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「菊花... のスレッド詳細

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21/07/14(水)02:42:35 No.823293222

「菊花賞という大舞台だったので様々なトレセン学園のトレーナーさんが集まっていたのは、本当に幸運でした。応急処置は本当に見事で…」 みんなが集まって使うような病室よりもずっと広くてピカピカ部屋の中、一人で寝るには大きすぎるベッドの上で、お医者さんはそういった。 ボクの左手と左脚はぶらんと包帯とギブスでガチガチに固められてて吊り下げられていて、ふとするとズキズキと痛む。 もう少しでゴールってところで目の前が真っ暗になったと思ったら、菊花賞はもう昨日になってしまっていた。 どうやってこうなったかなんて覚えていない、覚えているのはネイチャと並んで走っていたことだけ。 ボクが起きたと分かったお医者さんが慌てて何人もやってきて、色んな説明をしてくれている。けど、あんまり頭には入ってこない。でもレースは失格扱いになったんだなってことは分かった、だって転んで気を失ったんだから。 「ボクは、いつから走れるようになるの?」 ボクの言葉に、目の前のお医者さん達はお互いの口を閉ざして目で合図し始めた。まるで誰が最初に言うのか押し付け合っているかのように。

1 21/07/14(水)02:43:01 No.823293286

「トウカイテイオーさん、貴方の脚は酷い解放骨折で、トレーナーさん達の処置がなければ骨に細菌が感染して脚を切らねばならなくなるところだったんです。手術で骨を元の形に形成できたのも奇跡としか言いようがなく…」 「どういうこと?」 「言いにくいことですが…治った後だとしても医者としてレースを走ることは許可できません、いえ…走る、脚に負担をかけることは…何も…」 「えっ…?」 耳が一気に遠くなったように、お医者さん達の話が小さく遠くの雑音のようなっていく。骨の強度がどうとか、もともとの関節の柔らかさが脚にはどうとか、走れたとしてもすぐに限界を向かえるとか。 そんな難しい話なんてボクには分かりっこない。だけど夢も、夢を見るための力も何もかも無くなったんだってことは、それだけは理解できた。 どうか気を落とさずに、と手遅れなことを言って気まずそうにお医者さん達が出ていくと、静かな部屋がとてもうるさく思えて、枕に顔を埋める。

2 21/07/14(水)02:43:26 No.823293352

頑張りすぎたのかな。夢を追いかけて、追いかけて、星みたいに大きくて遠い背中に並びたくて、走って走って、その終わりがこれなのかな。 終わり。その言葉を聞くと胸の中が冷たくなる…これがボクの終わり? これが…ボクのテイオー伝説の終わり? こんなものが? 「テイオー…?」 ふと、声が聞こえて埋めていた枕から顔を放すとカイチョーがボクを心配そうに見つめていた。 大好きな憧れのウマ娘、今一番会いたくなかったウマ娘。でも逃げようにも足も手もこれじゃあ逃げられない。 「か、カイチョー…えへへ、ドジなことやっちゃった…。で、でも大丈夫! こんな怪我すぐに治して、次こそは! 次こそは…」 そうだった、次なんてないんだった。無理やり上げた口の両端が震えて、目のはしっこが熱くなってくる。 ダメだなぁ、カイチョーを安心させてあげたかったのに。言葉が見つからなくて、自分がどんな顔をしてるのかも分かんないや。こんなはずじゃなかったのにな、こんなはずじゃ。 「テイオー」

3 21/07/14(水)02:44:13 No.823293445

ふと目の前が真っ暗になったかと思うと、柔らかさと良い匂いがボクを包んだ。カイチョーがボクをただ優しく抱きしめてくれていた。 なんだか必死にせき止めていた涙の堤防がゆっくり崩れていくのを感じて、目から熱いものがだらだらと流れていく。 「いいんだ、今ここには私しかいない。聞かれたくないなら耳を閉じよう、だから言いたいことを言っていい、叫んでいいんだ」 「あ…う…お医者さんが、お医者さんがね。もう走れないって…もうレースにも出ちゃいけないって…ひどいよね…そんなの…」 「あぁ…そうだな…」 「嫌だよ…そんなのいやだ…ボク、もっと走り、たい、よ。ぐすっ、は、はしりたいよ…もっと褒められて、カイチョーに勝って、トレーナーを笑わせて…もっともっと、みんなと…これが最後なんていやだ、終わりなんてやだよ! ボクだけ、なんでボクだけ…うぇぇ…」 それから泣いたずっと泣いた。カイチョーの服がびしょびしょになるまで。それでもカイチョーはただ抱きしめてくれた。 やっと落ち着いて、顔を放すとカイチョーはベッドに腰を掛けてボクのとなりに来た。

