虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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  • 空が蒼... のスレッド詳細

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    21/07/15(木)01:30:28 No.823601517

    空が蒼から黒に変わろうとする頃 二人の男女がそれぞれ懐中電灯を手に山を登っていた 一人は大人の男性もう一人はウマ娘の少女 山の中とはいえ道は良く舗装されており夜間であっても普通の道と同じように歩いている 猿園の横を通り、寺院の中の階段を上りそのまま道なりに歩いてゆく そして山頂に難なくたどりついたウマ娘は一緒にいた男性に話しかける 「トレーナーさん、ようやくたどり着きましたね」そうウマ娘は男性…トレーナーに話しかける 開けた場所についた二人は月の光に照らされる 茶色がかった髪、青色の瞳、おっとりとした風貌…グラスワンダーそれが彼女の名前である

    1 21/07/15(木)01:30:50 No.823601597

    「流石、観光地高尾山ですね~、夜にご飯を食べる場所もあるし、道路も舗装されてますね~」 そう、二人が来ているのはトレセン学園から電車で一本の高尾山 URAファイナル後に同世代のウマ娘達と山に遊びに行って以来、時々二人で山に出かけており、今日は近場の高尾山に遊びに来ていたのだった 観光地として有名な方に入る高尾山、人も多いため二人は山の中で夜間まで食事できる施設で食事をとり、それから夜に山登りをしようとしたのだ 「夜の山道は怖いですが、こういうところならまた来てもいいかもしれませんね~」 そう言いながら月の光を受け輝く彼女にトレーナーは少し見とれていた しかしーー 「なんだあれは」あるものに気づきそう言いながらトレーナーは高尾山山頂と書かれた約二メートルの標識の方を指さす 彼女も思わず標識の方を見る

    2 21/07/15(木)01:31:10 No.823601674

    ーーー天狗である 標識の上に腕を組み仁王立ちして高下駄を履いた天狗がこちらを睥睨するように直立していた 天狗をみて呆然としている二人に天狗は天狗面を放ってよこした 「これは…挑戦状?」天狗面をキャッチした彼女は挑戦状とでかでかと書かれた文が張り付けられていることに気づく 文をはがし、文を読み、文を握りつぶす彼女 「なるほど~、URAファイナル後を境にたるみ始めているから〆に来たということですね~」彼女の瞳に青い炎が宿る 「…少なくてもこちらに受ける理由はないぞグラス」そうトレーナーが諫める 「トレーナーさん…ごめんなさい、この挑戦受けて立ちます、 30秒のハンディキャップをやると書かれるぐらいになめられたら受けて立たないわけにはいきませんもの」 彼女は負けず嫌い頑固者だった

    3 21/07/15(木)01:31:41 No.823601792

    トレーナーは頭を抱え、そして意を決して彼女に言う 「…わかった、だがグラス、30秒のハンディキャップは使え、それとスマホはハンズフリーにして通話状態のままにするんだ状況に合わせてアドバイスする、 グラス…俺の見立てではあの天狗はヤバイ、わかるんだよそれが、…だが抜かれても諦めないで走れ」 トレーナーのいつもと違う様子で指示を飛ばす 話がまとまった二人に天狗は二人が来た道の方向へ持っていた扇子をかざす すると、そこを通れとばかりに道に明かりがつき始める 「トレーナーさん、では言ってきます」彼女は意を決して走り始める 「ああ、行ってこい」 それからきっちり30秒後天狗は直立不動を解き、2メートルの標識から起用に着地したのち走り始めた

    4 21/07/15(木)01:32:01 No.823601870

    彼女は走り始めてから少しハンズフリーのスマホから声が聞こえてくる 「グラス聞け、お前が走っているコースは4つのセクションに分かれている 尾根沿いに走る第一セクション、寺院の階段があるところを走る第二セクション、再び尾根を走る第三セクション、そして180度ターンが続く第四セクション 第一セクションではできるだけ早く走れ、30秒のアドバンテージを残せるかがカギだ」 (わかってますトレーナー、このプレッシャー…URAファイナルでも感じたことがありません) 走り始めてから30秒…天狗が走り始めてから天狗が放つプレッシャーを彼女は嫌ッてほどに感じていた ずっと後方にいるはずなのに、距離を詰められているかのようにプレッシャーがじりじりと大きくなっているのがわかる 最高速に近い速度を出しているのに近づいてきているプレッシャーに彼女はトレーナーに返事する余裕すらなかった

