21/07/15(木)02:07:45 よく友... のスレッド詳細
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21/07/15(木)02:07:45 No.823608042
よく友人たちに初恋を聞くとみんなウマ娘の名前を出す。 それはそうだ。クラスで一人ぐらいしかいないけど、みんな必ず美人で不思議な尻尾と耳があるし、足も速くて、魅力なら同年代のヒトの女の子と比べると勝てる子のほうが少ない。 でもまぁ、そんなウマ娘の皆は小学校を卒業すると殆どが走るために中央だったり地方だったりのトレセン学園に行ってしまって、僕達の輝かしい黄金の時代はすっかり色を失ってすっかりかすんだ中学時代を過ごすことになる。初恋とは叶わないものだ。 クラスで憧れのあの子は今や門で閉ざされた秘密の園の中、見ることができるのはテレビの中だけ。ウマ娘を彼女に出来たなんて男は宝くじで高額当選を出すぐらい幸運で、周りから英雄扱いだ。 でも、僕の高校では一年に一度だけ大チャンスが訪れる。それは参加型のボランティア活動だ。ただっぴろい公園でのごみ拾いという退屈極まるこの学校行事は驚くべきことに男子の参加率が抽選になるほど多い。
1 21/07/15(木)02:08:03 No.823608093
もちろん全員崇高なエコロジストになったわけではない。そのボランティアは幾つかの学校と合同で行われることになっていて、その中にはなんとあの中央トレセン学園が参加しているのだ。つまり色んなウマ娘と知り合えるチャンスというわけで、真面目系から不良系までみんなが応募するわけだ。 もちろん僕も応募して、参加券を勝ち取った。別に他の生徒みたいにあわよくばSNSのウマインで繋がって交際のとっかかりにしようとかそういうわけではなく、ただ一線級で活躍しているウマ娘を見れるかもしれないという純粋な理由でだ。 だけど、そんなときに彼女に出会った。 「どうした、私の顔に何かついているのか?」 凛とした顔立ちに、色気を感じさせる切れ長の目には赤いアイラインが美しく、でもどこか柔らかな慈母のような優しさが心を捉えて離さない。 エアグルーヴ、小学校の同級生がそこにいた。テレビやレースでしか見れないはずの顔。思わず、その場で見惚れてしまってその場で立ち尽くしてしまう、手からゴミ袋とトングが滑り落ちて地面に転がった。
2 21/07/15(木)02:08:28 No.823608174
「おいっ聞いているのか!」 「えっ!? あっ、そのっすいません!」 思わず熱い視線を送りすぎてたらしくて、いつの間にか彼女は僕の目の前で声を張り上げていた。心臓が口から飛び出さんばかりに飛び跳ねて、慌てて落としたゴミ拾いグッズを拾い上げると、彼女は怪訝な顔をして美しい尻尾をぶんと振って背中を向けた。 「覚えて、ないよなぁ…」 美しいウマ娘の中でも彼女はトップだ。しかもカリスマがあって、リーダシップも抜群、色んなウマ娘から尊敬の眼差しを向けられている。 「貴様」 「は、はい!」 「気分が悪いのだったら、遠慮せずにすぐに言え」
3 21/07/15(木)02:08:51 No.823608239
トドメに優しい。二度目の初恋をするなという方が無理難題だった。一線級のウマ娘を見れればいいという建前はもう消えうせて、何とかお近づきになりたいという無謀な考えだけで思考が埋め尽くされた。 と言っても、自分が体育会系のクラスメイトのようにいきなり教えてといって撃沈するわけにもいかずに、ただ彼女の近くでいいところを見せようとゴミを多く拾っただけだけど。 けれどそれがエコロジストの女神の目に留まったらしい。なんとチャンスがやってきた。 「よく集めているな。まったく、美しい公園にゴミを放置する輩がこんな多いとは嘆かわしい。ほら新しいごみ袋だ。そっちは私が持とう」 ふと、彼女が隣にきて僕に声をかけてくれたのだ。さすがのウマ娘だろうか、見境なく拾ってずっしりとしていたゴミ袋も軽々と持ち上げる。その時の受け取るときにそっとすれ違った指の感触と共にふわりと香るいい匂いで、思わず顔が赤くなってしまった。理性が止めていても舌が考え無しに動き出していた。
4 21/07/15(木)02:09:24 No.823608322
「あ、えっと…その…覚えてる? ほら、小学校で一緒だった…」 「ん? あぁ、覚えているぞ出席番号17番、確か国語が得意だったな」 「えっ!? あ、ホントに…!?」 「物覚えは良い方でな。確か読書感想文を教師に褒められていただろう、私のが読まれなくて少し悔しかったのを覚えている」 「うわ感動…あ、こ、この前のレース見たよ! 凄かった、ぶっちぎりで! ふ、ファンになった!」 「ふふ、ありがとう。この上ない喜びだ」 そっと柔らかく微笑むエアグルーヴに、頭がどんどん熱くなってくる。これは行けるんじゃないか、聞いてみたらすんなりウマイン友達行けるんじゃないか、そしてそのまま遊びに行けるんじゃないかとさえ思えてくる。行け、行け、お前は英雄になるんだ。 「えっと、そ、その! なんというか…久しぶりに会ったのも、何かの縁、だし…いきなりこういう事を聞くのも何かとおもうけどさ、う、ウマインとかさ…」
