでしょ?」 「それはまあ、そうね」 「だったら下見の時点でその格好で行って、『私達怪しい者で~す!』ってアピールする意味、ある?ただでさえ年中そのコート羽織ってて無駄に目立つのに」 「うっ、それは……」 「まあせっかくのデートなんだし?顔まで隠せとは言わないけど、服装くらいは気をつけてもいいと思うけどな~」 「だ、だからデートじゃないってば!……でも、確かに仕事前に目立つ格好はよくないかもしれないわね……」 「でしょ~?なら、今すぐ行こう?」 「行くってどこへよ」 「決まってるでしょ?」

3 <a href="mailto:s">21/08/09(月)03:04:44</a> [s] No.832857998

言いながら、アルちゃんの手を掴む。 「服、買いに行くんだよ」 「アルちゃん、これとかどう?」 キヴォトス市内の大型ショッピングモール。その中に入っている服屋に私たちはやってきていた。 「え?あ、うん?ってこれ水着じゃないの!」 「くふふ、その格好で行ったら先生もびっくりしてくれるかもよ?」 「先生に会う前に捕まるわよ!私が!というか目立たないようにする為だって自分で言ってたわよね!?」 「え~、そんなこと言ったかなぁ?」 「あのねぇ……というか、予算もそんなにないし……」 「わざわざ見栄張って高い服買わなくたってプチプラでじゅうぶんでしょ。アルちゃんなら変に気取っても服に着られるだけだしさぁ」 「ちょっとそれどういう意味よ!」 「ほらほら、これとこれと~後はこれなんかもどう?」 値札を流し見しながら、適当にいくつか見繕ってアルちゃんに押し付ける。こういうのは勢いに任せて押し切ってしまうのが一番だ。

4 <a href="mailto:s">21/08/09(月)03:05:46</a> [s] No.832858167

「ここの服なら金欠のアルちゃんでも買えると思うし、試着だけならタダだからさ。試してきなよ」 「う、うん……」 ほら、この通りだ。勢いに流されるまま、アルちゃんは試着室に引っ込んでしまった。 「ど、どうかしら?変なところない?」 しばらくして、おそるおそるといった体でアルちゃんが試着室のカーテンを開ける。 態度こそ自身なさげだったけど、白いTシャツに青いロングスカートという、無難としか言えない服装になっていた。 「ふ~ん?置きに行ったねアルちゃん」 「ぶ、無難でいいのよこういうのは……」 「ま、いいんじゃない?」 まあ、そういうのもアルちゃんらしいか。どうせ先生は余程変態的な格好でもなければ何着ても似合ってるとしか言わないだろうし。 でも、それだけじゃつまらないよねぇ…… 「じゃあアルちゃん、次は下着ね」 「そ、そんなのいつものでいいでしょ?」 「いいわけないでしょ普段ケチって安いのしかつけてないのに」

5 <a href="mailto:s">21/08/09(月)03:06:21</a> [s] No.832858232

「じ、実用性を重視してると言いなさいよ!」 「それなら尚更でしょ~?これから勝負に出るって時に、先生にいつも着てるようなのを見せられる?」 「し、勝負って何よ!?そんなこと……」 「勝負を考慮しないデートとかある?まして悪党の中の悪党を目指すアルちゃんが、まどろっこしい段階踏んだお付き合いなんてする訳?」 「だ、だからデートじゃ……先生だってそんな風には思ってないわよ……多分」 「そう相手に思わせて騙し打ちしてでも実利を取るのがアウトローってもんでしょ?」 「うう……」 「ほらほら、しのごの言わずにとりあえず着替えなよ。私は先にあっちの売り場に行ってるからさ」 アルちゃんを試着室に押し込み、カーテンを閉める。 二人のデートで遊ぶと決めた以上は、準備は入念にしないとね。

6 <a href="mailto:s">21/08/09(月)03:06:46</a> [s] No.832858298

「結局ムツキのせいで思わぬ出費になっちゃったわ……」 「くふふ、でもこれで準備はバッチリしでしょ?しくじったら今日の出費も全部無駄になるんだから、本番、頑張りなよ~?」 「……まったくもう……」 あの後、何かと躊躇いがちなアルちゃんを煽っておだてて口車に乗せて、安いながらもアクセサリーなんかも買い揃えさせた。 なんだかんだでバッチリとキメさせて、準備は万端だ。 後は…… 「あ、そうそう。アルちゃん、これ」 ついでに買っておいたあるものを取り出して、アルちゃんに押し付ける。 「何よこれ」 「お守り。先生とのデート中に困ったことがあったら開けて」 「……?」 「くふふっ。それじゃ、明日は頑張ってね~」 首を傾げるアルちゃんに手を振って、私は早々に帰路につく。 さて、これで私の仕事は終わりだ。後は、アルちゃん次第。

