21/08/06(金)17:52:18 目が霞... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1628239938663.jpg 21/08/06(金)17:52:18 No.831790955
目が霞む、動くだけで反動で滅茶苦茶になった骨が肉に刺さって痛みが走る。喉が痛い、全神経を伝って全身が電熱線で焼かれたような痛みで歩くこともできない。……戻るための体力も無く、道の険しさも相まって帰還は絶望的であった。 進んできた道をふらふらと歩きながら戻り、墓標のように地面に突き刺さっている盾に背中を預け、そっと目を閉じる。疲れた、長かった旅路は終わった、もう戦う必要なんてどこにもない、だから剣を捨てて、静かに、心置きなく眠ろう。深く、深く、深く、崩壊する時間神殿の音が聞こえなくなってしまうぐらい深い眠りに着こう。もう帰るのは不可能だ、だから最後にマシュの側に居ることぐらいはしておこう。 体が重くなり、感覚が麻痺し始めた。こんな終わり方で本当に良かったのかは知らないし知りたくない、知ろうとしたらきっと壊れてしまう気がする。それでも……やっぱり、ここまで来たのだから、もう……それでいい。おやすみなさい
1 21/08/06(金)17:52:39 No.831791073
目が覚めるとそこは何事も無いただの教室の中だった。周囲を見渡すが何一つ変わらない、ただの教室であり、ドアが開いて普通の教師が入り、出席をする。そこには俺の名前もあり、知っている友達の名前もあり、まるでさっきまでの景色が嘘の様に世界は進み、違和感を抱きながらひとまず授業を受ける。一時間目は数学、内容はごく普通の高校性が受けるであろう集合や三次関数、微分積分でありはっきり言ってそこまで難しいものでは無かった、教科書にある問題をさっさと終わらせ、いつでも対応できるように静かに耳を傾けておくと隣の席の友人がこっちを見てきた。 「なぁ藤丸難しくねこれ?」 「……あぁ。そこが違うだけだよ、ここをこうして、こうだよ」 「おぉ!!センキュ!……けどよぉ藤丸。ここの範囲お前『先週』は全然できてなかったよな?急にどうしたよ」 先週という言葉に引っ掛かり、とりあえず『頑張ったからねぇ』と言い訳をして今日は何日かと質問した。 帰ってきた言葉は全てが始まったあの日からちょうど一週間経っていた。……本当に全てが無かったかのように、ただ胸の内にある違和感だけを残して世界は進み続けている。
2 21/08/06(金)17:53:10 No.831791226
結局、胸の内に引っ掛かった違和感を抱えながら知り合いと一緒に歩きながら下校する。少し熱いアスファルトの道を進んでいく、知り合いたちの話題にはそれとなく答えてこの心の違和感を抱えながら歩いていくとふとある店の鏡を見た、そこにはごく普通の学生服姿の自分が映り、口だけは笑っているどこかつまらなさそうな目をしていた自分の顔があった。 いつものように交差点で別れて一人、静かに歩いているとふと声を掛けられた。 「よぉ、世界を救った気分はどうだ英雄。そして救った世界はどうだ?」 さっきまで無人の道だったはずなのに背後には黒いフードのいかにも怪しい少し背丈の高い男が立っており、その視線はとても冷たく重いものであり、重圧感にのまれそうになりつつも怯まずにしっかりと相手を見据えて警戒する。
3 21/08/06(金)17:53:52 No.831791465
「……それだよそれ、やっぱお前はもうどこにでも凡人じゃねぇな。肝が据わりすぎている。普通、殺気をここまで放ってビビらずに冷静に話し合おうとする高校生なんざいねぇよ」 「お前は誰だ!!」 「ここがありもしない空想の世界ぐらい知っているだろうにまだそのマスターエミュ続けるのか?」 その言葉で一瞬世界が歪んで足元がぐらつく。 「……まぁいいや。『正直に言え』このお前の救った世界はどうだった?美しかったか?『明日』を取り戻せて満足か?」 「満足だよ、何事も無くただ平穏に世界がこれからもあるのなら」 「嘘つけ」 必死に出した返答を軽く返してきたその冷たい返答で歪んだ世界はいつの間にか燃える廃墟の世界に書き換わり、意識がしっかりと戻る。 「つまらねぇだろ」 言い返せなかった。その胸の違和感がつまらないというものだとどこかで理解していた、本当の感情であったからこそ何も言い返せなかった。
4 21/08/06(金)17:54:52 No.831791747
「つまらない、くだらない、しょうもない。『平穏な日常』とはつまりこういうことだ、ただ何のへんてつもない普通のごくごく安心安全のどこにでもあるように見えて無いつまらないものさ。なぁ?もう一回言う、正直に言え、この世界はどうだ?」 本当は言ってはいけないのだろう。そんなこと言うなんておこがましいのだろう。でも、やっぱり正直に言いたかった。 「……どうでもいいかな」 「ふふ。はははは!!そっかそっか。そりゃそうだよ、『個人』としてサーヴァントと現代人。『環境』として千差万別の特異点とギリギリな平穏を以てして進む現代社会、どっちが刺激的であり、どっちが人生の価値が大きいかなんて一目瞭然さ。でもつらいよなぁ。やるやつがいなかったというだけの理由でそんな世界を救うために今という今まで戦って、死にかけて、帰ってくればあんな世界。なぁ藤丸立香?生きるために戦ったお前が死ぬとかくそみてぇな末路辿っていいのか?まぁ、お前が変わらなきゃ、生きて帰ってもあのくそみてぇな世界に逆戻りだ。嫌だよなぁ?」
5 21/08/06(金)17:55:31 No.831791957
