ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/07/28(水)23:24:15 No.828669143
格好つけることを覚えなさい。かつて大学の講習にやってきたベテランのトレーナーはそう言っていた。 私達はウマ娘を支え導くもの。 その為の知識を身に着け、君たちはトレーナーとしての道を歩もうとしている。 だが、彼女達に走りを教えるだけでは不十分だ。 彼女達の活躍が増えれば、自然と注目を集めることになるだろう。 その時に見られるのは彼女達だけではない。彼女達に寄り添うそのトレーナーも、また同じ様に色眼鏡にかけられるのだ。 普段がだらしなくともかまわない。 自分の担当に恥ずかしい思いをさせたくないのならば、せめて締めるところは締められる様にしなさい。 身なりを整え、大人として恥ずかしくない振る舞いをし、規範を示す。それもトレーナーの役割だ、と 社会人として身嗜みを整えるのは当たり前の事だし、中央のトレーナーとしても恥ずかしくない様、常に意識はしている。 だが、俺は果たして彼女に相応しい振る舞いが出来ているだろうか。
1 21/07/28(水)23:24:26 No.828669224
俺が担当するウマ娘、サトノダイヤモンドはいわゆる名家のお嬢様というやつだ。 対して俺は、本来決して彼女に縁があるような家の出ではない。 だが如何なる神のいたずらか――偶然にも俺達は出会い、幾度かの交流を経て、別れの際お互いにトレーナーとその担当ウマ娘として再会を誓い合った事があった。 そしてその約束は果たされ――俺はトレーナーとして、そして彼女はその担当ウマ娘として今ここに居る。 彼女――ダイヤは昔と変わらず俺の事を『お兄さん』と呼び、親しげに接してくれる。 まるで兄の様に慕ってくれる彼女に恥をかかせる真似をする訳にはいかない、と思った。 そのためにまず何をするべきだろうか。 そう悩んだ末、俺はダイヤに悟られぬよう密かに彼女のご両親にコンタクトを取り、頭を下げることにした。 「どうか俺に、マナーを叩きこんではくれませんか」 と。
2 21/07/28(水)23:24:43 No.828669331
お二人に理由を尋ねられた時、俺は『彼女の隣に立つのであれば、せめて相応しい振る舞いを覚えたい』と答えた。 ダイヤはとても素晴らしいウマ娘だ。 きっと将来、俺の思い描く未来よりも遥かに輝かしい舞台に立つと信じている。 だから、例えそれがメッキであろうとかまわない。せめて彼女の隣に立つ間は、その煌きに相応しいトレーナーでありたかった。 彼女のご両親は君に覚悟があるのならばと、快く了承してくれた。 そしてその伝手で、彼らが信頼する講師に指導を受けることになった。 トレーナー業との兼ね合いもあった為にマナー講習自体は月に何度かという少なさではあったが、その少ない時間で確実に物とするために俺は必死で学んでいった。 それは基本的な心構えの確認から始まり、細かい所作はもちろんの事、あらゆる食事のマナーやパーティーや社交界でのマナーなどの覚えられる限りありとあらゆるもの。 そうして半年程経った頃には、講師からどうにか合格点をもらえる程度にはなっていた。
3 21/07/28(水)23:25:06 No.828669480
皐月賞に向けて最終調整の為にトレーニングを続けていたある日の事だ。 「……お兄さん、変わりましたよね」 と、彼女にそういわれたのだ。 「そうかな」 「なんというか、立ち振る舞いに気品が見えるようになった気がします」 ダイヤの言う通り、意識して普段の振る舞いを変えるようになった。 意識してこれを続けていれば、そのうち自然とふるまえるようになるだろうと考えたのだ。 彼女からちゃんとそう見えたのであれば、ちゃんと成果はあったと言うことだ。 「君の隣に立つならこれくらいは出来ないとって思って。でも、まだまだだ。待っててほしい」 「……お兄さん、ちゃんとわかって言ってます?」 俺の言葉を聞いて、何故か怪訝そうな顔をしてこちらを見てくる。 ……変な事を言ったつもりはなかったのだけど。
4 21/07/28(水)23:25:20 No.828669560
「もちろん、わかっているさ」 「……本当ですか?期待して、良いんですよね?」 よほど信用されていないのだろうか。 分かってると言う言葉を聞いても、まだ不安そうにこちらを見つめている。 その顔を見てふと、彼女がまだ小さかった頃の事を思い出した。 時間が来てまた明日とお別れを言う段になった時、いつも寂しそうにこちらを見つめていたのだ。 だから俺はおまじないだ、と言ってこう言ったのだ。 ――約束しよう。そうすれば、きっとまた会えるから。 「約束するよ。待っててくれダイヤ」 あの時の様に、俺は彼女に約束する。
