虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

1 21/07/06(火)00:22:05 No.820527523

その言葉に決まりが悪そうに顔をしかめるキングヘイローだが 「このキングが頼み事をしたい、と言ってるの。話を聞く権利を･･･いえ、ちょっと聞いてくれないかしら」 と、彼女は言葉を続ける。その視線はトレーナーの方を真っ直ぐ捉えることなく、どこか泳いでいるような調子だった。 いつもらしくない、何か深刻な悩みなのだろうか、とトレーナーも思わず真剣な心持ちになる。 「詳しく、教えてくれないか」 言葉を慎重に選んだつもりだった。彼女のプライドを傷つけてないか、いつもらしくない彼女の悩みとは一体何なのだろうか。トレーナーはいつも以上の、あたかも明日にG1レースが迫っているかのような心持ちで、彼女に問いかけるのだった。

2 21/07/06(火)00:23:36 No.820528037

夜、繁華街、カラオケボックスにて。 トレーナーはタンバリンを叩いていた。どこか力なく、目元には光もなく、手元は緩んだ様子で。 そして、そんなトレーナーの目の前にいるのはマイクを持って熱唱するキングヘイロー。 つい先ほどの会話をトレーナーは思い出す。 話を聞けばこうである。次の日曜日、クラスの友人達とカラオケに行くことになったとのことだが、どうも歌に自信が無い。だから練習に付き合って欲しい。それだけの事だった。 「別にそこまでしなくてもいいじゃないか」 「このへっぽこ！私の友人達の前でこのキングが無様な姿を見せられる訳ないじゃない！」 話を深く聞いたところ、参加するメンツはスペシャルウィーク、エルコンドルパサー、グラスワンダー、そしてセイウンスカイ。所謂『黄金世代』と言われているメンツだが、妙な対抗意識でもあるのだろうか、ターフの上以外でも負けたくないのだろうか。キングヘイローの心中を正確に察することは叶わないトレーナーだったが、まぁ負けず嫌いの彼女の事だ、と自分を納得させ、彼女の『特訓』に付き合うことにしたのだった。

3 21/07/06(火)00:25:10 No.820528532

だが既に彼女が歌い始めて2時間は経つ。流石にタンバリンを叩く腕がだるくなってきたトレーナーである。しかしながら目の前で熱く練習するキングヘイローを見ると、どうにも応援しないとな、という気持ちも湧いてくる。体力と気力のせめぎ合いの中で、腕に力は入らずとも彼女に付き合う気持ちは揺らぐ様子は彼の中にはなかった。

4 21/07/06(火)00:25:34 No.820528651

そんな最中、一曲歌い終えたキングヘイローが、椅子に座って大きく身体を伸ばした。 汗まみれで深呼吸する彼女を見て、まるでターフの上でひとっ走りしてきたようだとトレーナーは思う。 「お疲れ」 フリードリンクのウーロン茶を飲むキングヘイローに言葉を掛けると 「えぇ」 と彼女が短く返した。 その途端 「はい」 とマイクが彼の方に向けられた。 「え？」 「え？じゃないの。歌うのよ、貴方も」 「俺も？」 「そう」

5 21/07/06(火)00:26:04 No.820528808

一息ついたキングヘイローの顔には何かを発散したような色が見えた。 「私の練習ではあるけど･･･流石に一人でカラオケは楽しむモノではないわ。そうでしょう？」 汗を纏った彼女の笑顔に照らされて、ついついマイクを取ってしまうトレーナー。そのマイクには彼女の熱量がこもっているかのように、ほんのりと暖かく、そして湿っていた。 「とはいっても、な･･･」 「あら、貴方まともに歌える歌がなくて？」 「うーん･･･」 「そんなんじゃこの一流ウマ娘のトレーナーは務まらなくってよ？」 そんな急に無茶ぶりされてもな、とトレーナーは思い、目の前に差し出されたデンモクとにらめっこを始める。 特に歌いたい歌などない。ただ、キングヘイローはそれを求めているのであれば、歌わなくてはなぁと妙に真剣な心持ちになり、頭をひねるトレーナー。

