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    21/06/25(金)01:51:52 No.816713951

    比翼連理特別杯、その何度目かあまり覚えていないけど とにかくわたしはまた出られることになった。 トレセン学園の生徒が出走する特別レースで、一着になったウマ娘は 自分の担当トレーナーさんと二人だけのウイニングパフォーマンスができるっていうエキシビション。 一番最初に始まった時はマヤノトップガンちゃんが勝ったんだっけ。 その次はたしか、スペシャルウィークちゃん ライブパフォーマンスが本当にたのしそうだったなあ。 そしてわたしがさいしょに出た三回目は…。 …検量室へむかう前に、レース会場に吊られた今日のレース名を告知する横断幕へむかって 「ありがとうございました」とおじぎすることにした。 だって、わたしを本当の意味で勝負に向き合わせてくれたのが、このレースだから。 わたしにレースの楽しさじゃなく、そうあるべき時には、逃げずに戦うことを教えてくれたから。

    1 21/06/25(金)01:52:12 No.816714026

    検量室と装鞍所をぬけ、パドックへと向かうまでのコンクリートに囲まれた短い暗所。 吹きぬける風が、四角に切り取られた景色の奥から、芝と土の青いにおいをはこんでくる。 ここを抜けたら、私とトレーナーさんはゴールするまで会うことはできない。 見上げた先には少し心配そうなトレーナーさんの顔。 ウララ、と一言だけ声をかけられ、わたしは軽く目をとじてうなずいた。 目をおおい隠すまぶたをゆっくりと開けると、大切なわたしの… いっしょに戦ってくれるアイボウ、だったかな? その人が今している、戦う意志を抱えたほほえみは、きっとわたしも同じ表情をしている。 「大丈夫。わたし、走ってくるよ。  そしてもう二度と、ああいう泣きかたはしないよ」 「ああ、俺たちのやって来たことを、見せ付けに行こう!」 その声をひるがえした背中にうけて、わたしはパドックへ歩きだすことにした。

    2 21/06/25(金)01:52:28 No.816714086

    <<…第三回・比翼連理特別杯、優勝者はダイワスカーレット!!>> <<最後は他のウマ娘ともつれ合いながらラインを割りました!>> <<泥にまみれながらのド根性の勝利です!>> 「う…うわぁぁぁ――――ッ!!あ――っ!!」 判定をまっていたスカーレットちゃんが空をあおいで叫びはじめる。 太陽にむかって撃ちこむようなその声は、すぐに泣き始めたときのぐずった物へ変わっていく。 わたしもライアンちゃんも勝負服には多少は泥はねが付いているけれど、 スカーレットちゃんのそれは汚れなんてものじゃなくて。 実況の人がいうように、後ろから差し込んだ時に掛かった、私たちの掻いた泥にまみれている。 雨上がりだったこともあって、胴の布地は白なのか茶色なのか分からないほどによごれ、 両手をそれぞれ握りしめ、肩のたかさでふるわせながら、涙をながすことを全くためらっていない。 頬にはねて付いた泥しぶきと、勝負服とセットのごくうすいナチュラルメイクが 流れおちる涙に当たって溶かされ、クレヨンの混ざったところみたいな筋をえがいている。

    3 21/06/25(金)01:52:45 No.816714135

    そんなに、とおもった。 G1レース、とくにダービーならわたしも分かる。 ウマ娘として生まれ、競走バを将来の進路に決めたなら、いつか取りたい憧れの星。 でもこの…ひよく、れんり?杯は言ってしまえばエキシビション、特別レースのなかまだから。 そんなに思いを入れこんで走っていたわけが、その時のわたしにはわからなかった。 ああ、だからこそなのかな そう頭の隅をかすめることがひとつ。 ゴール前最後の競り合いで、わたしは隣を走るスカーレットちゃんの気合いにおされた。 必死に脚を運んでいたさなかだったから、まじまじと見つめてはいなかったけど それでも伝わってくる、意気ごみとかキハク?とか、そういう物を私は受けとって。         アタシは、ここで、勝つんだ 吐く息のあいまに、そういう叫びみたいなものを聞いた気がして。 そこで、一歩…いやたぶん半歩、運んだ先の足が横にそれて、コースが変わった。 それが写真判定の数センチ、いやきっと数ミリとかそんなレベルの差になって、 わたしはスカーレットちゃんにも、ライアンちゃんにも負けた。

    4 21/06/25(金)01:53:01 No.816714179

    控室で着替えおわり、制服に袖をとおして部屋を出ると、 ライブパフォーマンスに向かうスカーレットちゃんと担当トレーナーさんに鉢合わせした。 ちょっと待ってなさいよ、の目配せをスカーレットちゃんがすると、 ややはっきりした目鼻立ちの、短い髪を刈りそろえた快活そうなトレーナーさんは、 分かったが早くしろよ、という顔でうなずいて、声が聞こえない程度の場所へはなれた。 「ごめん…そんなつもりなかったけど、進路を開けさせるみたいになったわ」 「ううんいいの、半歩ヨレただけだもん  わたしは気にしてないし、それに勝手に踏みまちがえたようなものだし  でも謝ってくれるなら、聞いてもいいかな? スカーレットちゃんがあんなに一着を取りたかったわけ」 もちろん急いでるなら今じゃなくても、といいかけたわたしを遮って、今じゃないと、って口ぶりで話しはじめる。 「…そうね、それぐらいは言うべき  うまく言えないんだけど、『ダイワスカーレット』だからよ」 「『ダイワスカーレット』だから?」

