ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/07/09(金)18:19:12 No.821667352
せいうんたぬきに小難しいことはわからぬ。 せいうんたぬきはただ自分の大好きなトレーナーさんとセイちゃんが幸せになってほしいと思い行動するだけである。 故にせいうんたぬきはあらゆる手段でもちもちしながら二人を見守っているのである。 これは、そんな彼女のある日の思い出。 「せいちゃん、おんせんりょこうけん当ててきました!」 「え?せいちゃんが?くじ引きでもしてきたの?」 唐突な報告に目をパチクリさせるのはセイウンスカイ。 はて温泉旅行券とは、また商店街でくじ引きをやったのかと思うが、失礼ながらそんなイベントを年に何回もやるとは思えない。 …と思っていたら、確認して見るとどうにも違うようだ。
1 21/07/09(金)18:20:11 No.821667607
「せいちゃん、これはスーパー銭湯のご招待券だねぇ」 「…おんせんじゃないですか?」 コテンと首をかしげ、そう訊ねるせいちゃんに計りしれぬ愛らしさを感じ、思わず彼女の頭を撫でるスカイ。 彼女はそうだねぇ、と相づちをうつが、このままだとなんだかしょんぼりさせてしまうような気もして、少し気を利かせてあげることにした。 「けど、温泉と同じくらい楽しいところだよ。一緒に行く?」 「はい!せいちゃん、セイちゃんとトレーナーさんと一緒に行きます!」 「そうだねぇ行こうねぇ……え?トレーナーさんも?」 「はい!さんにんまでむりょうって書いてます!」 ……本当だ、とつぶやくスカイは、おそらく自分が止めることもできないところまで事態が進行していることを悟った。 「あのー…せいちゃん?誘うなら別の子でもいいんじゃないかなってセイちゃん思うな~って☆……あ、いない」 最後の抵抗を試みたものの、すでにせいちゃんの姿はどこにもなかった。
2 21/07/09(金)18:21:41 No.821667967
「誘ってくれてありがとな?スカイ、せいちゃん」 「いえいえ~、もともとせいちゃんが当ててきたものですので」 「せいちゃん、とっても嬉しいです!」 右手にトレーナーの手、左手にスカイの手を握ったせいちゃんは、嬉しそうに尻尾をブンブン。 こころなしかもちもち具合もいつもよりぽてぽてとしている。 スーパー銭湯に入場すると、せいちゃんはより一層目を輝かせた。 「すごいです!すごいです!」 「はいはーい、セイちゃん、まずはお風呂入りに行こうねぇ」 「せいちゃんはスカイに任せて大丈夫か?」 「んー、まあ大丈夫でしょう!せいちゃんは基本的に良い子ですし」
3 21/07/09(金)18:22:12 No.821668104
「はは、スカイに似てるからな。よし、じゃあとりあえず1時間くらいを目処にゆっくり入ろうか」 何気なく放たれたその一言にも、セイウンスカイの心はさざめき、ほんのりと頬が染まってしまう。 「…もー、そういうとこですよ」 「どうしたんだ?」 「セイちゃん、照れてます!」 「はいはい、ふたりともうるさいでーす。じゃ、一時間後ですね、行こっせいちゃん」 「はいっ!せいちゃんお風呂はいります!」 二人と一匹は一旦別れ、湯につかりに向かった。
4 21/07/09(金)18:22:50 No.821668257
ぷかぷかと湯船に浮かぶせいうんたぬきに、スカイは面白げにお湯をぱしゃりとかけたりして遊んでいる。 「せいちゃんきもちいいですー」 「そうだねぇ、あったかいねぇ」 他のお客のとこまで流れていきそうなせいちゃんを胸元に抱き寄せて、リラックスしているせいかいつもだったら言わないようなことを口にしだした。 「せいちゃんはさぁ…トレーナーさんのこと好き?」 「はい、大好きです!」 さっきまでふにゃふにゃだったせいちゃんが、急にシャッキリと返事をした。 「私のことは?」 「セイちゃんのことも大好きです!」 「にへへ、ありがと」 ぷにぷにと、せいちゃんの頬を突く。 「突かないでください、突かないでください!」 「良いではないか~」
