虹裏img歴史資料館

ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。新しいログはこちらにあります

21/06/27(日)21:48:13 『うぇ... のスレッド詳細

削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。

画像ファイル名:1624798093040.jpg 21/06/27(日)21:48:13 No.817747339

『うぇーん!お兄ちゃん!またいじめられたよぅ』 『しょうがねえなあ……どこのどいつだ?かわいい妹をいじめやがったのは』 いつも私を守ってくれた、優しいお兄ちゃん。 『チッ……雑魚どもが』 不良っぽくて、怖いって言う人もいるけど……私にはいつも優しかった。 『オイ、妹よ。お前はただでさえ小せえんだから、背筋を丸めるんじゃねえ。いじめる奴らはそういう奴を狙ってくるんだからな』 『う、うん。ごめんね、お兄ちゃん……』 『そのお兄ちゃんってのもどうにも弱そうだなァ……よし、俺のことはアニキと呼べ!』 『わかったよお兄ちゃ……あ、アニキ』 『よし。言葉遣いを変えるだけで、ちょっとは強そうに見えらぁな。いっそ、自分のことをオレって言うとかさ』 『え、えぇ!?私、女の子だよぉ……』 そのお兄ちゃんの下を離れて、私、トレセン学園で頑張ります!

1 21/06/27(日)21:50:14 No.817748284

……と、思ったのですが。 「おーい、チビ!アンタ、選抜レース出るんだって?」 「は、はい……一応……」 「あっはっは。そいつは良かった。アンタがいるなら最下位だけは免れるわー」 「ねえ、前から思ってたんだけど、そのチビってあだ名、まんま過ぎない?まじウケるんだけど」 現実は厳しくて。私、ここでもいじめられっ子のままです…… 「なあ?当然アンタ、負けてくれるんだろ?』 「え、でも、それは……」 「アァン?」 痛ッ。硬い拳がお腹に突き刺さります。思わず、背中を丸めてしまう。見上げると、こちらを見下す怖い顔。 「まさか、勝つつもり?チビのアンタが?』 バシッ、という音と共に頬に走る熱い感触。ビンタをされたようで、勢いでマスクが飛び地面に落ちます。 怖い。怖い。助けて、お兄ちゃん…… 「おい、何やってるんだ!」 「チッ……めんどくさいことになる前に行こーぜ」

2 21/06/27(日)21:50:49 No.817748558

「君、大丈夫か?」 突然現れたその男性は、いじめっ子たちが去っていくのを確認すると落ちたマスクを拾い上げ、埃を払って差し出してくれました。 「あ、ありがとうございます……おに、あ、いえ……」 その時目に入った、胸に光るトレーナーのバッジ。 「トレーナーさん?」 それが、私ことオルフェーヴルとトレーナーさんとの出会いでした。

3 21/06/27(日)21:51:22 No.817748809

弱々オルフェ…

4 21/06/27(日)21:51:24 No.817748831

オルフェーヴルと出会ってから数日後。いじめられていた彼女を助けたあと、流れで練習を見てあげることになった。 「とはいえ、あの走りじゃな……」 彼女の走りを見たのだが、ただでさえ小さな身体を縮こませるようなフォーム。大きなマスクをつけ、それでも更に顔を隠したいとでもいうかのように丸められた背筋。きっと、いじめられていた経験のせいだろう。 それでも、走りたいという彼女の熱意は本物だ。だからこうして練習に付き合っているのだが…… 「今日はやけに遅いな」 今まで、練習には遅れたことがなかったのに。少し心配になり、彼女を探しに行くことにした。

5 21/06/27(日)21:51:43 No.817748979

数カ月後 そこにはトレーナーを元気に内ラチに投げつけるマスクド三冠馬の姿が!

