ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/07/22(木)23:04:37 No.826337388
じめじめとした熱気が肌で感じられるようになってきた今日この頃、本日の天気は曇りのち雨。 トレセン学園近郊の高級ホテル12階、劇場近くのカフェテリア。 URAファイナルズ初年度覇者とはいえ、直近に出走を控えているわけでもない いちウマ娘へのインタビューの場には張り込みすぎだと思うが、 組み合わせが組み合わせだから仕方がないのだろう。 人の期待に応えることこそが至上の喜びであるエンターテイナー・フジキセキ。 なんでも勝手に喜んで自己完結する暴走特急記者・乙無史悦子。 相性が良すぎて最悪、といったところだろうか。
1 21/07/22(木)23:04:56 [s] No.826337530
「とはいえ、ここまで長引くとは思わなかったな」 「あはは。ごめんね?」 フジキセキの今後の路線や方針が今日のテーマだったはずだが、取材は無尽蔵に盛り上がり、 話題はフジの魅力から今後のレース界まで方々へ広がった。気付けば予定の時間を1時間オーバー。 乙無史記者に見送られながら下りのエレベーターに乗る頃には、 雨音どころかごろごろと雷鳴が聞こえ始めていた。 「俺はかまわないけど、疲れてないか? 無理はしないでくれよ」 「大丈夫。すごく楽しかったよ」 「そりゃあ良かった」 相変わらずだな、と苦笑しながら1Fを示すボタンを押す。 ぐ、とGがかかりエレベーターが動き出す感覚とほぼ同時に、凄まじい轟音が響き渡った。
2 21/07/22(木)23:05:16 [s] No.826337701
「……雷か。いやあ、幾つになってもビビるな」 「ずいぶん近かったね……あれ?」 逆向きのGがかかり、エレベーターの動きが止まる。 ばつんという音がして室内が真っ暗になり、しばらくしてぼんやりと非常灯が灯った。 「停電……かな?」 「あの近さだったからな。何かしら飛んだんだろう」 まあ、最近のエレベーターは地震や停電があっても、よほどのことが無ければ すぐに非常用の動作で近くの階まで移動してくれるという。心配はないだろう。 そう言って視線を下げると、フジは珍しくはっきりと表情に不安を滲ませている。 「……フジ?」 「……え、あ、うん。大丈夫、そうだよね」 「? ああ」
3 21/07/22(木)23:05:29 [s] No.826337796
5分か、10分か。いずれにせよ、大した時間は経っていないだろう。 だがしかし、どうにも隣のフジキセキの様子がおかしい。 心底不安そうに落ち着きなく、視線を俺へ、エレベーターのフロア表示へ、足元へ。 ようやく原因に思い当たったのは、所在なく震える手が彼女自身の太腿を撫ぜた時だった。 ……まさか、というか、考えないようにはしていたけれど。 そういうことだろうか。 あれ以来、マイカーにはこっそりと(本当に、バレないように)備えをしたけれど、 流石にこの場ではどうしようもない。エレベーターがすぐに動くことを祈るばかりだ。 俺がこの場でできるのは、彼女の不安の原因に気付かないことだけ。 一つ息をついて、明日以降のスケジュールを確認するふりをした。
4 21/07/22(木)23:05:47 [s] No.826337929
20分か、30分か。 いよいよ彼女の焦燥感に気付かないことが難しくなってきたあたりで、 ようやく館内アナウンスとともにエレベーターが動き出した。 1つ下のフロアのボタンを押し、声をかける。 「帰りの車で飲むもの買ってきたいからさ、5分くらい待っててくれ」 それだけ言って、自販機に向かう。 フジキセキはぱちくりと目を瞬かせたのち、顔を真っ赤にして俺と逆方向に駆け出した。 戻ってきた彼女が妙にパンツのわたりの辺りを気にしていたのは、きっと俺の気のせいだ。
5 21/07/22(木)23:06:25 [s] No.826338226
今回はたぶん大丈夫です 仮に大丈夫じゃなかったとしてもトレーナーがうまいことやるので大丈夫です 第一の災難 fu183579.txt 第二の災難 fu183581.txt
6 21/07/22(木)23:11:26 No.826340531
きっと間に合ったと信じよう…
7 21/07/22(木)23:35:31 No.826350796
普段はイケメンで通ってる子が恥ずかしい顔するのいいよね…
8 21/07/22(木)23:50:18 No.826357741
寮長は持ち前のサービス精神と優しさのせいで我慢しがちであって欲しいと思います