21/07/24(土)23:00:13 わたし... のスレッド詳細
削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。
21/07/24(土)23:00:13 No.827155064
わたしとお兄様は、タクシーに乗ってトレセン学園まで戻っていました。日経賞での勝利と、天皇賞(春)に向けてのインタビューの帰り道。今日はインタビューだけでなく、勝負服を着ての軽い撮影もありました。正直インタビューも撮影も慣れなくて緊張したけど、でもみんなにライスの事を知って貰えると分かっていたから、口下手なわたしだけど精一杯話して、カメラのフラッシュも我慢する事ができました。 「ライス、疲れたかい?」 「ううん。大丈夫、だよ」 今日の雑誌記者のお姉さんはデビューからライスに注目してくれてる人で、ライスの緊張癖もお見通し。だから時折ふざけてライスの緊張を和らげてくれてとても楽しかった。でも疲れたのは事実で、溜息一つ出ちゃうのはごめんなさい。
1 21/07/24(土)23:00:52 No.827155402
「お兄様。その、あの人……兄さん、から連絡あった?」 わたしはインタビュー中も撮影中も気になっていた事をお兄様に聞きます。今日一日ずっと頭の中でぐるぐると回っていました。 「いや、まだ来てないな」 「そっか……」 今日何度繰り返したか分からないやり取り。その度にわたしは落胆します。昨日の別れ際、彼がわたしの問いに答えてくれなかった事が気がかりで、しょっちゅうお兄様に連絡の有無を聞いてしまうのはそれが原因でした。 「……なぁライス。つかぬ事を聞くけど……」 お兄様は言いにくそうに、でも聞く覚悟を持った声色でライスを真っ直ぐに見つめます。 「お兄さんは本当に、ライスのお兄さんなのか?」
2 21/07/24(土)23:01:44 No.827155795
「……ううん。兄さん、とライスは、元々他人だよ。『父さん』も、『母さん』も」 「そう、なんだ」 「でもね、兄さんとわたしは偶然に出会い、一緒に育ったの。『父さん』と『母さん』とも出会って、そしてわたし達は家族になった。兄さんはね、わたしと一緒なんだ」 お兄様に初めて話す、ライスの“家族”と、家族の話。全部は言えないけど、それは過去の罪の告白に繋がるもの。 「……それは、前言ってたライスの不幸の話?」 「……うん。周りの人をいっぱい不幸にして、そして今、罰としてわたしは不幸に、兄さんは、ひとりぼっちになっちゃった」 「……そうか」 「お兄様は、ライスに言ってくれたよね。罪を犯したとしたも、ライスが一生懸命生きて走って、人々を笑顔にする事で罪は償える、死んで償うのは間違ってる、って」 「俺の、持論だけどな」
3 21/07/24(土)23:01:48 No.827155835
待ってた
4 21/07/24(土)23:02:28 No.827156196
「ううん。ライスは、お兄様の言葉でとっても救われたよ。でも、兄さんにはそう言ってくれる人がいなかったと思うの。それで兄さんは今、とっても苦しんでる。だから、お兄様にライスが教えてもらった様に、兄さんにはライスが教えてあげないと、って思うの」 「うん。ライスが適任だよ。ライスなら、きっと伝えれるよ」 「……うん。ありがとう、お兄様」 わたしは腰の短剣を革製の鞘の上から撫でる。 「今まで聞いてこなかったけど、その短剣は大事なものなのか?」 「うん。これはね、『母さん』……ううん、お母様がくれた、お守りなの」 「お守り……?」 「うん。どんなに辛く苦しい事があっても、無事に戻って来られる様に、って。お母様も使ってたお守り。だからデザイナーさんにお願いして、勝負服に入れて貰ったの」 「そうか。大事なお守りなんだな」 「うん。昔ライスの誕生日にね、初めてお母様がお話ししてくれたの。他にも色んな事、全部」 ライスが一つ歳を重ねた日。『母さん』の声を初めて聞いた日。『母さん』がお母様になった日。大事な家族が増えた日。
5 21/07/24(土)23:03:07 No.827156547
