虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

1 21/07/21(水)02:32:32 No.825691474

（今日の所はやめておくけど、円香にもきっとわかる日は来るさ。だから。） 　（せめてそれまでは、ここにいてほしい。） その日が来ても、きっと私はそこにいる。それからも。ずっと。 なのに… 「あなたって、本当にだめな人。」 彼女はそう言って、彼の額を少し撫でた。 「円香…？」声が聞こえた気がした。夢を見ていた。円香がどこかへいなくなる夢。 年々輝きを増す担当アイドルは、掌で遮らずには直視できない程だ。光に対する影のように、俺の不安は黒く濁って肥大していた。 スカウト、引き抜き、引退、早逝。その夢を見る頻度は年々増していた。 担当アイドルを信じることができないプロデューサーに、何の意味があるというのか。そんな言葉で不安を押し込め、仕事に向かった。 折り目正しいスーツの下に隠した、どす黒く濁った臆病な人格。こんな俺が、彼女をプロデュースするなど。 「おはようございます。」樋口円香が、ドアを開けた。 「あ」「円香…」つい名を呼んでしまった。

2 21/07/21(水)02:33:09 No.825691546

「おはよう」 「昨日はよく眠れなかったみたいですね。顔、酷いですよ。」 「ああ、ごめん。昨日の夜から残業中だったのに、気付いたら寝てたみたいだ。睡眠は十分にとれたと思ったんだけど…その、夢見が酷くて。」 ふうん、と彼女は小さく呟くと、荷物を足元に置き、ソファに腰を下ろす。 「何はともあれ、今日は帰ったほうがいいですよ。倒れられたら困りますし。はづきさんには連絡しておきましたから。残った業務はあなたの後輩にでも引き継いでください。」 「ありがとう。こうやって作業を押し付けられる後輩を雇う余裕ができたのも、円香たちが頑張ってくれたおかげだな。」円香は小さく鼻を鳴らす。照れ隠しだ。 「でも、俺の仕事は俺がやらないと。心配してくれてありがとう。俺は大丈夫だよ。」違う。体はとっくに悲鳴を上げている。俺がやらなければ、一瞬でも目を離したら、円香は消えてしまうかもしれない。 そんなばかばかしい妄想が、妄執が、体に鞭を打っている。 「馬鹿」 「本当に馬鹿。」突然、円香の声に怒気が籠った。 「あなたが無茶をしたら、あなたが倒れたら、それでもし…」

3 21/07/21(水)02:33:24 No.825691568

「……わかり辛かったなら、そんなに早死にしたいなら、できないようにしてあげる。私は、あなたのことを」 「心配させてごめん。本当に大丈夫だよ。ちょっと寝不足なだけだって。」言葉を遮った。それを言わせてしまったら、何かの取り返しがつかなくなる気がした。 　 アイドルとプロデューサー。それは個人と個人の繋がりではない。心通わせることはあっても、恋慕を募らせることはあってはならない。特に、プロデューサーからは。 俺は円香のことが好きだ。輝いている彼女が好きだ。でもそれは親愛の情であって、恋慕ではない。その一線は超えてはいないが、超えないままで彼女は俺の一部になっていた。 彼女がいなくなるのを恐れているのは、事務所のことを考えているからではない。一個人としての恋愛感情でもない。俺は、俺の一部になってしまった、樋口円香を引き千切られるのが、この世の何よりも嫌なのだ。 身勝手すぎる感情は俺を蝕んだ。彼女の視線に映る自分を取り繕わないと、彼女がいなくなる。そんな根拠のない妄想に支配された。

4 21/07/21(水)02:33:51 No.825691614

持つ手が擦り切れるほどシャツの皴を伸ばした。襟の撚れ、スーツの皴一つすら許せなかった。病的なまでの臆病さは、病的なまでの執着に代わっていた。彼女の目に映る、プロデューサーとしての俺。円香の目が見通さんと望む、スーツの下の臆病な俺。 俺はもうとっくに気づいていた。彼女から俺に向けているものは、親愛、信頼、信用。それともう一つ。あってはならない感情。抱いてはならない恋慕。 彼女が欲しいのが、本当の俺なら。彼女が見たいのが、臆病な俺なら。俺は…俺の弱さを利用してでも、彼女を手放したくなかった。 彼女を離さないためなら、俺は。 内臓に針を刺してでも、糸で縫い留めてしまいたい。 「円香」 「ごめん」 「俺は、円香のことが好きだ。」 ほどなくして、樋口円香はアイドルを引退した。

