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21/07/11(日)22:33:16 対テイ... のスレッド詳細

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21/07/11(日)22:33:16 No.822560824

対テイオーに向けて始まった専属練習は毎日ベッドに倒れ込むほどの過酷なものに、とはならなかった。彼は単純な根性トレーニング論者ではなかった様だ。 「ネイチャはまだ身体が出来上がってないからね。種目別競技大会が目標とはいえ基礎トレーニングがメインなのは変わらない。先ずはしっかりと身体を作る」 スピード強化のマシントレーニング、トモの強化に坂路ダッシュ、スタミナ増強のためにプール練習など。身体を作るためのトレーニングはメイクデビューに向けても変わらない。

1 21/07/11(日)22:33:36 No.822560978

特別に追加されたのは合間合間での併走トレーニング。これが大分キツかった。 「教官から入手した選抜レース時のテイオーのタイムを元に、仮想テイオー役にこのペースを作って貰う。対テイオーの実践トレーニングだ」 仮想テイオー役には仲の良い友達、イクノやタンホイザ、マヤノにマーベラスまで協力してくれた。ターボはペース無視するのでトレーナーにお断りされた。駄々こねてたけど飴貰って機嫌は直ぐ治った。 あたしは2000m、仮想テイオー役は途中から先行スタートして、終盤でのテイオーの加速に対抗するための差し込みを繰り返し。 本格化が始まったばかりのあたしの身体には厳しいトレーニングだったが、彼はあたしが怪我しないギリギリを見極めて調整してくれた。

2 21/07/11(日)22:33:57 No.822561114

「何処か痛むとこはない?」 「ん……っ、だいじょ、ぶ……ふ……ぅ」 そして毎日のトレーニング終わり、特に併走トレーニング後には入念な、彼による脚部マッサージがルーティーンになっていた。 最初はウマ娘にとって命とも言える大事な脚を他人、ましてや異性に間近でまじまじと見られるなんて恥ずかしくて仕方なかったし、ましてや触られるなんて不安だった。 でも彼のマッサージは不思議なほど筋肉から疲労を落とす気持ちの良いもので、受けるとハードなトレーニングの直後なのに確かに脚部の重さは無くなり、翌日の疲労の溜まり具合も断然違った。

3 21/07/11(日)22:34:20 No.822561253

「…………」 「……っ……ん……」 ソファに座ったあたしの前に傅いて、真剣な表情で彼が見詰める先にはズボンの裾を捲り上げたあたしの素足。彼の両手はあたしのふくらはぎ、腓腹筋を柔らかく押し込みながら上下にゆっくり滑る。 筋肉が揉み解されて疲労が押し出されるのはとても気持ち良い。肌に感じる彼の手の体温は温かく、じんわりと疲れた筋肉に染み渡る様。 ハードな併走トレーニング後なのも相まって脱力してソファにもたれ掛かってると瞼が重くなってくるのも仕方がない事だと思う。夢見心地な気分はふわふわと、微睡む意識は水に揺蕩う葉っぱの様。

4 21/07/11(日)22:34:43 No.822561467

「……んっ……あ……ぅ……」 内側のヒラメ筋、外側の前脛骨筋、長腓骨筋などを揉み解されると彼の太腿に乗せた足の指が意識せず動いてしまう。トレーナーのジャージに軽く食い込む指の感触が少し恥ずかしくて、顔を背けてしまう。 トレーナーの資格を取る傍らでウマ娘専門の医学療法士の資格まで取得したという彼は、恐らく相当な勉強をしてきたのだろう。その成果が今あたしに全力に注がれている。 「…………よし。痛くなかったかい?」 「……ん、全然。いつもありがとね」 「いえいえ、これくらい」 最後に丁寧に足首を回し、足裏の様子を確認した彼はあたしの足を両手で支えてゆっくりと下す。壊れ物を扱う様に、大切な物を扱う様に。それが毎回こそばゆくて、くすぐったい気持ちになる。

