虹裏img歴史資料館

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21/07/06(火)22:43:09 もうす... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1625578989250.png 21/07/06(火)22:43:09 No.820807549

もうすぐ門限。トレーニングをしてるウマ娘も、そうでない子達も、そろそろ寮や家に帰る時間となりました。居残りしてる子達がいないかと、見回りをするのも私、【駿川たづな】の仕事の一つ。おやおや、まだ中庭に誰かいますね? 「あっ、たづなさん!」 テイオーさんでしたか。お友達のマヤノトップガンさん、ナイスネイチャさんもご一緒で。お話のお邪魔をしてしまったでしょうか?しかし、もうすぐ門限。続きはお家に帰ってから、ですよ。 「本当だ!もうこんな時間!」 慌てるテイオーさんが微笑ましくて、思わずニコニコ。すると、突き刺さるような視線が。マヤノさん、ネイチャさんのものです。テイオーさんと仲良くなれたのですっかり忘れてました。この学園のウマ娘達が私を警戒してることを。理由は単純。私が彼女達のトレーナーに引っ付く悪い虫だから。もちろん、彼女達からトレーナーを盗ろうなんて気は更々無いので、誤解なのですが。

1 21/07/06(火)22:43:39 No.820807778

ウマ娘にとって、トレーナーは無二の拠り所。専属なら尚更です。誰かに盗られるという不安はウマ娘なら誰しも一度は抱くものでしょう。何故分かるかって?私もウマ娘だからです。テイオーさん達にこれを明かす訳にはいかないんですけどね。さて、それはそれとしてどうにかして誤解を解きたい所です。 「どうしちゃったのさー二人とも。たづなさん睨み付けちゃって」 「テイオーだってこの前まで『ボクのトレーナーにちょっかい出してきて困る』って言ってたでしょ」 「マヤ、トレーナーちゃん盗られちゃうのは嫌だなぁ…」 「大丈夫だよ!たづなさんはそんなことしないよ!…多分」 聞こえてますよー?ヒソヒソ話のつもりでしょうか。やっぱり露骨に警戒されると凹みますね。どのように誤解を解いたものでしょう?そうだ、お話に混ざってみましょうか。

2 21/07/06(火)22:44:24 No.820808093

「そういえば、何のお話をされていたんですか?」 「えっ…うーんと…」 テイオーさんの歯切れが悪くなってしまいました。いけません、まさか聞いてほしくない話に深入りしてしまったのでしょうか? 「いやー…ま、女子が集まってすることと言ったらアレですよアレ」 見かねたネイチャさんがフォローに入って来ました。アレ。あぁ、ピンと来ました。私も女の子ですから。ズバリ。 「恋バナ?」 「ビンゴ~」 ネイチャさんから花丸を貰いました。ふふ、やはりそうでしたか。おませさん達ですね。となると、テイオーさんの歯切れが悪くなった理由も分かります。 「テイオーさんは〇〇トレーナーさんが大好きなんですね」 「なぁんで分かっちゃうのさぁ~!!」 分かりますとも、分かります。だって私もウマ娘ですから。言いませんけど。 「女の勘、ですかね?」 ついつい、かっこつけてしまいました。

3 21/07/06(火)22:44:58 No.820808343

ふと、顔を上げると、マヤノさんが目をキラキラさせて目の前に迫っていました。ビックリです。 「たづなさん、オトナの女って感じでかっこいい~!」 「そ、そうですか?」 「そうだよそうだよ!ねぇねぇ、オトナの恋とか!いーっぱい経験してきたんでしょ?」 「え、えぇ…まあそれなりには…」 嘘です。マヤノさんの勢いに圧されました。レースに賭けた青春時代。そこから色々あって現在の仕事に就きましたが、恋愛らしい恋愛なんて。 「ねぇねぇ!たづなさんのオトナの恋バナ、マヤ達に教えてほしいなー!」 「あ、それアタシも気になるかも、です」 …何だかまずい雰囲気が漂ってきましたね。見栄なんて張るもんじゃないです。助けてください、テイオーさん。 「ボクの秘密、知っちゃったんだからたづなさんのも教えてよ…」 あ、駄目ですね。おへそ曲げてます。逃げられません。逃げ牽制です。どうしましょうか…

