ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/07/09(金)20:40:17 No.821714096
「おんどりゃぁーー!」 周りに民家一つない長閑な街道で、おしとやかとはとても言えない少女の雄叫びが響き渡る。それと同時に、ガコッと段差から抜け出し進み始める荷車。肩で息をしながらそれをひく赤毛の人間に、同じく荷車を押していた妖精達が心配そうに話しかけていた。 「おいおいアニス、あんまり無茶すんなよ?お前は大切な商品なんだから、グロースターに着く前にへばっちゃったらもとも子もねえぞ。」 「だってもたもたしてたら女王軍に見つかってダーリントン送りなんでしょ、じゃあ早く進まなきゃ!そんなことよりワグさんも約束忘れないでよね!?」 「ああ、そこは安心しな!アニスみたいな働き者で器量良しの人間なら、身請けする妖精は選り取り見取りさ!」 「よっしゃあ、レッツ玉の輿!(?)」
1 21/07/09(金)20:40:59 No.821714405
とはいえ、如何に空元気を吹かしたところで荷台の鉄塊が軽くなる訳ではない。早速滝のように汗を流し始めた人間に、彼らの弟分が提案を持ちかけた。 「なあアニス、そんなに早く行きたいんなら、その鉄の筒置いていっちまおうぜ。どうせ使い方もわかんなぇんだろ?」 「うーん、棄てたいのは山々なんだけど、なんかそうすると良くないことが起こりそうなんだよねえ。それに…」 「それに?なにか思い出したのか?」 「…や、ダメみたい。」 しばらく口に出すかを迷っていた彼女は、そう言って誤魔化し、思い浮かんだ馬鹿げた言葉を飲み込んだ。 (それに、多分私はあの筒の「一部」なんだ。荷車にとっての荷台と車輪みたいに。) そんな思索に耽っていた彼女の思考に、突然叫び声が割り込む。先程のロブという妖精が、自分たちに迫る危機に気付いたのだ。
2 21/07/09(金)20:41:10 No.821714485
「やべえ、ブラックドッグだ!荷物を置いて早く逃げろ!」 しかし、ここは周りに何もない草原。今から逃げてもすぐに追い付かれてしまうだろう。そして何より「コレ」を置いて走り去るという発想が、彼女には無かった。そうして躊躇しているうちに、ブラックドッグのうちの一体がその場に留まる彼女に狙いを定めて飛びかかる。もはやここまで、そう覚悟を決めた瞬間ー。
3 21/07/09(金)20:41:38 No.821714693
(先輩!) 遠くから誰かが呼びかけるような感覚。それと同時に右手の令呪に衝撃が走り、獣や逃げ惑う妖精がすくみ上るほどの雄たけびが響き渡る。 「■■■ー!」 落雷と錯覚する程の咆哮と共に現れたのは、荒削りの斧剣を携えた見上げるような巨漢。まさしく狂戦士としか言いようのない剣圧で黒犬を切り刻み、そのままの勢いで嵐のように残りの敵をもすりつぶしていく。 その様子を見ていた妖精たちは、興奮気味に勝手なことを語り出す。 「すげーやアニス!どうしたんだそれ、守護霊とかか?」 「あんなことできる奴なんて妖精でも見たことねえ!もしかしてアニス、予言の子じゃねえのか?」 「馬鹿言うな、予言の子は妖精だって話だろ?」
4 21/07/09(金)20:42:05 No.821714892
「いやわかんねえぞ、女王軍は片っ端から予言の子を捕まえてるらしいからな、もしかしたら嘘の予言で捕まらなようにしてるのかも。そうじゃなきゃアニスの力が説明がでいねえぞ。」 呆然と立ち尽くしていた少女はその声で我に返るが、既に巨影は姿を消した後であった。なぜ自分にこんな力が?いったい自分は何者だったのか?いつになく自分の過去に対する渇望が強まった少女は、何の根拠もなく繰り広げられる妖精たちの会話に身を乗り出す 「ねえその、予言の子?についてもっと教えてもらってもいい?」 こうして彼女は、想像もしなかった運命の荒海へと自ら漕ぎ出すのであった。
5 21/07/09(金)20:42:34 No.821715121
書き込みをした人によって削除されました
6 21/07/09(金)20:43:19 No.821715441
以上、チェンジリング怪文書①でした。
7 21/07/09(金)20:45:28 No.821716392
まあそりゃこんなこと出来りゃ普通とは思われんわな…
8 21/07/09(金)20:48:23 No.821717661
>(それに、多分私はあの筒の「一部」なんだ。荷車にとっての荷台と車輪みたいに。) 弾込める役が言うとおつらさが増すな…
9 21/07/09(金)21:06:11 No.821725542
この流れだとライオン初夜がマジにならない?
10 21/07/09(金)21:08:01 No.821726506
>この流れだとライオン初夜がマジにならない? (何処からともなく出てくる黒コート)