「そうだったのか」 「うん。わたしのライスシャワーって名前も、お父様が付けてくれたんだよ、って。昔お父様が教えてくれた、幸せを願う祝福の雨」 「本当に、良い名前だよね」 「えへへ。この勝負服もね、お父様が昔買ってくれたドレスを元にしてるの。一度も話した事ないのに、わたしが青いバラが好きなの、お父様は知っててくれてたんだ」 「仲の良い家族だったんだな」 「……ううん、一緒に居た時は、そうでもなかったんだ。『母さん』は無口で、『父さん』は厳しくて。でも、今はとっても良い家族だなって思ってるの。お父様にもまた会えたら、いっぱいお話ししたいな、って」 「きっと、いつかまた会えるさ。家族なんだから。お兄さんとも、また会えたんだからさ」 「……うんっ!」
6 21/07/24(土)23:03:18 No.827156648
そこでタクシーはトレセン学園前に着きました。わたしとトレーナーさんはタクシーを降りて。 「その時が来たら、俺にも会わせてくれよ?」 「うんっ。絶対、紹介するね!」 そう言って微笑み合い、門の方へ歩き出しました。
7 21/07/24(土)23:03:43 No.827156868
前半 fu189210.txt 後半 √AB分岐まで fu189212.txt √A fu189216.txt √BC分岐まで fu189224.txt √B fu189228.txt
8 21/07/24(土)23:04:03 No.827157050
√B 胸を狙う → √C 短剣を狙う
9 21/07/24(土)23:04:26 No.827157281
ナイフを水平に振り抜く。 ナイフの切先が狙う先は、短剣の腹。 短剣とナイフが交錯する。 金色のバラの装飾の真ん中に突き立ったナイフ。 ぴし、と罅割れる音がした後、短剣は根本から砕け散った。
10 21/07/24(土)23:04:51 No.827157470
体勢を崩した僕と彼女は正面からぶつかり、お互いの位置を変える形で通路を転がった。僕と彼女は起き上がり、向かい合う。彼女は砕けた短剣を見て、そして僕を見た。 「どう、して」 「逃げてくれ」 彼女の目を真っ直ぐ見てはっきりと言う。彼女の短剣は砕いた。彼女はもう、闇に潜むものではない。 「僕はキミを“処理”したと報告する。それでしばらくは時間が稼げる。追っ手が来たとしても、襲われた事でキミへの警備は強化されるはずだし、あの学園なら容易くは侵入出来ない。安全だ」 僕は一気に捲し立てる。“処理”命令が来てからずっと考えていた、彼女を護る為の方法。 「キミは、しばらく学園から出ないで欲しい。そして必ず誰かと一緒に居て欲しい。出来ればお兄様、あのトレーナーと。頼む」 喋り慣れない口を懸命に回す。どうか聞き入れて欲しかった。彼女を危険に晒さないために必要な事だから。
11 21/07/24(土)23:05:11 No.827157645
彼女は俯いた。先程まで自分の命を狙っていた者の言葉なんて聞き入れてくれないか。やはり都合が良過ぎたか。僕が内心焦り始めた時、彼女はぽつりと呟いた。 「……アナタは……?」 「……え?」 「アナタは、どうするの……?また、何処かに行っちゃうの……?」 「僕、は……」 彼女の問いに言葉を詰まらせる。考えてはいた。『父さん』から離反して、これから僕が行く先。各地を転々とし逃げるのか、彼女から離れ身を隠すのか、生きるのか、死ぬのか。色々と考えついてはいたが、薄らと朧げながら僕は、その行く先を欲していた。 「僕は、キミを守る」 僕の欲する事。したい事。それは、望みだった。 「キミの近くで、影からキミへの脅威を排除する」 「……アナタ……!」
12 21/07/24(土)23:05:34 No.827157833
「僕は、キミの」 彼女の背後の闇に、人影が見えた。 「ライスッ!!」 「ひゃっ!?」 彼女の腕を掴み引き寄せる。つんのめる様に前に倒れた彼女は、寸での所で背後から伸びてきた手から逃れた。倒れた彼女を庇う様に前に出る。睨み上げるその先には。 「え……!?」 自分を襲おうとした者の姿を見て驚愕の声をあげる彼女。無理もない。『父さん』が直々に出て来るなんて僕も想定していなかったから。