6 21/06/27(日)21:52:09 No.817749154

「だぁーかぁーらぁー、コイツはこのゴールドシップ様とラーメンを食いに行くんだっての!」 「いーや、今日という今日は譲れねえ。チンチロの頭数が足んねーんだ」 「い、いえ、その、練習が……」 散々探し回った末、学園でも屈指の問題児……ゴールドシップとナカヤマフェスタに絡まれている彼女を発見した。 「あ、トレーナーさん!」 「チッ、練習ならしゃーねーな」 「お、なんだお前諦めるのか?じゃあコイツはゴルシ様がいただきー!」 「なっ、ズルいぞテメー!」 「オルフェーヴル、大丈夫だったか?虐められてないか?」 「オイオイ、人聞きがわりーぞ」 「そうだそうだ。アタシらは仲良く遊んでただけだって。なあ?」 言葉面だけ捉えると、完全にいじめっ子の台詞だが……」 「脅されてるんだったら言ってくれ、力になるから」 「いえ、あの、本当に大丈夫ですから……」

7 21/06/27(日)21:54:38 No.817750350

「しかし……オルフェーヴルがあの2人と仲がいいとはなぁ」 ブーブーと駄々を捏ねる問題児2人に見送られながら、グラウンドへと行く道の途中、ふと口から言葉が溢れた。 「え、えっと……変でしょうか」 「正直、ちょっと意外だったかな」 「実は私、兄がおりまして……ちょっと、そのガラが悪いといいましょうか……」 「あの2人はお兄さんに似てる?」 「ええ、まあ……」 意外にも、オルフェーヴルはああいうタイプには耐性があるようだ。ということはやはり…… 「度胸がない……ってわけじゃないんだよなぁ」 「……?トレーナーさん、何か言いました?」 「いや、何でもない」 結局、その日の練習でもオルフェーヴルの走りは縮こまったフォームのままだった。

8 21/06/27(日)21:55:57 No.817751022

「オルフェーヴル!もっと胸を張れ!」 今日は模擬レースの日だ。来る選抜レースに向け、少しでも感覚を掴んで欲しかったのだが…… 「あーあー。ダメだな、ありゃ」 突然の声に振り向くと、ゴールドシップが手に持った何かを捏ねくり回しながらレースを眺めていた。 「ゴールドシップ。どうしてここに?」 「そりゃあ、アイツが心配で観に来たんだよ。おーい、オルフェーヴルやーい!勝ったら飴ちゃんあげるから頑張れー!」 「……もしかして飴って、さっきから捏ねくり回してるそれか?」 「おうよ。これが結構難しい……あっ」 「熱ッ!?」 ゴールドシップが持っていたのはシュクル、つまり固まる前の飴らしい。熱いそれが手を飛び出してこちらの顔にへばり付く。

9 21/06/27(日)21:56:02 No.817751078

ドリジャはウマ娘になれなかったか…

10 21/06/27(日)21:57:15 No.817751636

「熱い!熱い!早く取ってくれ!」 「まーまーそんなに慌てんなって……そりゃ!」 「痛っ!!」 ひっぺがされる時、一緒に顔の皮まで持っていかれそうになる。 「どうしてそんな物、グラウンド上に……」 顔を抑えながら抗議する。 「そりゃーおめー、頑張るオルフェーヴルちゃんを作ってやろうと思ってよ。でもダメだな、こりゃ。もう固まっちまった」 そう言って歪な形になったそれをこちらに放り投げる。落ちそうになったそれを慌てて拾う。 「昔から言うだろ?飴は熱いうちに打てって」 「それを言うなら鉄だろ……」 「ごちゃごちゃうるさいのはこの口かー!?」 と、いつのまにか背後に回り込んだゴールドシップに、チョークスリーパーの要領で背後から羽交い締めにされてしまう。

11 21/06/27(日)21:59:01 No.817752451

「一緒だろー?飴でも金でもよー。冷えて固くなっちまってからじゃおせーんだよ」 金?ゴールドシップの言葉に脈絡がないのはいつものことだが、今回ばかりは少し引っかかった。 そういえば、オルフェーヴルという名は"金細工師"という意味だったか。そして彼女の名前はゴールドシップ。その共通点には、何か運命的なものがあるのかもしれない。 「――アイツを、変な形で固めるんじゃねーぞ」 普段とは全く違う、冷え切った声音。 どう言う意味だ、と聞こうとした瞬間、首に回された腕に力が入る。ウマ娘の万力のような力で締め上げられ、全く振り解けない……!

