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    21/07/17(土)15:21:29 No.824384643

    よく友人たちに初恋を聞くとみんなウマ娘の名前を出す。 それはそうだ、それはそうだ。クラスで一人ぐらいしかいないけど、みんな必ず美人で不思議な尻尾と耳があるし、足も速くて、魅力なら同年代のヒトの女の子と比べると勝てる子のほうが少ない。 でもまぁ、そんなウマ娘の皆は小学校を卒業すると殆どが走るために中央だったり地方だったりのトレセン学園に行ってしまって、輝かしい黄金の時代はすっかり色を失いすっかりかすんだ中学時代を過ごすことになる。初恋とは叶わないものだ。 クラスで憧れのあの子は今や門で閉ざされた秘密の園の中、見ることができるのはテレビの中だけ。ウマ娘を彼女に出来たなんて男は宝くじで高額当選を出すぐらい幸運で、周りから英雄扱いだ。 だけど宝くじは当たるから宝くじとして存在しているように、幸運はその日僕に降りてきた。 「おはようございます! 今日皆さんの案内係を務めさせていただきます、ダイワスカーレットです! 慣れないことで拙い所もあると思いますが、ご容赦くださいね?」

    1 21/07/17(土)15:21:42 No.824384701

    雲一つない青空の下で、むしっとした夏の風が石畳の上を流れていた。普段は門の隙間からしか見えない西洋風の美しい建物が木々の間から見えてくると、他の人たちのおぉ、と言った声が聞こえてくる。 しかし僕は、そんなものよりも先頭を歩く一人のウマ娘に目を奪われていた。 美しい流れるような栗毛と宝石のように綺麗な瞳、ニコリと可愛らしく笑う表情には優しさが満ち溢れていて、なんといっても学校のクラスメイトの女子が霞んで見えるような豊満なボディ。 ダイワスカーレット、一線級で活躍するウマ娘であり、そして小学校の頃のクラスメイトでもある。 こんな幸運があるのだろうか。思ってみれば、仕事で忙しい親に変わって、妹のトレセン学園のサマーオープンキャンパスについていってくれと言われたときから、何か神様から愛されているような気がしていた。 このことを友人に話したらきっと血涙を流して悔しがるに違いない、もともとあのスカーレットと小学校のころから隣の席だったというだけでも羨ましがられるというのに。

    2 21/07/17(土)15:22:10 No.824384841

    「では、まずはトレセン学園の名物三女神からご紹介しますね。どうぞこちらへ」 ふと振り返ろうとする彼女と目が合ったと思うと、少しだけ微笑みをくれた。それだけで夏の暑さなどどこかに吹き飛んでしまいそうで、思わず一人先に進む妹を見失いそうになってしまった。 その後も、学園の案内をするスカーレットに目を奪われてしまい、彼女の解説よりも彼女の声色自体に聞き惚れ、撮った写真には必ずその姿が入るようにしてしまったせいで何を映しているのかまったく分からなってしまって、なぜ自分がここに来たのかも忘れてしまうほど彼女に熱中した。 それほどスカーレットは小学校のころから全く変わっていなかった、誰にでも優しく、お淑やかで、笑顔が可愛い。変わったとすれば胸のサイズぐらいだ。 「彼氏といるのかなぁ…」 一通り案内が終わった後、そんなことを言いながら賑やかなカフェテリアでハンバーグをナイフでバラバラにする。さすがのトレセン学園の食堂と言うべきかどれも大盛で、小学生になったばかりなのに僕より食べる妹も隣で満足そうに舌鼓を打っている。

    3 21/07/17(土)15:22:29 No.824384933

    頭の中にはやっぱりスカーレットで一杯だった。隣の席でいつも友人に囲まれていたあの子。毎月一回は絶対に告白されて「まだ恋愛とかは興味がないからごめんね」と返していたあの子。隣で天使のように輝いていたあの子。 「ここ、いいですか?」 「へ? あ、どう…うわっ!?」 そしてその子はいまプレートを持って僕の前へと立っていた。素っ頓狂な声を上げて固まってると、隣で妹がスカーレットちゃんだと嬉しそうに自分の代わりにスカーレットを座らせてくれた。この時ばかりは妹に感謝したくなる。 「ふふっ、ありがとう。この時間混んじゃってて…ふふっ、可愛い妹さんですね?」 「あっ、あっ…ありがとう」 テーブルを挟んだだけの距離にスカーレットがいる、ふと手を伸ばせば触れるような距離に。ハンバーグの味がしなくなるほど頭が興奮してきて、何か喋らなければ、これは神様がくれた幸運、チャンスなんだ。 「そ、そのっ! ○○小学校って覚えてる? ほらそこでずっと隣の席だった…」。

