虹裏img歴史資料館

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21/07/17(土)23:10:08 前回ま... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1626531008905.png 21/07/17(土)23:10:08 No.824568257

前回までです fu169696.txt

1 21/07/17(土)23:10:42 No.824568529

暗黒から現れた黒服の男が、手にした写真をひらひらと振り回しながらトウカイテイオーのトレーナーに語りかけた。 「さ、取引だ…もう二度と目を逸らせないような写真ならここにあるぜ?」 「誰だ貴様…!?」 「ま、しがないブン屋ってやつだよ。ほれ、俺の名刺だ。」 写真と共に差し出されたそれを、手で払い地面に叩き落とした。 「名刺なんていらん!それよりも…その言い方、貴様がテイオーをさらったのか?」 「おいおい、滅多なこと言うんじゃねーよ…ククク…それよりその写真を見てみろよ。きっと気に入るだろうぜ?」 トレーナーが黒服の男を視界から外さないように、ゆっくりとしゃがんで落ちた写真を手探りで探し、やがて掴んで拾い上げる。わずかに視線を写真に落とすと、トレーナーの全身から血の気が引いた。 「なっ…んだ…この写真、は…!?」 「よく撮れているだろう?これでも結構撮影には自信があるんだぜ?」

2 21/07/17(土)23:11:44 No.824569071

そこに写されていたのは、朦朧とした様子で床に倒れ込んだトウカイテイオーと、その手前に置かれた注射器だった。 「いやあ、まさか無敗の三冠ウマ娘たるトウカイテイオーが薬物常習犯だったとはなぁ…こりゃ相当”燃える”ぜ?」 「まさか…貴様!テイオーを嵌めたな!!テイオーがこんな、薬物を使うわけがない!!」 「俺はただ記者として決定的瞬間を収めただけだよ。それに、果たして世間はその写真を見て同じように思ってくれるかな?カカカ…!」 「ふざけるな…!貴様ごときにテイオーを侮辱されてたまるかッ!!」 瞬間、トレーナーが黒服の男にとびかかる。振り上げた拳が黒服の男の顔面に向かって放たれた。 しかし、黒服の男はこれをひらりと交わした。そして、反動で前につんのめるトレーナーの腹部に膝蹴りを食らわせる。

3 21/07/17(土)23:12:23 No.824569394

「がっ…!?」 「はあ…中央のトレーナーってのはこんなのばっかりなのか?せっかく穏便に話を付けようと思ったっつーのによお?」 うつぶせに倒れ込むトレーナーの頭をぐり、ぐりと靴を擦り付ける様に踏みつける。 「最初から言ってるだろ?これは『取引』なんだよ。お前に選択肢は存在しないがな。」 「うっ、ぐ…」 「それとも、明日にでもこの写真を全国で流しちまうか?そうだな、それがいい。こんな卑怯なウマ娘がレースに出るだなんて失礼千万にもほどがある。」 「やっ、やめろ!テイオーを巻き込むな!!」 「巻き込むかどうかはお前の返答次第だ。どうする?」 黒服の男がにやりと笑う。月光の光が、却って男の顔を暗い影で染め上げていた。

4 21/07/17(土)23:13:17 No.824569920

「…………分かった。貴様の言う事は聞く…だから、テイオーだけは…!」 「クッ、なんとまあ情けないこったな。まあ安心しろよ、俺にとってもあのガキはそうおいそれとは切れない駒なんでな。悪いようにはしない。……今のところは、な。」 黒服の男が頭から足をあげると、そのままトレーナーを蹴りあげた。蹴りの反動であおむけに転がったトレーナーが苦々しい顔で痛みを耐えていた。 「この名刺の番号でまた電話する。3コール以内に出ろ。もし無視したりこの事を警察に相談すれば…次はあのガキがこんな目に合うぜ。」 捨てられた名刺をトレーナーの胸ポケットに突っ込むと、黒服の男は高笑いをあげ闇夜に消えていった。トレーナーは、ただその声を聞いて、己の無力さを呪う他なかった。