13 21/07/24(土)23:05:59 No.827158052
『父さん』が右手をあげる。その手には、ハンドガン。 「ッ!!」 僕が咄嗟に彼女を抱えて並ぶベンチの隙間に飛び込んだのと、発砲音は同時だった。 彼女を先に押しやり、僕は腰のグロック19を抜いてベンチの背面から銃だけを出して撃つ。一発、二発。当たるはずもないが、牽制にはなるはずだ。再度の発砲音に直近の木製ベンチの背面が砕け散る。『父さん』からの応射。位置はバレている。腕で飛び散る木片から顔を守りながら更に牽制の二発を撃ち後退る。残弾は、七発。 彼女はベンチの横、アーチ状に連なる柱の陰にいた。『父さん』の射線が通らない位置。任務から離れていても、叩き込まれた事は彼女の身に染みている様だ。見れば彼女の左頬に少し切り傷がある。『父さん』の手から逃れる際にナイフの切先が掠った様だ。本当にギリギリだったのだとゾッとする。他に大きな怪我は無さそうだった。
14 21/07/24(土)23:06:27 No.827158291
「どうして、『父さん』が……?」 「……多分、僕を見張ってた」 小声での彼女の問いに、僕は薄々感じていた事を返す。恐らく『父さん』はあの命令で僕が日本に向かうのが分かっていた。そして彼女の“処理”任務を躊躇う事さえも。『父さん』に僕の動きは読まれていた。 「キミは、逃げろ」 入って来た大扉を指差す。事前に調べていた結果だとこの建物の出入り口は正面のあの扉と、左手奥のスタッフ用のみ。スタッフ用は『父さん』の背後。出られるのは正面だけだ。 「アナタは……!?」 「僕は『父さん』を食い止める。キミは外に出て、警察を呼んで来てくれ」 先の僕の襲撃で通報が入っているはず。警察が来れば『父さん』も撤退せざるを得ない。それまで僕が持ち堪える。彼女は車よりも速いウマ娘だ。きっと誰よりも迅速に誘導出来る。
15 21/07/24(土)23:06:49 No.827158507
「頼む。それしかない」 彼女も、僕も生き残るには。彼女は一瞬逡巡し、そして花の様に広がる意匠の袖口を捲る。彼女の細い右手首には、長い革紐で結ばれた小瓶が巻き付けられていた。彼女はそれを解き掌に載せて僕に差し出す。 「……生きて、帰ってきて……!」 僕は懐から革紐を引っ張り出し、そして彼女から受け取ったそれも首に掛ける。僕の胸元で揺れる二つの小瓶。小瓶の中には、白い小粒。 「うん、必ず」 僕は彼女の頬の血を拭い、二つの小瓶を握り締め誓った。彼女は強い眼差しで僕を見つめた後、優しく微笑んだ。
16 21/07/24(土)23:07:11 No.827158717
僕は柱の陰でグロックを構える。『父さん』に動きはない。僕はおおよその狙いを定めて。 「行って!」 彼女が駆け出すと同時に柱から半身を出し、牽制射を二発。応射が来るが、狙いはどちらからも逸れている。その間に彼女は建物の角まで辿り着いた。残り、大扉まで遮蔽物は無い。僕は注意を引き付けるため発砲炎が見えたベンチの陰に二発撃ち込む。応射は、ない。彼女の影が開いた大扉の隙間に滑り込んだのが見えたのを確認して、僕は柱の陰に潜り込んだ。残弾は、三発。 一息付いた僕は『父さん』との対峙方法を考える。『父さん』は強い。体術の訓練では一度も勝つ事はなかった。銃器の扱いも僕より断然に上手い。正面から当たっても勝ち目がある相手ではない。どうする。
17 21/07/24(土)23:07:37 No.827158941
「『父さん』。質問があります」 呼び掛ける。技術で勝てないのなら、搦め手で時間を掛ける。僕らが教え込まれたのは相手を一撃必殺で叩く方法、相手に精神的に揺さぶりを掛ける訓練は受けていない。でもやらなくてはいけない。『父さん』に勝つ可能性を引き寄せるために。生き残るために。 「なんだ」 一拍の間の後、声が建物に響く。『父さん』は応えてくれた。僕は揺さぶれるかは分からないが、ずっと考えていた疑問を口にする。 「何故、今『母さん』と『姉さん』に“処理”命令が出たのですか」 「それは、任務の遂行に必要な情報か?」 「ありません。でも答えてください。何故ですか」 授業でも任務説明でも言われた事のある、言外に必要ないと含ませた『父さん』の声。今まではそれ以上聞く事は無かった。『父さん』が必要無いと言えば必要無い事だったから。でも今は引き下がらない。これは答えを聞かなくてはいけない。