    4 21/07/17(土)15:23:35 No.824385203

    ウマ娘同士だからだろうか、普通に会話で来ている妹との間に割り込むようにして声を出すと、スカーレットは目を丸くした後少しだけ考えるように視線を天井に上げた。 「あー…もしかして同じクラスの?」 「そ、そう!」 「…うん、思い出した。ふふ、久しぶり、こんなところで会うなんて奇遇なんてものじゃないね」 ふわりとスカーレットは昔と変わらない女神のような笑顔を僕に浮かべてくれた。そのまま小学校の昔話をして彼女が笑うたびに、どくんどくんと心臓が高鳴ってくる。これは行けるんじゃないかとさえ思えてくる、トレセン学園は女子高のようなものだし男子との出会いなんてない、これが運命の出会いにだってなれるはずだ。 「そ、その! ここで出会ったのもなんかの縁っていうか、なんというか…よかったらウマインの交換しない? あ、いやその、今週末みんなで遊ぶ約束してて、きっとスカーレットさんも来たら喜ぶかなって…あっ彼氏とかいるんならもちろん別に…」

    5 21/07/17(土)15:24:49 No.824385496

    勇気を振り絞って、何とかゆっくりと声に出す。それでもすこしテンパリ気味だったのは否めないが、これでもし連絡先を教えてもらえたなら明日僕は学校でヒーローになれるだろう。あのスカーレットのウマインを知っているなんて、そんな奴きっと何処にもいない。そしてそのまま根気よく連絡を取り合えば、きっとその先に行けるはずだ。そうなれば、自分はこの世で一番幸運な男になれるだろう。 「えっと、ごめんね? 学校の方針でそういうのはあんまり教えられないの」 が、いきなり躓いた。そりゃそうだよなと何とか笑顔を作って気にしていない風を見せる。 「今週末もちょっと用事あって…、あっ彼氏がどうとかってわけじゃないよ? そういうのはほら早いって思うし…ね?」 だけどまぁ、スカーレットに彼氏がいないって分かったのは収穫だった。次のオープンキャンパス、オープンスクールの時にはきっと…

    6 21/07/17(土)15:25:36 No.824385704

    そう思いながら昼食も済むと、今度こそスカーレットとはさよならだった。午後からは学園の練習風景と共に、妹も体験授業ということでコースを走ることになって暇になった僕は、もしかしたらまたスカーレットに会えるかもと許される範囲の中で学校をぶらついていた。 「あぁ~緊張したぁ~~」 そんな時だった、傾いてきた日に照らされた、人気のない外の花壇を見つめながら歩いていると、ふとすぐ横からスカーレットの声が聞こえてきた。肩を跳ね上げて声がした方向に顔を向けてみると、換気の為だろう少しだけ開いているスモークガラスの窓からだと分かった。 スカーレットの部室か何かなのだろうか、そう妄想するとやってはいけないと思いつつも止められず、周りに人がいないことを確認してからバレないようにそっとその窓の隙間から中を覗いていみる。どうか着替え中とかじゃありませんように、いや着替え中でもそれはそれで…。

    7 21/07/17(土)15:26:01 No.824385814

    窓の中から見える狭い風景には、ソファやデスクが見えた。部室や更衣室というより職員室のような雰囲気だ。スカーレットはそのソファにだらりと腰掛けていた。自分が見たこともない少しだらけた座り方に、特別なものを見てしまったような気がして少しの興奮が心を包む。 「お疲れ様、上手くやれてたみたいじゃないか」 ふとそこに一人の男がやってきて、ソファの前にテーブルに冷えたお茶を置いた。所謂トレーナーだろうか、気さくさと優しさが混ざったような人だった。スカーレットは優等生だ、トレーナーにも好かれているんだろうなと考えていると何でかそれを昔から知ってる自分が誇らしい。 「あったりまえでしょ! エアグルーヴ先輩から頼まれたんだから上手くやらなきゃ自分が許せないわよ。って、なに? 見てたの!?」 驚いたように立ち上がるスカーレットに、ふと胸がドキリとする。いきなりスカーレットが知らない誰かになってしまったように、纏う雰囲気が変わったように思えた。 「心配はしてなかったさ。個人的にスカーレットのトレーナーとして見物にね」 「覗き見してたの? 趣味が悪いわよアンタ」 「見物です、見物」

