21/07/29(木)23:31:02 (うっ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1627569062224.jpg 21/07/29(木)23:31:02 No.829002597
(うっわ、悲惨ねぇ……) タクール砦の上層部は、戦う以前から混乱していた。 「本国からの支援は期待できない、ここは破棄すべきだ!!!」 「ならぬ、ジャロウデクの地をこれ以上踏ませてなるものか!!!」 「本国の指示を待たずに攻め入るのか、命令があるまで守りに徹するべきだ!」 「それでは遅い! こちらから討って出ることで混乱を治めることにつながるのだ!!」 タクール砦直近の砦3つのうち、2つが陥落していた。おかげでこの砦には3つの砦の責任者が居り、砦間の派閥争い、積極派と慎重派さらに忠誠の対象の微妙な違いでどうしようもない争いが起きているのだ。唾を飛ばしあい拳を振り上げ顔を真っ赤にしたり青くしたりしたまま話し合いは続く。だが、それも人の営みであった。
1 21/07/29(木)23:31:37 No.829002891
何の音もない場所よりも遥かに良い。 (不足する音を補うように、次から次へと音が絡んで、主旋律が存在しないけどこれはこれで、いや、美しくはないなぁ) この旋律はカルリトス王子に捧げるべき物ではない。 (主旋律が存在しない?) 名目上でも4つの砦を統括する責任者が居る筈だ。立場が弱いのか、それとも不在なのか、イシルは改めて会議に参加する人物たちを見渡す。まとめ役が居ない。 「我々黒顎騎士団は、現状を伝えるために後方へ参ります。何か、伝えるべきことはありますか?」 「此処が戦線の突起部分となっているだろう。急ぎ一刃砦、三刃砦の復旧のための増援を――」 「いずれ反撃の橋頭保となる此処を死守する、増援をいただきたい」 「増援は欲しいがタクール砦を守り切れるとは思えん。穀倉地帯に防衛線が必須だ!」 「今後タクール砦が包囲される可能性がある。そうなれば幻晶騎士の維持は困難だ。補給線の確保を――」
2 21/07/29(木)23:32:06 No.829003141
「それぞれのご意見は理解しました。しばらく我々が駐留したいと存じます。ところで、この砦の責任者の方に指揮権をお預けしたいのですが――」 イシルは主要な意見を聞くと本題を切り出す。その場に沈黙が満ちる。理由のハッキリしない沈黙はあまり好きではない。 「あの?」 「司令官は、先程の戦の最中に戦死なされた」 口火を切った人物も、何かはっきりしない。 「それは、残念でした。それでは副司令は?」 「先程の戦中に、彼も名誉の戦士だよ」 「それは、激しい戦いだったのでしょうね」 「ああ、まぁ、そうだな」
3 21/07/29(木)23:33:25 No.829003811
=== 兵士を相手に爵位と階級を盾にすれば話の全容はすぐにわかった。一刃砦の防衛の最中、総司令官が任務を失敗した副司令官を罵倒したようだ。最終的に両者はティラントーで一騎討ちを初め、相打ちになった。ストレスのせいか副司令は近頃怪しげな薬に手を出していたとも聞く。 「日常的に罵倒していた副司令と、戦の最中に相打ち。しかも泥酔していたとか。世界は広いねー。いいわこれ、面白い歌に、ならないわ。バリッバリの武闘派のトップによる恐怖政治が各派閥を従え効率的に機能していた。けどその恐怖も消え、戦争って悲惨なのね、初めて知ったわ。此処には、この街には、今までにない悲惨で、面白い歌がたくさんある気
4 21/07/29(木)23:33:37 No.829003938
がする!」 メラニーは笑顔で話題を変える。 「しかし隊長、此処は砦二つと、ウチらを受け入れる余裕があるっスね?」 「タクール砦はね、他の酸要塞のための物資も保管してるのよ。此処さえ残っていれば、他の砦を奪われても敗走した兵士を受け入れ、即座の反撃が可能なのだけど――」 戦力は十分だが、指揮系統と方針の混乱で役に立たない可能性がある。早々にこの情報を早く持ち帰る必要がある。 「ハッキリ言って攻撃能力は失せたけど、タクールそのもの防衛能力は依然高いままよ。」 「負け犬同士傷をなめあって、もっと仲良くすればいいと思うんスけどねぇ?」 メラニーは心底不思議そうに小首を傾げた。 「この砦の司令官、出陣前に酒を飲むんだってさ。お酒なんて飲んだら、正しい旋律で歌えないのにね」 「マジっスか?」 「でもね、酔った人が歌う歌を聞くのは好き。素直に気持ちを伝えてくるから、歌は気持ちを伝えることが第一だからね。
5 21/07/29(木)23:34:11 No.829004194