4 21/07/14(水)02:44:35 No.823293484

「カイチョー、ボク…引退になるのかな」 「…それはまだ分からない。治ってからじゃないと、もしかしたら元のように走れるようになるかもしれない」 でもそれは、希望的、というよりボクの為に嘘をついているってことがマヤノじゃないけど分かった。お医者さんがあんなにみんな気まずそうだったんだもん。治ることはもうないんだ。 あんなに泣いたからかな、少しだけもう走れないってことが受け入れることができた。 「でも、早いうちに決めてた方がいいよね…ねぇカイチョー、引退してもね、一緒に居てもいい?」 ボクの顔をみたカイチョーが少しだけ瞳を潤ませて、ボクの頭に手を置いた。 「テイオー……あぁ、もちろんだ。いつでも…」

5 21/07/14(水)02:44:46 No.823293512

そんな時だった、凄い音を立てて病室のドアが開かれたのは。 二人で驚いて顔を向けると、そこにはいろんな人に止められながらもなおそれを引きずりながら、部屋に入ってくるヒトがいた。ボクのトレーナーだ、もう会うことはないって思っていたのに。 「テイオー…!」 トレーナーはボクを見つけると、手に持っている手帳を突きつけるように見せた。 「新しい……予定だ……! 復活の……!」

6 21/07/14(水)02:45:18 No.823293572

〇 「おばあちゃん! じゃなかった、トレーナー! 大変大変!」 「ウララちゃんや、いつも言ってるだろう? そういう人には近づいちゃいけないって…」 「でも、この人トレーナーさんだよ!」 「はぁ?」 ぼやけた視界に見かけたことのあるシルエットが映ったと思えば、それがぐっと目の前に近づいて鮮明にハルウララの姿が全部の視界を占めた。 ほどなくして、その襟を引っ張って老婆が代わりに視界に入り込んでくる。 「何やってんだい中央トレセントレーナーがこんな道端のゴミ箱にもたれこんで。アンタはいいだろうけど、同僚としては迷惑千万だね。ゴミにたかるハエのような印象がついたらどうすんだいオレに」

7 21/07/14(水)02:45:47 No.823293620

老婆は呆れたようにかがむと、じっとこちらの顔を見て、記憶の中でこちらが誰かを思い出しているようだった。 「で、誰だいこのハエは。ウララちゃん知ってっかい?」 「ハエさんじゃないよー! えーっと、あ! テイオーちゃんのトレーナーさん! こんなところにいたんだ、あのね! テイオーちゃんが大変なんだよ、早く病院に行ってあげないと!」 「知ってる…俺はむざむざ…もう、放っておいてくれ…五月蠅いんだ、声がぶっ!?」 ふと老婆が持っていた杖がぶんと振るわれると、自分の腹の横へと突き刺さった。腹に刺さったというのにどうなっているのか脚が痺れたように痛む。 「ウララちゃんに汚い言葉使うんじゃないよ、ハナタレ小僧。探してもいないと思ったら、こんなところでゴミあさりしてたとはね。見上げたトレーナーだよ、ウララちゃんちょっと向こうにあったアイス屋さんでアイス買ってきな、ウララちゃんのは三段頼んでいいからねぇ」 「いいのー!? わーい!」 ぽんと財布を渡されたハルウララが上機嫌にかけていくと、老婆…ハルウララのトレーナーはさてと、と言ってこちらを見た。

8 21/07/14(水)02:46:19 No.823293689

「ふん、確かにルドルフんところのハナタレと似てるね。こんなところで何してるなんて聞くつもりはないよ、オレにはどうでもいいことさ。だがねぇ、何もしなかったってのは問題だね、なんでアンタレース場にいなかったんだい?」 「無駄、だからだ…止めようとしたが、止められなかった…もう、俺には…何も…テイオーさえも俺が…」 「んなこと聞いてんじゃないよドアホが。アンタ、オレたちトレーナーがレース場に行くか分かるかい?」 そんなもの、応援して、緊張をほぐして、見守って、喜びを分かち合うとかそういうことだろう。そんな情なんて、必要ない。復讐には必要ない。はずだった。 「違うよ」皺くちゃな顔で老婆はこっちの心を読んだように言った。「責任を取るためにいるんだよ。こういう事が起こった時、誰がおめぇ、責任者とか、スタッフとか、ファンに頭下げるんだい。担当に頭下げさせんのかい? んなわけねぇわな、オレたちが責任取って謝りまくってまた走らせてもらえるようにするのさ」 「えっ…」