18 21/07/24(土)23:07:55 No.827159099
静寂が建物を包む。『父さん』は逡巡している様だった。そして。 「良いだろう。教えよう、息子よ」 『父さん』の最後の授業が始まった。
19 21/07/24(土)23:08:15 No.827159259
「我々の国での立場は理解しているか?」 「……いいえ」 「我々は政府側の始末者だ。秘密裏に統括され、政府に都合の悪い者を殺す猟犬。貴様らが“処理”してきたのは、危険思想犯と政府に定められた市民だ」 明かされたのは僕と彼女の立ち位置。初めて知るターゲットの“処理” 理由。思想犯と言えど犯罪者ではない、市井で過ごす市民達。僕は音を立てずに移動する。建物内は反響し声だけでは位置は特定出来ない。『父さん』の位置を探る必要がある。 「そして我が政府は市民派と呼ばれる主導者無き集団に反乱を起こされた。これは理解しているな?」 「はい。四年前から、国は内乱状態になりました」 「宜しい。そして三日程前に市民派のクーデターは政府軍に鎮圧され失敗に終わった。ここから考えられる事は?」 思考を促す言葉。彼女と共に受けた授業でも度々あった。最初は意味も分からず混乱したが徐々に答えられる様になっていった。例え間違っていても『父さん』は否定せず、答えに辿り着くための情報を出してくれた。求められるのは完璧な答ではない。答を探す思考そのものだ。自分で考えられない兵士は戦場で死ぬだけだ、と『父さん』からは常に言われていた。
20 21/07/24(土)23:08:42 No.827159485
「更なる市民への、圧力です」 歴史に学べば反乱に失敗した者は徹底的に叩き潰され服従を強要される。人間の闘争の歴史は変わらない。勝って私服を肥やすか、負けて全てを奪われるか、だ。 「その通り。だが政府はやり過ぎた。市民への重責、政府内の度重なる粛清、非戦闘市民への過剰な鎮圧行動。今回のクーデターでそれらが明るみになった事で世界中から非難を受け、国連から圧力をかけられ、列強の参入を拒めなかった」 高度なネットワークが発展した事で発生した国際社会からの非難、制裁、介入。更に市民一人一人が発信者となり得るソーシャルネットワークの発展は、容易に隠された暴虐の裏側を暴き出す。それは現代社会における例外。黙殺されて来たモータルの逆襲。 「それにより政府は今その内情を暴かれようとしている。此処から考えられる事は?」 「……政府に、都合の悪い者を、暴かれる前に排除しろ、と?」 「そうだ。それが答えだ」 つまりは“処分”。『母さん』も『姉さん』も僕も消耗品扱い。都合の良い様に調教し散々使い倒した後に要らなくなったから捨てる。歯を食いしばる。ごぽり、と感情が泡立った。
21 21/07/24(土)23:09:04 No.827159656
最後方のベンチの陰から飛び出す。『父さん』はやはり中央の通路に居た。建物のほぼ中央。駆けながら左手でサポートするグロックを撃つ。撃つ。撃つ。『父さん』からの応射が至近を掠める。残弾はゼロ。撃ち尽くしたグロックを投げつける。『父さん』はグロックを上体を振って回避する。隙。僕は『父さん』の首目掛けてナイフを突き出した。『父さん』は、更に上体を振り右手で僕の突き出した右腕を受け流して。 「が、ヒュッ」 飛び込んだ僕に左肘を突き入れた。肘が肋骨にめり込む。肺の空気が一瞬で押し出され呼吸が止まる。痛みで力が抜ける。僕はナイフを落とし、なす術なく後ろに倒れ込んだ。 「ゲッ、ガ、ッ」 「動きが直線的だ。読み易い」 『父さん』は倒れ込んだ僕に。 「だから、死ぬ」 逆手に握り直した左手のナイフを振り下ろす。
22 21/07/24(土)23:09:28 No.827159865