12 21/06/27(日)21:59:52 No.817752845

もうダメだ、気を失う……と思った矢先、手を離された。 「んじゃ、そういうことでー♪」 ゴホゴホ、と咳き込む自分を尻目に、ゴールドシップはいつものふざけた口調で言い放つと、手をひらひらと振りながら歩み去っていった。 「…………」 その背を見送りながら、先程彼女に言われた言葉を反芻する。 「冷えて固まってからじゃ遅い……か」 確かに……今のままでは不味いのかもしれない。当初は、走っているうちにオルフェーヴルの縮こまってしまったフォームも解けると思っていた。 しかし実際には、自分というトレーナーが見ているにも関わらず、不甲斐ない結果を連発する自分に彼女自身が見切りをつけようとしてしまっているのを感じる。 いくら自分が気にしていないと言っても、彼女自身が頑なになってしまっていてはその言葉も届かない。 「彼女自身が変わらないと……!」 そのきっかけを待っているだけでは、手遅れになってしまうかもしれない。少々強引でも、きっかけを作らなければ。

13 21/06/27(日)22:00:53 No.817753350

いよいよ、選抜レースの日がやってきました。今まで、いじめられていたのを助けてもらったことをきっかけにトレーナーさんに練習を見てもらっていましたが。正式にトレーナー契約を結んだわけではありません。 そうしてもらうためには勝つ……は無理でも、レースでそれなりの結果を残さないと。担当ウマ娘の成績は、今後のトレーナーさんのキャリアにも関わる重要なもの。あまり不甲斐ない結果だと、優しいトレーナーさんといえど契約を結んでくれないかもしれません。 (でも、そんなのはイヤだ……!)

14 21/06/27(日)22:01:46 No.817753755

優しいトレーナーさんですら契約してくれなかったら、私なんかを選んでくれるトレーナーはいないかもしれない。ううん、もしいたとしても。 (私は、あのトレーナーさんがいい) だから、何としてでも今までとは違う結果を。そう藁にもすがる気持ちでいた私にも、トレーナーさんのアドバイスは受け入れ難いものでした。

15 21/06/27(日)22:02:38 No.817754190

「えっ……マスクを外す、ですか?」 「うん。今日はそれで走ってみて欲しいんだ」 「でも……」 私の体は、他のどのウマ娘よりも小さい。だから、目立たない様に、踏み潰されてしまわないように。体を小さく縮め、それでも足りないとマスクで顔を隠して走ってきました。 そのマスクを、よりにもよって今日。一番みんなの注目が集まる、一番みんなが勝とうと必死になる選抜レースの日に外すなんて。 「そんな、無理に外さなくても……これをつけているからって、走りに影響するわけでもないですし……」 「うん、そうだね。それをつけているからって、遅くなるわけでも、ましてや速くなるわけでもない」

16 21/06/27(日)22:03:32 No.817754654

「だったら……」 「だったら外してもいい、だろ?……それでも外したくないのは、どうしてだ?」 「恥ずかしいから……」 「そう。でも、もう恥ずかしがってちゃダメなんだ。オルフェーヴルの本来の走りが、どんなものか今はまだわからない。でも、あの体を小さく縮めた走りが全てとは、思いたくないんだ」 「だから、見せて欲しい。マスクを捨てた、君の走りを」

17 21/06/27(日)22:04:18 No.817754990

『おい、妹よ。お前はただでさえ小せえんだから、背筋を丸めるんじゃねえ』 私の肩に手を乗せ、真剣な顔で語りかけるトレーナーさんの姿に、昔お兄ちゃんに言われた言葉を思い出します。 いつも私を守ってくれたお兄ちゃん。私とは違い、いつでも胸を張って戦いに挑んだお兄ちゃん。 私も、お兄ちゃんのようになれたら――兄のように私のことを心配してくれる、トレーナーさんの期待に応えることができるのでしょうか?