    8 21/07/17(土)15:26:41 No.824386001

    思わずこちらもギクリとしてしまって思わず音を出しそうになった。トレーナーらしき男は彼女に微笑みを向けると、ソファと向かいにあるデスクの椅子に座って、彼女と向き合う。 それを見て、スカーレットは優等生と言うよりかは我儘っ子のような表情でソファで脚を組んだ。こんなスカーレットは、見たこともない、誰にも見せたことなんてない。興奮とは違う感情が心臓をどくんどくんと五月蠅いほどならして、こんなに暑いのに冷たい汗が背中を伝った。 「ねぇ、どうだった?」スカーレットは不意に言った。 「上手に誘導してたし、説明も分かりやすいし本当に初めてと思えないくらいちゃんと…」 「そうじゃなくて…」 次は甘えるような声がスカーレットの口から飛び出した。本当に、目の前のウマ娘は本当にスカーレットなのだろうか、違うのか? もしかして、今までが本当のスカーレットじゃなかったのだろうか。 「ん…一番だったよスカーレット。見てきた中では君が一番だ、今日ウオッカのトレーナーに自慢してやるつもりさ。俺の一番のウマ娘がいっちばん、評価が高かったぞ!って」 「そ、そう…それなら…いいわ…うん、えへ…」

    9 21/07/17(土)15:27:24 No.824386192

    トレーナーが書類整理のために机の方に体を向けると、すかさずスカーレットの頬がかあっと赤くなった。目を閉じて唸りとともに震わせる唇が、喜びで上がりそうになる口の端を抑えるのに一生懸命なんだと一瞬でこちらにも分かる。さっきの疑念が確信に変わってくるのを感じて、手のひらにまで汗がにじんでいた。 今すぐ逃げろという体の信号と反して、自分の目はスカーレットとトレーナーを捉えていた。その中でスカーレットはゆっくりと立ち上がると、フリフリと揺れる尻尾と共にトレーナーの後ろに立つとそっとその肩に手を置いて体をくっつけた。 彼女の胸が形を変えて、トレーナーの肩に自分の顎を乗せている。ぱきりと心で何かが聞こえた。 「それじゃあ、週末のお出かけ奮ってもらわなくちゃいけないわね。覚悟しておきなさいよ? へとへとになるまで連れまわしてあげるんだから!」 「ははは、お手柔らかにお願いします、お嬢様」 「ダーメ。また今まで一番楽しかったって言わせてあげるから」

    10 21/07/17(土)15:27:36 No.824386248

    そっと彼女の顔が動いて、トレーナーの頬に近づいて重なっていく。それから彼女が何をしたのかは分からなかった、隙間から見えるギリギリだったし自分はそれ以上は耐え切れなくて逃げるようには走り去っていたからだ。 頬にしたのか、そのとも口までに? それ以上は考えたくなかった。自分の知らないスカーレットが知らない誰かと、誰も知らないことをしている。輝いていた彼女の思い出がどんどん光を失って鈍くなる。 夢中で走って、途中で注意されて、歩いて、妹のことも忘れて学園の外へと出る。一度門の向こうに出るまたスカーレットの姿が見える気がして、入るような勇気さえもなくなった。汗だらけになりながら、彼女の瞳のように赤い太陽が僕の手を離れていくように沈んでいく。 置いていったと妹に怒られながら乗った電車の中で、スカーレットのCMが広告で流れた。それさえも偽物のような気がして、目を逸らしてただ流れる景色を見つめる。 がたんと電車が揺れると、ひび割れた心が、がしゃりと音を立てた。

    11 21/07/17(土)15:28:16 [s] No.824386464

    毒矢を受けたと思ったらスカーレットとトレーナーに脳を破壊されたい欲望が止められず書いてしまったこんなに長くなるとは思わなかった

    12 21/07/17(土)15:28:56 No.824386615

    筆速くない!?

