虹裏img歴史資料館

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21/07/12(月)22:49:48 病弱で... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1626097788604.jpg 21/07/12(月)22:49:48 No.822908119

病弱でいつも寝込む私は、…レースに出れるなんて夢のまた夢としか思って無かった。 外の景色はいつも素敵、…メジロ家の彼女たちはいつも嬉しそうに走り回る。 …ああ、どうか神様…私もいつか…この景色に…

1 21/07/12(月)22:50:04 No.822908220

トレセンに入ったものの、病弱というだけで選手として向いてない…。その現実は厳しかった 「…それでも…」 今は耐えるとき、…きっと私が磨き続ければ、その光を誰かが必ず拾ってくれる。 …そう、強く信じるしか無かった。 今日も私は模擬レースを走る…。他のウマ娘と違って走れる回数は明らかに少ない。 …もうかれこれ2年目だ…私をスカウトするトレーナーはまだ現れない。 レース中、…どこか違和感を感じた。 誰かが私を見てる。…でも、私を誰が見るのか? そんな迷いを持っていたのか、レース結果は惜しくも2着になってしまう。 「2着……」 咳が出る…身体が息を切らし、自らの体を蝕む感覚がやってくる。…でも、元気でいること、笑顔で居ること…これはひとつの私自身の決意の証明だった。 「…ふむ…」 トレーナー達は私を見てない…見ているのは3着になったウマ娘を見ている。 …それでも諦めない…絶対…いつか…

2 21/07/12(月)22:50:16 No.822908293

「……へぇ…これはなかなか…いい末脚だ…」 1人だけ、私をじっと見つめるトレーナーがいた。 ドキリとその視線に射抜かれたように私は身体が震える。…ただ深く、優しく、じっと見つめる瞳で…私をただ見ている。 「うん、面白いな…彼女を調べてみようか」 「あっ!あの…」 私が声をかけようとするよりも早く、彼は足早にそこからいなくなってしまった。 まさにその目は…人生における、希望そのもののように見えたのだ。

3 21/07/12(月)22:50:45 No.822908499

「試験は超えれたんだろ?トレセンに入れたってのに、しかもあんなにいい結果を残してるのに…勿体ないなぁ…」 模擬レースの記録表を確認する、確かに彼女は人よりも出走スパンが長いな。トレーナーとしては病弱というのは結構嫌な性質なんだろう、負担の量が多いとも言えるし、万が一の責任問題になった時にめんどくさいんだろうな。 ガラスの靴のような少女だ、美しく、誰もが羨む強さがあるのに…ひとつ間違えれば、簡単に砕け散ってしまう。結局誰の手にも拾われず、飾られるだけの存在。

4 21/07/12(月)22:50:57 No.822908565

「あっトレーナーさん!なにをみているんですかっ?」 そんなことをぶつくさ思ってると、彼女が急に俺に抱きついてくる。 「ん?…あー…チヨノオーともう1人スカウトしないなって思ってさ」 うむうむと彼女は頷く。 「切磋琢磨するには好敵手が不可欠、ですしね!」 ビシッと指を上に差して、彼女はそう笑顔で誇らしげに言う。 「…うん、そういうことだ!」 2週間前、最初にスカウトしたのが彼女で良かった、彼女の元気を貰えてるからこそ、新人トレーナーとして少しずつ上手くいくようになってきている。 俺は学生アルバムに映る…1人、自己研鑽に励むウマ娘の写真を見ていた。 「彼女………やっぱり面白いな、見てみようか…」

5 21/07/12(月)22:52:45 No.822909300

「…ふうっ」 他のウマ娘よりも早く彼女はメニューを終えてターフの丘の上のベンチで休んでいた。 「…いたいた」 彼女は俺を見るとぱぁっと嬉しそうな笑顔を見せる。 「あら、ごきげんよう、トレーナーさん、私になにか御用ですか?」 「えーっと…スカウトしようと思って…」 まあ、と彼女は驚いていた。 「…私が言うのもおかしな事かもしれませんが…」 自身が身体の弱いことを告げ、その上でトレーナーから疎遠されてたことも彼女は話した。 「…うん、知ってる知ってる、…その上でスカウトしに来たんだよ」 まあ!と彼女は驚く。