18 21/06/27(日)22:05:29 No.817755565

「代わり……と言っちゃなんだけど。もし外してくれるなら、オルフェーヴルの言うことを、何でも一つ聞いてあげるよ。どんな恥ずかしいことでも。オルフェーヴルばっかり恥ずかしいことさせちゃ、不公平だからな」 「!…………じゃ、じゃあ、一つだけ」 「お!何かある?何でも言ってくれ」 「トレーナーさんのこと、お兄ちゃ……い、いえ。あ、アニキ……って呼んでもいいですか?」 「もちろん!そんなことでいいなら」 「あ、ありがとう……いや……さ、サンキュー……アニキ……」

19 21/06/27(日)22:06:25 No.817756044

この人の期待に応えたい。今とは違う……お兄ちゃんのような、強い自分になって。 そう願いを込め、マスクを外す。 「それじゃ、アニキ……行ってくるぜ!」 私の、いやオレの名前はチビじゃない。……オレの名前は 「オルフェーヴルだ!」

20 21/06/27(日)22:07:09 No.817756445

アニキ呼びだと途中でアバよダチ公しそうだからやめろ

21 21/06/27(日)22:07:24 No.817756569

「……ハァ、ハァ」 ゴール板を全速力で駆け抜ける。前には、誰もいない。一着?私が? 「やったな、オルフェーヴル!!」 トレーナーさんが駆け寄ってくる。その喜びが溢れた表情を見て、ようやく実感が追いついてくる。 「やったぜ!アニキ!」 「お、オルフェーヴル!?」 感極まって、その体に思わず抱きついてしまう。どうしよう、やってしまった。 顔が熱い。トレーナーさんの胸に埋めた顔が、真っ赤に染まっているのが自分でもわかる。 (こんな時、お兄ちゃんだったらどうする!?) 脳裏に兄の姿がよぎる。昔、いじめられる私を見かねて護身術を教えてもらったことも。

22 21/06/27(日)22:08:02 No.817756878

「――でりゃ!」 「う、うおお!?」 トレーナーさんを掴んだまま、背中から後ろに倒れ込む。いわゆる巴投げだ。トレーナーさんはそのまま、背中をしたたかに打ち付けて仰向けで咳き込む。 「油断したなァ、アニキ!」 心配で顔を覗き込んだくせに、自分の口からそんな言葉が出たことに自分で驚いた。でも、たしかに兄ならそんなふうに言うだろう。 トレーナーさんは驚いたように目を丸くしていたが…… 「――ぷっ。ははははは」 堰を切ったように笑い出した。釣られて私も笑う。 青空に2人の笑い声が、どこまでも高く響いていた。

23 21/06/27(日)22:08:39 No.817757218

――称号【オルフェーヴルとの出会い】を手に入れた!

24 21/06/27(日)22:10:39 No.817758222

オルフェのアニキならジャーニーな感じか

25 21/06/27(日)22:10:56 No.817758376

いいね…

26 21/06/27(日)22:11:53 No.817758886

ドリジャソウルはアニキに渡ったのか分割されてどっかのウマ娘になってるのか

27 21/06/27(日)22:16:42 No.817761322

>オルフェのアニキならジャーニーな感じか つまり粗チン…

28 21/06/27(日)22:31:31 No.817768321

オルフェいい…

29 21/06/27(日)22:34:31 No.817769712

ぜひ続けてほしい

30 <a href="mailto:s">21/06/27(日)22:43:38</a> [s] No.817774174

以前書いたディープインパクトの怪文書がtxtで欲しいって言われたので上げときます fu117339.txt 今回の fu117366.txt

↑Top