5 21/07/17(土)23:13:38 No.824570104

~~~ 【翌日】 朦朧とした意識から目を覚ます。白い天井に、点滴のチューブ。身体をなんとか起き上がらせる。 「ううん…ここ、どこ…?」 目を覚ましたウマ娘─トウカイテイオーが、周りを見渡す。どうやら病院の一室のようだった。よく見れば、自分の服も入院用の病院着だった。 「あれ…ボク…そうだ、記者の人についていって…それで…ウッ…頭痛い…!」 自分の記憶を遡ろうとしても、肝心の部分が白いもやがかかったようにはっきりと思い出すことができなかった。無理やり思い出そうとすると、頭痛が出てきてしまうほどだった。

6 21/07/17(土)23:14:14 No.824570522

「えっと…カイチョーが…ヤオチョーで…あれれ?」 際限のない記憶の遡上を繰り返していると、ふと左手がやけに重いことに気付く。その方を向くと、そこにはトウカイテイオーのトレーナーがトウカイテイオーの手を握りながら、椅子に座ったまま眠り込んでいた。 「わっ!トレーナー…って、なんでトレーナーが…?」 「ん……。」 テイオーの声に反応したトレーナーが、薄らと目を開く。と、その瞬間カッと目が思い切り見開かれた。 「テイオーッ!!テイオー、大丈夫ですか!!どこか痛い所は!!いやまずはナースコールか…!」 「ちょっ、ちょっと!トレーナー、どうしたの!?ボク、なんで病院にいるの!?」 「…テイオー、あなたまさか記憶が…!?」 「えっと…うん、ちょっとイマイチ思い出せないんだけど…。」 「……3日前、散歩に出たあなたが一時行方不明になりました。我々で捜索を行った結果、あなたがゴミステーションでゴミ塗れで気絶しているのが発見されました。」

7 21/07/17(土)23:15:04 No.824571021

「うえ、ゴミステーションって…って、それより3日前って!?ボク3日も寝込んでたの!?」 「そうです。命に別状はないとは聞いてましたが…意識が戻って本当に良かった。」 「…トレーナー、もしかしてずっとボクに付きっきりだったの…?」 「当然です。もう私はあなたから目を逸らさないと決めましたから。」 トレーナーがトウカイテイオーの手を握る。その強さはそのまま、トレーナーの言葉の裏にある意志の強さを物語っているかのようだった。 「…トレーナー、たまに真顔ですっごくキザなこと言うよね…。ってか、トレーナーも顔中あざだらけじゃん!どーしたのそれ!?」 「あっ…これ、は……テイオーが見つかったと聞いた時に、喜び過ぎて顔面から転んだときのあざです。心配しないでください。」 (トレーナーって嘘つくの下手過ぎるんだよね…。よくそれで世の中渡っていけるよ…) トウカイテイオーが内心毒づくことも知らず、トレーナーがトウカイテイオーの手を離し、鞄に荷物をまとめ始めた。

8 21/07/17(土)23:15:32 No.824571249

「さて…本当はテイオーが退院するまでここに居たかったのですが、流石に仕事が限界まで溜まっているので一度学園に戻ります。テイオーの意識が戻ったことを報告する必要もありますしね。しかし1日に必ず1回…いえ2回はここに寄るのでご心配なく。」 「いや1日に2回は多いよ…1回でいいって…。」 「…そうですか。まあそのうちお見舞いも来るでしょう。シンボリルドルフもテイオーが入院したと聞いて大層心配していましたから。」 「そっか、カイチョーが…うっ!!」 シンボリルドルフの事を思い出した瞬間、トウカイテイオーの脳に激しい痛みと記憶がよみがえった。その記憶の奥の奥に、忘れていた声が再び響いた。 『シンボリルドルフが八百長を行ったのではないか…』 『金は受け取った。ならば、この責任をその地方のウマ娘に擦り付けてしまえ…』 『端から見れば靴に仕掛けをされた悲運の皇帝が一丁あがり…』

9 21/07/17(土)23:16:07 No.824571530

「うっ、うう~~!!あぐっ…!!!」 「テイオー!?なっ、どうしたのです!?頭が痛いのですかッ!?…ナースコールだ !」 即座にナースコールを呼び出そうとするトレーナーの腕を、トウカイテイオーががしりと掴む。一瞬、トウカイテイオーの目的が分からず、トレーナーが狼狽えた。 「テイオー…!?」 「はッ、あ、大丈夫…だから…それより、ボク…もう退院するよ。確かめなきゃならないことがあるんだ…!!」 トウカイテイオーは、自身の疑念に決着をつける覚悟を決めた。

10 21/07/17(土)23:17:08 No.824572036

~~~ 【???】 どすり。どすり。連続した刺突音が、仄暗い部屋の中に響く。 放たれたダーツの矢が、トウカイテイオーとそのトレーナーの写真に深く刺さっていた。 「これでいつでもあの男を通じでガキを操れるってことだ。クックック…」 不敵な笑みを浮かべ、黒服の男が椅子に座った。 「後はそろそろアレも発動する頃合いか…いいね、全てが順調すぎる。俺の目的、その舞台まで、あとわずかだ。」

11 21/07/17(土)23:17:28 No.824572176

どん、と部屋の奥にあるドアの向こう側から音がした。黒服の男が立ち上がり、冷蔵庫からハムを無造作に出して包丁で切り分け、コップに水を注ぐ。それらを盆にまとめて、音の元へ向かう。 ドアを開け、中のものへ盆を差しだした。 「お前も嬉しいか?嬉しいだろ?…もう少しでお前も自由になれるんだ。ククク…ハッハッハッハ…!」 ドアを乱雑に閉め、元の椅子に座りなおす。デスクに向き直すと、デスクの棚からスクラップブックを取り出し、あるページを開いた。 「……親父。もうすぐだ。もうすぐ…全てのウマ娘をぶち壊せる。待っててくれ。」 それだけ呟くと、スクラップブックを閉じ、元の棚にしまい込んだ。

12 <a href="mailto:s">21/07/17(土)23:17:53</a> [s] No.824572364

次回へ続く

13 21/07/17(土)23:18:28 No.824572616

毎回気になる幕引きしおって…

14 21/07/17(土)23:59:14 No.824591392

会長に退学とかでもされたのかな…? ウマ娘の方かこの親父の方か…これは気になりますね…

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