5 21/07/11(日)22:35:01 No.822561593

ズボンの裾を下ろし靴下を履き直すあたし。彼は立ち上がって今日のトレーニングでメモしていたバインダーを手にデスクの方へ。今日の結果をノートPCで纏めるらしい。 「今日もお疲れ様。ゆっくり休んでね」 「トレーナーさんもお疲れ~。また明日もよろしくね」 「うん。よろしく」 荷物を持ってトレーナー室を出る。窓から見える夕暮れも終盤、空は赤から青、そして黒とグラデーション模様。今日の寮の晩御飯はなんじゃろか。トレーニング後なのに軽い足取りで昇降口に向かう。 これがあたしと彼の日常の終わり。始めの頃には想像も付かなかった、ゆったりとした時間。この時間がいつの間にかあたしは好きになっていた。

6 21/07/11(日)22:35:27 No.822561786

そして迎えた、種目別競技大会の当日。 「おー、ネイちゃん!今日は頑張れよー!」「ネイちゃん!今日はみんなで応援するからね~!」「トレーナーさんも頑張ってくれよ!」 「あはは……はいはい、みんなありがとね~」 「ありがとうございます。後で屋台寄りますね」 朝。あたしと彼は屋台を準備する商店街の面々に捕まりながらグラウンドに向かっていた。競技大会では一般客も観に来るため、理事長権限で特別に観客席裏に屋台出店が認められており、馴染みの商店街の有志も多く出店しているのだ。 「焼きそばに焼き鳥、いか焼きたこ焼きどて焼き、綿アメにベビーカステラ、チョコバナナ!いや~お祭り騒ぎですなぁ~」 「お昼は屋台巡りだな」 「ん~楽しみ~」

7 21/07/11(日)22:35:52 No.822561975

「……その、お昼一緒に周りません?」 お祭り気分に当てられたのか、あたしは思い切って彼をお昼に誘ってみた。 「いいの?友達と周ったりは」 「今日はその、いいかなって……ほ、ほら!今日まで頑張ってきたお礼というか!」 「それを言うならネイチャが1番頑張ってきたじゃないか。じゃあ、俺からネイチャへのご褒美って事でなら」 そういう事じゃないんだけどなぁ、と真剣な顔でメモを取ったりマッサージをする彼を思い出す。じゃあ、とあたしはお祭り気分に更に乗じて勢いをつける。これは、願掛けみたいなもの。 「……あたしがもし、もし1着だったら、奢ってもらってもいいですか?」 「……あぁ、約束するよ」 「……うんっ。じゃあ、頑張らなきゃねっ!」 願掛けに意味があるかは神様次第。でも彼の笑顔からはちゃんとテイオーに立ち向かう勇気を貰えた。出走まで、後もう少し。

8 21/07/11(日)22:36:14 No.822562150

騒めきが遠く聞こえる。コースのポケット部分に設置されたゲート裏にてあたしは軽く柔軟をしながら自分の出番を待っていた。既に短距離と長距離、ダートのグループが出走し終わり、コース整備を挟んであたしの出番の中距離戦はもうすぐ。 コースは右回り、芝2000m。昨日からの快晴でバ場状態は良。絶好のコンディション。あたしにも、他の出走者にも。 「あ~もーっ、みんな声掛けてくるから遅れちゃったよ~!あ、みんな今日はよろしくねーっ」 そこに一際明るい声で登場したのはトウカイテイオー。ゲート裏の少しピリピリした雰囲気もどこ吹く風、流石主人公と思える余裕の笑顔で挨拶している。 「あ、ネイチャ!」 「……テイオー」 あたしの目の前まで来たテイオーは足を止める。あたしを下から上まで眺めると。 「……うん、仕上げてきたみたいだね。トレーナーさんに感謝しなきゃ」 品定めされている様で、少しムカっとする。あたしはアンタの当てウマじゃない。

9 21/07/11(日)22:36:34 No.822562297

ムカつくついでにずっと気になってた事を聞いてみる。 「……テイオー、一つ聞かせて欲しいんだけど」 「んー、何?」 「……何で、あたしなの?」 「何が?」 「宣戦布告。何であたしだけなの?」 テイオーは頭の後ろで手を組んでそっぽを向く。その顔は笑っているのに、何処か固い様に思えた。 「合同トレーニングでさ、初めて2000m走った事あるじゃない?あの時教官がタイム計測してたの覚えてる?」 「あ、うん、参考程度にって、特に公表してなかったけど」 「ボクさ、誰が1番なのか気になって終わった後教官にタイム表見せて貰ったんだ。案の定ボクが1番だったけどね」 「そりゃ、そうでしょうね……」

