21/08/08(日)20:12:23 夜の空... のスレッド詳細
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21/08/08(日)20:12:23 No.832686703
夜の空を切り裂いたら、裂け目から青空が出てこないだろうか。ふと、そう思う。 けれど私に持てるナイフは短くてあまりに鈍。刃は決して天辺まで届かない。 逃げ惑うことは得意だけれど、差し切ることは私の頭には向いていないのだ。 明日を待つしか、青空を見る方法はない。 明日を待つしか、あなたに会う方法はない。 愚かにも昼寝を満喫してしまった私は眠れないでいた。とはいえ普段は昼寝時間に構わず眠るのだが、今日は心が落ち着かない。 落ち着かなければ、明日は来ないのに。 「何か時間を潰すしかありませんねえ…」 でも、こんな時間にテレビをつけるわけにもいかない。こんな時間に外を歩くわけにもいかない。寮の生活は健全潔白。私のようなサボりと逃げに満ちた存在には相容れない。それでも仕方なく、ただ思考を求る。 セイウンスカイという存在は、思考によって生かされているのだから。
1 21/08/08(日)20:12:43 No.832686877
眠気の来ない目蓋を閉じて、思い浮かべるは楽しい昼間。夢を見れないなら、夢を思い描く。 たとえば明日、あなたに会ったら。まずどんなことを言ってくれるだろう。おはよう、とかそういったものも嬉しい。何気ない言葉の端々に、私を気遣う錯覚を覚える。 錯覚であっても、オロカモノの私はそこに夢を見るのだ。現実は夢に比べて、あまりにも短くて尊い。私には掴めない。寝ている間、逢えない間。ただ、私の頭の中にある夢の影。 それが身近な幸せで。私にとっての最高なのだろう。私には才がないとも。私には勇気がないとも。私には、何もないとも。だから、だから。 あなたの隣に居られるのも、通り過ぎる時の僅かな狭間だけ。いつでも一つだけ、平気そうな仮面だけ。私に使える表情はそれだけ。 ただ、罪と知りながら。届かない光と知りながら。私は一つ、夢を描く。あなたと二人、どこかに二人きり。狭くても、あなたとなら幸せだ。暗くても、あなたとなら歩ける。
2 21/08/08(日)20:13:02 No.832687063
そこまで思って、想っているのに。どうして私の心は刃を持てないのだろう。あなたを包む神秘の闇を切り裂いて、あなたの心のホントが見たい。 それは、夜に於ける青空のような。見たくても、見れないもの。だから、夢に描くだけ。 「…す、き」 呟く。たった二文字。私はそれだけの言葉すら、手元に煌かせられない。 本当に眠れなかった。これではあなたに怒られてしまうな。まさか理由なんて言えないし。目元の隈を指摘されて、バツの悪そうに笑う私。現実はもう見えていて、夢よりもはっきり色褪せている。 「おはようございます、トレーナーさん」 「おはよう、スカイ。…おっと、どうした」 ほら、やっぱり。これが現実。予想外なんて万に一つも────。
3 21/08/08(日)20:13:31 No.832687331
「…泣いてたのか?目元が赤いぞ。…その、俺でよかったら。 なんでも言ってくれ。俺はお前のトレーナーである以前に、頼られる存在でありたいし」 まさか、まさか。目元を反射的に触ると、また涙が。 「…あらら」 「スカイ。本当に、なんでも言ってくれ」 その言葉こそ涙の元だよ、トレーナーさん。でも。 「なんでも、ですか」 「遠慮しないでいい。頼ってくれ。信頼してくれ」 「じゃあ、ですね─────」 たった二文字。いっても、いいですか?
4 21/08/08(日)20:36:28 No.832700567
いい…