5 21/07/15(木)02:10:11 No.823608441
「エアグルーヴ、探したよ」 「うわぁ!?」 ふとすぐ後ろで声がして、高まった緊張が爆発したかのように、飛び跳ねるようにして尻もちをついてしまった。見上げてみると、男が一人立っていて驚いたようにこちらを見ていた。高そうなスーツの襟には何かのバッジを付けていて、さわやかさを擬人化したような優男と言った印象だ。 「ご、ごめんよ、驚かせてしまった! 大丈夫、怪我はないかい? 立てるかい? ごめんよズボンが土で…いまハンカチで」慌てたように腰を下ろして手を伸ばした。。 「い、いえ…大丈夫です」 「たわけ! 人の後ろからいきなり声をかける奴がいるか、すまない私のトレーナーがとんだ粗相を…」 「い、いやホントに大丈夫だから! …………トレーナー? 私の?」 ズボンの土を払いながら僕がそう言うと、エアグルーヴは何故だか得意げにふんと鼻を鳴らした。
6 21/07/15(木)02:10:51 No.823608532
「あぁ、私の担当トレーナーだ。少しばかり頼りになってきたと思ったが、まったく、どうやらまだまだだったようだ」 「あはは…まだまだなエアグルーヴのトレーナーです。お邪魔しちゃったかな?」 違う意味で邪魔されましたとは言えず、笑顔で手を振る。やれやれとため息を吐くエアグルーヴは何故だか今日見たどの表情よりも柔らかい。 「いや、彼は小学校で同じクラスでな。だからと言ってどうだというわけでもないが、今はファンになってくれている。ありがたいことだ」 「そうなのか! いつもエアグルーヴを応援してくれてありがとう、彼女にとってなによりの励みだよ。ちなみにエアグルーヴは小さなころからやっぱりしっかりしてたのかい? それともあいたっ!」 「き、貴様! それを聞いてどうするつもりだ! もうすぐ集合時間だから呼びに来たのだろう、早く戻るぞ!」 悪戯っぽく笑うトレーナーの頭にエアグルーヴの手がペシッと振るわれるとそのまま彼女はつかつかと歩いていく。なんか、こう、何だろう、彼女が頬を赤らめてるのになんだか嬉しくない。
7 21/07/15(木)02:11:40 No.823608670
「あはは、ごめんよ。ほら、荷物を持つから機嫌を治してくれ! とっとと、君のも貰うよ。俺は先に行くから、ゆっくり話しながらくるといい。積もる昔話もあるだろうしね、ついでに彼女のご機嫌取りもしてくれたら助かる」 「あっ…はい…」 トレーナーの男はそういって全く嫌味の無い微笑みとウィンクを向けると、僕のゴミ袋と、エアグルーヴのゴミ袋を纏めて持ってごゆっくりーと足早に戻っていた。皆戻っていて帰り道には二人っきり、これ以上ないチャンスのはずなのにさっきまでの胸の高鳴りがどこかに行ってしまっていた。 代わりに絶対聞かない方がいいという質問が浮かんできて、でも確かめに入られないように口から飛び出しかけていた。 「まったくあの男は…毎度毎度…ん、すまないそういえば先ほど何かを言いかけていたな。改めて聞こうか」 「あ、いやあの…もしかしてさ、エアグルーヴってトレーナーさんの事好きな感じ?」 止めた方がいいという声と、もしかしたらという一抹の希望を持って、ついに彼女にそう聞いた。 その結果は。
8 21/07/15(木)02:11:51 No.823608695
「は、は、はぁ!? そ、そんなわけがあるか! た、確かに誰よりも信頼はしているが、そ、そ、そもそもそういうのは学園では禁止されてる! いや、卒業すれば大丈夫なのだが…じゃなくて、何を聞くのだたわけ!」 今日一番の赤面と何処に行っても見れないだろう慌て顔。ひゅうと風が吹いて心の隙間に冷たく流れ込んだ。 初恋は叶わない。まぁそういう事だ。
9 <a href="mailto:s">21/07/15(木)02:13:54</a> [s] No.823609005
何処からか毒矢が飛んできたと思ったらエアグルーヴに恋して完全敗北したいという妄想が止められなくなりました
10 21/07/15(木)02:14:55 No.823609162
いいよね…
11 21/07/15(木)02:15:14 No.823609205
もっと毒矢が刺され
12 21/07/15(木)02:15:26 No.823609241
叶わぬ恋いい…
13 21/07/15(木)02:18:26 No.823609768
エアグルーヴから重たいゴミ袋持ってもらった同級生と自然にどっちのゴミ袋を持っていくトレーナーの差からしてもうね…なんというかね…
14 21/07/15(木)02:20:25 No.823610074
エアトレがスパダリすぎる…
15 21/07/15(木)02:21:16 No.823610202
>エアグルーヴから重たいゴミ袋持ってもらった同級生と自然にどっちのゴミ袋を持っていくトレーナーの差からしてもうね…なんというかね… 打算と自然体の差...コレはあかんね...