5 21/07/28(水)23:25:30 No.828669629
「……約束」 「ああ」 「……守ってくれましたもんね」 「ああ。今度だってそうさ」 その言葉を聞いて漸く安心したのだろうか。 こちらを見る彼女の顔からは、不安の色は消えていた。 「――わかりました、約束です! 待ってますからね♪」 そう言ってに笑う彼女の顔は、なんだか普段よりずっと輝いて見える気がした。 その笑顔を見て、俺は改めて誓ったのだ。 あの時の約束通り、彼女に相応しいトレーナーになろうと。 「その前に皐月賞だけどな」 「……ふふっ、そうですね」
6 21/07/28(水)23:27:40 [s] No.828670459
終わり ウマ娘の注目度が上がるとトレーナーも色眼鏡かけられそうだよね それはそれとしてサトちゃんとその家族総出で美味しく仕上がるお兄さんが見たい人生だった
7 21/07/28(水)23:28:04 No.828670607
ダイヤちゃん怪文書助かる
8 21/07/28(水)23:28:43 No.828670866
こうしてサトノダイヤモンドのお家では美味しい鴨葱が飼育されているのです
9 21/07/28(水)23:29:20 No.828671102
格好いいじゃないか…
10 21/07/28(水)23:29:34 No.828671187
これは10割お兄さんがわるい わるくない
11 21/07/28(水)23:30:08 No.828671402
親公認になるやつだ…
12 21/07/28(水)23:31:39 No.828672044
鴨が葱背負って鍋の準備してやがる...
13 21/07/28(水)23:32:24 No.828672354
自分から外堀を埋めにかかってるんじゃないよ!!!
14 21/07/28(水)23:33:51 No.828672872
いい...相応しい人になろうとするってカッコいいよね
15 21/07/28(水)23:37:24 No.828674228
寝る前に良い怪文書見れた ありがとう
16 21/07/28(水)23:45:11 No.828677163
娘が時折不安そうにしつつもずっと大切にしていた約束をかなえてくれた青年が これからも隣に居たいと…娘に相応しくあるためにとおそらくかなりの覚悟をもって頭を下げてきた
17 21/07/28(水)23:45:35 No.828677328
最終的にすごい気品溢れる振る舞いをしそうなお兄さんだ
18 21/07/28(水)23:47:25 No.828678029
礼節が人を作るからな…
19 21/07/28(水)23:47:38 No.828678111
ねえこれプロポーズ…
20 21/07/28(水)23:48:06 No.828678280
親から先に根回しとはね…
21 21/07/28(水)23:48:44 No.828678520
今日の少女漫画でもここまでコテコテな王子様いないだろうな…
22 21/07/28(水)23:50:08 No.828679030
親に挨拶は済ませた 相応しい気品も身につけた >「約束するよ。待っててくれダイヤ」 これは…成長系スパダリ…!
23 21/07/28(水)23:52:47 No.828680065
うーんこれはいつもの出だしではないけど鴨葱
24 21/07/28(水)23:53:59 No.828680569
鴨が葱背負って鍋の準備まで自分でしてる…
25 21/07/28(水)23:54:01 No.828680585
ダイヤちゃんが強制したとか頼んだとかじゃなく自主的に行動して完璧になろうとするあたりもう誤解されても文句は言えねぇ
26 21/07/28(水)23:55:01 No.828680978
>鴨が葱背負って鍋の準備まで自分でしてる… しかもちゃんと丁寧に自分に下味までつけて美味しくいただかれるようになってる…
27 21/07/28(水)23:56:03 No.828681398
そう…俺が相応しくないばかりにダイヤが誤解されるなんてあってはならない 必ず彼女を輝かせ続けられる男にならなくては
28 21/07/28(水)23:57:47 No.828682046
自分から美味しく食べられる準備してませんかね…?