7 <a href="mailto:s">21/08/09(月)03:07:20</a> [s] No.832858374

「おはよう、アル」 「あら、おはよう先生。……もしかして待たせちゃった?」 翌日。駅前の広場。 待ち合わせの時間より30分ほど早く先に来ると、既に先生は広場の片隅で私を待っていた。 「前は待たせちゃったからね。アルの方こそ、相変わらず早いんだね」 「も、もちろん!待ち合わせより早めに来るなんてビジネスの基本だもの!」 まさか、先生が先に来てるとは思わなかったものだから、早速昨日の夜のシミュレートが狂ってしまった。我ながら上ずる声が情けない。 「ところで、アル……」 「な、何かしら?」 と、先生が私の姿をまじまじと見てくる。結局昨日ムツキに唆されるまま買った物を身につけてきてしまったのだけれど、何かおかしなところでもあったのだろうか?まさかタグがつけっぱなしとか……? 「ああいや、私服姿のアルはちょっと新鮮だなって」 「そ、そう?そうね、今日はお忍びで下見に行くから、目立つ格好は避けなきゃいけないでしょ?いつもの格好だと威厳が出過ぎて目立っちゃうもの!」 よかった。どうやらそういうわけではないらしい。 「それじゃ、行きましょうか」 少しは自信が戻ってきて、先生に先立って駅に向かった。

8 <a href="mailto:s">21/08/09(月)03:07:45</a> [s] No.832858426

「まずはここよ」 「ここ、って……ショッピングモールだよね?」 「ええ。実は今回の依頼はある裏取引の現場を抑えて品物を横取りすることなの。その取引に使われる場所の候補の一つがここ」 中に入り、人混みの中を歩きながら先生にだけ聞こえるように話す。 今回のデー……もとい、依頼の話自体は本当だ。下見を口実に先生を呼びだしたことについてはまあ……それだけではないのも認めるけど。決して、ムツキに言われたようなことだけが目的じゃない。 「候補、ってことはハッキリとは分かってないんだね」 「ええ、相手もバカじゃないもの。これでも絞れた方よ?候補はこことここから少し離れたところにある大型のゲームセンター、そして遊園地。この三つのどこかで行われる可能性が非常に高いの」 「どこも人が多そうな場所だね」 「木を隠すならなんとやらね。それじゃ、調査を始めるわよ」 歩きながら、取引に使えそうな場所を探す。死角になりそうな場所なんかが定番だろうか。

9 <a href="mailto:s">21/08/09(月)03:08:33</a> [s] No.832858537

「一通り中を歩いてみたけど……」 二、三時間程が過ぎただろうか。怪しまれないよう少し買い物をしたりしながら、私と先生はモール内を一周していた。 死角になりそうな場所や人気の少ない場所はところどころあったとは思うのだけれど、いまいちピンとはこない。 「ありがちなところと言えば2階にある催事場あたりだと思うんだけど、先生はどう思う?」 「そうだね……」 意見を聞くと、先生はちらりと時計に目をやって。 「お昼を食べながらでも話そうか。何か食べたいものとかある?」 と、提案してきた。 「ええと……ごちそうさま」 適当なレストランに入って、昼食を済ませた後。 当然のように先生が二人分の会計を済ませてしまって、私は財布を出す暇すらなかった。 「な、なんだか悪いわね。依頼のアドバイスをもらった上にご馳走にまでなっちゃって……」 「気にしないで。アルの依頼は大変そうだから、激励だと思って」 「そう?……ふふっ、ありがとう。それじゃ、次に行きましょうか」

10 <a href="mailto:s">21/08/09(月)03:09:02</a> [s] No.832858609

「取引に使われそうな場所を狙撃できるのはここで……撃ち合いになった時に遮蔽物に使えるのは…これとこれあたりかしら」 「そうだね、これなら銃弾くらいなら弾けると思う。場所を考えれば大掛かりな火器は気軽に持ち込めないだろうしね」 ……それから、先生と二人でゲーセンに行き、クレーンゲームに散財しかけた先生を止めたり、二人でガンシューティングでスコアを競ったりした後、私達は遊園地へと足を運んでいた。 「そうね……ありがとう先生、お陰で作戦が形になってきたわ!」 「どういたしまして。……それにしても、今日はなかなかの過密スケジュールだったね……」 「ええ、そうね……」 疲れた足を休ませたいという先生の要望を受け、私と先生は観覧車の中で作戦会議をしていた。 辺りはもう夕暮れになっていて、窓から差し込むオレンジ色の陽光が眩しかった。 「でも、おかげで候補を更に絞ることが出来たわ。ありがとう先生」 「そう?アルの役に立てたなら嬉しいな」 「ええ、きっと成功間違いなしよ」 感謝を伝えると、先生はにっこりと微笑んでくる。観覧車の中で二人きりということもあってか、なんだか気恥ずかしい気持ちになってしまう。

