ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/07/06(火)01:51:59 No.820550896
「お、こんばんは。たぬきちゃんたちは一緒じゃないのかい?」 「こんばんはお婆さん。あの子たちにはには野菜を頼んだんの。今日はハンバーグにしたいんですけどありますか?」 「おお、丁度牛肉が安くなってるよ」 「あ、じゃあそれ下さい」 「毎度!ちょっと待っててね」 「……すいません。このコロッケ買ってませんよ?」 「オマケだよオマケ!トレーナーさんとたぬきちゃん達にもよろしくね!」 「そういう事なら頂きますね。ありがとうございます」
1 21/07/06(火)01:52:13 No.820550935
「あらたぬきちゃんこんばんは。おつかい?偉いわねえ」 「こんばんわだし……キャベツと玉ねぎ下さいし……」 「ハンバーグ!!」 「あら今日はハンバーグなの?良かったわねえ。あ、飴ちゃんあるけど持ってく?」 「貰うし……」 「アリガトー!」
2 21/07/06(火)01:52:26 No.820550973
「お、スズカちゃんのトレーナーさんじゃないか。今日は一人なのかい?」 「たぬきたちはおつかい。色々やってくれて助かるよ」 「そうかそうか。で、何が欲しいんだい?」 「いや、米が切れちゃってさあ。5キロ貰えるかな?」 「そんな重いの大丈夫かい?」 「みんなが荷物持ってくれるから大丈夫。でもそろそろ車とか買った方が良いのかな」 「そんならウチの譲ってやるぞ?もう乗ることも無えだろうしな」 「お、考えておくよ。それじゃ」 「ああ、待った待った。これ、あいつらに渡してくんな」 「干し柿か……あいつら食べれるかな?でもありがとう、貰ってくよ」 「今度はたぬきたちも一緒になー!」
3 21/07/06(火)01:52:37 No.820551004
~⌚~ 「んまいし……!」 「オイシ-!」 「これからメシなんだからほどほどにしとけよー?」 「ふふ、愛されてますねたぬきちゃんたち」 「いい人たちだよなみんな」 「はい。こんな近くなのに気付かなかったなんて。もっと早く来てみれば良かった」 「これからはいくらでも機会があるよ。ほら、食べ終わったら帰るぞー」
4 21/07/06(火)01:52:49 No.820551032
~⌚~ もちもち。こねこね。 「疲れたし……これ踏んでやっちゃだめだし……?」 「ガンバローカイチョ-」 「ふふ、子だぬきちゃんもこう言ってるし、ね?」 「……がんばるし」
5 21/07/06(火)01:53:01 No.820551071
たぬきたちはハンバーグをこねていた。 その小さな手でペタペタと。汗水たらして必死にこねる。 「ゼエ……ゼエ……」 「ンショ……ンショ……」 「ふふ……」 「ん、そんくらいで良いぞ。後は焼くだけだから先に風呂入ってこい」 「はい、行きましょう二人とも」 ぐったりした二人はスズカに抱えられて風呂場へ向かった。
6 21/07/06(火)01:53:24 No.820551150
~⌚~ 「今日も良く頑張ったわね二人とも」 「ふう……だし」 「フワア……」 ごしごし。もちもち。 たぬきちゃんの背中を洗ってあげる。 赤ちゃんのような肌を、傷つけないように優しく。 この子が私と一緒に走っていたなんて考えられないような小さな背中。 つい、場違いな闘志を燃やしてしまう。
7 21/07/06(火)01:53:37 No.820551201
たぬきちゃんは子だぬきちゃんを洗っている。 もっと小さな可愛らしい背中をモチモチと。子だぬきちゃんが気持ちよさそうにしている。
8 21/07/06(火)01:53:49 No.820551235
「交代だし……スズキも洗ってあげるし」 「ボクモ!!」 「ふふっ、じゃあお願いね」 二人がかりでモチモチと。一生懸命洗ってくれる。 二人の小さな手がこそばゆくて、嬉しくて。一日の疲れが洗い流されていく。 「ありがとうね、二人とも」