5 21/07/09(金)18:23:36 No.821668477
「……じゃあ、さ。トレーナーさんは…私のこと」 どう思ってるのかな。そう言おうとして、やめた。 こんな可愛くて、一心の思ってくれている子に、自分の望む答えを引き出そうとしているのは、なんだかずるいと思ったから。 「ううん、なんでもないや、ごめんね?」 そう言いながら、せいちゃんの頭を撫で始める。 「…よくわかんないですけど」 「え?」 せいちゃんは、なにやら必死に考えているようだった。 自分の中にある感情と考えを、完璧にスカイに伝えるために、脳内で必死にじたばたしていた。 「せいちゃん、よくわかんないですけど、セイちゃんは絶対幸せになれます!」 ニコッと、自分を見上げて、そう断言するせいちゃんに、思わずスカイは抱きしめるほどに感動を与えられてしまった。 「せいちゃん、ちょっとくるしいです!」 「にゃはは…ごめんね?それと、ありがとう」
6 21/07/09(金)18:24:20 No.821668690
お風呂から上がると、トレーナーは一足先にマッサージチェアでくつろいでいた。 「おやおや、いいご身分ですな。せいちゃんやっちゃって!」 「はいっ!」 セイウンスカイに抱っこされていたせいちゃんは、彼女の胸元から飛び立つと、ぽてっとトレーナーの腹に着地した。 「ぐえっ…一人湯だと一通り回ったら暇でな。そっちの湯加減はどうだった?」 「良かったですよ。ね、せいちゃん?」 「はい!せいちゃん気持ちよかったです!」 それはなにより、と笑いながら彼は立ち上がる。ちょうど、稼働時間が終わったようだった。 「それじゃ、お座敷でなにか食べようか。好きな物たのんでくれていいよ」 「おっ、気前がいいですな。せいちゃん何食べる?」 「せいちゃんおいしいもの食べたいです!」 「じゃあ、おいしいもの食べよっかー」 あんまり急いだらだめだよ、と手を繋ぐスカイとせいちゃんを、トレーナーは半歩後ろから優しく見守っていた。
7 21/07/09(金)18:24:49 No.821668810
トレーナーはカツ丼、スカイはカレー、せいうんたぬきはわんぱくセットをそれぞれ頼み、テーブルに着く。 館内の独特な雰囲気と、風呂上がりの夕食がスパイスとなり、3人はこの時間を楽しんでいた。 「おいしい?せいちゃん」 「はい!おいしいです!」 ちゅるちゅるとうどんをすすり、もっちりとうなずくせいうんたぬき。あんまりうどんは食べ慣れていないのか、口の周りが少々汚れていた。 「あ、ほら、お口の周り吹いてあげるから、こっち向いて」 「はい!ありがとうございます!」 その光景を見て、トレーナーの顔にほほえみが浮かぶ。 「あ、セイちゃんの口も汚れてます!トレーナーさん、拭いてあげたほうがいいと思います!」 「え?いや、私はいいよ…ってトレーナーさn!?」 彼女が拒否する前に、彼は素早く紙ナプキンでスカイの口元を拭いてあげた。 「ほら、きれいになった。…スカイ?」 「もう、いきなり女の子の口触るのは厳禁ですよ?」
8 21/07/09(金)18:25:26 No.821668966
賢さが下がった結果セイちゃんより強くなったせいちゃん
9 21/07/09(金)18:27:14 No.821669474
