21/06/30(水)00:44:11 靴ひも... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1624981451832.jpg 21/06/30(水)00:44:11 No.818479139
靴ひもを結び寮を出ると既に朝練を始めているウマ娘がちらほらと見えた。 そんな彼女らを尻目に竿とクーラーボックスをお供にして学園を後にする。本日晴天也。こんな日はサボるに限る。 糸を垂らしてじっと待つ。釣りとは根気だ。焦ってはいけない。じっと待つのが大事。 ──思えばいつからだろうか。サボっているつもりで、トレーナーさんが来てくれるのを今か今かと待ち始めたのは。 フラフラと空に揺蕩う雲のように流れいく私を、しかし引き留めてくれる彼の手に、安心を覚え始めたのはいつのことだろう。 想起する頭に、浮かぶのは半ば無理矢理彼に担当になって貰った日のこと。 「『一目惚れ』、ですよ!キャハッ☆」 ボッ、と顔が熱くなるのを感じる。なんだ、初めからだ。 「まだかなあ、トレーナーさん」 呟いて、まるで恋人を待っているみたいだな、と苦笑する。恋人でもなければ待ち合わせなんてしてもいない、そもそも私の居場所だって伝えていない。今頃トレーナーさんは私のサボりに気付いて探し回っているころだろう。 実際は、私が胸中に抱く甘酸っぱい感情は他所に、ただ私がトレーナーさんに甘えて寄りかかっているだけの関係だ。
1 <a href="mailto:2/2">21/06/30(水)00:45:07</a> [2/2] No.818479413
分かっては、いる。私の勝利を信じてくれる彼に対する不義理だとは。 でも、やめられない。何度だって逃げ出すし、追って来て欲しい。捕まえて欲しい。 トレーナーさんは私を大事にしてくれている。でも私はそれに不安を覚えてしまう。それはきっと私の心の弱さのせいなんだろうとはすぐに理解できた。 だから、試す。逃げて、そして追われて捕まえられて。そこで私はようやく安心できる。思われていると、確信を得て。 「トレーナーさん、来てくれるかな?来てくれないかな?」 こんなことを何時までも続けていれば、いつかは愛想を尽かされるだろう。 そうなれば私はきっと泣いて、後悔する。 そうなれば私はきっと泣いて、懇願する。 分かっているなら今すぐやめればいいものを何度も繰り返しているのは、それはきっとトレーニングに戻るぞと私の手を引く彼の手が、太陽のように温かいからだろう。 「まだかなあ……」 くぁ、と欠伸を一つ。 そのままクーラーボックスにもたれかかって眼を閉じる。次眼を開く時に、彼が来てくれることに期待して。
2 21/06/30(水)00:47:06 No.818479951
自分の未来を半ば予測してるセイちゃんを追い越して待っててあげたいよね
3 21/06/30(水)00:47:57 No.818480184
可愛い…
4 21/06/30(水)00:55:40 No.818482303
頼むからクソボケでありませんように…
5 <a href="mailto:1/2">21/06/30(水)00:56:27</a> [1/2] No.818482491
我が愛バ、セイウンスカイの唯一の不満点と言えば、やはりサボりの多さだろう。 今日もまた、朝練をサボってどこかへ行ってしまったようだ。授業のある日なら、学内で捕まえられるが今日は休日。よって校外に捜索範囲を広げなければならない。 普通に考えるなら探すなど不可能に近いのだが、そこはセイの可愛い所だ。セイは新しいサボりスポットに向かう場合、その前日にこれ見よがしに釣り雑誌をトレーナー室に置いて行ったりする。 探して欲しいのだろうな、と最近では思うようになった。セイなりの甘え方なのだろう、とも。それだけ信頼されているというのは嬉しいことだ。 思えば、セイからはおじいさんの話しか聞いたことがない。それだけで両親と不仲であると決める付けるのは早計にすぎるが──しかし、セイの普段の言動を見ていれば分かることがある。それはセイの言う通り、これまでお爺さん以外にセイの勝利を信じてくれた人はいなかったのだろうな、ということだ。 自分を信じなさすぎている。あまりにも。 確かにセイは策を弄する。無策で挑むレースにセイの勝利は存在しない。
6 <a href="mailto:2/2">21/06/30(水)00:56:37</a> [2/2] No.818482543
しかしそれは無能の象徴では決してない。作戦だけで勝てるG1など存在しない。セイが信じていない、自身の才能がなければ、それは絶対になし得ない。 一方、スペシャルウィークを始めとする同期である黄金世代、彼女らに匹敵する才能がある。とは確かに言えないのかもしれないが、しかしセイは彼女らと渡り合い、そして勝って来た実績がある。 それを、信じてやって欲しいと思うのはエゴだろうか。 だから、何度だってセイを探そう。 だから、何度だってセイに言おう。 君は素晴らしいウマ娘なのだと、君がそれを受け入れられるようになるまで。 そうなるまで君の手を引いてあげるのが、俺の役目だろうから。
7 21/06/30(水)00:58:56 No.818483144
最高のトレーナーだわ…
8 21/06/30(水)01:00:48 No.818483594
スパダリだこれ