21/07/10(土)20:45:44 「こん... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1625917544478.jpg 21/07/10(土)20:45:44 No.822090968
「こんにちは。その、よろしくお願いしマス……」 「こんにちは、こちらこそよろしくね」 ノックをしたあたしを扉を開けて出迎えてくれた彼にぎこちなく挨拶する。次からは遠慮せず入って来ていいよ、と笑って言われた。 あの恥ずかしいスカウト騒動の次の日、あたしは彼のトレーナー室に招かれていた。彼が今後について話し合いたいと言ったからだ。 入って正面に置かれたミーティング用の長机に促される。座ると同時にあたしは思い切って口火を切った。 「その、今までの事、ホントゴメン、なさい……」 「……今までの事?」 「その、嘘付いた事とか、避けまくってた事とか、昨日とか酷い事言っちゃったし……色々、ごめんなさい」 頭を下げる。昨日スカウトを受けてから、直ぐ言わないとずるずると言えなくなりそうで、今日真っ先に言おうと決めていた事。これからのあたし達に残しておくには不安だったから。
1 21/07/10(土)20:45:57 No.822091043
「あぁ……気にしないで。俺も追い回したり閉じ込めたり少々掛かり気味だったし、ごめんね」 「いや、元はと言えばあたしが避けたりしなければ……」 「いやいや俺の方こそ……」 「いやいやいやあたしだって……」 「いやいやいやいや……」 「「……………ふはっ」」 何だかバ鹿らしくて、面白くて、どちらからともなく吹き出す。 「あはっ、2人して何してんだか」 「あはは、ホントにね。まぁ、お互い悪かったという事で、痛み分けにしない?」 「そうですね。そうしましょう」
2 21/07/10(土)20:46:19 No.822091208
「後、そんな敬語気にしないでいいよ。俺敬語使われるとむず痒くなっちゃうから」 「あ、そうなの?じゃあ遠慮なく~」 「適応早っ」 「ゆる~く楽しくがモットーのネイチャさんですから~」 目を見開く彼にひらひらと手を振り半分ジョークなモットーを披露する。モットーとまではいかないが、そのぐらいの心持ちが1番落ち着くのだ。 「…………」 「ちょ、ちょっとトレーナーさんや。少しくらい反応してくれてもいいんじゃない?無反応だとネイチャさん恥ずかし」 「いや、自然体なネイチャ、良いな、って思って」 「な、なぁあっ!!?」
3 21/07/10(土)20:46:42 No.822091366
「いや、嫌われてた期間が長かったからなんか、感慨深くてつい」 「つい、でそんな発言しないでくれます!?急に爆弾投下されてびっくりするわっ!!」 「あはは、ごめんごめん。急に馴れ馴れしかったね」 「全く、もぅ……それに、別に嫌いな訳じゃなかったし、馴れ馴れしいのもさ……」 「ん、何か言った?」 「な、何でもない!ほ、ほらミーティングするんでしょ、ミーティング!」 「あぁ、そうだったね。じゃあ早速、今後のトレーニングについてだけど……」 トレーニングメニューやデビューに向けての説明に入る彼だったが、あたしは顔の熱さに気を取られてあまり集中できなかった。 これから先、この人と上手くやっていけるだろうか。
4 21/07/10(土)20:47:03 No.822091509
「ネ~~イチャーーーッ!!!」 「うひゃあっ!?」「うおっ!?」 ミーティングも終わりかけた頃。ドバン、と急に扉が勢いよく開き、元気いっぱいな声がトレーナー室に響く。驚いたあたしと彼は3センチぐらい浮いたかもしれない。 「テ、テイオーっ!?」 「や~っと見つけたーっ!も~色々探し回ってボクくたびれちゃったよー。マチタンに聞いてようやく分かったんだから~」 ずかずかと遠慮なく中に入って来たのはトウカイテイオー。あたしの同学年で、まるで太陽の様な性格の、その才能は既に三冠級と噂される、大注目の超大型新人。 「探すって、テイオーがあたしを?な、何で……」 「あれ、ネイチャまだ見てなかったの?もう貼り出されてたよ!」 「貼り出す……?ごめん、全然話が見えないんだけど……」
5 21/07/10(土)20:47:25 No.822091656
「も~、種目別競技大会の出走表!ネイチャ、芝2000mで申し込んでたでしょ?」 「あ、あ~、あったねーそんなの。色々ドタバタしててすっかり忘れてたわ。もう出走グループ決まったんだね」 「そう!ボクも芝2000mで申し込んでたんだ~!そして!」 ふふんっ、と得意げな表情で腰に手を当てたテイオーは、あたしに向かってびしっと人差し指を突き出した。 「ボクもネイチャも同じグループ!よってワガハイは、ネイチャにセンセンフコクしに来たのだ~っ!!」 「え、は、はぁああっ!?」 「おぉ……」 主人公様からモブ役Aに向けて、あり得ない宣言がされたのだった。