9 21/07/06(火)01:54:01 No.820551258
ホコホコと湯気を立てるあいつらが席に着いた。 「「「「いただきます」」」」 「オイシイネカイチョ-!」 「三人で頑張ったからだし」 「ああ、ありがとうなみんな」 「ああ、二人とも口元が汚れちゃってるわ。ジッとしててね」 こうして夜は更けていくのだった。
10 21/07/06(火)01:54:13 No.820551295
~⌚~ 「ったーく、駄々こねやがって」 「いいじゃないですか、二人とも頑張りました」 「「~♪」 あの後アイスが食いたいとジタバタするこいつらに根負けして、俺たちは夜の散歩へ繰り出していた。
11 21/07/06(火)01:54:25 No.820551333
「……ふふっ」 「どうした?」 「いえ、最初は一人だけの景色を見たかったのに。今ではそこにトレーナーさんが居て、この子たちもいて」 「そうだな」 「「?」」
12 21/07/06(火)01:54:36 No.820551366
降って湧いた新しい家族。 たかだか一ヵ月で、こいつらはこんなにも俺たちの中に入り込んでいた。
13 21/07/06(火)01:54:47 No.820551398
ぼうっと俺たちを見上げるたぬきたち。 そっと頭を撫でてやる。 「…………」 「~♪」 触るな、なんて言われていたのだってそう前ではないのに、今や遠い昔のことのように感じた。 こいつらが居ない生活なんて考えられないほどに。
14 21/07/06(火)01:54:59 No.820551434
「ほら、帰るぞお前たち」 そっと二人を抱き上げる。 「帰ったら歯を磨くんだぞ」 願わくば、この生活がずっと続きますように。
15 21/07/06(火)01:55:13 No.820551476
~⌚~ 「ほら、これ」 「なんだし、これ?勲章……?」 「カッコイー!」 「いや、今日でお前たちが来て1ヵ月だからな。喜ぶかと思って」 「トレーナーさん、これ本物ですか?」 「お前たちの蹄鉄作ってるところがあるだろ?あそこに頼んだんだよ」 「ああ……そんなことも出来るんですね」 「勝負服の飾りも作ってるらしい。あのシンボリルドルフの勲章もだ」 「!」 「ちょっと重すぎて付けられないかもしんないけど、受け取ってくれたら嬉しい」 「アリガトトレーナー!」 「……まあ貰っておくし」 「ふふ、照れてるのたぬきちゃん?」 「照れてないし……!」
16 21/07/06(火)01:55:25 No.820551514
良かった、喜んでくれたみたいだ。 前にたぬきが子だぬきに作ってやるところを見たのだ。 手作りでも良かったのだが、どうせだし豪華にした。 その価値は十分にあったようだ。
17 21/07/06(火)01:56:19 No.820551667
「それじゃあおやすみ」 「はい、おやすみなさいトレーナーさん」 「オヤスミ-」 「……おやすみ、だし」 たぬきのむっつりとした、それでいてどこか嬉しそうな顔を見ながら俺は寝床へ向かうのだった。
18 21/07/06(火)01:56:35 No.820551706
翌朝。 「……なんだ、これ?」 枕元に何か置いてあった。 「……トレーナーバッジか?」 俺たちにはなじみ深い形状のものが、数倍のサイズで作られていた。 裏っ返すと、へたくそな字で何か書かれていた。
19 21/07/06(火)01:56:52 No.820551750
『あ い がと う とれ―――な』
20 21/07/06(火)01:57:08 No.820551788
「……バーカ、面と向かって言うもんだぞそれは」 また新しい日が始まる。 今日はあいつらとどんなことをしようか――――――
21 21/07/06(火)01:57:36 No.820551869
癒やされる…
22 21/07/06(火)01:57:43 No.820551886
微笑ましい 脳が守られる