虹裏img歴史資料館

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21/07/17(土)22:50:24 11月に... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1626529824282.png 21/07/17(土)22:50:24 No.824558499

11月に開催されるJBCレディスクラシックに一先ずの焦点を定め、日々のトレーニングを重ねる9月のある日のこと 俺はある場所に召喚されていた そこはトレセン学園理事長室。最高責任者秋川やよい理事長が鎮座まします一般のトレーナーには縁遠い不可触領域である 個別に召喚された俺は、礼儀にもとり扉をノックし返答を待ってから入室する。部屋の中には秋川理事長と理事長秘書である駿川たづな女史の二名が待ち構えており、室内の空気に若干押されつつも机の前で仁王立ちしている秋川理事長の前へと歩み寄った 「御苦労ッ!緊急の呼び出しに応じてもらい感謝するッ!」 バッ、と手に持った扇子を広げて普段のように特異な話し方で接してくる理事長 「いえ。それで私に個別で話があるとの事ですが」 「果断ッ!話が早いッ!」 呼び出された要件が不透明で会ったので、早急に話を進めようと切り出す俺に、理事長は好感を抱いたのか笑顔で返答してきた

1 21/07/17(土)22:50:40 No.824558621

「理事長、ここから先は私が」 と言って、ここで理事長の斜め後ろに控えていたたづなさんが一歩前に出る 「失礼します。最近学園内にてある噂話が出回っている事をご存じですか?」 「噂話……ですか」 たづなさんの言う噂話にはまるで心当たりがないので、素直に返す 「いえ、寡聞にして知りません」 首を振る俺の顔を観察しているのか、まじまじと見つめている理事長。そちらには触れずにたづなさんが会話を続行してくる 「そうですか。トレーナーと担当するウマ娘が急速に距離を縮めている、という噂話なのですが」 あー、そういう系。なるほど

2 21/07/17(土)22:50:56 No.824558761

「私は新人ですので前年以前の学園を知りませんが……その噂話って毎年流れてません?」 「そうですね。それは否定しません」 しないんですか。口には出さず内心でツッコミを入れる 「ですが、特定の個人を名指しで流れるケースは少ないです」 「名指し、ですか」 そういう流れで来られると、否でも応でも理解させられる 「名指しされてますか」 「されてますね」 つまり、俺とウインディの関係がトレーナーと担当の距離感に収まってないという話が広まっている、と

3 21/07/17(土)22:51:17 No.824558943

心当たりなんて挙げようと思えばいくらでも挙げられる。それがたとえ後付けの推理であっても 俺の愛バであるシンコウウインディは、元よりその性格難で中等部時代はトゥインクルシリーズのメイクデビューに至れずに高等部に進学してしまった その後俺と出会い契約を結ぶ事で、競技者のウマ娘としてのスタートを切れた訳だが、その過程で彼女の行動に変化が生じた 無差別のいたずらと噛み付き。これが消えた事である。厳密にはターゲットが俺に向いただけなのだが いつかのヒシアマゾンもこう言っていた 『よろしく頼むよ色男』 あれはつまり、こういう展開も加味した言葉だったのだろう それに学園内や合宿中での会話も、判断材料として挙げられてると思う なんだかんだ言っても、俺自身が彼女を気遣って扱ってる自覚はあるし、その所作の端々に感情が発露していても不思議はない。迂闊ではある だが、それをこの場で正直に打ち明けるのはそれこそ愚策だろう

4 21/07/17(土)22:51:41 No.824559153

「困りましたね。自分としては、そのような噂を流されるなんて考慮の外です」 「そうなのですか?」 「そうですよ。これでも適切な距離感を保てていたという自負はあります」 それがどこの視点から見た上での適切な距離だったのかは言いません 「では初夏、合宿前に無断で外泊したという話は」 「それは事実です。あの日はもともと帰寮が遅れる想定で動いてましたので、最初から外泊申請してなかった自分の計画性の無さが悪いのです」 はじめての行為で体力を消耗させてしまった見通しの甘さも悪かった。口には出しませんが 「合宿中に夏祭りに参加されたそうですね」 「それはまぁ。参加してはいけないという規則はなかった訳ですし、他の同僚も同じ事をしてましたし、やましい所はありません」 夏祭りに参加したことは全くやましく思っていません。その後の行為には触れませんけど