    5 21/07/15(木)01:32:21 No.823601937

    逃走しつづけ舗装された道路は終わり、ウッドデッキの道に代わる 彼女は第二セクションの入り口に入ったのを理解する 「速度を落とせ!階段がある!」トレーナーの声がスマホから聞こえてくる 彼女はギリギリ下れる速度まで速度を落とす 天狗のプレッシャーは近づいてくるが一定距離を保ち続けている (向こうも速度を落とさなければならない…そういう事ですね) そう彼女は確信し90度のクランクコーナーと階段が組み合わさった難所をなんとかクリアする だがーーー

    6 21/07/15(木)01:32:39 No.823602005

    その確信は間違いだったと気づくのはすぐだった 彼女が第二セクションの終盤、寺院の本堂の直下の大階段を下り始めた時だった 後方で一定距離保っていたプレッシャーが爆発的に大きく…否!一気に近づきそして真横につける! そのプレッシャーに思わず隣を見る そこで彼女が見たのものは… 天狗が滑空しながら階段上空を落ちていく姿だった! 仮面の下で笑っているかのように天狗は彼女の方を向き、そのまま落ち… 「カン!!!!」と高下駄から大きな音を響かせ着地する 着地した天狗は「ついてこい」と言わんばかりに階段を降り続ける彼女に顔を向けそして再び走り始める (っ!!!!!負けるものですか!!!) 今度は追う立場となり天狗を追走し始めた

    7 21/07/15(木)01:33:01 No.823602077

    第三セクションは第二セクションと打って変わって車が通れるような道路となっている 当然彼女にとっても最高速度を出し前方の天狗との距離を詰めようとする だがーーー (この天狗ーーー早い!!!) 彼女が最高速に近い速度で走っても天狗との距離は一定距離から縮まらないのだ じりじり負けの気配が漂うなか再度スマートフォンから声が聞こえてくる 「聞け、その先は3差路がある…左に行け、右は階段だ」 そこで初めて彼女はトレーナーに返す 「いいえトレーナーさん、右に行きます…そして天狗と同じように飛びます!でなければ勝てません!」 負けず嫌いのスイッチが入りヒートアップする彼女にトレーナーはしばし黙る 「…わかった、アドバイスだ、着地前に前のめりに地面を蹴ろ!そしてその勢いで加速するんだ!」 トレーナーの指示を受けながら天狗の軌跡をトレースするように三叉路を右に入ってゆく

    8 21/07/15(木)01:33:25 No.823602167

    高尾山男坂、階段が108段ある、その場所を先に入った天狗は跳躍しそして地面に着地する 彼女も天狗の軌跡をトレースするように跳躍する 着地する寸前、トレーナーのアドバイス通り地面を蹴り前のめりに加速する (くっ!!!!!) 反動でバランスを崩しかけるが何とか持ち込え天狗を追走する 加速したおかげで天狗との距離が少し縮む (ひょっとして、加速が少し遅い?) 一瞬の出来事だったが歴戦のウマ娘である彼女はそれを見逃さない

    9 21/07/15(木)01:33:38 No.823602218

    男坂を下りサル山を超えたあたりでトレーナーからの声が聞こえてくる 「グラス、勝つためには第四セクションの立ち上がりを天狗よりも早くなければならない」 「ええ、わかってます」 「これはストリートレース、あるものをは全部使うんだ、木や崖やそして高低差を使え階段をクリアしたグラスならできる」 「流石トレーナーさん、私と同じ結論になったようですね~、大丈夫です勝ちます」 その言葉とともに勝利への確信を込めて彼女は第三セクションをかけぬけてゆく

    10 21/07/15(木)01:33:54 No.823602269

    第四セクションに入る直前、180度ターンの一つ目のインよりも内側に木が立っているのを彼女は目視する 「せいっ!!!」という掛け声とともに彼女は躊躇いなく木の幹に腕をかける! そして木を軸に180度ターンを決め、勢いそのままで地面に降り立ち階段から飛んだ時の要領で加速していく 「えい!!!!!」二つ目の180度ターンでは木がないのでそのまま跳躍しコースのアウトにある崖に両足を勢いよくつきたてその反動でより加速する 天狗が180度ターンをいったん0まで速度を落としているのに比べ彼女は勢いを利用し、天狗よりも強い加速度を使いクリアする! 一つ・二つ・三つ・とターンをクリアするたびに天狗との距離が縮まり、最後のターンでは天狗をとうとう射程に入れる! そして 最後のターンを天狗よりもはやい速度で立ち上がり、<全身全霊>のラストスパートで一気に彼女は追い抜きゴールへと駆け抜けていったのだ