僕の眉間目掛けてナイフの切先が迫る。死が迫る。死ぬ。死ぬ。死ぬ。彼女との約束が果たせない。 彼女の微笑みが浮かぶ。 僕は、痛む脇腹に力を込めて思い切り首を振る。『父さん』のナイフは僕の右肩を貫いた。僕はナイフを掴む『父さん』の左腕を両手で掴み。 「グ、ガァアアアアアアアアアッ!!」 両脚で父さんを上に蹴り上げた。『父さん』はナイフから手を即座に離して空中で身体を捻り、膝立ちで着地する。僕は肩に刺さるナイフを抜いて我武者羅に身体を突き進め、銃を構え直す『父さん』に飛び込んだ。 パァン、という発砲音と、ナイフの突き刺さる感触。 弾丸は僕の左脇腹を貫通し、ナイフは『父さん』の左胸を貫いた。
23 21/07/24(土)23:09:47 No.827160018
柄を捻る。刺し傷が広がり鮮血が滴り落ちる。絨毯に黒い染みが広がる。僕と『父さん』の足元に。 「強く、なったな」 『父さん』の声。その声は初めて聞く声色だった。 ごとん、と足元で音がした。 黒い染みの上に、ピンの抜かれた手榴弾。 咄嗟に後ろに飛び退る。前のめりに倒れる『父さん』。 閃光と衝撃が、弾けた。
24 21/07/24(土)23:10:06 No.827160191
僕は仰向けに倒れていく。天窓のある天井が見える。 差し込む月光を反射し、ゆっくりと舞う白い粒達。 それは、米だった。 胸元の二つの小瓶が割れ、溢れ出た少量の米粒。 空中で煌めく米は、あの日見たライスシャワーの様で。 僕は引き延ばされた時間の中でゆっくりと目を閉じた。
25 21/07/24(土)23:10:27 No.827160389
「アナタッ!!」 爆発の反響が収まった教会にサイレンが遠く響き出す。大扉から駆け込んで来たのは深い紫色のドレスを着た少女。少女は煙で視界の悪い 中、通路に倒れる人を見つけ駆け寄る。 「あ、あぁっ……!あぁ、嘘、アナタ……!アナタ……ッ!」 少女は仰向けに倒れる男性に触れるが、男性の目は閉じられたまま。反応は無い。男性の服は至る所が裂け血が滲み出ていた。特に左脇腹と右肩からの出血が酷く、下半身はズタズタだった。 「あぁ、あぁ……っ!嘘、うそ、やだ、やだよぉ……!」 男性の胸に縋り付いて泣き出す少女。サイレンは音量を増した後に止み、数々の点滅する赤い光が教会の外の夜を彩る。
26 21/07/24(土)23:10:49 No.827160580
「ライスッ!!」 スーツ姿の男性が扉から飛び込んでくる。男性は教会内を見渡し月光に照らされた惨状に顔を顰めた後、少女の姿を見つけ駆け寄る。 「ライス、大丈夫か!?」 「ッ、お兄様!この人がっ、この人が死んじゃうよぉ……!」 ぐしゃぐしゃに泣き腫らす少女。スーツの男性は倒れる男性の傷を見てまた顔を顰め、男性の首に手を伸ばす。少女はその姿を呆然と眺める。 「……まだ、脈はある!そのまま安静に!救急車呼んで貰う!」 「っ!お兄様っ、お願い!お願い……っ!」 スーツの男性は再度駆け出して扉から出て行く。入れ替わりで沢山の警官が教会に入ってくる。少女は男性の頭を自分の膝に載せて抱き抱える。 「あぁ、死なないでっ……!帰って来て……っ!」
27 21/07/24(土)23:11:09 No.827160737
月光が優しく二人を包む。 「……ありが、とう……っ」 少女の零した涙が男性の頬に落ちた。
28 21/07/24(土)23:11:28 No.827160903
『……昨夜九時半頃、府中市で発砲事件があり、犯人と思われる外国人一人が死亡しました。事件があったのは東京都府中市で、近くのトレセン学園に通う女子生徒一人が路上で何者かに襲われ、通報を受けた警察官が駆け付けた所、付近の結婚式場の敷地内で犯人と思われる外国人一人が死亡、また助けに入ったと思われる別の男性一人が意識不明の重体で発見されました。襲われた女子生徒一人は怪我を負いましたが、命に別状はなく軽症で済んだとの事です。警察はテロや暴力団の抗争、海外マフィアの流入などと考え、付近の警備を強化し捜査しています……』
29 21/07/24(土)23:11:48 No.827161093
√C End roll Love Song/平沢進 https://youtu.be/UVO8FoKpcOU Lotus(remix)/平沢進 https://youtu.be/X9muQIB-q_A