6 21/07/10(土)20:47:44 No.822091801
「センセンフコク……って宣戦布告っ!?何でっ!?」 「一緒に走る子達にはよろしくね~って言うつもりだけど、ネイチャには真っ先にセンセンフコクしときたくてね~。トレーナーも付いたって良い事聞いたしっ。あっ、こんにちはネイチャのトレーナーさん!」 「初めまして、トウカイテイオーさん」 「……ほほ~ぅ、ほうほう。これは、もっと楽しくなりそうだねぇ」 「コンビ組みたてだから、デビュー前はお手柔らかに頼むよ」 「……ふふんっわかったよ。デビュー前は、ね」 状況についていけずあうあうと狼狽えるしかないあたしを他所に、テイオーと彼は挨拶を交わしている。呑気すぎだろおい。 「じゃあ、ボクこれから他の子に挨拶してくるから、2人とも、んっじゃね~っ!」 「あぁ、またね」 「…………あっ!?ちょっ、テイオ……ッ!?」 フリーズしてたあたしを置いてけぼりに、テイオーはポニーテールと尻尾をふりふり楽しげに振りながら、入って来た時と同じ様にまた勢いよく扉から出ていってしまったのだった。
7 21/07/10(土)20:48:20 No.822092023
「……は、ぁ~~……いきなりすぎ、嵐かっての……」 脱力してパイプ椅子にもたれ掛かる。テイオーの傍若無人さにまんまと振り回されてすっかり疲れてしまった。 「種目別競技大会、か」 「あ、トレーナーさんは初めてだよね。選抜レースとは違って学年とかデビュー前とか済とか関係なく、自分の得意な距離で走って色んな人と走ってレベルアップ目指しましょーって大会。毎年一般のお客さんも入れて開催するから結構な盛り上がりなんですよ~」 あたしお馴染みの学園近くの商店街の面々も屋台を引っ提げて参加しており、前回のあたしへの応援はデビュー済の先輩方より大きいもので随分と恥ずかしい思いをしたものだった。 「そこでネイチャはテイオーと一緒に走る事になった、と」 「うん、まぁ、そういう事になってしまった、かな……でもテイオー、なんであたしなんかに宣戦布告なんて……」 心当たりがなさすぎる。今までのあたしなんて、周囲と同じくテイオーに置き去りにされるだけで主人公の視界にすら入ってるとは思えなかったのに。まるでライバルの様に宣戦布告なんて。
8 21/07/10(土)20:48:44 No.822092167
「因みに、今までのテイオーとの勝敗は」 「……当たり前じゃん、察してよ」 合同トレーニング中の模擬レースで直接カチ合った事は数度あるが、いずれも後塵を拝するのみ。惜敗ですらない。 「ごめん。でもタイム差とかは聞いときたくて」 「タイムはちょっと分かんない、かな。いつもブっちぎられるから……」 「教官に聞けば分かるかな」 「多分……って、トレーナーさん、まさか」 「うん。さっきまでのミーティング内容は全部忘れて」 「種目別競技大会に向けて、打倒トウカイテイオーを見据えて、トレーニングを組み直そう。やろう、ネイチャ」 真剣な顔をしてこちらを見つめる顔に、さっきからの怒涛の展開に疲弊し切っていたあたしは、もうぽかんと口を空けて呆けるしかなかった。
9 21/07/10(土)20:49:29 No.822092485
終わり。 初期案ネイチャのキャラスト4話(1/2or3)妄想。ネイチャ目線だと長すぎなので分割します。主人公襲来。
10 21/07/10(土)20:49:48 No.822092632
前回まで。 fu150392.txt
11 21/07/10(土)20:50:44 No.822092984
テイオーはネイチャの資質に既に気づいてるということか
12 21/07/10(土)20:53:29 No.822094082
>No.822091801 「コンビ組みたてだから、デビュー前はお手柔らかに頼むよ」 「……ふふんっ♪わかったよ。デビュー前は、ね」 なぜか♪が消えてましたので変換お願いします
13 21/07/10(土)20:59:15 No.822096393
もうすでにだいぶ仲良いじゃないですか…お熱いねえお二人さん!
14 21/07/10(土)21:04:31 No.822098573
>もうすでにだいぶ仲良いじゃないですか…お熱いねえお二人さん! 魂レベルで気が合うお2人…もはや一心同体ですわ!
15 21/07/10(土)21:44:59 No.822116834
ネイチャの資質にトレーナーとテイオーは気付いてて本人だけが気付いてないのか なんかこう…いいな!