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画像ファイル名:1625919105171.png 21/07/10(土)21:11:45 No.822101634
ーーー夢を見ていた ある競バ場の緑のターフを走る夢 彼女は同じようにターフを走っていた他のウマ娘を追い抜いてゆき先頭でゴール板を駆け抜けてゆく 走り終えた彼女は競バ場の施設とターフを繋ぐ通路へ歩みを進める 走った疲れも感じずに通路を歩いている彼女、だが突如足が動かなくなりバランスを崩しその場で倒れこむ 転んだ彼女は足に違和感を感じ足の方を見る 彼女の目に映ったのは、白く変色し割れた陶器のように大きくひびが入っていた それを目にした彼女はとにかく施設の医療室へと手を使い動こうとするが芋虫のようにもがくぐらいしかできない そうこうするうちにもがいている彼女の横を生気を失った顔で一緒に走っていたウマ娘が一人また一人と後ろから通り過ぎてゆく 誰もかれも彼女に手を差し伸べることなく歩みを進める通路の先にはぽっかりと口を開けた漆黒の闇が待ち構えていた 一人…一人と飲み込んでゆく闇はまるで走れなくなったウマ娘の未来を暗示しているように彼女は感じた その感情を感じ取ったのか闇は蠢き始め、そして彼女を飲み込む 闇に包まれ彼女がその闇の中で見たものはーーーー絶望…そして恐怖
1 21/07/10(土)21:12:28 No.822101934
「…ッ!!ハァ!…ハァ!ハァハァ…」彼女が目を覚ます ここはトレセン学園のウマ娘達が暮らす寮の一室、まだ空は黒く早朝と言うよりも深夜と言ったほうが正しいそんな時間 悪夢から目覚めた彼女は自身の足を触り何も起きていないことに安堵する ひとりきり足を確認した彼女は洗面台へ歩みを進め、顔を洗う 顔を洗うのは、気分を変えたいというのもあるし悪夢を見た手前すぐに寝たくないという気分も働いたからだ (またあの悪夢だ…)顔に掛かる冷たい水は彼女を眠気を覚まし思考が回転し始める 眠けが覚めた彼女はタオルで顔をぬぐいいつものように髪をポニーテールにまとめ鏡を見る 鏡に映るのは青い瞳、そしていつものようにまとめられたポニーテールーーートウカイテイオー、それが彼女の名前である
2 21/07/10(土)21:13:04 No.822102190
同室人が遠征でいなくたった一人の自室は妙に広く感じ、外から聞こえる雨音だけが室内に響く (ボクの足は治ったはず…なのにまだあの夢を見続けるなんで…)顔を洗った彼女は自室の机につっぷつしながら考える まだ起きるには早い時間であったがベッドに入らなかったのは悪夢でみた絶望と恐怖がまだ頭の中にどす黒いタールのようにこびりついて離れなかったからだ 日本ダービーが終わり今までのオーバーワークが足の痛みとして跳ね返ってから時々見るようになったので最初の頃よりは慣れたつもりではある だがあの夢で見るたび絶望と恐怖は少しずつ積み重なってゆくのだ 彼女はため息をついてスマートフォンを立ち上げ適当な動画を見始める、眠ること以外の事をして忘れるのが彼女のルーティンとなっていた ・・・ 「あはははは…ふう~」ネットでバズってた動画を何本か見終わるには外は明るくなり始めてた スマホをしまった彼女は伸びをするそろそろ食堂も開くころだろう 「ボクおなかすいちゃったし朝ごはん食べに行こーっと」そう自分に動けと言い聞かせるように一人呟いて外に出る 外には鈍色の空が広がりはいまだに雨が降っていた…
3 21/07/10(土)21:13:32 No.822102387
トレセン学園の食堂…そこはウマ娘だけでなくトレーナーをはじめとした職員たちも利用する 「あっトレーナーだー」トレーナーを目ざとく見つけた彼女は食事を急いで取り寄せトレーナーの隣の席に座る 「おはよ~、トレーナー」「ああ、おはよう」 挨拶も終え、彼女は食事を食べ始める 「ねえ、トレーナー?なんか疲れてない?」食事を食べる彼女はトレーナーの顔にクマができているのを見つけたのだった 「ああ、今日の朝までにやらなければならなかった仕事があってな、今日は土曜日だしこのまま帰って眠るさ」 そこまで言ったトレーナーは彼女の様子の変化に気が付く 「そういうテイオーも眠れていないように見えるが何かあったか?」 「えっ!…え~とボクもちょっといろいろあって眠れなかったんだよね~」 「ふ~ん」彼女が明らかにはぐらかしていたのを見たトレーナーはあえてこの場では何も言わなかった
4 21/07/10(土)21:14:02 No.822102587
