虹裏img歴史資料館

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21/07/01(木)22:34:42 最近、... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1625146482259.png 21/07/01(木)22:34:42 No.819054040

最近、トレーナーさんが変だ。トレーニングの時もミーティングの時も、いつもふらふらと足元を揺らしている。前まではこんなことなかったのに。そう思って私は、ちょっとだけ早くトレーナー室に来てみた。 すこし開いているドアからトレーナーさんを探す。どうやら机に突っ伏して寝ているようだった。睡眠時間があまり取れていないのだろうか、それなら少しはトレーニングを一緒にサボってもいいんじゃないか。思えば思うほど膨らむトレーナーさんとの午後に、私は胸を高鳴らせてトレーナー室に入った。 「や~どーもトレーナさんっ!お疲れの様子です…ね…」 さっきまで考えていたサボりプランは一瞬にして消えた。トレーナーさんは、エナジードリンクらしきものを数個空にして気絶していたから。すぐさま救急車を呼んで、私も一緒に乗り込んで病院へ向かう。

1 21/07/01(木)22:34:53 No.819054112

病院についてすぐ診察が行われ、その結果を私は聞いた。 「…過労のようですな。あまりに短期間のうちに無理をなされたようでしたが、命に別状はありませんでした。1日、2日休めば自然と快方に向かうでしょう。」 そう告げられて、私は安心する半面その無理をさせてしまったであろう私への嫌悪感が募ってしまう。サボったことが、トレーナーさんへの重荷になってしまったのだろうか。そう考えると、居てもたってもいられなくなった。 医師に案内され、トレーナーさんの病室に赴く。何故か足取りは重く、病室の扉が開いた時ですら開かないでくれとさえ思ってしまうほどの忌避感が私をさらに苦しめていく。 「…トレーナーさん、ごめんなさい。」 医師がいなくなって二人きりとなった病室で、ぽつりとそうつぶやく。トレーナーさんはまだ寝ているようだった。 「…私が、わたしが、わたしのせいで…」 私が悪い、私のせいだ、私のせいで…脳を支配する思考が徐々に重く濁っていく。私のペースについていこうとしていたトレーナーさんを、その優しさを、自分で無下にしてしまう。そんな無気力感で、私はただ立ち尽くして懺悔することしかできなかった。

2 21/07/01(木)22:35:05 No.819054206

「…ごめんなざいっ、ひぐっ…」 感情が高ぶって、涙がぽつりぽつり。次第に大雨となっていく私の顔を流していくのは、重苦しい私の涙。適量を超えた杯は徐々に漏れ出し、バランスを保てずに転倒する。そのまま、大きく感情が押し寄せてきた。 「…スカイ…」 寝言だろうか、一瞬聞こえた声を私は聞き逃さなかった。 「…スカイ…泣いてるのか…?」 そこには、寝起きから覚醒したであろうトレーナーさんが、悲しそうな顔でこちらをのぞき込んでいる。 「…スカイ、おいで。」 点滴がついていない片方の腕を、がんばった様子で持ち上げてこちらに来るようにという仕草を出す。一歩、二歩と進みトレーナーさんのベッドのすぐそばに近寄った。 「…俺のせいだよな。ごめんな…」 そういって、トレーナーさんは私の頭をそっと撫でた。子供をあやすようなものではあったけど、その手から伝わるほのかな温かみは、私の凍り付きかけた心をゆっくりと溶かすには十分だった。

3 21/07/01(木)22:35:15 No.819054278

「…わたしの、せいで…」 気持ちは落ち着いてきたが、未だに自責の念はぬぐえない。そうしていると、トレーナーさんはこう言葉を紡ぐ。 「…スカイは、悪くないよ。」 その言葉で、私の心は一気に燃え上がった。大粒の涙がとめどなく溢れ、トレーナーさんの患者服を濡らしていく。それを察してか、私の頭を抱きよせて、大好きな人の胸の中で慰めてくる。しばらく泣き腫らした後、私はそのままトレーナーさんに撫でられてゆっくりと意識を落とした。 看護師さんに肩をゆすられ、私は意識を取り戻す。慌て気味に時刻を聞いて、朝の7時を過ぎたことを伝えられる。昨日のことが記憶に引っかかって、まともにトレーナーさんの顔を見ずに病室を飛び出した。直後に聞こえたのはトレーナーさんの笑いと、元気になってよかったという言葉。その言葉が確かであるか調べようとはせずに、そのまま病院を出ていった。

