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21/07/16(金)01:49:05 よく友... のスレッド詳細

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21/07/16(金)01:49:05 No.823912831

よく友人たちに初恋を聞くとみんなウマ娘の名前を出す。 それはそうだ、それはそうだ。クラスで一人ぐらいしかいないけど、みんな必ず美人で不思議な尻尾と耳があるし、足も速くて、魅力なら同年代のヒトの女の子と比べると勝てる子のほうが少ない。 でもまぁ、そんなウマ娘の皆は小学校を卒業すると殆どが走るために中央だったり地方だったりのトレセン学園に行ってしまって、輝かしい黄金の時代はすっかり色を失いすっかりかすんだ中学時代を過ごすことになる。初恋とは叶わないものだ。 クラスで憧れのあの子は今や門で閉ざされた秘密の園の中、見ることができるのはテレビの中だけ。ウマ娘を彼女に出来たなんて男は宝くじで高額当選を出すぐらい幸運で、周りから英雄扱いだ。 だから友人の間では、どのウマ娘を彼女にしたいかなんて話題は暇さえあれば上がるもので。今日も男子三人、降り注ぐ太陽の元、アスファルトの焼ける匂いを嗅ぎながら誰とプールデート行きたいかという話で盛り上がっていた。 「俺はやっぱスカーレットちゃん」「俺ドトウちゃーん」「タイキシャトルちゃん…あちぃ、まだプール着かないのかよ」

1 21/07/16(金)01:49:17 No.823912879

見事に全員乳と尻の事しか頭になかったが、そうでもしないとこの暑さに耐えきれる自信がなかった。電車代を浮かそうと歩いて行こうとしたのはいいが流石に無謀だった、最早プールにつく前に全員が汗に溺れそうなである。 「タイキちゃんって水着絶対ビキニ来てくれそうだよな…」「あ、エロがいる。エロ魔人だ」 「ドトウちゃん上げたやつがいっちゃん言っちゃいけないやつなそれ…あぁー彼女欲しい…どっかから降ってこねぇかなぁ」 そんなことを言った瞬間だった、街道に植えてある木が揺れたかと思うとそこから一つの影が俺たちの前に降り立った。 鹿毛色の短髪だが、後ろ髪の一房と前髪は伸ばしており、その片目が隠れるほどの前髪には流星のように流れる白が一筋。しなやかな肉体にウマ耳と尻尾がなければ美少年と見間違えそうな快活さ溢れる顔には、曇りない星空のように煌めいた眼がついている。 驚いた俺たちが飛んで後ろに下がると、そのウマ娘は木の上から取ったのか赤い風船を近くの泣いている小さな子へと差し出している。

2 21/07/16(金)01:50:01 No.823913020

「おい、あれ…」「だよな…?」 「えっ、なになんなの?」 友人二人が目を見開いて指を指すと、その先のウマ娘は笑顔に変わった子供に手を振って、こちらを見ている俺たちに首を傾げた。そこで俺も気づく、ウオッカだ。あのウオッカだ。 ウオッカは小学校の頃に幸運も交友関係を持てたウマ娘だ。というか耳と尻尾さえなければ男の子のように活発で暴れん坊、いつも女子より男子と一緒に泥にまみれて遊んでいた。淑やかなんてなかったが、親しみは誰よりもあった。 そんなウオッカも中学になってトレセン学園に行ってしまって、ドンがいなくなった男子たちはみんな沈んだ。正直に言えばみんな六年生になるころには立派に異性に成長していたウオッカに初恋を奪われていたのである。 そのウオッカが目の前にいる。昔のように木の葉を頭に乗せて。 「「「ウオッカ!」」」 全員の声がハモると、ウオッカも俺たちが誰かを思い出したようでさっきの自分達のように目をまん丸とすると、同じように指を指した。 「あーー! お前ら、クラスの!うわーっ、久しぶりだなー! 元気にやってたかー!」

3 21/07/16(金)01:50:23 No.823913069

小学校と同じようにウオッカは笑いながら俺たちの頭を纏めて脇で挟むとグルグルと回る。成長したウマ娘だからかふわっと体が浮いた。全員すっかり成長したが、今この瞬間だけは小学生のままだ。 「元気も元気! 毎日テレビで見てるよ」「そーそー! すっげぇ活躍してんじゃん!」 「へへっ! おーよ、カッコいいだろ! 次も一着とっからな!」 ふと、得意そうに親指で鼻を付けるウオッカが背負っていた荷物が目に入った。男子たちが良くつかっているクールなチーターのロゴが入った水着入れだ。水着入れを持っている理由なんかどんなに考えても一つしかない。 「なぁ、もしかして泳ぎに行くのか?」 「ん? そうだけど…」 ウオッカがそう言うと、その場の全員が湧いた。ウオッカもプールに行く、成長したウオッカの水着姿が見れる。そう思うと小学校のままではなくなったことに感謝したくなる。乳とか尻とかどうでも良かった、ウオッカの水着が最優先だ。