    13 21/07/17(土)15:30:05 No.824386881

    ダスカはまあ…死ぬよね…

    14 21/07/17(土)15:30:35 No.824386997

    これはBSS

    15 21/07/17(土)15:31:07 No.824387119

    死んだわあいつ

    16 21/07/17(土)15:31:27 No.824387197

    妹ウマ娘だったりしそう

    17 21/07/17(土)15:31:35 No.824387233

    トレセンはマッチングアプリだからな… こうなるのは宿命

    18 21/07/17(土)15:32:13 No.824387371

    早めにオチの予想が付いたから四肢欠損の軽症で済んだ

    19 21/07/17(土)15:33:15 No.824387611

    ダスカの脳破壊は冗談抜きに廃人になりうる威力があると思う

    20 21/07/17(土)15:33:18 No.824387624

    まぁダスカはダメージ重いよな…

    21 21/07/17(土)15:33:23 No.824387648

    脳が破壊された

    22 21/07/17(土)15:35:12 No.824388090

    隣の席だったってだけでマウント取れていた子に高濃度のイチャイチャを見せる! 人の心とかないんか?

    23 21/07/17(土)15:37:22 No.824388624

    頭部を破壊されただけだからまだイケる

    24 21/07/17(土)15:38:21 No.824388858

    もっともっともっと毒矢を撃ち込まれろ

    25 21/07/17(土)15:38:28 No.824388885

    一番かわいそうなのは置き去りにされた妹だよ

    26 21/07/17(土)15:39:41 No.824389200

    かわうそ… それはそれとして褒められて上機嫌なダスカは可愛いな…

    27 21/07/17(土)15:40:05 No.824389311

    >一番かわいそうなのは置き去りにされた妹だよ 電車のなかで心のひび割れた兄貴に追撃加えてるから問題なし

    28 21/07/17(土)15:40:06 No.824389317

    おにーちゃんどっかいっちゃった

    29 21/07/17(土)15:40:29 No.824389427

    >頭部を破壊されただけだからまだイケる メインカメラどころか大事な何かもこわれてるぞ!

    30 21/07/17(土)15:40:39 No.824389478

    >妹ウマ娘だったりしそう だったりというかオープンキャンパスなんだからまさにそのものでは?

    31 21/07/17(土)15:41:28 No.824389680

    きっと帰ってから妹はしきりにスカーレットちゃんの話をするんだろうな

    32 21/07/17(土)15:41:34 No.824389713

    >メインカメラどころか大事な何かもこわれてるぞ! まだだ!まだ少年の淡い恋心がボロクズになっただけだ!!

    33 21/07/17(土)15:41:46 No.824389766

    >妹ウマ娘だったりしそう オープンキャンパスに来てるってことはそうじゃないのかな えっ妹を代役に仕立てちゃうの?業が深くて私性合

    34 21/07/17(土)15:42:02 No.824389825

    ものすごく丁寧な破壊で芸術的

    35 21/07/17(土)15:42:14 No.824389875

    >一番かわいそうなのは置き去りにされた妹だよ ですが

    36 21/07/17(土)15:42:26 No.824389924

    スカーレットとタメってことはまだまだ先は長いぞ いい恋もあるさ

    37 21/07/17(土)15:42:33 No.824389949

    体験授業のレース出てるしご飯を小学生なのに中学生男子より食ってるしな…

    38 21/07/17(土)15:42:36 No.824389961

    それで次の予定は? あるんだろう?

    39 21/07/17(土)15:42:57 No.824390041

    >>一番かわいそうなのは置き去りにされた妹だよ >ですが 彼女にも

    40 21/07/17(土)15:43:01 No.824390064

    そんな…昔ちょっとだけ隣の席だったアイドルと別に親しくもなんともなかったことを思い知らされただけなのに…

    41 21/07/17(土)15:43:21 No.824390153

    >>>一番かわいそうなのは置き去りにされた妹だよ >>ですが >彼女にも 一心同体の