4 21/07/01(木)22:35:28 No.819054384

トレセン学園に戻った後、理事長に事の顛末を説明して私とトレーナーさんの休暇を特例で取得させてもらった。そのまま急いで持っていくものをかき集め、返す刀で寮を飛び出して再度病院へ向かう。息切れして病室に入った私にトレーナーさんは驚いていたが、私が笑いでごまかすとそれ以上は顔に出さなかった。 「…というわけで、私が色々お世話しちゃいますよ☆トレーナーさんっ」 トレーナーさんからもらった元気を、この時のためかのように消費する。私の顔を見て安心したのか、トレーナーさんはお願いするよと言った。リンゴをむいてあげたり、楽しい話をしたり…あっという間に時間は過ぎて、面会時間を超過してしまう。 「おっとっと、もうこんな時間ですか。…名残惜しいですけど、またあし…」 そう言おうと思って立ち上がると、トレーナーさんは私の手をつかんで、抱き寄せてきた。 「…えっと、これは…?」 突然行われたこれに理由を求める。するとトレーナーさんは、悲しそうな顔でこういった。

5 21/07/01(木)22:35:40 No.819054471

「…ごめんな、ごめんな…」 そういって流れた涙が、私の制服を染めていく。 「…大丈夫ですよ~。い~っぱい、がんばってましたもんね。」 そういって、今度はトレーナーさんの頭を寄せて優しく撫でる。 「…今日は寝るまで、セイちゃんず~っと傍にいますよ~。」 昨日とは立場を変えて、二人で心の傷を修復し合う。…やっぱり、トレーナーさんがいないとだめだなぁ。そう思いながらも、苦しそうに嗚咽するトレーナーさんの頭を撫でることしか私はすることができなかった。 それから数日が経ち、すっかり元気を取り戻したトレーナーさんは医師からのお墨付きももらってすぐ退院する運びとなった。病室を出て、私が待つ待合ホールに向かってくる。 「…にゃはは、お元気になったようでなによりです。今度からは、無理はしないでくださいね…」 「…勿論だとも。心配かけて、すまなかった。」 そういって私の頭をくしゃりと撫でる。気分もよくなったところで、二人で帰路についた。

6 21/07/01(木)22:35:53 No.819054558

「…あ~、もう夜ですねぇ。」 「そうだな。」 「…このままだと、寮の門限には間に合わないかも…」 「…そうか。」 「…ね、トレーナーさん。ちょうどいいですし、トレーナー寮に行かせてくれません?」 「そうか。…て、え?」 「にゃはは~、トレーナーさん顔赤いですよ~」 そういって、私のからかいを真に受けたトレーナーさんの顔が、徐々に赤く染まっていく。 「…行くか。」 「えっ」 この返しが来ることを予想出来てなかったこと以外に、私に誤算はなかった。 そうして、手を引かれて足早に歩く。 「ちょ、ちょっとトレーナーさん?ほんとにいくんですか?というか行っていいんですか?」 「理事長にはこちらから伝えておくよ。寮にも。」