4 21/07/16(金)01:50:50 No.823913152

「じゃあさ! 俺たちと一緒にプール行かないか!」 そう言ったのは俺だったが、みんな同じ気持ちだった。男三人、心で通じ合っていた。まぁ全員あわよくばを狙っているのですぐにバラバラになるのだろうが。 すっかり暑さもどっかに行って、違う熱さが体を駆け巡っていた。 「あー…ゴメン、それちょっとムリっていうか…」 そして一気に暑さも感じなくなるぐらい冷めていった。全員が想定外の返事に固まってしまう、可笑しいウオッカならこういった遊びは断らないはず…もしかしてファンとはダメとかそういうのだろうか。 「今日はなんつーか、つ、ツレと二人っていうかさ…行くのも海、だし…」 「ツレ…もしかしてスカーレットちゃん!? それならもう大歓迎なんだけど!」「というか海ってこっからだいぶ遠くないか? 歩いて行くのか?」 「誰がアイツと二人っきりでっ…二人っきり…で…二人きり…」

5 21/07/16(金)01:51:23 No.823913247

ピタッとウオッカの体が固まったかと思うと、たらりと鼻から血が垂れた。二人きり、なんだか嫌な予感が俺たちの脳に走った。 「だーー! ごめん! とにかく、今日はホントにダメなんだよ! 埋め合わせはちゃんとすっから!」 「あ、えっと二人っきりってもしかして…」 そのことを確認せずにいられず聞こうとすると、ふと道路からブレーキ音が聞こえてきて自分達のとなりにサイドカー付きの大型バイクが止まった。革ジャンを着たドライバーがこっちをというよりウオッカをじっと見る。 「待ち合わせの場所よりだいぶ前なのに、姿が見えたと思ったら。ファンサービスか相棒?」 ヘルメットからくぐもった声でドライバーはそういった。 「あーまぁそんなもん…? つーかダチなんだよ! 小学校の時の!」 「へぇ!」

6 21/07/16(金)01:51:33 No.823913266

この序文は!?

7 21/07/16(金)01:52:30 No.823913453

当たり前のように答えたウオッカに、ドライバーは驚きの声を上げるとバイクから降りてずんずんとこっちに来る。こっちにくるごとに背の高さとヘルメットと革ジャンのごつさが分かってきて思わず三人で後ずさってしまった。 「ダチか!」 そういうとフルフェイスヘルメットを脱いで素顔が明らかになる、頼れる兄貴分というような雰囲気で、わざとらしくカッコつけててもそのままカッコよくなってしまうようなそんな男の人だった。 「どうも、ウオッカのトレーナーしてるもんです! 小学生からだって? いいなぁ、どうだったんだ昔のウオッカって! 脚速かった…そりゃ速いか、どんな走りしてたんだ!」 そのままウオッカみたいに無邪気な笑顔を見せて、俺たち一人ずつに握手をブンブンと力強く振ると、色んな質問を矢継ぎ早に繰り出していく。こちらの方は放心状態でただ速かったです、としか言うことができなかったけど、それでも相手は満足そうだった。

8 21/07/16(金)01:53:37 No.823913660

「ちょっ、止めろよハズいって! ほら、早く行こうぜ海! 日が暮れちゃうだろ!」 「あいたた、そう恥ずかしがるなよウオッカ、まだ十一時だろ? お前ら何処行くんだ? 良かったら送って…って三人だしサイドカー荷物で一杯か。すまん、また今度な! ちなみにウオッカって小学校のころ…」 「あーいーぼーうー!」 「あはは、分かった分かった引っ張るな!」 相棒。誰も言われたことがない言葉で、頬を染めてトレーナーさんらしき人を引っ張るウオッカは小学校のころでは一度も見たこともない姿と表情だった。 そのままウオッカはトレーナーさんからウマ娘専用のヘルメットを付けて、俺たちに「じゃあな」と恥ずかしい所を見られた子供のようにバイクの方へと早足で歩いて行った。 トレーナーさんはまたフルフェイスヘルメットを付けるとサイドカーから2Lぐらいのペットボトルを俺たちに投げてよこすと、バイクへと跨った。 「アミノ酸とクエン酸と塩とか混ぜたやつだ。その荷物プール行くんだろ? 熱中症と脱水症状によく効く、こまめに水分補給な!」 「あ、いやでも…」

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