11 <a href="mailto:s">21/08/09(月)03:09:35</a> [s] No.832858694

「……」 「……」 仕事の話も終わって、話題が続かなくなる。ここまでの時間で、世間話もほとんど出し尽くしてしまった。 (あ、そうだわ) なんとなく気まずい空気の中で、私はムツキに押し付けられた『お守り』の存在を思い出す。 「なに?それ」 「何かしら……昨日ムツキに渡されたんだけど……」 言いながら、箱の蓋を開ける。 中に入っていたのは── 「え?ムツキに?じゃあそれ──」 「──ぶはっ!?」 「ア、アル!?」 パン、という軽く火薬が弾ける音とともに、吹き出した液体を正面から浴びる。どうやら、箱を開けると同時に爆発するよう仕掛けられていたらしい。

12 <a href="mailto:s">21/08/09(月)03:10:14</a> [s] No.832858812

「大丈夫!?」 「ぷはっ!ム、ムツキィ~!」 びしょびしょになってしまった怒りを、この場にいないムツキにぶつける。中に入っていたのはなんでことはない、ただの水風船。完全に油断していた。渡してきた相手がイタズラ好きのムツキであることを考慮すべきだった。 「はい、これ」 「あ、ありがとう……」 先生に差し出されたハンカチで、濡れてしまった顔や首を拭う。 「後、その……」 「?」 それから、先生が明後日の方を向きながら自分の上着を脱いで差し出してくる。 「服、すごい透けてる……」 「へ……?ッ~~!!!」 目線を下げると、白いシャツが透けて下着がほとんど丸見えになってしまっていた。しかも……昨日ムツキに買わされた…… (水風船の狙いはこれかぁ~!!) 引ったくるようにして先生の上着を受け取り、前にあてがう。耳まで赤くなるのが嫌でも実感させられた。 結局、観覧車が下に降りるまで先生と目を合わせることもできなかった……

13 <a href="mailto:s">21/08/09(月)03:11:08</a> [s] No.832858946

「ふぅ……なんとか乾いたわ……」 遊園地を出て、私は護衛として先生と二人でシャーレに向かっていた。 「なんだか、最後は大変だったね」 「まったく、ムツキったら何考えてるのかしら……」 街の灯りに照らされながら、二人で小さく苦笑する。あのイタズラ好きには困ったものだ。 「でも、楽しかったよ」 「ええ、私もそこは……私も」 結局、依頼を口実に色々遊んでしまった。もちろん今日の下見の成果や先生の意見は忘れていないけれど、想定していたよりもずっと……その、デートっぽくなってしまった。 本当に、楽しい時間だったから。 「……その、先生がよければ、また……こういうこと、お願いしてもいいかしら?」 「もちろん。いつでも付き合うよ」 それなりに勇気を出して投げた問いを、ごく簡単なことのように返される。

14 <a href="mailto:s">21/08/09(月)03:11:46</a> [s] No.832859035

「……それ、先生のいいところで、悪いところよね……」 「?」 「なんでもない。ほら、そろそろ着くわ」 シャーレの大きな入り口が見えてくる。もう護衛もこの辺りで十分だろう。 「それじゃ、私はこの辺で」 「もうお別れかぁ。ちょっとさみしいかも」 「ばっ、バカなこと言わないで!じゃあね!また!」 「うん、また。今日はありがとう、アル」 手を振って、先生はシャーレに入っていく。 「おやすみ、先生。……もう、お礼を言うのは私の方なのに」 それを見送って、私も便利屋の事務所への帰路につくのだった。

15 <a href="mailto:s">21/08/09(月)03:12:28</a> [s] No.832859140

fu232437.png 一旦終わり オチは夜にでも

16 21/08/09(月)03:15:28 No.832859578

いい物読ませてもらった ありがとよ…

17 21/08/09(月)03:22:02 No.832860525

wktk

18 21/08/09(月)03:33:05 No.832861897

カラッとしている……キヴォトスなのに……

19 21/08/09(月)03:37:03 No.832862374

よいね

20 21/08/09(月)03:49:02 No.832863635

助かった

21 21/08/09(月)04:02:45 No.832864987

光だ…

22 21/08/09(月)04:03:11 No.832865021

すごくいい…

23 21/08/09(月)04:52:39 No.832869223

このカラッとした感じは社長だからこそかも知れない いい…

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