10 21/07/11(日)22:36:57 No.822562457

あたし達の世代でテイオーより速い子なんていない。それは入学してから不変の事実だ。 「でも、ボクに匹敵しそうな程速い子がいたんだ。1000mとかじゃあまりパッとしなかったのに、2000mのタイムじゃボクの1バ身差まで詰め寄ってた。上がり3ハロンなんてボクよりも速かったよ」 「……え……」 「ボクはゾッとした。まさかボクに追いつける子が同い年に居るなんて、って。ゾクゾクして、どんな子か気になった」 テイオーは遠くを見ている。まるでその時の感情を思い出している様に。果たしてそれは帝王が討たれる恐怖か、挑戦者が現れた事への歓喜か。 「でもその子は、タイムは良くてもレースになると実力を発揮できないみたいだった。模擬レースの1000mで直接対決した時も、あの時のタイムには程遠い走りだった。ボクは悲しかった」 テイオーはくるりとあたしに背を向けた。帝王として相応しくない顔は見せられないとばかりに。 「ボクはその子と全力で競いたかった。たとえボクに追いつける脚を持ってても、ボクの方が速いんだって示したかった」

11 21/07/11(日)22:37:23 No.822562657

「そしてその子が種目別競技大会で芝2000mに出走するって聞いた時、嬉しかったんだ!やっとその子と競える、って!お互い得意な距離で直接ぶつかり合える、って!」 「そして、その子はボクと同じ出走グループになった!これはもう、三女神様が競い合えって言ってくれてる様なものじゃん!」 「だからセンセンフコクして、その子にボクを全力で追い越す気になって欲しかったんだ!」 「もっとも、その子よりそのトレーナーさんの方がやる気になっちゃったみたいだけどね。でも全力でその子を鍛え上げてくれたから感謝しかないかな」 そこでテイオーはくるりと回ってあたしの方を向いた。笑顔は相変わらずだったが、その目は爛々と輝いていた。 「ネイチャ。ボク、負けないからね」 「……あたしも、負けない」 思わずテイオーの目に引き込まれそうになるけど、ぐっと堪えてあたしも笑う。引き攣った笑顔だったかもしれないけど、レース前に負ける訳にはいかないから。 「……うんっ、よろしくっ!」 あたしの宣戦布告に、テイオーは満面の笑みを返した。まるで欲しいものが手に入って喜ぶ子供みたいな。太陽の様な笑顔だった。

12 21/07/11(日)22:38:18 No.822562962

終わり。 初期案ネイチャのキャラスト4話(2/3)妄想。タイムについては原作にないでっち上げです。熱い展開が好きなので。次回ついに直接対決。

13 21/07/11(日)22:38:41 No.822563184

前回まで fu153672.txt

14 21/07/11(日)22:43:20 No.822565204

マーーーーーーーーーーーーー!!!

15 21/07/11(日)22:46:08 No.822566440

うわーいテイオーのガチ勝負宣言だー…アプリネイチャだったら萎縮してたかも位に飛ばしてる

16 21/07/11(日)22:48:40 No.822567586

バチバチでいいね… レースの描写大変だろうけど期待している

17 21/07/11(日)22:53:55 No.822570051

湿度低めネイチャだ!

18 21/07/11(日)22:59:22 No.822572646

原案ネイチャ助かる

19 21/07/11(日)23:05:43 No.822575856

>ターボはペース無視するのでトレーナーにお断りされた。駄々こねてたけど飴貰って機嫌は直ぐ治った。 駄目だった

20 21/07/11(日)23:07:02 No.822576569

熱い展開でいいねえ… あと二人がお似合いすぎるねえ…

21 21/07/11(日)23:11:33 No.822578616

タイム計測のときだけネイチャが好成績残せてたのは何なんだろうね? 適正距離の問題?

22 21/07/11(日)23:13:10 No.822579365

>タイム計測のときだけネイチャが好成績残せてたのは何なんだろうね? >適正距離の問題? 本番に弱いタイプとか

23 21/07/11(日)23:17:41 No.822581506

> トレセン学園の中では”中等部の実力派”としてそれなりに認められているが、運が悪いせいか実力を発揮できないことが多い。

24 21/07/11(日)23:18:26 No.822581845

運の問題なのか…

25 21/07/11(日)23:24:48 No.822584839

運を引き寄せるには実力が必要、みたいな

26 21/07/11(日)23:26:44 No.822585684

精神的なのも作用しそうだしね

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