30 21/07/24(土)23:12:14 No.827161322
全√終わり。 暗殺者ライス此処に完結です。最後までお付き合い頂きありがとうございました。私は心の弱い絵本の書き手なので全√殺すつもりだったが耐えきれなかった。すまない。
31 21/07/24(土)23:12:33 No.827161491
やったーハッピーエンドだ…助かった…
32 21/07/24(土)23:12:47 No.827161582
初怪文書の初期案ネイチャもよろしくお願いします。 お弁当騒動 fu189232.txt キャラスト fu189239.txt
33 21/07/24(土)23:12:54 No.827161648
生き残った...よかった...
34 21/07/24(土)23:13:54 No.827162173
全エンド殺してたらロッカーに入れて蹴りまくるところだった
35 21/07/24(土)23:14:01 No.827162239
嘘でしょ…初期案ネイチャと同じ人なの…?! 色んな話かけるもんだなぁ…すごいわ
36 21/07/24(土)23:15:11 No.827162791
以下イメージソングとはあまりにおこがましいけど書く時聞いてた平沢進。全「」平沢進聞け。 前半 生まれなかった都市(10:58より) https://youtu.be/88h5noIWACg Rubedo(赤化) https://youtu.be/2hYWxOfIAJ8 確率の丘 https://youtu.be/OniD9HHaF4A 電光浴(default version) https://youtu.be/OHf0PsFHAhM Albedo(白化) https://youtu.be/bdkk7ddqw08 後半 賢者のプロペラ-ll https://youtu.be/cUKUIMqCaKgI
37 21/07/24(土)23:15:19 No.827162878
これで大本の政府も話が明るみに出てほしくないから『兄妹』は放置されてくれるといいけど… それにしても『父』の死はつらい
38 21/07/24(土)23:15:31 No.827162982
Rocket Shoot ll https://youtu.be/ZJQUJxQ08Ms Timelineの東 https://youtu.be/TzG3VQ9kTIk Big Brother https://youtu.be/hOrTU2NNDVQ Mermaid Song(remix) https://youtu.be/nfeaJAjdkvc Blind Art(突弦変異) https://youtu.be/zP4hJhHqFPw ホログラムを登る男 https://youtu.be/EnfPLIYuoQM Archetype Engine https://youtu.be/fsG9A-PxxBU
39 21/07/24(土)23:15:59 No.827163197
以下ただ紹介したいだけの平沢進。全人類平沢進聞け。 白虎野の娘 https://youtu.be/x07HqlAufR4 Switched-on Lotus https://youtu.be/GgLQwE62_Q4 TOWN-0 PHASE-5 https://youtu.be/BsQSESNmzAA Day Scanner https://youtu.be/BMeeGS3VBS4 灰よ https://youtu.be/AjITvchkHFQ Nigredo(黒化) https://youtu.be/_i7Ixk82yLQ Lotation(Lotus-2) https://youtu.be/8rNUPVWPquE
40 21/07/24(土)23:16:06 No.827163251
平沢師匠いいよね…
41 21/07/24(土)23:16:23 No.827163390
ちょっと待って後日談とかないの!? 折角再会できたのに…ライスとアナタの物語はここからでしょ!
