21/06/26(土)21:16:44 どこま... のスレッド詳細
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21/06/26(土)21:16:44 No.817304175
どこまでも輝けるはずだった宝石は、残酷なほどあっさりと砕け散った。 トレーナーとならどこまでも行ける。そう思っていたのに。 4戦4勝で迎えた皐月賞直前。私の足は既に悲鳴を上げていた。 好事魔多しとはよく言ったもので、痛みを発症するまでの私はかつてない絶好調だった。 元々私の足はあまり丈夫ではなく、常にリスクと隣り合わせの綱渡り。 それが一変したのはトレーナーと出会ってから。 足の状態を正確に把握し、痛みが出ない範囲での効果的なトレーニングを組み立ててくれた。 最初に学生上がりの新人トレーナーだと聴いた時は困惑したけど、そんな前情報なんてまるで関係なかった。 面白いほどに伸びていくスピード。それに伴って縮んでいくタイム。足の不安も忘れるほどの好調。 無敗のクラシック三冠制覇が現実のものとして見えていた。
1 21/06/26(土)21:17:07 No.817304363
全てはトレーナーのおかげだった。カッコよくて、優しくて、でもトレーニングはきっちりしていて。 私の勝利を疑わず、常に寄り添い支え励ましてくれたトレーナー。私が、大好きだったトレーナー。 絶対に無敗の三冠を成し遂げて、想いを伝えてやるんだと思っていた。 そんな未来さえも、あっけなく打ち砕かれてしまった、 私の故障が知れ渡ると、人々は皆トレーナーを責め立てた。 違う。トレーナーのせいじゃない。私の足が脆かった、ただそれだけなのに。 私がいくら主張しても、帰って来るのは憐憫の目と苦笑いだけ。 「若造が稀有な才能を潰した」「トレセン学園に相応しくない未熟者」「トレーナー失格」 バッシングが激しくなるにつれて、トレーナーは塞ぎこんでいった。 トレーナー室に現れず、寮に引き籠るようになってしまった彼を待つだけの日々。 また走れるようになったら、今度こそ忘れ物を取り戻しに行くんだ。そう思っていた。
2 21/06/26(土)21:17:31 No.817304540
トレーナーと会わないまま一週間が過ぎ、新年度になった。 流石にそろそろ話をしないといけない。そしてなによりトレーナーの顔が見たい。会いたい。 そんなことを考えていた私に学園から告げられたのは、彼の地方への転勤及び私との契約解除だった。 酷い眩暈に襲われ、立っていることすらできずに蹲る。 嘘だ。そんなの嘘だ。どうして。トレーナーは悪くないのに。 嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ どのくらい呆然自失としていただろうか。落ち着いたのを見計らって渡されたのは彼からの手紙。 そこ書かれていたのは私と共に駆け抜けた時間への感謝。そして、故障と志半ばで去ることの謝罪。 違う。違うよ。感謝したいのは私の方だし、欲しいのは謝罪なんかじゃなく貴方との未来なんだよ。 手紙を抱きしめたまま泣きじゃくる。行ってしまうならせめて、別れの挨拶くらいはさせてほしかった。 それよりもなにより、居なくなってほしくなかった。一緒にいて欲しかった。 私の初恋は、あまりに苦すぎる想い出とともに終わりを告げた。
3 21/06/26(土)21:17:57 No.817304726
寮長としての立場を任せられていたというのは、ある意味では良かったのかもしれない。 悲しみに暮れる暇もなく、日々の仕事を次から次にこなさなければいけなかった。 忙しく動き回っている間は、辛い気持ちに囚われずに済んだ。 そしてある意味では残酷なことだったのかもしれない。 否が応でも人と関わり、沈んだ顔をしていようものなら、周囲から幾度もの指摘を受けた。 どれだけ悲しみに暮れようと、意識せずとも人前では笑顔の仮面を瞬時に被ることができるようになった。 いつしかその仮面は顔に張り付き、私の心に関係なく笑顔を振りまく舞台装置になっていった。 季節が巡り、最早仮面と自らの表情との境界線すら分からなくなってしまった頃。 地方より転入してきた新たな寮生から、トレーナーの話を聴いた。 そこから毎年のように、トレーナーの教え子たちがトレセン学園にやってくるようになった。
4 21/06/26(土)21:18:20 No.817304893
「え、貴女がトレーナーさんが言ってたフジキセキさんなんですか!?」 「凄く優秀なトレーナーさんですよね。担当してもらうまでまさか中央に来れるなんて思ってませんでした」 「でもあのトレーナーさん、事あるごとにフジキセキさんの話ばっかりなんですよ」 「あれだけのイケメンで優良物件なのに、そんな調子だから彼女も奥さんもいないし」 「恋人同士だったんですか?え、違うんです?それにしては凄い入れ込みようだったみたいですけど」 上手く隠していたはずの傷がじくじくと痛み始める。 聴きたくない。でも、聴きたい。頭の中がぐちゃぐちゃになりつつも、笑顔で応対していく。 いつしか私は、新入生からトレーナーの話を聴くのを心待ちにしていた。 そうして気付けば、あれから10年の月日が経とうとしていた。
5 21/06/26(土)21:18:49 No.817305073
おつらい…
6 21/06/26(土)21:18:51 No.817305089
「歓迎ッ!よく来てくれたなフジキセキ!忙しい時期にすまない」 年度末。卒業生の退去と新入生の入居で、寮長としては一年で一番忙しい季節。 珍しく理事長室への呼び出しがかかった。 たづなさんと新年度に向けた事務的な打ち合わせが始まる。 まさかこのために呼びだされたのかな?そんなはずはないだろうけど…。 そんなことを考えていると、理事長室のドアがノックされる。 「今年はトレーナーさんも増えますし…どうぞ、開いていますよ」 たづなさんの言葉で扉が開く。そこにいたのは…。 「フジキセキ…?」「トレーナー…!!」 張り付いていた仮面が剥がれていく。 止まっていた時計の針が、音を立てて動き始めた。
7 21/06/26(土)21:19:11 No.817305250
ネイチャに続くクソボケとその担当の10年後の話第二弾ですご査収ください 避けることのできなかったすれ違いや離別というのは辛いものですわね ですが彼女にも今や一心同体の元トレーナーがいますわ
8 21/06/26(土)21:19:41 No.817305494
乙 >ですが彼女にも今や一心同体の元トレーナーがいますわ おい待てェ
9 21/06/26(土)21:20:41 No.817306016
曇ってるフジ寮長珍しいな
10 21/06/26(土)21:21:54 No.817306575
抱けー!抱けー!