=== 「とりあえず、城塞都市を歩き回ろう。ティラントーで!」 ディンガー中隊、タクール砦での最初の任務はイシルの一声で勝手に始まった。 砦ではあるが、周囲の三つの砦及びタクール砦の家族も住まう都市という側面もある。 「はい、私に続いて歌おう、歌いながらこの都市の地理をしっかり頭に叩き込んでね!!」 イシルの隊長としての振る舞いは意識せずともミナスの行動を模倣していた。歌うのは国家にしておく。 歌いながら、楽しげに、ティラントーの視界から都市を見下ろす。子供がこちらに手を振れば、イシルは振り返す。怪訝な顔をする者もいれば、ティラントーを近くで見ようと近づく者も居る。多少旗色は悪いが、人々は希望を失ってはいないようだ。 その中にティラントーを興味深げに見つめる商人風の男を見つけると、イシルはティラントーで一礼をする。
6 21/07/29(木)23:35:13 No.829004759
ティラントーは敵を滅ぼし凱旋し、剣と盾の役割を期待された機体である。 飛空船がそれを可能にしたが、それを失った今は剣としても盾としても期待できない。 戦闘レベルでは圧倒的ともいえる戦闘能力を持ったティラントーの弱みは何か、行軍中に嫌というほど味わった『総合的な行軍速度の低さ』に尽きる。 単純な鈍足と重量ゆえの負荷だ。ティラントーの綱型結晶筋肉を頻繁に取り換えるしか方法はない。そして現在物資が豊富にあるかと問われると、豊富ではない。 ゆっくりと行軍して負荷を抑えるしかないのだ。敵を逃しても追撃は難しい。守るべき民草や同輩へとティラントーの手は届かない。 網型結晶筋肉がタクール砦まで普及しているかと問われれば、東方様式に改修されたヴォラキーロの運用に必要な分は潤沢に確保できるがティラントー10機を追加すると十分かは疑問が残る。
7 21/07/29(木)23:35:46 No.829005066
結晶筋肉の負荷を抑えるため、イシルの中隊は小隊2つを法撃重視の戦闘をさせることで対応しようとしていた。杖を持たせるのである。 一部の旧式の魔導兵装、場合によっては幻晶騎士さえ商人に払い下げされている。イシルは先程見つけた商人から杖を借りることにした。防衛線で役立ててその価値を倍以上にして見せると吹いて。 イシル直下の切り込み部隊は、可能な限り軽量な装甲にする改修を行う。改修はしたが、資源消費の問題から訓練に多くを費やすことも出来ない。
8 21/07/29(木)23:35:56 No.829005182
訓練が困難な点を除けばタクール砦は良いところだ。指揮系統の混乱と勢力争いで好き勝手に行動できる。 明日、強固な城壁が破られ、この幸せがなくなるとは誰も思わないだろう。 ありのままを受け入れろという、呪いの言葉がイシルを苛む。 ありのまま戦況を受け入れれば、敵は間違いなくこの砦に危害を加える。 後方の穀倉地帯に危害を加えられた場合、この砦は三か月程度は持ちこたえるだろう。だがこの戦はいつまで続くかわからない。穀倉地帯への門番である三刃砦のは沈黙させられた。 他にも最悪の想定がいくつか脳裏をよぎる。 ありのままを受け入れろという、祝福がイシルを呪いから救う。 此処が故郷と同じになるだけだ。此処には故郷ほどの愛着はない。少なくとも、今は。
9 21/07/29(木)23:36:40 No.829005620
タクール砦を少数戦力で陥落させることは可能か? これがクシェペルカの要塞であればまた話は違っただろう。飛空船との戦闘経験のあるクシェペルカは対空戦闘能力を持っている。 しかしジャロウデクは未だに決定的な対空戦闘能力を持ってはいなかった。 「鬼面、来ました!」 鬼神に似せて作られた黄金の幻晶騎士の存在を隊員が告げる。 鬼面の乗る大型の盾のようなものにつけられた魔導噴流推進器、轟轟と音を立てる。 「今日こそ鬼の首を獲るよ!」 イシルは誰の許可も取らずにティラントーを駆り出す。 市街は幻晶騎士が通るには十分な広さを持つが、それ以上ではない。満足に戦うには狭く、建築物は身を隠すには低く、武器を振るえば邪魔になる程度には高い。 一方で鬼面は、上空で銃装剣を構えている。大口を開けた銃装剣はいやらしく触媒結晶を見せつけている。 「各自、散開しながら法撃をっ!!」
10 21/07/29(木)23:36:52 No.829005754
ティラントー達が散開しながらの法撃が始まる。しかし殆どが頭上の鬼面に届くまでに威力を減衰させ、盾が地へと向かって噴き出す炎が火炎の戦術級魔術を打ち消してしまう。 一方で、銃装剣は轟炎の槍を解き放った。ティラントーの大楯に直撃する。轟炎の衝撃は盾で防いだだけでは消えず、塵を巻き上げてティラントーの視界を奪う。 「どうした、もっと必死に抵抗しねえと俺一人に壊滅させられちまうぞ?」 銃装剣が吠え、戦術級魔法が次々とティラントーへと噛みつく。一方的な攻撃をされるのは前回と同じだが、今回の鬼面は地上へ降りるつもりがないようだ。 「第一、第二小隊っ、対空法撃陣形っ!」 第一小隊、第二小隊はティラントー二機で、ティラントー一機を担ぎ上げる。いくらか高さを得て砂塵から解放されたティラントーが鬼面へと法撃を行う。 火炎が再び宙を舞うが、一所に留まることのない鬼面を撃つのはやはり難しい。