42 21/07/24(土)23:17:03 No.827163693
お母様も生きてるからライスの日常は守られたかな
43 21/07/24(土)23:17:13 No.827163769
待ってくれたまえURLの洪水を一気に浴びせかけるのは!
44 21/07/24(土)23:17:44 No.827164011
>これで大本の政府も話が明るみに出てほしくないから『兄妹』は放置されてくれるといいけど… >それにしても『父』の死はつらい 話的に『母姉弟』か『父』のどちらかが死ぬのは避けられませんでした 厳格な父が家族になるには政府に近すぎたのです
45 21/07/24(土)23:18:45 No.827164448
>ちょっと待って後日談とかないの!? >折角再会できたのに…ライスとアナタの物語はここからでしょ! √C後の僕はライスの証言で厳罰され罪を償った後にライスとお兄様とお母様に支えられて真っ当な人生を送りいつかウマ娘トレーナーになる、かもね。
46 21/07/24(土)23:18:51 No.827164485
そういう圧かけるとかえって聴いてくれなくなるよ
47 21/07/24(土)23:20:17 No.827165163
>そういう圧かけるとかえって聴いてくれなくなるよ 音楽は宗教と思ってるので相容れない人もいるとは分かってますがどうしても布教はしたいのです
48 21/07/24(土)23:20:24 No.827165214
まあ作業用BGMは確かに気になるところではある
49 21/07/24(土)23:21:06 No.827165525
>「強く、なったな」 >『父さん』の声。その声は初めて聞く声色だった。 >ごとん、と足元で音がした。 >黒い染みの上に、ピンの抜かれた手榴弾。 >咄嗟に後ろに飛び退る。前のめりに倒れる『父さん』。 >閃光と衝撃が、弾けた。
50 21/07/24(土)23:23:32 No.827166529
父さん……
51 21/07/24(土)23:24:25 No.827166852
√C fu189399.txt
52 21/07/24(土)23:24:31 No.827166899
雑談での句読点とかヒで見るようなオタク構文が気になってすまない 本文はとても良かった
53 21/07/24(土)23:25:30 No.827167308
>No.827165525 最後までありがとうございます…とても嬉しいです…
54 21/07/24(土)23:26:58 No.827167895
>雑談での句読点とかヒで見るようなオタク構文が気になってすまない >本文はとても良かった ネタ浮かんでからテンション上がりすぎて馴れ合いすぎたのは反省してる 以降は「」に徹します
55 21/07/24(土)23:27:53 No.827168242
よかった生き残った… でも親父さん…
56 21/07/24(土)23:38:04 No.827172596
>「あぁ、死なないでっ……!帰って来て……っ!」 >月光が優しく二人を包む。 >「……ありが、とう……っ」 >少女の零した涙が男性の頬に落ちた。
57 21/07/24(土)23:39:54 No.827173419
アクションシーンがいいよねこのシリーズ そこらへんも良かった
58 21/07/24(土)23:43:02 No.827174754
>No.827172596 ありがとうございます…書き続けられたのもあなたのおかげです… 絵本の最終話にふさわしい挿絵です…
59 21/07/24(土)23:51:30 No.827178090
一本の映画の様だった…
60 21/07/24(土)23:52:20 No.827178396
終
61 21/07/24(土)23:55:22 No.827179571
>No.827178396 最後までありがとうございます!!!
62 21/07/24(土)23:55:56 No.827179769
絵「」です 元々「」たちの雑談と私の落書きから始まったというこのシリーズを全て見ることができて感激しています スレ「」には感謝しかありません ありがとうございました!
63 21/07/24(土)23:57:26 No.827180357
いいものを見た ありがとう