6 21/07/12(月)22:52:57 No.822909401

「なんて面白いお人でしょう、…私の事情を知った上でお誘いするだなんて」 「うっ……でも、どんな理由でも走りたいという強い願いを叶えて上げたいんだ」 俺は彼女に強く、力を込めてそういった…。 「…ありがとう…」 「えっ」 「いえ、…ずっとスカウトなんて遠い縁でしたから…改めて、私でよければどうかお願いします」 「うん…よろしく、…えっと…メジロアルダン!」 「ふふっ、アルダンでいいですよ、トレーナーさん」

7 21/07/12(月)22:53:21 No.822909547

~~side アルダン~~~ 私は肉体の軋みを感じて、早めにメニューを切り上げた。 「…ふうっ」 ベンチで休み、あの時の彼を思い出す。 …素敵な目だった、ドキリと感じるあの間隔…。 私、どうしちゃったのでしょう、彼を思い起こすと不思議と胸が高鳴って…。 「…いたいた」 ドキリとまた胸が鳴る。 私はそれでも平常心であろうと、強く意志を持った。 「あら…ごきげんよう、トレーナーさん、私に何か御用ですか?」 本当は知っているのに…私ったら、どうしてこんなことを…… その後の返答に、どうしても私はネガティブな言い方をしてしまった。…それでも彼は悪い顔をせず、むしろ面白い、是非スカウトしたいと答える。…例えそれが彼のお世辞かも知れなくとも、…見捨てられてしまう可能性があったとしても…私は盲目になってしまう。 「うん、よろしく…えっと…メジロアルダン!」 名前を呼ばれ、幸せを噛み締める。 「ふふっ、アルダンでいいですよ、トレーナーさん」

8 21/07/12(月)22:53:52 No.822909752

アルダンが入って、最初は戸惑う時間を過ごした。 彼女は文字通り病弱だった、…熱心な勉強好き所を上手く使って、彼女はそういう日はレースの勉強、それをノートまとめた物を提出、という形をとり、実際にそのレースと同じ形状にしたものを… 「よし、チヨノオー、アルダン…行くぞ…スタート!」 2人で走らせて、実戦的なレビューを取る、この繰り返しをすることで、アルダンに少ない練習で効率よく…チヨノオーにはアルダンが覚えた新しい戦法を吸収させて行った。 「ふーっ…トレーナーさん!どうでしたか!?」 「うん、素晴らしい成績だ、チヨ!」 「えへへ…やったっ!」 チヨノオーはメキメキと成長してる、もちろん、彼女だけじゃない… 「…くっ…」 「アルダンも素晴らしい成績だ、…少しずつだけど、息が上がりにくくなってるね」 「ありがとうございます、トレーナーさん」 「私、もっと頑張りますっー!次は何をしますか!?」 「アルダンは大丈夫?」 「はい、もう少しだけなら…」

9 21/07/12(月)22:54:40 No.822910081

「よし、なら…軽めのメニューを組みつつやろうか」 チヨノオーもアルダンも上手に進んでいる。 「チヨノオーは…来月レースだから、疲れが残らないように気をつけるんだぞ」 「はいっ…!私、頑張りますね…」 「目標はダービー!絶対勝とうな、チヨノオー!」 そう言って彼女を撫でると、えへへ…と彼女はふさふさと髪と耳が動いてスリスリと俺に甘える。 「……」 「どうしたの?」 アルダンが一瞬俺に冷たい視線を送った気がする。…気のせいか 「いえ、…トレーナーさん、帰り、良ければご一緒に…」 「あっ…アルダンさんずるいですー!私も私もーっ!」 「ふふっ、じゃあ2人とも帰ろうか」 2人の関係は中々良好に進んでるようだった。 全て、このままきっと上手くいく…俺はそう強く感じるのだ…。