4 21/07/06(火)22:45:32 No.820808594

先程言ったように、私にはそれらしい経験はありません。かと言って、今更見栄を張ったなんて言えないし…ここは私の数少ない体験談を脚色して、それっぽく仕上げて乗り切るしかありません!もちろん、私がウマ娘であることは伏せて。 「そそそそうですねぇ…あれは何年前だったでしょうか?」 「「「うんうん…」」」 ? ──灰色の景色、冷たい空気、雑音にしか聞こえない人の声。あの時の私は酷く退屈していました。 誰も自分の価値に気付いてくれない。こんなに魅力的なのに、こんなにも私は完璧なのに、誰も私の手を掴んではくれない。私は世界に一人ぼっちだ。 そして、それならそれで構わない。私は独り、誰もいない世界を生きていくとさえ思っていました。そんなある日。

5 21/07/06(火)22:46:05 No.820808829

『君は美しい』 最初は、何を言ってるんだと思いましたよ。だって、誰も彼も私には見向きもしなかったのに。それに、心の奥では認めていましたから。自分には人を惹きつけるような魅力がないって。 『そんなことはない。君は誰よりも美しい。だって、俺はこんなにも君に魅せられている』 しつこい。うざったい。よくそんな歯が浮くようなこと言えますね。そう思うと同時に、いつの間にか。この人ならと、思ってる自分がいました。私のことをこんなにも、暖かく見つめてくれる人、家族以外で今までいませんでしたから。その事に気付いた時、世界が明るく色付いて。あぁ、こんなにも、世界は楽しいのか。誰かと一緒にいられることは、斯くも素晴らしいことなのか。生まれ変わった気がしました。今の私があるのは、間違いなくあの人のおかげ。これが私にとって大切な恋でした。

6 21/07/06(火)22:46:46 No.820809135

話し終えると、テイオーさん達が食い入るように私を見つめている事に気付きました。こんなに熱い視線を向けられていたのに気付かないなんて。思ったより思い出に浸ってしまったようですね。 「素敵な出会いだったんだね…」 「いーないーな!マヤもそんなこと言われてみたい~!」 「お、思ったよりもピュアな印象受けましたよ…ハァー顔あっつ…」 ふぅ、何とか誤魔化せたようですね。レディコミを愛読していて助かりました。 「さ、皆さん。もう遅いですから、帰りましょう。そ・れ・と。今話したことはくれぐれも他言無用で。さもないと皆さんがそれぞれ、自分のトレーナーさんのこと大好きなのバラしてしまいますよ~?」 「んなっ!?何でアタシ達のことまで!?」 「さぁ?女の勘ってやつですよ~」 「んにゃ~~!!!止めてーーーーっ!!!」 悶えるネイチャさんを宥めつつ、テイオーさんとマヤノさんは寮へと帰って行きました。『また今度、恋バナしようね』と去り際にマヤノさんが。ネタを仕入れるために新しいレディコミを買うとしましょう。 ふぅ。どっと疲れましたが、恐らく誤解も解けたし、彼女達との距離も縮まった気がします。良かった良かった。

7 21/07/06(火)22:47:19 No.820809323

それにしても。今回は結構恥ずかしかったですね。脚色したとはいえ、私のはっ…初恋の思い出を語ることになるなんて!まぁ、釘は刺しましたし、言いふらされることはないでしょう。 テイオーさんも、ネイチャさんも、マヤノさんも。皆さんトレーナーさんの事が大好きなんですね。それが本当に恋なのか、それとも思春期の勘違いなのか。それは誰にも分かりません。そう、本人達にさえ。 ですが、誰かを大切に想ったり、一緒にいられることに喜びを感じるのは素晴らしいこと。きっと皆さんの成長に繋がるはずです。 …世間ではトレセン学園のことをウマ娘の婚活会場とか、お婿さん斡旋場とか揶揄されていますが、知ったことではありません。だって私もウマ娘ですし。 一緒にいられる内に、恋して、悩んで、成長して。それが出来ることがどれほど幸せなことか。彼女達の想いが恋であれ、勘違いであれ、願わずにはいられません。 どうか、彼女達とそのトレーナーさん達が共にある、幸せな未来でありますように、と。

8 21/07/06(火)22:48:29 No.820809795

~⏰~ 「彼女は厳しいかもしれませんね」 うるさい。 「身体付きは恵まれてても、ねぇ?」 うるさい。 「ですよねぇ。いくら何でもウマ娘の命とも言える足が…」 うるさい!!! 誰も見向きしない。誰もアタシが走れると信じてくれない。 この足のせい?そんなの、やってみなきゃ分からないのに!パーフェクトなアタシなら、足の一本や二本、くれてやっても構わない。十分なハンデだ。今に見ていろ。一人でも、走ってやる。アタシがパーフェクトなウマ娘だって、証明してやるんだから!

