21/07/26(月)13:22:17 「勝っ... のスレッド詳細
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21/07/26(月)13:22:17 No.827753445
「勝った……勝ったわよ……！私が、この年の一番……！」 有馬記念を走り抜け下馬評を覆して1着に躍り出たキングヘイローは、インタビューを終えて地下道を勝利を噛みしめながら歩いていた。 年末総決算と言われるGⅠレースの一着。これだけの大戦果を上げれば、あの偏屈な母親だって納得させられる……！ そんなことを考えながら勇み足で控室に戻っていく。早く母親に連絡しなくては、反応が待ちきれない。 そして、一つの控室を通り過ぎようとした、その時だった。 「うああああああっ……！」 「！？」
1 21/07/26(月)13:22:50 No.827753623
廊下にも響く勢いで、その控室から泣き声が響き渡った。 (何よ、負けたくらいでメソメソと……) キングからすれば、一度や二度の敗北などでへこたれてはいられなかった。どれだけ世間で逆風が吹こうと、どれだけ周りが気遣うように行く手を阻んでも、立ち止まるわけにはいかなかった。 けれど、何となく後ろ髪を引かれる気持ちになって、その控室の前で立ち止まってしまった。 「ごめんっ…ごめんなさいっ……とれーなーさんっ……！」 「いいよ、君はよく頑張ったとも」 「でもっ、これが、とれーなーさんの最後の……っ！」 「いいさ、君が懸命に走ってくれただけで、僕はとってもうれしいんだ……」 「でもっ、でもぉ！約束したのに！絶対一着、届けるって……！」
2 21/07/26(月)13:23:25 No.827753812
取るに足らない、敗者の泣き言だった。 歴史を遡ればこんな事例はあくびが出るほど見つけられるだろう。なにかの記念に勝利を送りたかった、なんて煎じ過ぎてもはや味がしない。 だのに、 (……どうして) 視界がやおらに暗くなる。 眩しいくらいに蛍光灯が照らすのに、自分の手すらぼやけて見える。 (……なんで) そうだ、あんなの取るに足らない。18人中17人は多かれ少なかれあの経験をする。あの子だけじゃない、一緒に走った、あの子たちも…… (……っ！) 思わず駆けだした。
3 21/07/26(月)13:23:38 No.827753871
揺さぶられる。他愛ないやり取り一つが、釘のように深々と刺さる。 (私にはっ…才能があるのよ……！それを証明しきゃいけないの……！) 顔が熱くなって、裏腹に心はどんどん冷え込んでいく。 (そうよ、レースなんて残酷なのよ。私だって、何度も負けてきたもの) 歯を食いしばって、無意識に算出されるルートをがむしゃらに駆け抜ける。 積み上げて抱えたものが崩れるのを、走ってバランスを取るように、無我夢中で。 (そう……残酷……なのよ……) 彼女の走った軌跡が一瞬きらめいた。
4 <a href="mailto:s">21/07/26(月)13:24:09</a> [s] No.827754015
スレ見てたらいつの間にか誰も笑顔にならない有馬記念が出来上がってました
5 21/07/26(月)13:25:53 No.827754540
いい…
6 21/07/26(月)13:26:07 No.827754602
私はいいと思う
7 21/07/26(月)13:26:16 No.827754640
キングが泣かせた