5 21/07/21(水)02:34:06 No.825691645

彼のそれが、私に向ける恋慕ではないことを、私は知っている。私が彼に向けるそれを、恋慕というのを、私は知っている。 彼がとても臆病で、情けなくて、病的で、執着心が強いことを、今の私は知っている。しわくちゃの布のような、その心を知っている。 私は、自らを刃で刺して、誰かの視線を繋ぎ止めようとするような彼の行いを受け入れた。 私が憧れた彼は原型も留めずに引き裂かれた。残ったのは、かつて私が憧れた人の本当の姿。 でもそれが、いじらしくて、哀れで、可愛くて仕方がない。 「あなたって、本当にだめな人。」 私はここにいて、彼はここにいる。 多分、きっと、ずっと。

6 21/07/21(水)02:35:45 No.825691825

完成したタイミングでほぼ同時に投下された公式怪文書pSRが圧倒的すぎたので供養です これで三回くらい樋口のSS描いたけど俺樋口のこと何もわからないよ…

7 21/07/21(水)02:37:08 No.825691979

樋口の新カード来る度にわからん…ってなるのわかるよ…

8 21/07/21(水)02:38:09 No.825692102

今回はpSRの癖に劇薬すぎたから仕方ないよ…

9 21/07/21(水)02:48:57 No.825693358

ひとしきりショックに浸ったらまた書こうと思うけど沼が深すぎるよこのキャラ…

10 21/07/21(水)03:10:53 No.825695519

スレッドを立てた人によって削除されました 水着がパクリだったようで…

11 21/07/21(水)03:14:10 No.825695840

スレッドを立てた人によって削除されました スレ「」はあの水着どう思う？

12 21/07/21(水)03:19:40 No.825696313

スレッドを立てた人によって削除されました 消すってことはそういうことなんだね 幻滅しました

13 21/07/21(水)03:22:12 No.825696500

こんなに巧みな心情描写を用意したのに公式がまた新たな側面出して来たのには同情するよ…

14 21/07/21(水)03:27:56 No.825696926

今回のPSRもすごかったけど こういうぐちゃぐちゃに引き裂かれるルートも私はいいと思う

15 21/07/21(水)03:28:36 No.825696974

樋口は誘い受けなのはよく分かった今回

16 21/07/21(水)03:30:11 No.825697115

もう逆に樋口なら何を書いても正解な気がしてきた 何するかわかんねえよあの子…浅倉は素直なのに…

17 21/07/21(水)03:30:37 No.825697149

>樋口は誘い受けなのはよく分かった今回 誘い受けなのは分かってたけどあんな積極性は想像できなかった…

18 21/07/21(水)03:30:49 No.825697160

浅倉の方を見ると元気に最後の戦いしてて安心するよ

19 21/07/21(水)03:30:56 No.825697170

>俺樋口のこと何もわからないよ… そうだね

20 21/07/21(水)03:33:58 No.825697389

どうせまたPSSRとLPで分からなくなるんだ…

21 21/07/21(水)03:34:59 No.825697465

浅倉は素直で馬鹿で可愛いよね 知ってる

22 21/07/21(水)03:40:17 No.825697830

樋口とPを形成する上で超重要なぐちゃぐちゃに引き裂かれたらいいのにってワードを樋口側からの一方的な試し行動って風に調理してくるとは思わなかったよ

23 21/07/21(水)03:50:40 No.825698438

いいですよね公式が劇毒を投下してきてこれまで描いてきた二次創作が全部解釈違いになるの

24 21/07/21(水)03:58:48 No.825698865

Pがこうなるかもしれないし、円香のほうが異常な執着を示しているのかもしれないし本当にわからないよ…いい怪文書だった

25 21/07/21(水)04:08:20 No.825699380

今思ったけど円香に試されつづけて恋愛感情を抱かないまま壊れて執着を示すPって感じにすれば解釈違いにならないような…なるような…

26 21/07/21(水)04:50:16 No.825701117

Pまどいいよね…