「へ~トレーナーの自室ってこうなっているんだ~」部屋を入るなり彼女は興味深くトレーナーの部屋を観察する 食事を終え「今日は土曜日で外は雨で使えないし前々から見たがってた俺の部屋を見に来ないか?」というトレーナーの言葉に釣られてやってきたのだった 「ねえ、トレーナー?ちょっといろいろ見てていい?」 「お~いいぞ~、お茶の準備している間何もないことを確認してていいぞ~」 その言葉を待っていたばかり彼女は部屋を物色し始める (何もないって言う割には本がたくさんあるじゃないか)彼女は部屋に大量にある本やプリントの山に目をやる 一つ一つを手に取ると足のマッサージや骨折時や炎症時の対応法などばかりが書かれた学術論文であるのがわかる (ひょっとしてボクの為にこんなにもやってくれてたんだ…)そう思うと彼女の胸に何か来るものがある 彼女が感傷に浸っていると… 「テイオー、お茶の準備できたぞ~」トレーナーの声が聞こえてきた
5 21/07/10(土)21:14:32 No.822102801
「さて、テイオー何があったんだ?」トレーナーが優しく聞く 彼女が飲み物と茶菓子のありついたのを見てからトレーナーは話し始めたのだった 部屋に招き入れたのも朝食の時の様子が明らかにおかしいと判断して話を聞き出そうとしたからだった 「うう…トレーナー、いわなきゃだめ?」トレーナーの真剣な目に彼女は思わずたじろぐ 「ああ、信じてほしい、君の背負っているものを俺にも背負わせてくれないか」 しばし二人は無言で見つめあう 「あのねトレーナー、実は…」根負けした彼女が話し始める 今日見たあの夢の事を、そして日本ダービーの後足の故障が露見してからの時々見続けてきた事 「でもねでもね、トレーナーに足のマッサージしてもらった日は大丈夫なんだ、だから平気だったんだ」 彼女が言うにはトレーニングなどが無くマッサージをしなかった日によく見るという事のようだ 昨日も今日の朝までに終えなければならない仕事があったため、彼女のトレーニングは自主トレとなっていたことをトレーナーは思い出す
6 21/07/10(土)21:15:08 No.822103031
「ふぁああああ…」トレーナーに喋って少し楽になったのかそれとも寝不足の限界が来たのか彼女はあくびを出してしまった トレーナーは少し熟考して「なぁ、テイオー今日少し仮眠していかないか?」と言う 「でも…ボク…」彼女は躊躇する今日の悪夢がいまだにタールのようにこびりついて離れてないからだ 「大丈夫、眠るまで手を繋いであげるから大丈夫」トレーナーは何か確信をもって彼女に言う ・・・ 暫くして彼女はトレーナーがいつも使っているベッドに横たわる 「それじゃ、トレーナー絶対に手を放しちゃだめだからね」眠気にあらがえなくなった彼女は結局トレーナーの提案に乗ることにしたのだった 寝不足な彼女が眠りに落ちるのはすぐだった
7 21/07/10(土)21:15:37 No.822103207
ーーー夢を見ていた ある競バ場の緑のターフを走る夢 彼女は同じようにターフを走っていた他のウマ娘を追い抜いてゆき先頭でゴール板を駆け抜けてゆく …いつもの悪夢 だが、ターフから通路に入ろうとした時、いつもならだれもいない通路の入り口にトレーナーが立っていた トレーナーは何も言わずに彼女の手を取る、つないだ手からは暖かさが伝わってきてそれが全身を駆け巡るそんな錯覚を彼女に与える そして通路を歩き始める
8 21/07/10(土)21:16:04 No.822103403
長い長い通路の先は闇がぽっかりと口を開けて開いているようだった それを見た彼女は思わずトレーナーの方を向く 彼女と目が合ったトレーナーは微笑み「大丈夫」と言い前の方を指さす 指さされた方向を見ると、そこにはいつもの夢にいる絶望と恐怖は姿を消しており闇の中に一点の光が差し込んでいたのだった それを見た彼女はトレーナーに微笑み返し、手をより強く握る そんなやり取りした二人はどちらともなく一点の光へと歩み始め 彼女は、隣を歩くトレーナーの手から伝わる暖かさを実感していたのだった…
9 21/07/10(土)21:17:02 No.822103877
・・・ トレーナーは困り果てていた 彼女が手をつないだまま寝てしまうのは分かっていたが手を放してくれないからだ 「さてどうしたものか…」と思い彼女の寝顔を見る 穏やかでしかも幸せそうに眠る彼女の寝顔をみたトレーナーは手を離すのをあきらめてベッドの隣の床に手をつないだまま眠ることにした 幸いにも徹夜仕事の疲れからか、トレーナーは床の上でもそのまますぐに眠りに落ちてゆくのだった… 次に二人が目が覚めたのは午後に入って少したってから 目覚めたトレーナーが言った「よく眠れたか?」という言葉、それに彼女は笑顔で返した 気づけば外で振っていた雨は止んでいて空に虹がかかっていた、まるで彼女の笑顔を表すかのように
10 21/07/10(土)21:17:31 No.822104080
「ねえ、トレーナー?また遊びに来ていい?」自室に帰る別れ際トレーナーに聞く彼女にトレーナーは「たまにならいいぞ」と答える それからしばらくして、トレーナーの部屋に彼女のマグカップが置かれていたのは言うまでもなく言うほどの事でもないだろう
11 21/07/10(土)21:17:50 No.822104220
どこからか飛んできた吹き矢に塗られていた毒によってこんな感じのウマ娘のちょっとした一日が見たくてたまらない欲求が噴き出してしまった 何とか解毒できたのでこれにて失礼する