21/08/07(土)00:46:14 ただ黒... のスレッド詳細
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21/08/07(土)00:46:14 No.831967793
ただ黒い夜。私はコーヒーを一杯飲み下す。一杯、また一杯。勘違いしないで欲しいのだが、コーヒーを飲んでいるから眠れないのではなく、眠れないからコーヒーを飲んでいる。 今日も蒸し暑い。外は雨が降っていて、せっかくの星も見えはしない。眠れない夜ほど退屈なものはないのに、僅かな星見の楽しみさえ奪われてしまっている。 すこし、少し考えて。私はぽつりと独り言を発する。 「…外を歩いてみましょうか」 雨の中を歩むそれは、或いは狂人の歩みに近い。それならば上等だ。何もなくてつまらないなら、芝居の糧にでもしてやればいい。 真黒の傘を刺し、真黒の私は真黒の空へと歩みを進める。木々は影しか見えなくて、黒に塗り潰されているかのように錯覚する。 ぽつ、ぽつ。雨音は少しまばらだったが、決して無視できない程度。傘を持ってきていたのは正解だろう。そうして、夜の道を歩み出す。 私の別荘はトレセン学園とは離れたところにあって、当然門限などもこちらにはない。最近は寮で過ごすことが多かったので夜に出歩くのは久しぶりだ。
1 21/08/07(土)00:46:39 No.831967942
いつぶりだったか──逡巡し、思い当たる。 ねえ、早く連れて行って。 あの時。 まだトレーナーになっていないトレーナーさんが来るのを一晩待ったあの日。そうだ、と思い当たる。あれから少し月日は流れた。私たちの関係は順調に堅く強いものになった…とはとても言えない。私の罪。君を愛する傲慢の大罪。それは時間が経つごとに、根深く太くなっていく。 雨の中、ふと傘を閉じてみる。冷たい水滴はそう、あの日のようで。 あの、二人の契約が始まった日のようで。傘も差さずに抱きついて、どうしようもないくらいに言語化できない感情を溢れさせた。あの日確かに見えたなにかが、私たちを引っ張っているのか、それとも。縛っているのか。 答えはまだ、見つからない。楽園に行かなければ、全ての正答はわからない。 私の中には心が二つ。それは一つに混ざりながら分かたれている。 君と共に楽園へ。使命感か、私の本質か。羽ばたく天使の如く、私に翼は生えているのか。それとも。 君と共に奈落の底へ。諦観か、私の願望か。囁く悪魔の如く、私は君を永遠に縛ろうとしているのか。
2 <a href="mailto:こんかいはおわりです">21/08/07(土)00:46:56</a> [こんかいはおわりです] No.831968032
ここで走るのをやめて仕舞えば。私はきっと、永遠に君と。でも。永遠は退屈で、もしかしたら君にすら飽きてしまうのかもしれない。己の飢えが、君すら無価値と断じてしまうのかもしれない。それも怖い。なにもかも、怖い。 私は、私は。君と離れたくないから走るというのなら。そこに楽園の実在性は必要なのか? 或いは、君と離れたくないという感情自体に過ちがあるのか?優先すべき信仰は一つのみで、残りの異端は廃するべきか? 私は、私は。 虚数空間に浮かぶ虹を幻視して、私の旅路はひとまず終わった。 血に飢えた猟犬には、己の血すら通っていなかった。信ずる人と心を通わせ、通った心を喰らい燃やして。漸く一人の生きたいのちへと変わっていった。そうでなくては生きていけない、無機質で無感動な無色の少女。 今、迷う。それは彼女の心の存在証明。願いは理想を目指すものか、欲望を目指すものか。 失楽園の漆黒は、闇の空に虹光を視る。
3 21/08/07(土)00:50:05 No.831969087
初期カフェ生徒会長室まで fu226160.txt その他 fu226161.txt
4 21/08/07(土)01:05:00 No.831973481
初期カフェの続き来てたのか 詩的だね…
5 21/08/07(土)01:13:28 No.831975855
凱旋門が近づいてくる…