21/07/12(月)00:24:30 「トレ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1626017070410.png 21/07/12(月)00:24:30 No.822609905
「トレーナーさん、賭けをしませんか?」 「へ?」 私の唐突な提案にトレーナーさんは間抜けな声をあげて不思議そうな顔をしている。 「はい、私がレースで勝利したらトレーナーさんの過去を一つ話してもらうというものなのですが」 「え、普通にやだけど」 即答されてしまったが、ここまでの反応は予想通りだったのでトレーナーさんを説得するために言葉を続ける。 「よく考えて下さい、私は既にトレーナーさんの名前を控えてるんです。調べようと思えば調べることもできます、ですが私はトレーナーさんの口から聞きたいということで、こうやって賭けという形を取っているんです」
1 21/07/12(月)00:24:46 No.822610015
「つまり、何が言いたいの?」 「こっちの方が私のレースに対する意識も上がってお得ですよ」 「えー……」 分かりやすく嫌な顔をしていて、苦虫を噛み潰したような表情という言葉を生み出した人はこんな表情を見ていたのかもしれないなどと、下らないことを考えつつトレーナーさんからの返事を待つ。 「……グラスが私にお願いしたいことって何?」 「簡単です、トレーナーさんの走っているところを見てみたいんですよ」 いくら時代が古いとはいえ、流石に学園内でのレースも含めて映像がないなんてことはないはずです。 するとトレーナーさんはうんうんと唸った後、物凄く嫌そうな顔をしながら許可してくれた。
2 21/07/12(月)00:24:57 No.822610095
「……でも、勝てなかったらやらないからね」 「トレーナーさんは自分の愛バの勝利を疑うんですか?」 「……」 トレーナーさんは写真に撮っておきたいような顔をしていて、思わず吹き出しそうになってしまった。 ────────────────────────── レースに勝ったので、トレーナー室の窓と扉の鍵を閉めてから、先日の約束通り走っているところを見せてもらうように尋ねる。 「……んー、まあ約束しちゃったしなあ」
3 21/07/12(月)00:25:07 No.822610177
そう言うとトレーナーさんは時計を確認してから私にコースに出るように促してきたので、軽く疑問を抱きつつも自分で閉めた扉の鍵を開けてコースへ行く事にした。 暗くなりウマ娘もいなくなったコースでトレーナーさんを待っていると、蹄鉄を履いて体操服を着たトレーナーさんがやってきた。 「よし、じゃあ──」 「ちょっと待って下さい、え?何ですかそれ?」 「え、だから走ってるところが見たいんでしょ?」 「はい、だから昔のレース映像などを見せていただければと思っていたのですが」 「……実際に目の前で走って欲しいってことじゃなかったの?」 「……はい」
4 21/07/12(月)00:25:21 No.822610278
正直、勘違いもあって色々と言いたいことはあるが、とりあえず一番気になる事を聞いてみる。 「……今でも走れるんですか?」 「え?ああ、色々あって少し前から鍛え直してるんだよね。だから全盛期と同じって訳じゃないけど結構戻ってはいるよ」 「……では、私と一レースだけ走っていただけますか?」 「良いけど、勝っちゃうよ?」 少しだけ挑発的な笑みを浮かべながら、年齢的に少しだけ思うところがある体操服を着たトレーナーさんが煽ってくるのでそれに乗る事にする。 「距離は……次の安田記念に合わせて1600にしますか」
5 21/07/12(月)00:25:38 No.822610402
「おっけー、じゃあグラスは着替えてきたら?」 「そうですね、では少し待っていて下さい」 ────────────────────────── 「じゃあ、用意はできた?」 「はい、大丈夫です」 そう言うとトレーナーさんはコインを指に乗せて弾き、それが地面に落ちた瞬間に……駆け出す! なかなかの好スタートを切れたのでとりあえず状況を整理していく。
6 21/07/12(月)00:26:02 No.822610547
普段なら他のウマ娘の走り方などを考えに入れながら走るのだが、今回は二人だけな上、トレーナーさんの脚質も分からないので軽く様子を見ていると、どうやら後ろから行くようなので自分でペースを作っていく事にした。 そうして最終コーナーへと回る頃にはトレーナーさんとは2、3バ身程の差がついていた。 そこから徐々にペースを上げていき直線でスパートを掛けて差を付けていく……はずだった。 直線に入った瞬間に、空気が変わった。 トレーナーさんの気配、足音、息遣い、それら全てが今から追い抜くぞと言わんばかりの錯覚を私に覚えさせる。 まずい、一瞬冷静さを失いそうになるが、軽く息を整えて距離を離そうとスパートを掛ける。
7 21/07/12(月)00:26:14 No.822610621
が、距離が離れない、それどころが縮んできている。 そしてトレーナーさんとの距離が0に等しくなった時、いつもと違う真剣で、闘争心をむき出しにしてゴールしか見ていないトレーナーさんに、一瞬だけ見惚れてしまった。 ……そんな事をして勝てるはずもなく、レースはトレーナーさんの勝利に終わった。 「……グラスはトレーニング後なんだし、負けたことはあんま気にしなくていいよ……って言っても気にするんだろうねえ」 「……トレーニング後だろうと、負けは負けですから」 負けたこと、一瞬だけ集中が切れてしまったこと、全てが悔しい。
8 21/07/12(月)00:26:24 No.822610672
だからこそこれを糧にして、再びトレーナーさんに挑もうと覚悟を改める。 「……次の安田記念、勝利したら再び走ってくれますか?」 「別にお願いしてくれたらいつでも走るのに」 「それでは駄目なんです」 「意志は硬そうだねえ、まあレースへのモチベーションが上がるならいいよ。次の安田記念に勝ったら、また一緒に走ろ」 「はい、その時は必ず私が勝ちます」 トレーナーさんはにんまりと笑うと、そろそろ時間もあれだしと着替えに戻ろうと提案してきたので、一緒に部室に戻る事にした。
9 21/07/12(月)00:26:47 No.822610840
「……気になってたんですが、その体操服はトレーナーさんが昔使っていた物ですか?」 「うん、ちょっとキツい所はあるけど、まだ着れるしね」 流石に昔の服を今の年齢にもなって着るのはアレなのではないかと言おうかと思ったが、言わない方が面白そうなので黙っておく事にした。
10 21/07/12(月)00:28:53 No.822611672
一旦おしまい これまでの sa80626.txt
11 21/07/12(月)00:29:13 No.822611808
いい……
12 21/07/12(月)00:29:51 No.822612122
久々に見た…いい…
13 21/07/12(月)00:33:57 No.822613910
とてもいい…
14 21/07/12(月)00:36:27 No.822614918
むっ!年甲斐のない体操服…! たづなさんと同年代の体操服…!
15 21/07/12(月)00:39:14 No.822616096
妙齢の女性に年甲斐のないとか言うものではありませんよ
16 21/07/12(月)00:42:19 No.822617538
イッちゃん久しぶりに見た
17 21/07/12(月)00:45:22 No.822618676
久しぶりのイッちゃん怪文書いいぞ
18 21/07/12(月)00:49:07 No.822620112
久々にイッちゃんトレーナー怪文書見たな 次に感想スレ立ってたら最近見なくて寂しいと書き込んでるところだった 再現菊花賞で一緒に走るたづなさんやミッちゃんも体操服なんだろうか イッちゃん含めてみんな勝負服かもしれんけど