    11 21/07/15(木)01:34:19 No.823602354

    「はあ…はあ…はあ…」 ゴールにたどり着いた彼女だったがすべてを使い果たしそのばで倒れこみ仰向けになる その彼女にコッ…コッ…コッ…と高下駄の音を響かせやってくる者…天狗である 天狗は扇子を開き仰いでいる、その扇子には「天晴ッ!」と言う文字が記載されていた (…祝福しているのかしら?)そう思い彼女が瞬きした瞬間、天狗はその場から消えていた 後には天狗面とそれに張り付けられた文だけが残っていた

    12 21/07/15(木)01:34:40 No.823602411

    ーーー数刻後、高尾山口駅 遅れて下山してきたトレーナーと合流した二人は軽いボディケアを行った後、帰宅するため高尾山口駅にいた 「まぁ、とにかく勝利おめでとうグラス」 「はい、ありがとうございますトレーナーさん、ですが…」 「勝った気分にはなれない…か」 「はい」 あの天狗との別れの時、息も絶え絶えだった自身と比べ、息を荒げる事すらなく平然としていた天狗の事が頭にあったからだ ひょっとしたらあの天狗は力を温存していたのでは?と言う疑念が頭にこびりついて離れない彼女は勝った気分にはならなかった そして、天狗の文の内容は祝福する内容だったが同時に精進せよという内容でもあったのだ 「さて、明日からのトレーニングはきつめでお願いしますね」天狗の文をまた握りつぶしながら闘志を燃やす彼女だった

    13 21/07/15(木)01:34:58 No.823602462

    「承知ッ!本件は私こと理事長権限で処分無しとする」 「ありがとうございます理事長」 「なあに勝利し、世間の広さを知りより強くなろうとしているのだ良い結果であろうのう?たづなよ」 「はい、理事長」 「では解散ッ!トレーナーはかえって良し!」 ーーー後日、トレーナーは呼び出されて本件の説明をする羽目になったのだ、 ウマ娘が全力疾走したのだから当然と言えば当然ではあると納得するトレーナーだったが引っかかる点が多すぎるのだ 担当には伝えていないが、天狗が出発したあとに天狗面を被った一団が現れトレーナーにコースや走者の情報提供をリアルタイムで行ったのだ さらには、巧妙に偽装されたコースのクッションや、夜間とはいえ登山道の人払いされていたなどなどおかしい事だらけだったし あの場所へ食事に行ったのも学園で進めらたからだし、そして、理事長室で天狗面とあの天狗が履いていた高下駄を見つけてしまったのだ (ひょっとして、最初から仕組まれていた?) その事実に気づきトレーナーはこの学園の底知れなさを初めて知ったような気がしたのだった…

    14 21/07/15(木)01:35:14 No.823602525

    「さて、たづなよ、次に焚きつけるウマ娘は誰にしようかの?」 「理事長…彼女とかどうでしょうか?」たづなはそうバインダーから書類を取り出す 二人が暗躍する理事長室、天狗面の隣の鉄の高下駄は次の獲物を探すかのように鈍い光を放っていた…

    15 21/07/15(木)01:35:46 No.823602618

    どこからか飛んできた吹き矢に塗られていた毒によってこんな感じのウマ娘の怪異のような何かと競走する姿が見たくてたまらない欲求が噴き出してしまった 何とか解毒できたのでこれにて失礼する

    16 21/07/15(木)01:37:31 No.823602971

    さすがノーザンテースト…

    17 21/07/15(木)01:37:32 No.823602983

    いちゃつく暇もねぇ…

    18 21/07/15(木)01:47:53 No.823604881

    天狗じゃ!天狗の仕業じゃ!!

    19 21/07/15(木)01:50:31 No.823605372

    高尾山には麓から山頂まで尾根をひたすら行く 最もハードな稲荷山コース(約3.1km)ってのがあるんだ

    20 21/07/15(木)01:59:49 No.823606825

    スレ絵のせいでホラーかと思った…

    21 21/07/15(木)02:21:16 No.823610200

    夜の山道を疾走する天狗は十分ホラーだよ!

    22 21/07/15(木)02:22:41 No.823610415

    ノーザンテーストってそんなに強いの…!?