16 21/07/15(木)02:21:27 No.823610227
ウマ娘のトレーナーはどいつもこいつも内面イケメンすぎてな…
17 21/07/15(木)02:21:38 No.823610254
失恋シリーズ流行れ…もっと流行れ…
18 21/07/15(木)02:24:41 No.823610709
いいものを読ませてもらった…
19 21/07/15(木)02:25:08 No.823610763
男子の失恋のダメージを特に叩き出しそうなウマ娘一番人気はダイワスカーレット 異論は認める
20 21/07/15(木)02:26:21 No.823610905
>エアトレがスパダリすぎる… 最初はエアグルーヴに話しかけるタイミングわかんね……って鈍臭さがあったけど三年目となっては君は理想の女帝だと臆面もなく言い出せるように
21 21/07/15(木)02:26:58 No.823610990
諦めるのが早い!
22 21/07/15(木)02:27:15 No.823611026
爽やかなイケメンで気配りができてユーモアもあってついでに高級スーツで金銭面の差まで思い知らされる…
23 21/07/15(木)02:27:21 No.823611038
>男子の失恋のダメージを特に叩き出しそうなウマ娘一番人気はダイワスカーレット >異論は認める 男子中学生にあれをぶつけたらアカン
24 21/07/15(木)02:29:03 No.823611282
女帝に相応しい杖であらねばと自分を磨き女帝を支え続けてきた男だ 面構えが違う
25 21/07/15(木)02:29:55 No.823611419
いい... すごくいい...
26 21/07/15(木)02:30:21 No.823611491
よく見てみれば女帝は最初っからファンとか他人に対する接し方しかしてねぇのがまた…
27 21/07/15(木)02:30:43 No.823611551
温泉だと女帝もなんやかや言っても年頃の娘さんなんだなあと思う リラックスしてるトレーナーと変に意識して緊張してるのの対比とか
28 21/07/15(木)02:31:47 No.823611704
誰にでも冷静に接する人が誰かにだけ顔を崩すのはもうそういう事だよね…
29 21/07/15(木)02:33:23 No.823611923
これをきっかけにトレーナー目指してもいいのよ
30 21/07/15(木)02:35:19 No.823612197
この後トレーナーにかなり近い距離まで寄り添って歩きながら帰っていくエアグルーヴを目撃して一人寂しく帰りてぇ~!
31 21/07/15(木)02:35:31 No.823612225
こういうことを繰り返してぼくらは大人になっていく...
32 21/07/15(木)02:38:18 No.823612584
そうして少年はトレーナーになってまた他の男の子の初恋を壊すんだ…
33 21/07/15(木)02:39:56 No.823612808
>そうして少年はトレーナーになってまた他のウマ娘の男性観を壊すんだ…
34 21/07/15(木)02:41:58 No.823613052
(ついでに班で一緒だった学校の女子の初恋も奪うエアグルーヴトレーナー)
35 21/07/15(木)02:42:15 No.823613089
高飛車だったけど美人なあの子が一流を自称するトレーナーに男性観を破壊されていた
36 21/07/15(木)02:44:05 No.823613315
数年後にトレーナーになった少年が 女帝のトレーナーの元で研修を受ける 家族の話題になって女帝の子供の写真を見せてもらう 少年の脳は破壊される …でもこの頃には流石に失恋の傷も癒えてそうだな それに遅かれ早かれ少年も一心同体のパートナーを見つけることになりますわ
37 21/07/15(木)02:44:10 No.823613325
トレーナーを目指すにあたってエアグルーヴのトレーナーの立ち振る舞いを研究した結果第二のスパダリが誕生して欲しい
38 21/07/15(木)02:46:39 No.823613619
トレーナーにもファンがついちまうーっ