21/07/12(月)03:35:19 何も恐... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1626028519627.png 21/07/12(月)03:35:19 No.822651917
何も恐れることはなかった。君が見ていてくれるなら。何も違うことはなかった。君が見ていてくれるなら。私の舞台はどこにあっても変わらない。何個あっても変わらない。だから大丈夫。きっと楽園へ辿り着ける。 君が見ていてくれるなら。 そう、そのはずなのだ。だから、あり得ない。どこかで何かを盲目的に信じていたけど、信じていたものが何かわからない。それを暴いたら、取り返しがつかない気がする。だからわからない。わかることはただ一つ。 「アグネスタキオン一着!マンハッタンカフェは四着に終わりました!」 その結果は、揺るがない。ドラマにやり直しはあっても、現実にやり直しはないのだから。
1 21/07/12(月)03:35:41 No.822651952
「うん、いいタイムだ。この調子だカフェ」 「…はい。すみません、最近撮影が忙しくて」 弥生賞は着々と迫っている。それなのにレースのために割ける時間が限られてしまうのは心苦しい。君は全てを捧げてくれているというのに。 「いいんだよ、カフェにはカフェのやるべきことがあるんだから」 やるべきこと。トレーナーさんはよくそのフレーズを使う。だから、私は何かを投げ出すわけにはいかない。 「まあ、正直なところ。次の相手はベストでも勝てるか分からない。だから…いや、そんなことを言ってはトレーナー失格だな」 「アグネスタキオン…ですか」 「そうだ」 アグネスタキオン。未来の三冠確実とさえ言われるウマ娘。彼女の出走を受けて既に弥生賞は出走回避が続出し、私は数少ない出走者の一人となっている。 「…以前、トレーナー室に来たと言っていましたね」 「ああ。ライバルの視察だと言っていたな。その後会ったりしてないのか?」 「…いえ」 アグネスタキオンを名乗るウマ娘が会いに来たという話はマネージャーからも聞いていない。私を見たいなら私に会いに来るはずなのに。それなら何故、彼女はトレーナー室に?…まさか。
2 21/07/12(月)03:35:53 No.822651977
「…トレーナーさん」 「…?どうした、カフェ」 「…いえ」 心に湧き上がる何かを言葉として処理できず、問いかけは中断される。 「よし、今日はこの辺にしよう。お疲れ様」 「…お疲れ様です」 これが不安だとすれば、何に対する不安なのか。答えは導き出せず、ただ日数が過ぎる。 「…負けるわけにはいかない。君が命ずる通り、私は全てを喰らう」 そう何度も、何日も。願うように口にする。ただ、君が見てくれるなら。それが私の祈りなのだから。
3 21/07/12(月)03:36:05 No.822651996
わからない。意識をここまで巻き戻しても、この結果を認識できない。 「ふゥ…お疲れ様だね、カフェ」 「…そのように親しげに呼ばれるような覚えはありませんが、アグネスタキオン」 「それは申し訳ないね。…時に君」 「…なんでしょう。敗者に情けの言葉でもかけるのですか?それなら結構。私は──」 「これが情けだと取られてしまうなら申し訳ないが。…その調子じゃ春いっぱいは無理だね。休暇をトレーナーに嘆願した方がいいよ。…おっと、副業もあったかな。それもだ」 「…!なに、を」 何を馬鹿な。何をわかっているというんだ。何を、なにを。言葉は空を切り、ただ己の身体を鑑みる。力は、明らかに入り切っていなかった。でも、私に休むなんて。 「助言の類ではなく、警告だよ。…走れなくなっては元も子もない、だろう?こういう目については一家言あるのさ」 「私には、トレーナーさんとの約束が」 楽園へ行く。そのためには、一歩だって止まるわけには。
4 21/07/12(月)03:36:28 No.822652034
「…とにかく療養することだね。走れる刻は永遠ではないとしても、その時間を伸ばすことは重要だ」 そう言ってアグネスタキオンは立ち去る。私はただ、それを見ているだけの黒子だった。 「…お疲れ様」 「…気休めは要りません。全力を出せなかったが故の結果です」 「そんなことは…!」 「…少し、一人にさせてもらえますか」 「…わかった」 トレーナーさんを追い出して、控え室に一人。私は敗北を噛み締められなかった。私の牙は勝利のためにだけ生えていて、挫折を飲み下すようにできていなかった。 「うまくいかなかった。だから私のこの生活には、無理がある」 そういうことだ。アスリートと女優の両立。そんなものは不可能なことで、まだ密室殺人の方がありふれている。
5 21/07/12(月)03:36:41 No.822652054
「…違う」 違う。それが出来ないのは、己が無力だから。もっと、もっと。退屈を埋めるほどのワーカホリックが、私の見る世界には必要だ。それに身体が耐えきれないとしても、そんなの。 「…もしもし。休暇を取ります。よろしくお願いします。…何と噂を立てられようと、構いません」 マネージャーへ休暇の連絡を入れる。文句を言われても構わない。どうせ事実だから。私が耐えられなかったのは、事実だから。 「…それでも、レースは」 休みたくない。完全に休むべきだとしても、こちらは手を離したくない。全身の疲労は、数日分一気にのしかかってくる。でも。 「…皐月賞を、目指す」 よろめいてしまうのは、今回の疲労のせい。まだ、私は喰らいつける。さあ、トレーナーさんに心配をかけた。何事もなかったかのように出ていかなければ。 …そこで、意識は途切れた。
6 <a href="mailto:おわりです">21/07/12(月)03:37:00</a> [おわりです] No.822652083
「…これは、過労ですね。しばらく休ませた方がいい」 「…わかりました」 こえがきこえる。あなたのやさしいこえ。 「…トレーナー失格だな、俺は」 なかみはわからないけれど。あなたのこえは、あんしんする。…また、ねむくなってきた。 「…ごめんな、カフェ」 そうだ。わたしもあやまることがあったのだ。 「タキオンとのレースのことばかりで、君の体調管理を忘れるなんて」 まけてしまってごめんなさい。 「…次があるなんて思わないよ。お別れをしよう。君をレースに連れ出すなんて間違ってた」 つぎは、かちます。だから──────。 楽園への道筋は閉ざされた。
7 21/07/12(月)03:37:14 No.822652099
この時間に来てくれるとはありがたい…
8 21/07/12(月)03:40:41 No.822652437
>この時間に来てくれるとはありがたい… むしろこんな時間でごめん! 初期カフェの弥生賞までです fu154463.txt
9 21/07/12(月)03:41:29 No.822652520
初期カフェシリーズありがたいけどみんな寝て 俺?今日6時起き
10 21/07/12(月)03:43:35 No.822652739
これで終わりか…終わりかな? 夏の上がりウマ娘だからここから這い上がる未来もあったかもしれない
11 21/07/12(月)03:48:11 No.822653180
まだ続くんだよな!?
12 21/07/12(月)03:48:47 No.822653238
>これで終わりか…終わりかな? >夏の上がりウマ娘だからここから這い上がる未来もあったかもしれない URAファイナルズまでやります!こっから愛の何たらが始まる
13 21/07/12(月)03:50:07 No.822653379
ごめんURAファイナルズはかかりすぎたかもしれない 育成シナリオ終わりっぽいところまではやりたいね…
14 21/07/12(月)03:53:03 No.822653636
いや育成シナリオやりきるステイヤーならURAも行けるって
15 21/07/12(月)03:57:06 No.822653981
fu154476.jpg 初期カフェの宣伝を忘れてた
16 21/07/12(月)04:02:46 No.822654457
完結まで着いてくからな! 待ってるからな!!