9 21/07/14(水)02:47:07 No.823293768

「そういうのも、トレーナーの仕事なんだよ。こっちはウマ娘の人生しょってんだい。なんだってのにテメェはそこでゴミ漁って、責任を投げだしたのさ。おかげ様でこっちが頭下げなきゃいけなかった、テイオーをまた走らせるためにね」 「…すいません、でした。だが、もうテイオーは分かるんです、無駄なんです…走ろうとしても…途中の中継で見たんです…あの脚の砕け方は…もう走るのだって無理…」 もう一度杖が振り上げられて、次は遠慮なく顔面の頬に突き出された。今度はまっとうに顔が痛い。 「無理、無駄、タブー。オレの前で知った風にそんな口を叩くのは許さないよ若造。アンタ三女神様のつもりかい、違うわな。アンタが諦めるのは許されないよ。ウマ娘がもう無理、これ以上ないってぐらいダメだと絶望して、涙を流しても、一パーセント、ゼロコンマイチ、走りたいって気持ちがあるならケツ叩くのがオレらの仕事さ」 「じゃあ、じゃあどうしろっていうんです! 俺のせいで、テイオーは脚を壊した、俺が壊した! これ以上彼女に何をしても、俺は…」

10 21/07/14(水)02:48:25 No.823293924

俺が近くにあったゴミもろとも握りしめると、老婆はまた杖を振り上げて…叩かずに地面に降ろして自身が立ち上がるのに使った。 「そうさ、アンタのせいさ。そう思うんなら責任取りな! このクソ坊主、アンタもうあそこに毛が生えてんだろ、うじうじしてないでやることやってからうじうじするんだね!」 ハルウララのトレーナーが鼻息を一つ鳴らすと、かけていたサングラスをずらしてじっとこちらを見た。白く濁った瞳が真っすぐとこちらを捉えている。 「だからさ、これは都合のいい神様の恵みさ。ハナタレ、一つ方法があるとしたらどうする? 走れる方法が」 「えっ…?」 思わず声を上げると、老婆は指を一つ突き出して話をつづけた。

11 21/07/14(水)02:48:59 No.823293972

「ただし、これはもうアンタが一つ間違えばもうテイオーは走るどころか歩けなくなる。全部はアンタ次第さ、どうするね? テイオーを過去の英雄にするか、未来の破滅者にするかはアンタが決めな」 過去の英雄、消え去った名バ図鑑の中の一つ。母さん、母さんのようになるというのか? あの母さんのように?そんなこと、そんなこと…。 歯ぎしりの音が老婆にも聞こえたのだろう、悪魔のような歪んだ笑みをこちらに見せた。 これは悪魔の契約なのかもしれない、ほんの少しだけ残ったテイオーの可能性を完全に破滅さえる取引なのかも。 だけど、ただベッドに座って過去の写真を見つめるだけの、そんなウマ娘にだけは、テイオーをしたくない。 もう空っぽになった自分の、最後の、望みだ。 「決まりだ」 悪魔はそういった。

12 <a href="mailto:s">21/07/14(水)02:49:55</a> [s] No.823294058

むっちゃ遅くなってむっちゃ長くなって昨日はお休みしましてネイチャさんの姿形さえありませんが全て全部一片残らずスリーゴッデスのせいです私は悪くありません許してください

13 21/07/14(水)02:51:31 No.823294215

再起できるの!? いやしてくれ!!

