21/06/26(土)22:24:11 ただひ... のスレッド詳細
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21/06/26(土)22:24:11 No.817339589
ただひたむきに栄光を目指せばいいだけのレースに比べ、恋愛のなんと難しいことか。 相手の気持ちがまるで計れない上に、自分の気持ちばかり大きくなっていっている気がする。 肥大した恋心を抱えると、当然疲れてくるわけで、気付けばため息が日に日に増えてきている、そんなセイちゃんなのです。 そんな私が、ある日遭遇したハプニング、それは――。 「あれ?トレーナーさーん、いないの?」 珍しく時間通りに来た私は、彼のいないトレーナー室を見渡す。 なんということだ、私がオンタイムなだけでなく、彼が遅刻をするだなんて、明日は嵐か大雪か。 ふとスマホの通知が来たかと思えば、相手はその彼からのテキストメッセージだった。 『ごめん、体調悪いから今日は自主トレでお願い。なるべくレスポンスはするからわからないことがあったら連絡して』 全文を読み終わる前に私は部屋を飛び出す。向かう先は彼の部屋、校内を校則ギリギリのスピードで駆け抜け、守衛さんに事情を説明して寮に入れてもらう。 この間、私は無我だった。ただただ心配で、駆け抜けてたどり着いた、彼の部屋の前までは。
1 21/06/26(土)22:24:46 No.817339928
(……うわー!?このあとどうすればいいの!?!?!?) インターホンを鳴らすのがまず第一手だろう、しかしまずその難易度が富士山よりも高い。 しかもその後は彼の部屋に入るのだ、日本海溝に沈むより呼吸の仕方がわからない。 どうしよう、逃げてしまいたい。 (いやいやいやいや!) ここに至って逃げたら、その後絶対後悔する!秋天のあと、怪我をしたって有馬に出たあの闘志を思い出せ! 「……えいっ」 ピンポーンと、審判の音が響く。 響いたあとで、また後悔した。 (そうだよ、体調悪いんじゃん。来客の対応なんて面倒に決まってる) もしかしたら居留守されちゃうかもな…と勝手に落ち込んでいたら、中から彼が応対する声が聞こえてきた。
2 21/06/26(土)22:25:10 No.817340087
「…あい、どちらさん?」 「あ、トレーナーさん?や、やっほー」 「……スカイ?なんで?」 よかった、出てくれた。不安や安堵、喜びを心の裡に閉じ込めて、明るい声でいつもの私を演じる。 「もうっ、なんでじゃないですよ?担当トレーナーさんが心配で心配で、セイちゃんったらお見舞いに来たんですよ?」 「ははっ、そうか…ありがとう。じゃあ、サボりついでにお願いするよ」 「にゃはは、お見通しでしたか」 うそ。 大嘘。 そんな打算なんて思いつかないくらい必死に飛び出したくせに。 鍵を開けてもらって、中に入ると、しんどそうな顔で無理に笑うトレーナーさんがいた。 「ごめんな、セイ。心配かけて、明日には治すからさ」
3 21/06/26(土)22:26:09 No.817340587
……胸が、締め付けられる。 彼がこれだけ疲労したのも、元はと言えば私のためで、なのに私に気にするなという。 私は、私はこの人に少しでも返してあげられているのだろうか。 きっと、彼はこの問に、十分だと応えてくれるのだろう。でも、足りない。 他ならない私自身が、足りないと思う。 「トレーナーさん、今日は全部、私にまかせて」 「いや、大丈夫だって」 「任せて、いいから」 彼は軽い訪問だと思っていたのだろう、小一時間くらいで帰そうと思っていたのだろう。 そうはいかない。 何が何でも、彼が治るまでそばにいる。 私は、自分自身でも認識していなかったことだが、一つの目標に心を置けば、結構集中できる方らしい。 ご飯を支度し、汗をかいた彼の下着を取り替え、冷たい水枕を用意する。 ついでに薬を調達して、自分の分のご飯も作る。
4 21/06/26(土)22:26:32 No.817340772
「スカイ?そろそろいい時間じゃないか?寮に帰らないと」 「ん~?にへへ、大丈夫ですよ☆」 あと外泊許可も取った。 のらりくらりと彼の帰ったほうがいい発言をしのいで、気付けば22時。 彼はやはり疲れが溜まっていたようで、静かに寝息を立て始めていた。 彼の寝顔を見やる。大好きな、私の、トレーナー。 ふと気付けば、彼の顔が近づいてきている。いや、私が近づいて行ってるんだ。 「……大好き」 逃げ腰な私は、それ以上のことはできなくて。 弱腰な私は、それだけしか言えなくて。 彼に触れられない私が、どうしようもなく情けなくて、それでもこの時間が愛おしくて、感情がごちゃまぜになるのを無理やり落ち着かせて、私も目を閉じることにした。
5 21/06/26(土)22:26:48 No.817340892
翌日 「……う゛に゛ゃ゛ぁあ~~~~~」 「ごめんな、すっかり風邪移しちゃったなぁ」 「責任とって~~~」 「ああ、もちろん。しっかり取らせてもらうよ」 「………トレーナーさん、今のもう一回言ってもらえます?」 「ん?えっと、きちんと責任はとるって」 「……ヨシ」 「スカイ?」 「なんでもないでーす☆看病よろしくおねがいしますねぇ」 スマホでしっかり彼の発言を録音した私は、しばらくその音声でいろんな妄s…計略を楽しむのでした、まる。
6 21/06/26(土)22:27:33 No.817341301
おわり スカイ呼びとセイ呼びが混じってるのに投げてから気づいた
7 21/06/26(土)22:27:43 No.817341386
良すぎる…
8 21/06/26(土)22:27:47 No.817341419
言質はとれたな
9 21/06/26(土)22:29:31 No.817342382
責任取らないとね…
10 21/06/26(土)22:34:20 No.817345269
ちなみにセイちゃんはこのあとトレーナーの音声録音にハマりだしてトレーナーと一緒にいるときはほぼ録音アプリ起動するようになって寮でお気に入りの音声を繰り返し再生するようになる その後感覚が麻痺してきてウマ耳フォンで音声聞きながら釣りしたり昼寝しだすようになって最終的にうっかりウマ耳フォンつけてる時にトレーナーと遭遇して「何聞いてるんだスカイ?」って問われたら自然に「トレーナーさんの声ですよ」って返して固まった後に顔真っ赤にして走り去っていく あっこれ私の妄想の話ね!