21/06/29(火)00:59:39 草木が... のスレッド詳細
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21/06/29(火)00:59:39 No.818156919
草木が湿り、独特の匂いが立ち込めるトレセン学園。トレーニングへ向かう者たちは汚れを気にせず、跳ねる泥をものともしないかのようにいつも通りのトレーニングを続ける。生徒は皆それぞれ思い思いのことをして過ごしていた。その中に一人、トレーナー室に入り浸る青髪の少女がゆっくりと吐息を立てながら、気持ちよさそうに眠りに耽っていた。 その子のトレーナーらしき男が書類を打ち込むかたかたというキーボード音と、部屋に入り込む雨の音が交互に耳を触る。奏でるオーケストラは毎度毎度旋律が変わっており、寝ていて飽きない音響となっていた。 青髪のウマ娘―セイウンスカイ―は、その一帯を占有せんとばかりに寝転がり、少なくともソファに限って言えばほとんどが取られていた。
1 21/06/29(火)00:59:51 No.818156962
その様子にはすっかり慣れた様子のトレーナーは、仕事をある程度片付け一息つける。缶コーヒーを開け、今後のレースプランやトレーニングプランを練っていると、ふと寝ていたはずのセイウンスカイがこんなことを口にした。 「トレーナーさんって、彼女とかいらっしゃるんです?」 瞬時、胸がドキリと跳ねる。なんでそう思ったかは分からないが、少なくとも逃げ場のないこのトレーナー室でのその問答は、まさに今後を揺るがしかねない事案であった。 「…いや。何故そう思った?」 取り繕うかのようにコーヒーを啜り直し、最早空となっても底を懇願するかのように漁り続け、結局見つからなかった無念さを押し込めながら二缶目をかちゃり。
2 21/06/29(火)01:00:03 No.818157010
「いや~、この前ちょっと見ちゃったんですよね。可愛らしいマグカップが棚の奥にあるの。」 そういわれてはじめて気づいた。あれは確かキングヘイローがスカイとの仲を縮めるためだとかのおそろいのカップを持ってきてくれた時だったか。キングヘイローが慌てて持ってきていたため片方が割れてしまい、しょうがないから片方をスカイにあげようとしてそのままだったものだ。と言っても、スカイはずっと寝ている状態だったから渡す理由がなかなか見つからなかった、というのも理由の一端にはある。 「…いや、あれは…その」 言い淀む俺に、スカイは飄々とした態度を取りながらも、どこか悲しさを交えた声で 「…にゃはは。やっぱりいるんじゃないですか。彼女。」 「いや違う!誤解だ!」 「…じゃあ、なんだっていうんですか…?」 今にも泣きそうな声で、起き出したスカイはそう言う。涙には大粒の真珠が溜まり切り、今にも決壊しそうだ。 「…その、スカイと仲良くなるために…買ったものなんだ。」
3 21/06/29(火)01:00:14 No.818157054
今にも顔は蒸気と同化しそうになる。頭の中に煙が立ち込め、思考を乱すような感覚に陥っていく。 そうしてスカイのほうを恐る恐る見てみると、何故か向こうのほうが顔を赤くして下を向いていた。 「…あ…と、そうだったんです…ね~…にゃはは…」 まるでその発言が予想外だったとも言わんばかりの顔をして、いつものような冗談めかした顔へと戻そうとする。が、口角は上がりっぱなしで顔も未だに赤い。 それらである程度察したのか、トレーナーはスカイに一歩ずつ歩み寄ってくる。スカイは逃げるように隅へ隅へと追いやられるが、最終的に部屋の角に捕まり身動きが取れなくなる。そこを容赦なくつき、こういった。 「…その、遅くなったが…好きだ、スカイ。結婚しよう。」 遅すぎたか、はたまた早すぎたか。どちらであろうと結果は変わらぬといわんばかりに顔をこわばらせ、スカイの反応をうかがう。
4 21/06/29(火)01:00:27 No.818157107
胸の中で顔を赤くしながらもじもじと体を動かす。未だに決めかねているのか、それとも返事を迷っているのか。トレーナーからは辛くも判断することはできなかったが、長い静寂を破るようにスカイはそう言った。 「…は、ひゃいっ」 短い言葉。噛んだ言葉。いずれにしろ、トレーナーの心を縛るには十二分といった言葉がトレーナーの手を足をスカイに括り付ける。二人の影が重なり、今まさに時は止まる。 「…いつか挙式も挙げて、家庭を持とう。URAを優勝したんだ、俺たちならできる。一緒に、がんばっていこう。」 スカイの透き通りブルーの瞳を見つめてそう告げる。心の中にあったであろう蟠りはすでにもう存在しない。あるのは男女二人の、甘酸っぱくも晴れ渡るような愛だ。
5 21/06/29(火)01:00:40 No.818157150
「…はい…。トレーナーさん。…ゆっくり、やっていきましょっか☆」 いつもの調子を取り戻したスカイと、帰り支度を始める。スカイと俺は、今は別々の寮だ。だが、いつか。二人が屋根の下のんびり釣りでもしながら暮らせるような、そんな生活を二人で想像する。その想像は、まずは二人が手を握るところから始まった。 顔を赤くしながら、手をよけるスカイの手を、キッチリつかむ。それに観念したか、指を絡めてスカイも力強く握る。じめりとした空は、もうすでに乾いた晴天へと姿を変えていた。
6 <a href="mailto:s 終わり">21/06/29(火)01:01:02</a> [s 終わり] No.818157244
潰れるセイちゃんもいいけどたまにはこういうのもいいよね
7 21/06/29(火)01:02:52 No.818157729
勝ったからいいけど自分から負けに行ってない…?
8 21/06/29(火)01:08:01 No.818158966
肉を切らせて骨を断つ