14 21/07/14(水)02:52:25 No.823294310

よかった…ギリギリ希望は繋がった…

15 21/07/14(水)02:54:49 No.823294585

テイトレが立ち上がってくれて良かった

16 21/07/14(水)02:55:14 No.823294624

菊花賞でもう原作から離れだしたからこのまま終わりかと思ってたけどラストランの有馬に掛けるんだな…

17 21/07/14(水)02:55:16 No.823294632

悪魔の契約…

18 21/07/14(水)02:57:50 No.823294890

少年漫画的展開になってきたな…

19 21/07/14(水)02:58:54 No.823294996

前回までを思うと正直もう読み進めたくないくらいだったけどなんとか前に進めそうでよかった…

20 21/07/14(水)02:59:04 No.823295012

1つ目の山は超えたか…これで暫くは安心して寝れる

21 21/07/14(水)03:01:06 No.823295231

テイトレの口癖で復讐のためだった言葉なのにテイオーにうつった「予定」が希望の言葉に転じてここで出てくるのが好き

22 21/07/14(水)03:03:55 No.823295513

強キャラババアはいくら出しても良いとされる

23 21/07/14(水)03:05:26 No.823295665

ウラトレイケメンババア過ぎる…

24 21/07/14(水)03:07:28 No.823295858

前回リアタイできなかったのでそっちの感想も 2期とフクロスとかぶらないようにターボ以外での光となるとウララは最高の人選だと思う いいよねうっららーという声

25 21/07/14(水)03:10:11 No.823296115

諦めないウマ娘だしなウララちゃん…

26 21/07/14(水)03:14:43 No.823296546

アイス買いに行ったウララには何も起こりませんよね?

27 21/07/14(水)03:26:25 No.823297569

本当に悪魔と取引してしまっていいのか…? ここでテイオーに夢を諦めさせた方がまだマシだったなんてことになったりしないのか…?

28 21/07/14(水)03:27:35 No.823297676

勝ったな風呂入ってくる

29 21/07/14(水)03:30:15 No.823297947

まだ世間でどうなってるのか分からないのが怖い…

30 21/07/14(水)03:30:41 No.823297981

心に罅の入ったネイチャは… 心に罅の入ったまま走り続けるネイチャの方はどうなってしまうんだ…

31 21/07/14(水)03:42:57 No.823298955

気を失ったおかげでテイオーの精神的なダメージは最小限だったっぽい...? はたしてネイチャはどうなるか

32 21/07/14(水)03:45:47 No.823299173

テイオー…復活…ッ! トウカイテイオー復活ッ!! トウカイテイオー復活ッ!! トウカイテイオー復活ッ!! トウカイテイオー復活ッ!!

33 21/07/14(水)04:21:25 No.823301313

このウララのトレーナーいつか見た有馬記念勝つ育成してるウララ怪文書のトレーナーだわ

34 21/07/14(水)04:25:49 No.823301521

心が辛くなってきたらチーを漁ってまだ不穏止まりだった頃のお話までを読み返すんだ そうでもしないと救いが無さすぎて見てられないんだ

35 21/07/14(水)04:29:40 No.823301676

もしかしてあの有馬にウララ出るのでは…?

36 21/07/14(水)04:31:59 No.823301768

有マで首を狩りにかかってくるウララと必死で逃げ散らかして大復活を遂げるテイオー

37 21/07/14(水)04:44:21 No.823302336

ダイジョーブ博士が来るかブラックジャックが来るか…

38 21/07/14(水)04:45:51 No.823302398

良かった…目覚めたら脚の先が無くなってるとかそんな展開じゃなくて本当に…

39 21/07/14(水)04:47:42 No.823302490

よく覚えてないって事は早い段階で気を失ってたのかトラウマに蓋をしているのか これでネイチャの顔を一目見た時に消えろって叫び声とか踏み潰された瞬間がフラッシュバックするなんて事にならなければいいけど

40 21/07/14(水)04:49:41 No.823302578

生中継の映像と直前のネイチャの口の動きの拡大映像が方々で拡散してる頃合いだな…

41 21/07/14(水)06:21:12 No.823306590

嫌な話で申し訳ないが責任って話になったらうん……

42 21/07/14(水)06:30:19 No.823307057

よかった 会長トレーナーが全責任を弟におっかぶせて切り捨てることで ルドルフや学園を守護るような話にならなくてよかった

43 21/07/14(水)06:40:21 No.823307578

>有マで首を狩りにかかってくるウララと後ろでプレッシャーばらまいてくるネイチャと必死で逃げ散らかして大復活を遂げるテイオー

44 21/07/14(水)07:00:01 No.823308830

書き込みをした人によって削除されました

45 21/07/14(水)07:01:10 No.823308913

No.823308830 >No.823302398 >No.823302490 >No.823302578 息をするように鬼のような展開をお出しするのはやめなさい

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