9 21/07/06(火)22:48:41 No.820809889

「君は美しい」 え? 気が付くと、目の前に一人のトレーナーがいた。美しいって… 「何?ナンパ?アタシってば忙しいからそういうのお断りなんだけど」 「いや、失敬。そうじゃなくてね。君の走りが美しいと言ったんだ」 思わずずっこけた。言葉が足りないにも程がある!勘違いされても文句言えないよ! 「君をスカウトさせてくれないか?」 思わず、飛び上がりそうになる。だって、今まで誰もアタシを見てくれなくて。 「残念だけど、断ってもいい、かな?」 嘘。本当は嬉しいのに。 「アタシ、昔から膝が弱くてね。庇いながら走っちゃうんだ。不格好な走りだってみんなは笑ってさ…」

10 21/07/06(火)22:49:36 No.820810245

本当は分かってる。ウマ娘にとって足は命。生まれつきそこに致命傷を負っているアタシには、誰も未来を感じない。誰も夢を描けない。こんな、パーフェクトじゃないアタシには。だから、せめて。少しでもアタシに期待してくれたこの人が未来を棒に振らないためにも。 「そんなことはない。君は誰よりも美しい。だって、俺はこんなにも君に魅せられている」 誰よりも美しい!?アタシに魅せられてる!?…あぁ、走りのことね!! 「やってみなくちゃ分からない。何より、君の身体は美しい!特にその足!肉付き、バランス、素晴らしいトモだ!」 …一々言葉が足りない気がするなぁこの人。でも、

11 21/07/06(火)22:49:53 No.820810330

「本当にアタシでいいの?こんな、大切なモノが欠けてて、パーフェクトじゃないアタシでも?」 「パーフェクトかどうかは、これからの過程と結果が決める。やる前から完璧じゃないと投げ出しちゃもったいないだろう?」 優しい微笑みに、世界が色付いた気がした。この人なら。この人とならアタシは。 「その…アタシ、色々欠けてて、迷惑かけちゃうかもだけど、よろしく…」 「あぁ、よろしく!」 眩しい笑顔に思わず胸がキュウッとなって。この気持ちの正体が、アタシにはまだ分からなかった。

12 <a href="mailto:s">21/07/06(火)22:50:32</a> [s] No.820810599

以上です 思ったより長くなってしまいましたがたづなさんの話の続きです

13 21/07/06(火)22:52:35 No.820811424

ありがたい…

14 21/07/06(火)22:53:46 No.820811876

見栄を榛名

15 21/07/06(火)22:54:10 No.820812011

単話でも読めてありがたい

16 21/07/06(火)22:57:04 No.820813124

たづなさんレディコミとか好きそうな気もする

17 21/07/06(火)23:00:01 No.820814291

素敵な大人のお姉さんだなこのたづなさん…

18 21/07/06(火)23:09:43 No.820818035

サラッと婚活のことで開き直るな

19 21/07/06(火)23:17:33 No.820821002

仲良くなれて良かったね

20 21/07/06(火)23:22:29 No.820822871

ウマ娘なの!?

21 21/07/06(火)23:25:42 No.820824029

>ウマ娘なの!? 公式の資料とサポカとかの匂わせからそうと推測される

22 21/07/06(火)23:32:01 No.820826328

我このシリーズ好き

23 21/07/06(火)23:36:22 No.820827827

トキノミノルの馬主さんはかなりぶっ飛んでる人だったみたいよね

24 21/07/06(火)23:38:37 No.820828620

>トキノミノルの馬主さんはかなりぶっ飛んでる人だったみたいよね 豪快な人すぎるよね大映の社長…

25 21/07/06(火)23:39:10 No.820828818

アタシ口調のたづなさんか…

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