7 21/07/01(木)22:36:03 No.819054616

これには私もたじたじになる。あのトレーナーさんの部屋に、今から行くことになるのだ。そう思えば思うほど、顔の赤らみはとどまるところを知らずに加速していく。 「…あの~、嫌じゃ、ないんですか…?」 「…嫌なわけ、ないよ。」 そういって、足を止めて私のほうを振り向く。 「…スカイは、どうなんだ?」 吸い込まれるような黒い目が、私の目をとらえる。互いに温度が上がっていくのが否応なしに分かってしまう。 「…いや、じゃ、ないです…」 「…そうか。よかった。」 そういうトレーナーさんは、どこかしどろもどろとしていた。が、すぐに言葉をこう紡ぎ出す。 「…俺は今から、とんでもないことを言う。」 そういって私の肩をがっちりと、逃げられようにつかむ。 「…スカイ。俺は…君のことが、好きだ。」 君の青い髪が好きだ、透き通るようなきれいな目が、そしてなによりその走りが。私の好きなところをぽつぽつと上げ連ねて言って、気づけば私の顔は最高潮に達していた。

8 21/07/01(木)22:36:13 No.819054692

「…だから、まだ早くても。…いつか、一緒に道を歩みたい。…結婚、してほしい。」 紡ぎ出されたその答えに、私の心臓は跳ね上がるほどの喜びを感じ取っていた。 「…わたし、これからどうなるか分かりませんよっ…レースで勝てるかも…トレーナーさんの、期待に、こたえられるかも」 「…それを支えるのが、トレーナーの仕事で、俺のやりたいことだよ。」 それを言われちゃ、私は降参するほかない。その告白には、私も応えるしかない。 「…はいっ…私も、トレーナーさんのことが…好き、ですっ…!」 あの時流した涙とは、また別の。歓喜と祝福に満ちた気持ちの杯からあふれる、なんとも言えない感情が漏れ出していく。その涙を、あの時と同じように抱き寄せてトレーナーさんは受け止めてくれた。 「…二人で、これからもずっと頑張っていこう。なぁ、スカイ。」 「…はい…!そう、ですね…!」 二人の体を、横風が通りすぎていく。夏のじっとりとした空気ではなく、爽やかな夜の風。晴れた夜空に、きらりと月が輝いた。まるで、私たちを祝福するかのように、煌々と。

9 21/07/01(木)22:36:25 No.819054763

URA決勝を勝ち、初代URA覇者として私は高々と名声を勝ち取った。ただ、衰えを見せるその足が、現役引退へのカウントダウンを示しているようで、盛者必衰をまざまざと痛感させられる。そんな心配そうな顔を見せる私を、トレーナーさんはずっと支えてくれた。次の目標に向かって、二人でゆっくりと前進していく。

10 21/07/01(木)22:36:37 No.819054835

数年後、私の引退と共にトレーナーさんと私は無事に結ばれた。スぺちゃんからは、これで二番目ですねなんて言われて、キングからは早すぎるのよ、なんて軽口をもらった。ともかく、私たちは今幸せの絶頂期にいることは間違いない。そしてこれは、二人を分かつまでずっと続いていくという確信があった。 「ト…あ、あなた。やっぱりこれ慣れないです…」 「…慣れないなら、そのままでもいい。俺が、ずっと支えてみせるから。」 「…そういうとこ、ほんとにずるいです。」 そうして、私たちは観覧車でキスを迎える。これまでの頑張りと、自分たちへのご褒美のように。下で輝くアトラクションは、私たちを祝福していくようにぎらぎらしていた。 楽しい日は、あっという間に過ぎていく。だけど、それまでは。この幸せを、少しでも多く享受したかった。私は、とても幸せ者だ。今までも、そしてこれからも。

11 <a href="mailto:s 終わり">21/07/01(木)22:36:53</a> [s 終わり] No.819054956

セイちゃん可愛いね

12 21/07/01(木)22:38:09 No.819055461

腎臓死んでそうなトレーナーだなオイ…

13 21/07/01(木)22:41:32 No.819056838

なんかここ連日結婚してるセイちゃんを見ている気がする もっと結婚しててほしい

14 21/07/01(木)22:41:47 No.819056935

セイちゃんはどれだけ幸せになってもよい

15 21/07/01(木)22:41:57 No.819057020

セイちゃんはいくら幸せしてもよい☆ …よろしくお願いします

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