21/08/02(月)18:22:52 初期カ... のスレッド詳細
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21/08/02(月)18:22:52 No.830388556
初期カフェバレンタインまで fu214328.txt 本筋以外 fu214329.txt 天皇賞に向けて 放課後、熱く黒いコーヒーを嗜む。いつもの通りのルーティンだが、今日は二つ違うところがあった。一つはここが生徒会長室であること。そしてもう一つは、目の前で同じくカップに手をつけているトレセン学園生徒会長、シンボリルドルフの存在。 「よく来てくれた、マンハッタンカフェ」 「流石に会長さんのお呼び出しとあらば、出向かないわけにはいきませんよ」 「…なかなか君を捕まえるのには苦労させられたがな…」 おっと。そういえばトレーナーさんと会っている時は、他の連絡手段は全て電源を切っていたっけ。 「…それは申し訳ない」 「いや、こちらこそすまない。忙しい中、感謝する。…さて」 シンボリルドルフはカップを置いて、向き直る。此方に向けられるその風格は皇帝と呼ぶに相応しいものだった。気を抜けば喰われるのはこちらの方、そんな気がした。
1 21/08/02(月)18:23:13 No.830388645
「今度、君が春の天皇賞に出走すると聞いてね。…まずはそのことについて激励を」 「わざわざ会長さん自らの応援とは、痛み入ります」 「君が挑戦しようとしている記録は、難攻不落の巨大な壁だからね」 「…記録?」 「おっと、これは失礼。まずは説明からかな」 少し以外そうな表情をされる。私は走れればそれでいい。君と走れればそれでいい。何か大記録に手が届きそうだなんて思いもしなかった。その記録に届けば、楽園にも手が届くだろうか。届いてしまうだろうか。 「中央におけるGⅠレースのうち、最も距離の長い三つ…京都3000m、菊花賞。中山2500m、有馬記念。そして京都3200m、天皇賞(春)。これをクラシックからシニアにかけて連闘し、三連覇を成し遂げる」 「…なるほど」 「長距離重賞の最高峰を総なめし、最強のステイヤーとしての功績を打ち立てる。この記録は現在、ただ一人のウマ娘によってしか達成されていない」
2 21/08/02(月)18:23:36 No.830388760
「その一人とは」 「私だよ」 「…自慢話ですか」 そう皮肉を突き刺すと、シンボリルドルフはそれを笑って受け止めた。 「ふふっ、そうだな。そう捉えられても仕方ない言い回しだった。…ああ、でも。これが偉業だと言うのなら、達成したことを誇りに思うし、また達成されることを心待ちにしているとも」 「…貴女の後に続いて欲しい。それが今回の話の肝ですか?もしそれだけなら、大した話ではなかったですね」 私が誰のために走るか、何のために走るか、なんて。それは変わらず、決まり切っている。 「…いや、もう一つ話があってね。こんな昔話だけで君を退屈させたりはしないよ」 「…ほう」 私を退屈させないと宣言するなんて。面白い。 「もし、もしだ。レースに絶対はない。勝った後の話をするのは愚かしいことだ。そうだとしても、もし。君が春の天皇賞を獲ったなら」 ゆっくりと、彼女は言葉を吐き出す。重く、強く。 「君には、私を超えて欲しい」
3 21/08/02(月)18:25:03 No.830389231
その言葉には、僅かに切実さが込められていた。 「…超える。七冠バの貴女を?」 「…問題なのは強さだよ」 強さ。それは記録では測れないものだろう。 「マンハッタンカフェ。私にも不可能だったことがあるんだ。日本で幾ら勝利を重ねても、終ぞ」 彼女は少し拳を握る。悔しさというものを、無敵の皇帝から初めて感じ取る。 「海外、ですか」 「…そう。運や巡り合わせもあっただろう。それでも私は二度、確かに失敗した。遂に最後まであの門を拝むことすら叶わなかった。…世界最高峰のレース、凱旋門賞を」 凱旋門賞。私でも聞いたことがある。 「…確か、日本から出走したウマ娘で勝った者はいない」 「そうだ。我々の悲願。尤も私は挑めてすらいないけどね。…今でも偶に、夢に見るよ。おっと、それはともかく」 「マンハッタンカフェ。君が天皇賞で勝ったなら、君は紛れもなく世代最強だろう。そして私と同じ道を歩むことに成功し、更にその先へと行ける」
4 <a href="mailto:今回はおわりです">21/08/02(月)18:26:47</a> [今回はおわりです] No.830389812
世代最強。そのフレーズを聞いて僅かに頭を掠めるものがあった。私はその称号に、本当に相応しいのか。けれど。 その先にいけるなら。まだ、私たちはゴールに辿り着かない。楽園への道筋が続き、君との時間を重ねられる。そうしていられる。 「…分かりました。…勿論、勝ってからですが」 「…応援しているよ。心から」 空気は緩み、今度こそ解れる。けれど心の内の黒は濃く、深く闇を増していく。 本当は、凱旋門賞にそれほど興味があるわけではない。けれどそこには、まだ誰にも到達できていない何かがあるという。それならば、私たちが向かうべき楽園に近い。前代未聞、荒唐無稽。果てなく空に浮かぶは天の庭。私たちは楽園に向かう。その道筋はまだ終わらない。 私の願い。君との楽園。海の先にそれがあるというのなら、千里を越えてみせようじゃないか。 ねえ、早く連れて行って。 失楽園の漆黒は、灼き尽くすような光へと冀望の翼を掲げる。
5 21/08/02(月)18:30:43 No.830391033
寒暖差が激しい!
6 21/08/02(月)18:31:40 No.830391340
呪いをうつすな
7 21/08/02(月)18:44:20 No.830395360
カフェの凱旋門…