10 21/07/12(月)22:55:07 No.822910260

帰り道、トレーナーが2人を送迎し…、彼はいい具合の場所で去ってしまった。 「……あの、アルダンさん…」 チヨノオーは少し困った顔で話しかける。 「…チヨノオーさん…言いたいことは分かります」 「えっと…えへへ、困りましたね」 …元々分かっていた。先客がいた事くらい。 「チヨノオーさんは…やはり…その…好きなんですか?」 「え、えーっと…えぇ!?…と、はい…好きです…トレーナーさんのこと…」 「…私もです」 一目惚れ、そう言ってしまえばすぐ終わるのかしら。 でもそういうものじゃない、それは彼の指導で確信してしまった。 …病弱な私を思って、私にしかできない強みを最大に活かす人……。 時早く、恋の季節なんて盲目なのだ、…数ヶ月で生まれる恋が早いことなんて、お互い分かっている。

11 21/07/12(月)22:55:57 No.822910626

「…その…てことは…私たち、レースだけじゃなくて…恋でも好敵手…なんですよね」 「そうなりますね」 「…負けたくないです」 チヨノオーさんが、珍しくはっきりと言う。…それだけ強い意志だって…本当は分かっていた。 「チヨノオーさん、ダービーが目標…なんですよね」 「私、絶対勝ちたいんですっ!…一生に1度しかないあの舞台で、絶対…絶対!」 「…実は…私もダービーに勝ちたい、そう思ってるんです」 「えっ…」 「勝負しませんか?」

12 21/07/12(月)22:56:08 No.822910702

その言葉を言うべきではない、神聖なレースに邪推な思いなんて本当は良くないことを知っている。…だけど…私には提案するしか無かった。 「…勝負、……ってなんですか?」 「負けた方は…一切、トレーナーさんの恋慕を…諦めること」 「………っ!」 彼女の目が本気の目になった、今まで見たことないほどに強く、強い目に。 「…分かりました、絶対…勝ちます」 「…どちらが勝っても、二言はありません、…約束しますか?」 「……はいっ……絶対……負けませんからっ……」 チヨノオーはそう言いきって、ダッと私から逃げるように走り出した。 「……ごめんなさい、こんなことをして…」

13 21/07/12(月)22:58:43 No.822911771

帰り道、夕方の曇り空の下に続く街並みは、暗く……深く闇を写し続ける。 ネオンに光るレコード店から、聞き覚えのある曲がして、私は静かに店を見た。 『恋はーダービー、競走社会~!もうお祭り騒ぎさ~!』 若々しく、みずみずしい、…トウカイテイオーという少女が歌う楽しげな声 「……恋は、ダービー…」 本当はお互い分かってる。 この恋は一時の迷いかもしれないこと。トレーナーさんはどちらに恋してるか…、そもそも2人に恋心なんてものすら抱いて無いことも。 でも…私は… 「恋はダービー…競走社会…」 ぎゅっと手を握りしめ…軋む肉体の…静かな痛みが…麻酔に打たれたように消えていく。 私は…負けたくない…。彼女のとの競走に、…ひとつの恋のダービーに…。 身体が急に絞るような感覚に襲われる。 衝動の如くメジロ家のターフに行き…ただ静かに…誰の目に映らずとも……ターフを全力で走り続けた…

14 21/07/12(月)22:59:43 No.822912182

初めてのアルダン怪文書 長文だけど収めきれなくてかなり急展開と雑な内容になってしまった…ごめん… でもこの後はどちらが勝利してもどちらも怪我してレース終わるので間違いなく未来は地獄でしょう

15 21/07/12(月)22:59:53 No.822912256

ウワーッ修羅場!!

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