そう言って、口元を隠しつつムッとしたふりをしているが、せいうんたぬきからはそれが丸見えで、とっても嬉しくなった。 「ああ、ごめんな。でもほら、せいちゃんを拭いてあげた分、おれがしてやんなきゃなみたいな」 「も~…なんですか、それ」 「セイちゃん、とっても嬉しそうです!」 「せいちゃんは余計なこと言わないの」 「はい!」 トレーナーはカレーを口に運び、飲み込むと。なにか意を決したように会話を切り出した。 「……あー、その、二人共。少しいいか?」 なにやら神妙そうな彼の雰囲気に、彼女たちはなんでしょうと首を傾げる。 「今度はさ、旅館に泊まりに行こうか。スカイは前に一緒に行ったけど、せいちゃんはまだだし」 「ほんとうですか!?せいちゃん、行きたいです!」 「え、でも…その、いいんですか?お休みとか、あと…お金とか、いえ、私ももちろん出しますけど」 ぴょんぴょんと跳ね出しそうなせいうんたぬきと、遠慮がちに目を伏してそうたずねるセイウンスカイに、トレーナーは気にするなと首を振った。 「旅行代は全額俺が出すよ、そのくらいの甲斐性はあるつもりだ。それに……あー…ほら、カッコつけたいだろう?」
10 21/07/09(金)18:28:29 No.821669787
恥ずかしそうにつぶやいたその言葉に、スカイはカアッと頬が熱くなるのを感じた。 「そ、そういうことなら?セイちゃんはお言葉に甘えちゃいますけど?あ、でも、そんな高いところじゃなくてもいいってセイちゃん思ったり~☆」 自分の中にある感情を必死に御すが、それでも彼女は遠慮を追加することをやめられなかった。 「大丈夫だよ、とびっきりの休暇にしよう。な、せいちゃん」 「はい!せいちゃん、とーっても楽しみです!」 「……ありがとうございます、トレーナーさん」 小さく、やっと自分の感謝を素直にそう伝えると、彼はきちんと受け止めて、どういたしましてと笑った。
11 21/07/09(金)18:28:49 No.821669892
(きっと、こういうところが好きになったんだなぁ……) 改めて、そんなことを考えていると、めざといせいうんたぬきが乙女なスカイを見つけて。 「あっセイちゃん!とーっても嬉しそうです!」 「……せいちゃんはそのすぐ人の顔見るのやめましょうねー」 報復とばかりに、つんつんとせいうんたぬきの頬を突く。 突かないでください!と手のみでじたばたするせいちゃんを満足するまで突くと、スカイはトレーナーの方を向いた。 「ま、セイちゃんがとーーっても嬉しいっていうのは本当ですけど。楽しみにしてますからね?トレーナーさん」 自分の気持ちを、珍しく表に出して微笑んだ彼女の微笑みを、彼は忘れることができなかった。
12 21/07/09(金)18:30:33 No.821670387
長くなりましたがおわり 前回と今回のせいうんたぬきのログです 特に時系列に繋がりはないです! fu147441.txt
13 21/07/09(金)18:30:37 No.821670406
せいちゃんがあまりにも強すぎる…
14 21/07/09(金)18:31:20 No.821670609
せいちゃんもスカイも可愛いよ…
15 21/07/09(金)18:31:36 No.821670683
気ぶりの擬人化みたいな生態のたぬきだ…
16 21/07/09(金)18:35:34 No.821671750
なんだこれ…何かわからんが好きだ!
17 21/07/09(金)18:44:39 No.821674259
こんなのもう仲良し一家じゃない...
18 21/07/09(金)18:50:38 No.821675932
たぬき擬似家族はもっと見たいし…
19 21/07/09(金)19:04:32 No.821679866
なっちまえよ……本当の家族に……
20 21/07/09(金)19:07:32 No.821680792
でも本当の家族になったらたぬきスゥーッと消えそうだし…
21 21/07/09(金)19:07:39 No.821680821
口をふいてあげる場面でなんかそうしてると親子みたいだな…ってトレーナーさんがたぶん言っていたと思います
22 21/07/09(金)19:08:02 No.821680945
たぬきは子供の遊び相手として残るよ
23 21/07/09(金)19:09:40 No.821681427
たぬきは生まれてくる子供のお姉ちゃんになるからな…