21/06/27(日)12:26:09 フジ... のスレッド詳細
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21/06/27(日)12:26:09 No.817538856
フジキセキは、朝日杯フューチュリティステークスを一着で終えた。ジュニア級G1勝利という大いなる道のりの第一歩が、今まさに踏み出された。ウイニングランを終えた担当バは、ターフに出た俺を見るなり駆け寄ってきて抱きしめた。 『トレーナー!私、やったよ……!』 『うん……よくやった……本当に……!』 些か露出の多い勝負服で抱きしめられ、勝利の喜びとは別な理由で跳ねそうになる心臓を抑える。レース用に蹄鉄を装着したことにより、彼女は俺より僅かに身長が高くなっていた。彼女から出る、香水とレースで出た汗が混じった匂いが俺の脳を打ち据えた。女体への興奮という、混じってはならないものが勝利の高揚に侵入する。危うく理性が塗りつぶされるすんでの所で彼女を引き離した。 『待って、フジ……人前……!ハイタッチに、してくれ!』 『おや、君とあろう者が照れるのかい?私はそれだけ嬉しいってことなのに!』 ……でもまあ、今はこれでいいかな。そう彼女は呟いてハイタッチに応じた。ぱぁん、と乾いた音が競バ場に響き渡る中、きらりと光る嬉し涙がターフに落ちていった。
1 21/06/27(日)12:26:59 No.817539090
あの頃の俺たちは無敵だった。新人が専属で担当したウマ娘が成し遂げた、恐るべき業績。専属担当を例外で認められたといえども、新人が導くにはG1の勝利は狭く険しい。ノウハウも経験も勝負の勘もあらゆるものが不足している。だが俺たちは勝った。勝ってしまったのだ。この眩しすぎる輝きが、俺たちの目を眩ませていた。 『私達ならどこまでも行ける……ありがとう、トレーナー!』 トレーニングの質も量も、行うウマ娘のキャパシティや体質を無視してはならない。トレーナーであれば誰でも知っている大原則を、俺は僅かながら踏み越えていた。フジキセキならクラシック三冠だって夢じゃない、あと一年もしないうちに現実になるんだ……常日頃そうやって狂気に輝いた目で彼女に語りかけると、必ずこう返ってきた。 『やってみせるよ、トレーナー!』
2 21/06/27(日)12:27:10 No.817539144
そうして練習が終わった日には、これからのトレーニング予定や出走レースを語り合って食事をしたこともある。彼女の人付き合いの上手さはまさに天才的で、門限ギリギリまで話が弾むこともしばしばだった。コインやカード、その他諸々の彼女自慢の手品を見せてもらったこともあった。ノウハウは結局秘密にされてしまったが。 『マジック?構わないけど……何、もしかしてトレーナーもやってみたいのかい?』 『そうだねえ、将来チームでも作るときに宣伝材料にできたらってな』 『嘘だとしても下手すぎないかい?』 『割と本気でそう言ったつもりなんだけど?』 『ウマ娘が走るチームで走り以外で宣伝してもダメじゃないかな普通?……教えてほしいなら素直にそう言えばいいのに』 ……ああ。確かに彼女には誰にも負けない、ターフを駆ける才能があった。それを潰してしまったのは……俺だ。
3 21/06/27(日)12:27:55 No.817539410
--- 「フジちゃんってさ、レースしてたことあんの?ウマ娘ならみんな走ってるんでしょ?」 「んー?……さて、どうだろうね」 ホテルの一室にて。ショーツを履いてブラを着けていると、後ろから声がした。つい先日捕まえてみた男だった。彼の質問を理解した一秒後、私は彼をあしらうことに決めた。その過去は好きではないし、無神経さが気に障った。もう二度と会うこともしないだろう。割と下手だったし。 「その言い方絶対走ってんじゃん!バ名教えてよ、ウマチューブで見てみるからさ!」 「だーめ。それを知りたければ、もっと言い方とシチュエーションというものがあるのさ」
4 21/06/27(日)12:28:22 No.817539534
バスルームの鏡を見て、髪を後ろにまとめる。ウマ娘が隠しがちな、ヒトであれば耳のある部分も顕にして、ヘアゴムで後ろに髪を括った。鏡で背後を確認すると、男は下着を履いている最中だった。つまりこちらを見られている様子はない。スマートフォンでいつものように(もはやクセになってしまった)マッチングアプリを開くと、おすすめ欄に目が吸い寄せられた。見覚えのある目の輝きは鋭さを持っていて、顔の輪郭は記憶とそっくりだった。アイコンにタップして年齢を見ると、30歳と少し。記憶の中にある彼の年齢に現在までの年月を足すと、確かに合致する。どうしてか分からないまま、私はメッセージを送っていた。
5 21/06/27(日)12:28:38 No.817539619
『やあポニーちゃん。今年の夏合宿はどこなんだい?』
6 21/06/27(日)12:28:49 No.817539697
誰かに抱かれている時、どうしても思い出してしまう。私のアスリート人生の中では非常に短い期間であったトゥインクル・シリーズの、たった4戦にも満たない記憶を。短い間一緒に戦ってきた、たった今メッセージを送った彼のことを。アスリートとして過ごした時間はドリームトロフィーリーグの方が長いし、私の人生で重要な局面はそちらの方が遥かに多かったはずだ。そもそもレースと一夜を過ごすことに何の関係がある?私の記憶が掘り起こされる訳は不可解だったし、そのことについて考えるのは避けるようにしてきた。ではどうしてコンタクトを取るような真似をしたのだろう。当面解きたくない疑問から目を逸らし、私はバスルームを出た。
7 <a href="mailto:s">21/06/27(日)12:30:51</a> [s] No.817540334
今までの↓ sq139153.txt この寮長は公私ともに完璧だが交際関係はゲラルトおじさんみたいなことになってると私性合 参考資料の復縁系の映画を探しに行くので失礼する
8 21/06/27(日)12:30:56 No.817540358
でたなマッチングアプリキセキ…
9 21/06/27(日)12:52:06 No.817547256
こういう大人っぽい寮長もいいね
10 21/06/27(日)13:03:19 No.817550681
続きが楽しみだ