11 21/06/26(土)21:24:21 No.817307836
トレセン学園ってどれくらい在籍出来るんだろう
12 21/06/26(土)21:24:21 No.817307846
しまったメジロ…メジロか?
13 21/06/26(土)21:26:20 No.817308858
>トレセン学園ってどれくらい在籍出来るんだろう このフジキセキは多分生徒としてじゃなく寮母さんとかそのへんのポジション
14 21/06/26(土)21:28:41 No.817310014
ネイチャの話ほどクソボケではなかったか
15 21/06/26(土)21:29:15 No.817310287
心が壊れた後再生された…
16 21/06/26(土)21:34:36 No.817313087
曇らせ後のハッピーエンドは健康に良いとされる
17 21/06/26(土)21:37:28 No.817314788
「おや、こんなところで会うなんて奇遇だね。トレーニング後の休憩中だったかな?」 夕焼けに照らされたグラウンドの一角。ベンチに座るトレーナーを見つけて、隣に腰を下ろす。 「キミ、向こうで私の話ばかりしていたそうじゃないか。そっちから来た娘が皆苦笑いしながら言っていたよ。 そんなに私への未練たらたらだったなんて、そこまで愛されていたなんて知らなかったねえ」 ドキドキしながらもトレーナーの横顔を伺うと、耳まで赤くしてそっぽを向いていた。 そのままトレーナーの肩へ頭を乗せ、手を取って指を絡ませる。 「フジ、一体何を…」 「もしイヤだったなら、振りほどいてくれて構わないから」 お願い、そのままでいて。どうか振りほどかないで。 「しょうがないな、ちょっとだけだぞ」 「私も寮に帰って、お腹を空かせたポニーちゃん達のごはんを準備しないといけないからね」 お互いに手を握る力が少しだけ強くなる。ひとつに重なった影は、夜の帳が下りるまで離れることはなかった。
18 21/06/26(土)21:38:05 No.817315104
(あのフジ寮長がトレーナーと手を繋いでメス顔してるなんて…ア"ッ) (じれったいわね…両片想い拗らせすぎなのよ早く付き合えばいいじゃない…) (フフフ…これもまたひとつの一心同体ですわね…) (一服盛ればあの二人も一線を超えられるだろうか) (ふゥん…心拍数の上昇及びエンドルフィンの分泌、といったところだねぇ) (フジが幸せそうで私も鼻が高いよ…) (抱けー!抱けー!!) (その時、ふと閃いた!これはフジ寮長とトレーナーの関係進展に使えるかもしれない!
19 21/06/26(土)21:38:44 No.817315423
気ぶり寮になっちゃう…
20 21/06/26(土)21:38:49 No.817315464
次の日、トレーニングルームにて 「ねえ聴いた?フジ寮長とあのトレーナーさん、昨日グラウンドでキスしてたらしいよ」 「えっウソー!?」 「確かに昨日あの二人、グラウンドの隅にあるベンチに座っていたな」 「でもあのトレーナーさんって今年来たばかりでしょ?フジ寮長がそんな即落ちしたの?」 「元々あの二人ってトレーナーとその担当バだったらしいわよ」 「しかも当時は男女の仲だったそうですわ」 「ウワーッ!?」 「離れ離れになった二人が、十年の時を経て感動の再開!ヤバくない!?」 「推せる~~~~~!!!」
21 21/06/26(土)21:39:20 No.817315696
バカねウオッカ…
22 21/06/26(土)21:39:25 No.817315745
デジたんでは…?
23 21/06/26(土)21:40:13 No.817316180
またデジたんが死んでる
24 21/06/26(土)21:40:16 No.817316201
デジタルが息してない…
25 21/06/26(土)21:41:47 No.817317119
あの…ごはん…
26 21/06/26(土)21:42:02 No.817317290
過去が盛られている…
27 21/06/26(土)21:43:00 No.817317881
>曇ってるフジ寮長珍しいな 案外ある気がする…
28 21/06/26(土)21:44:00 No.817318461
でもトレーナーにはもうヒト耳の妻子がいるんだろ…?
29 21/06/26(土)21:44:33 No.817318749
>でもトレーナーにはもうヒト耳の妻子がいるんだろ…? >「あれだけのイケメンで優良物件なのに、そんな調子だから彼女も奥さんもいないし」
30 21/06/26(土)21:47:58 No.817320502
みんなしてフジ寮長のこと大好きかよ 大好きだったわ
31 21/06/26(土)21:51:59 No.817322344
気ぶり寮生はさぁ…
32 21/06/26(土)22:03:28 No.817328282
寮長には幸せになってほしい
33 21/06/26(土)22:12:24 No.817332873
>>でもトレーナーにはもうヒト耳の妻子がいるんだろ…? >>「あれだけのイケメンで優良物件なのに、そんな調子だから彼女も奥さんもいないし」 素晴らしい 先手必勝とはこのことか