29 21/07/28(水)23:58:34 No.828682318
すでに鍋に水を張って自分から浸かって出汁をとってる感じ
30 21/07/28(水)23:59:42 No.828682727
>>鴨が葱背負って鍋の準備まで自分でしてる… >しかもちゃんと丁寧に自分に下味までつけて美味しくいただかれるようになってる… セルフ式の注文の多い料理店だこれ
31 21/07/29(木)00:01:48 No.828683583
頂く側が確認取ってるのいいよね 逃げられない
32 21/07/29(木)00:03:00 No.828684018
自分から食べて下さいと来たんだ 誠意を持って家族で食べるのが義務だろ
33 21/07/29(木)00:07:05 No.828685627
ご両親公認の鴨葱鍋
34 21/07/29(木)00:08:10 No.828686100
鴨が葱背負って好みの味付けまで確認してきた…
35 21/07/29(木)00:08:47 No.828686366
行き違いがあってはいけないから確認したサトちゃんにわざわざ昔の言葉をなぞってまで約束したからね できあがるのを待つだけだね
36 21/07/29(木)00:09:51 No.828686834
これトレーナーはその気なんだよね? クソボケじゃないよね?
37 21/07/29(木)00:10:51 No.828687275
これって前宣言のプロポーズじゃ…
38 21/07/29(木)00:11:16 No.828687449
>これトレーナーはその気なんだよね? >クソボケじゃないよね? 君の隣にいるのに(トレーナーとして指導に支障が出なかったりマスコミに出ても大丈夫なように)ふさわしい男になるためだよ
39 21/07/29(木)00:11:41 No.828687592
その手のゲームなら間違いなくフラグになるレベルの行動をポンポン繰り出すんじゃない!
40 21/07/29(木)00:12:10 No.828687773
これにはサトちゃんのご両親もにっこり
41 21/07/29(木)00:12:15 No.828687814
講師代の支払いもいつの間にかうやむやになってそう
42 21/07/29(木)00:12:21 No.828687866
>これトレーナーはその気なんだよね? >クソボケじゃないよね? まぁクソボケだとしても土壇場で気づいて腹括るだろこのレベルのトレーナーなら…
43 21/07/29(木)00:18:59 [おまけ] No.828690350
三年目のクリスマスの夜。 「ダイヤ」 そう言って手渡したのは手の平に乗る大きさの、小さな青い箱。 「これは……」 「……開けてみてくれ」 「――!」 彼女は中身を見て思わず口元を抑える。 それは『あなたと共に』と刻印された、銀色の指輪だった。
44 21/07/29(木)00:21:02 [おまけ] No.828691203
まだ早いなんて、わかっている。 世間がどう見るかもわかっている。 だけど、それ以上に――彼女の気持ちに気が付いてからは特に――彼女を裏切ることはしたくなかった。 それは思えば、再会した時から既に決まっていた事なのかもしれない。 俺は覚悟を決めて言葉を発する。 「ダイヤ、俺と一緒になってほしい」 「はい、喜んで――」 そう答える彼女の目元には涙が浮かんでいる。 でも、それは決して悲しみから流れた涙ではなかった。 それは彼女が口元に浮かべた笑みが証明していた
45 21/07/29(木)00:21:25 No.828691335
スパダリ過ぎる…
46 21/07/29(木)00:22:16 No.828691676
ちゃんと自覚した上で自分から行くとは…
47 21/07/29(木)00:22:19 [s] No.828691696
コッテコテの王子様って良いよね
48 21/07/29(木)00:23:08 No.828692016
全てを悟って食べられに行った…コイツはデキる鴨だよ…
49 21/07/29(木)00:23:48 No.828692307
この鴨なら任せられるな...