5 21/07/17(土)22:52:02 No.824559347

たづなさんも歴戦の理事長秘書。こちらが何を隠して答弁してるか、なんてのは承知の上であろうと認識している 「しかしトレーナー寮の自室に宿泊させたのは、行き過ぎた指導なのではないですか?」 「ウインディは反り腰の傾向が見られましたので、寝相で改善できるよう夜通し見ておきたかったんです」 こんな会話も、本気で処分を考えて交わしてる訳ではないだろう 「とまぁ、ここまで抗弁しましたが。自分の行動が、学園内の風紀に悪い影響を与えたのは事実ではあると思っていますので……御両名に一つ相談が」 なので、状況を悪化させる前に、かねてより考慮していた案件をここで明示する事にした

6 21/07/17(土)22:52:25 No.824559504

理事長室での面談から一週間ほど経過した週末の前日、朝のトレーナー室に俺はいた 理事長室に呼び出されたトレーナーは、実のところ俺だけではなかったようである。そりゃまあそうだろう。互いに血の通った人間とウマ娘である以上、何らかの関係の変化は起こりうることだ なんて自分の行動を内心で正当化してみた所で、あの日に理事長室で決定された事案が変更される訳でもない それはさておくとして 「ウインディの未来の勝利を信じて、本日分のトレーニングを組み立てましょうかね」 始業の鐘のなる前のトレーナー室で、そんな独り言をつぶやきつつミーティングに使用するためのプリントを纏めていた時である バシィン!と大きな音を響かせてトレーナー室のドアが開かれる。そちらを見ればウインディが息を荒げた姿で立っていた 「おはようウインディ。そんな力いっぱい開けたら壊れ」 「トレーナー!!どういう事!?」 その行動を諫めようとした俺を遮って、ウインディが怒声を投げつけてきた。その目尻はキッと吊り上がり、口の端からはギザギザ歯がこちらを威圧するようにギラリと存在を主張している

7 21/07/17(土)22:52:45 No.824559671

「どういう事って、どういう事だ」 特に心当たりがないので鸚鵡返ししてしまう俺 「ウインディちゃん聞いたんだけど!!地方に異動ってどういうことなの!?」 「……はい?」 「とぼけないで!!」 つかつかと歩み寄ってくるウインディの頭上を、始業の鐘が鳴り響かせる。しかしそんな事は知らんとばかりに俺の眼前まで寄ってきたウインディは、俺の胸ぐらを掴んで背伸びをしてきた 「ウインディちゃんは聞いたのだ!トレーナーが異動の準備をしてるって!!」 顔を寄せてきて、ギラリと睨みつけてくる愛バ。目端には微かな涙滴が滲み浮かんでいる 「トレーナーはウインディちゃんを置いてくつもりなの……?」

8 21/07/17(土)22:53:02 No.824559806

どうにも思い詰めてる感じなので、俺は彼女の心を落ち着かせるべく 「うーん。どうも勘違いがあるようだが……俺は異動はしないし、お前を手放すつもりもないぞ?」 と言って、間近にあった彼女の顔をかっちりとホールドしてその唇を奪った 呆気に取られて半開きの唇を割り、即座に舌を侵入させて絡めとる ちゅばちゅばと一分ほど軽くキスを交わして唇を解放したが、その途端ウインディは腰を落とした 「はわわわわ~」 どうも目も回してるようである。このままにしておくわけにもいかない 仕方ないので、俺は脱力してぐんにゃりしてしまった彼女を背負って、彼女の教室を目指して歩き出した。授業サボらす訳にもいかんしな

9 21/07/17(土)22:53:20 No.824559950

担任の教師にウインディを引き渡して、その足で職員室に出向き学年主任を通して理事長に話を伝える。それは、すなわち 「担当との間にに致命的な勘違いが生じたので、本日予定のトレーニングを打ち止めて、説明の為に然るべき場所に移動して納得させます」 と言う話で持っていき、放課後から外に出る許可を取り付けるためのものである 理事長からは「了承ッ!」の返答が頂けたので、俺はウインディが授業を終わらせるのをトレーナー室で待っている ガラララ、ピシャッ 朝とは打って変わり大人しい音をさせてウインディがトレーナー室に入ってきた 「朝はごめんなさいなのだトレーナー……」 「やあウインディ、朝ぶりだな」 一見すると意気消沈といった風情だが、これは単にキスの感触がリフレインして照れてるだけと見た

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