6 21/07/06(火)00:26:26 No.820528916

目の前にいるわがままでひたむきなお嬢様が、自分の何かを欲しているのであれば応えるのが道理だ、と思っている内に 「･･･これでいいか」 と、彼の歌う歌が決まったようである。 「さぁ、どんな歌を聴かせてくれるのかしら。覚悟して歌いなさい！」 いつものようにふんぞりかえって自信満々な高飛車のエメラルド。 そうそう、こうじゃないとな、なんてトレーナーは思い 「じゃ、一曲付き合ってくれ」 「えぇ」 「あぁ、それと･･･」 「？」 「この歌は本来は英語の歌詞なんだけど･･･日本語で歌わせてくれ」 トレーナーが指定した曲、それはロッド・スチュアートの「An Old Raincoat Won't Ever Let You Down」だった。

7 21/07/06(火)00:26:44 No.820529015

「おまえは　かって　荒れ狂う川の激流に身震いしただろうか 　そそぐように降る雨のなか　旅をしたことがあっただろうか　旅をしたことがあっただろうか 　おまえはおいらのような男と　連れ立って雪の積もった墓場を　見たことがあっただろうか 　そうさ　人生甘くはないさ　そうさ　人生甘くはないさ 　だけど　おいらはここまで来たのさ　古いレインコート肩に 　どんなときでも　これさえあれば　なにも怖れることはないさ　なにも怖れることはないさ 　古いレインコートは　あるのさ　おいらのこころのずっと奥に 　どんなときでも　これさえあれば　何も怖れることはないさ　何も怖れることはないさ 　おまえはおいらのような男と　連れ立って雪の積もった墓場を　見たことがあっただろうか 　そうさ　人生甘くはないさ　そうさ　人生甘くはないさ 　そうさ　人生甘くはないぜ　そうさ　人生甘くはないぜ」

8 21/07/06(火)00:27:12 No.820529174

トレーナーが歌い終えるのをキングヘイローは静かに聞いていた。 そして歌い終えた後、彼女は微笑み、拍手を送る。 「いい歌ね」 と言うキングヘイローに、 「どうも」 と軽く頭を下げるトレーナー。 「でも貴方、これはカラオケで歌う曲じゃないと思うわ」 とキングヘイローが吹き出すように笑いかけた。 「その通りだな」 それにつられるように笑うトレーナーだった。 こんな話を私は読みたい 久しぶりに浅川マキのオールドレインコートを聞いたらキングヘイローの曲に聞こえて手が動いたのでこれにて失礼する

9 21/07/06(火)00:28:44 No.820529668

An Old Raincoat Won't Ever Let You Down https://www.youtube.com/watch?v=0MU_w-HMGD0 Maki Asakawa 浅川マキ 「 オールド レインコート（歌詞付） 」 https://www.youtube.com/watch?v=LKO9I6w7xR8

10 21/07/06(火)00:37:42 No.820532507

珍しいタイプの怪文書だ…

11 21/07/06(火)00:40:12 No.820533278

いいわね洋楽怪文書…

12 21/07/06(火)00:40:40 No.820533396

ジュニアかクラシックかは分からないが 泥まみれになって走るであろうキングに合ういい曲だと思う

13 21/07/06(火)00:43:09 No.820534186

キングとカラオケ行ってmonkeysのほうのday dream believer歌いてぇ

14 21/07/06(火)00:44:43 No.820534700

何故か吉田拓郎の未だ人生を語らず、を思い出した 人生は厳しい、と言いながらそれを肯定する歌はいいよね…

15 21/07/06(火)00:46:43 No.820535308

カラオケでウーロン茶って何かしら摘まないと死なないか...？ あいやごめん一人カラオケ派なんで2時間ブッパ出なくとも声ガラガラになるんすけど....

16 21/07/06(火)00:46:54 No.820535362

せっかくだから有馬で優勝したキングに贈る曲は無いのか

17 21/07/06(火)00:48:47 No.820535955

歌ネタの怪文書のおかげで新しい音楽に出逢えることがある ありがとう

18 21/07/06(火)00:56:20 No.820538155

>久しぶりに浅川マキのオールドレインコートを聞いたらキングヘイローの曲に聞こえて手が動いたのでこれにて失礼する 待てぃ URAファイナルズが終わったあとに キングがトレーナーをカラオケに誘ってこの日のこと思い出すのも書け

19 21/07/06(火)01:08:41 No.820541568

>せっかくだから有馬で優勝したキングに贈る曲は無いのか 夢を叶えた人に贈る歌ってあんまりイメージ沸かないなあ 夢の途中の人とか夢やぶれた人に贈る歌は多いけどに

20 21/07/06(火)01:17:54 No.820543835

キングの歌ならキンキラKING!!っていうキングのためのような歌があるんだ デュエマのOPだけどさ