その言葉一つ一つがとても胸に突き刺さり、解っていても嫌になってくる。目の前の鏡は笑いながらそっと手を差し出してくる。 「よく解るよ。二度と来るか分からない人生と好機だ、生きたいように生きようじゃねぇか?たとえそれが何百万人の無辜の民を不幸にしようが別にいいだろ、こんだけ身を潰して戦ったんだケチな報酬にキレて少しぐらいワガママになっても誰も文句は言わねぇよ、いや言わせるな。それに本当の意味での『明日』ってのは『お前の心の中』にしかない、他人には用意できないものだ。いわばこれはチュートリアル、ここからが藤丸立香の人生のスタートよ。だからとりあえず『自分だけの明日』を取り戻すためにために起き上がれ、まだ新しいそれは見つかってないかもしれないがお前ならきっと見つけられるはずだ。だから今までみたいに自分のできること全部やってみようぜ?」
6 21/08/06(金)17:55:52 No.831792041
その言葉に勇気づけられ自然と意識が醒めて、体の重さが無くなる。手を取ろうとすると空が自然と浮き上がり、制御が効かずに上へ上へと上がっていく。 「じゃあな、藤丸立香。いい旅をしろよ。……あっ待て!!最後に質問いいか?お前にとってマシュって何だった!!」 フードを取って顔を見せる自分のその質問には →強くて優しい普通の女の子だったよ。 俺の戦うための最大の理由だったよ。 「ンンンン!!……やっぱそうだよなオレ!!。必ずゲームセットしろよ。途中で降りたら絶対許さねぇからな!!」 手を振って見送ってくれるその強い言葉にしっかりと答えようと意識を取り戻そうとする。目の前に見える光を手に取り、過去との決別をし、自分こそが主役だと示すために、ここで全てをリセットする。
7 21/08/06(金)17:56:45 No.831792320
「……わっ!?」 目が覚めるとどこか小さな木の小屋で黒いリボンの少女が濡れた布を額にあてようとしていた。 「えっと、ありがとうございます」 「ただ木の下で凄い熱を出して倒れていて心配になって勝手に看病していただけなので」 言われてみて少し頭を触るとなぜか頭痛がして……あれ? 「どうかしましたか?」 「…俺ってだれだ?なにか大切な…」 名前を忘れた。なぜか本当の名前があったはずなのに綺麗に抜け落ちていた。ふと彼女を見るとそこではいろいろ慌てふためていた。 「お、おおお、おちつききききましょう!!…あーやばかったかなー流石に変なのとかあの黒いよくわからない装備ぶっ壊したの不味かったかなー」 丸聞こえである。割と抜けてるのだろうか?よくわからないけどまぁいいか。 「…よくわからないけどひとまず助けてくれた事には感謝しているのですが、えっと名前…」 「あ、私の名前はモ…トネリコと言います。えっとその…いろいろ……私もあって……あはは」 よくわからないがなにかがあって困っているのだろうか?ひとまず起きようとした瞬間に急になにか脳内会議でもあったのだろうか顔が赤くなった彼女が押し倒し、馬乗りなる。
8 21/08/06(金)17:57:07 No.831792416
「感謝、していますよね?」 「?……まぁ、うん」 「じゃあ、その温情を返したいですよね?ね?」 「???……まぁ、できることなら」 「……では、私のなか……所有物になってください」 ——————話が飛躍しすぎている。何を言っているのだこの理性蒸発黒リボン。まるで話が見えない。だがしかし、記憶も無く一人でぶらつくよりはましなのもまた事実。 「……断れば?」 「えーと、その。yesと言うまで同じ質問を繰り返します、一定回数を超えるとスタンプが押されます」 どうやら面倒毎に巻き込まれたようだ……ただ、なぜだろうか?それを是として、むしろ喜んでしまう自分がすこし不思議だった。 「わかった、今日からトネリコの物になればいいだよね……よろしくね、ご主人様」 「!?」 自分で言ったくせにいざ言われるとまた蒸発してる……。もう少し弄ってみようか? 「……なんでもありませんよ。……ただ名前が無いとそれはそれで不便ですよね。……待ってくださいね、今いい名前を考えますから」
9 21/08/06(金)17:57:28 No.831792524
そこから十分ほど色々な名前を呟いていたがある言葉を呟いた後、これだっ!!って感じ顔をしてこっちを見た。 「これからよろしくおねがいしますねウーサー君!!」 ……もうちょい捻りが無かったのだろうか。 そんなこんなで始まった未熟な救世主と記憶の無い騎士の旅。……そのあとまぁいろいろ芋虫だの、聖剣持ち逃げだの、毒殺だのあったがそれはまたおいおいねと言っておきましょう。
10 21/08/06(金)17:58:10 No.831792739
乗り遅れた。 けどまぁ後悔はないからいいよね
11 21/08/06(金)17:59:24 No.831793076
美しい旅であれば幸いです
12 21/08/06(金)18:03:20 No.831794253
DOMANが居ない…妙だな
13 21/08/06(金)18:08:20 No.831795721
二回殺されてる…
14 21/08/06(金)18:19:33 No.831799503
>芋虫 うん >毒殺 うん >聖剣持ち逃げ (ここ書いて遅れたな)
15 21/08/06(金)18:37:20 No.831805593
ルート分岐条件難しすぎない
16 21/08/06(金)18:38:04 No.831805809
このウーサー君だと毒殺されなくない?
17 21/08/06(金)18:41:00 No.831806789
二人ともここから暗くなるんだよね
18 21/08/06(金)18:45:23 No.831808351
来たか…トネリコルート…
19 21/08/06(金)18:49:27 No.831809840
力作