11 21/07/29(木)23:38:48 No.829006837
「一撃くらいは持っていけッス!!」 杖二本、背面武装二門によるメラニーの法撃が鬼面へと向かう。 どこに逃げるにせよ、一撃は貰うように放ったが、銃装剣がそれを叩き落とす。 「無駄だ。無駄。それより今日は良い話をしに来たんだ。間もなくイレブンフラッグスのナードナック120機がここを攻めに来る。俺が助けてやろうか?」 拡声器越しの声はあまりにも愉快そうだった。 「お前は私達を攻撃し――」 「先に攻撃してきたのはそっちだろう?」 「いや、確かにそうだけど、どうして……」 「お前らに断る権利、あると思うのか?」 空から見下す鬼面に、イシルは言葉に詰まる。
12 <a href="mailto:s">21/07/29(木)23:40:56</a> [s] No.829008077
力強い味方ができました めでたしめでたし
13 21/07/29(木)23:45:33 No.829010493
ティラントーじゃ空にはどうしようもないんだよね
14 21/07/29(木)23:48:41 No.829011916
というか基本的に陸戦機で飛翔型はどうしようもない 飛翔型シルエットナイト自体が極めて希少だから露呈してないけど
15 21/07/29(木)23:50:04 No.829012615
今日コミック版読み返したけどイレブンフラッグス相手以外は割と被害者面出来る連中じゃないんだよなジャロウデク敗残軍 国策で軍人だからどうしようもないとは思うけど滅ぼされた国の生き残りはそんなこと知るかだし
16 21/07/29(木)23:52:47 No.829013770
カタログでメモ帳付いてたの見付けた時吹き出しそうになったわ
17 21/07/29(木)23:54:42 No.829014706
>国策で軍人だからどうしようもないとは思うけど滅ぼされた国の生き残りはそんなこと知るかだし 国策を誤ったバルドメロ王への愚弄は許さないぞ!
18 21/07/29(木)23:56:35 No.829015547
>>国策で軍人だからどうしようもないとは思うけど滅ぼされた国の生き残りはそんなこと知るかだし >国策を誤ったバルドメロ王への愚弄は許さないぞ! お前も愚弄してんじゃねーか!
19 21/07/29(木)23:57:12 No.829015805
>>国策で軍人だからどうしようもないとは思うけど滅ぼされた国の生き残りはそんなこと知るかだし >国策を誤ったバルドメロ王への愚弄は許さないぞ! そうやっておあしすするからグスターボさんが最終防衛ラインになるくらい追い詰められるんですよ まあ封建国家だから仕方ないけど…
20 21/07/29(木)23:57:58 No.829016145
ところで何だこのイカルガもどき?
21 21/07/29(木)23:58:06 No.829016203
そのグスターボさんが一人で大暴れしてついに全員弾き返して終わった辺りあいつ救国の英雄だもんな
22 21/07/29(木)23:58:39 No.829016421
>ところで何だこのイカルガもどき? ティラントーです
23 21/07/29(木)23:59:08 No.829016633
なんだコソ泥の機体か
24 21/07/30(金)00:01:29 No.829017696
グスターボってカスタムダルボーサできるまでなにのってたのあいつ
25 21/07/30(金)00:03:50 No.829018686
ソーデッドカノンとリフボードか…何だこのティラントー
26 21/07/30(金)00:18:02 No.829024614
>グスターボってカスタムダルボーサできるまでなにのってたのあいつ ティラントーとか色々乗ってたらしい 救国の英雄も乗った名機なんだよティラントーは
27 21/07/30(金)00:23:07 No.829026690
>ソーデッドカノンとリフボードか…何だこのティラントー ティラントーの残骸をレストアしてでっち上げたイレブンフラッグ謹製のイカルガ擬き
28 21/07/30(金)00:28:20 No.829028684
発想が完全にハイザックじゃねーか!!
29 21/07/30(金)00:30:17 No.829029390
しかしよくジェットスラスタを用意できたな ヴィーヴルの残骸利用としたら爆発メインかな? そしてそんなもん乗りこなす奴キモいな…