    5 21/06/25(金)01:53:22 No.816714244

    「そう。ダイワスカーレットは確かにアタシの名前だけど、『ダイワスカーレット』はそうじゃないもの  アタシを見つけて、トレーニングを付けてくれて、昼も夜もコッチのことを考えてくれて  二人で生きて、二人で走った、アイツと私の作り上げた理想の形  それが『ダイワスカーレット』」 目の前のスカーレットちゃん、いいや、あのレースにでたみんなに勝った、勝利者は 口から出ることばに、責任と誇りをただよわせながら話しつづけている。 「第一回でマヤノに負けた時は本当に悔しかった。  他の人はどうか知らないけれど、  ライブ会場で元気一杯にマヤノとトレーナーが歌って踊ってる姿を見て、  本当に本当に、悔しくって、マヤノの事、嫌いになりかけて  でもそんな自分が惨めで、一番嫌いになって、アイツの前で泣いたわ  もっと大げさに、負けたくせに嫉妬したって言ってもいいと思う」 バカよね、アタシ そんなことをこぼしながら照れくさそうにしている。

    6 21/06/25(金)01:53:46 No.816714327

    「だから今日こそ 普段アタシの走りを応援してくれてる人達に向かって言いたかった  見なさい、隣にいるコイツと一緒に走ってきたから今のアタシがあるの  ちょっとめんどくさくって、妙なところで意地っ張りで、熱くなるとすぐ喧嘩して  だけど世界で一番で、一人しかいない  アタシの大切な、ホントに大切なトレーナーなんだって  …掛かりすぎよね ホントに…ごめん」 謝るひつようなんかないのに、スカーレットちゃんはしっかりと頭を下げてしまう。 「ううん、わかるよ、スカーレットちゃん  ライブパフォーマンス楽しみにしてるね…うらら~!」 「それは任せなさい!最っ高のやつを会場の皆に見せ付けてやるんだから!」 ああ、わたしは今のままでは、この人に勝てない。 心の底から、わたしは思い知って、その気もちを少しへこたれ気味のえがおの後ろに隠して、 トレーナーさんのところへかけていく、誇らしげなスカーレットちゃんを見送った。

    7 21/06/25(金)01:54:50 No.816714513

    ライブが終わった会場の裏の方で友達の後ろ姿を見かけて、声をかけようと建物の側から近づいた。 そのお目あてであるセイちゃんが、トレーナーさんのそばで泣いていて、私は思わずそばに隠れる。 泣き方はいつもの「いやー、負けちゃいましたよ、にゃはは、悔しいな」というようなものじゃなく。 唇を歯が見えるほどゆがませ、ふるわせ。 顔を真っ赤にして首をふり、涙がぬぐっても後からわき出ている。 たえられない事が起きてそれを受けいれられない、現実をこばむような。 普段のセイちゃんからは絶対に考えられないすがた、 アスリート・セイウンスカイとして本気でたたかい、そして負けた姿だった。 「嫌だ…!嫌だよ…!トレーナーさん!」 「おセイちゃん」 「私!勝ちたいって思ったよ!負けたくないじゃなくて、勝ちたい!  勝てるって思ったからあそこで仕掛けた、でも駄目で…みんなの背中が、遠くなってっ」

    8 21/06/25(金)01:55:18 No.816714601

    少し体の線が細くて、色の薄い長い髪を後ろでまとめた、品のいい眼鏡のにあうセイちゃんのトレーナーさんが 体のすべてを使って泣いているセイちゃんが倒れないように、そっと支えている。 「次が…あるよ、おセイちゃん。次、勝とう」 「わからないじゃんかっ!! あのレースは、ずっとあるかどうかわからない!!」 そうだ、比翼連理特別杯は始まったばかりのエキシビションレース。 気まぐれではじまったものが、気まぐれで終わらないなんてだれがいえるんだろう。 「…そうだね。適当なことを言って安心させようとした。  ごめん、僕とおセイちゃんとの仲でやっちゃいけないことだった」 「うっ、ううっ 違う、違う…こんなの、言いたくない…ごめんなさい…」 「分かっているよ、その気持ちは僕にならぶつけていいんだ  そのために君のそばにいるし、それで離れたりはしない、受け止める」 わたしは見ているべきじゃないと思って、音を立てないようその場をそっと離れた。 太陽はそろそろ夕日とよんだほうがいいぐらいに傾いてきている。 わたしの頭の中はいろんなことが一緒くたになって、言い表せない大きな気もちが渦をまいていた。

    9 21/06/25(金)01:55:45 No.816714692

    色々行きちがいがあって、結局わたしのトレーナーさんと会えたのは夕方のトレーニング室でだった。 「…トレーナーさん、ただいまっ」 「凄い走りだったな、ウララ…!  右見ても左見てもあんなに有名バばかりのレースであんなに走れるなら  きっといつか、あいつら全員ぶち抜けるさ」 頭がぐるぐるしてるわたしと違って、トレーナーさんは3着という結果によろこんでる。 嬉しくないわけじゃない、いつものわたしからしたら…。 「…そうだね! きっといつか、だよねっ うっらら~、がんばっちゃうよ!」 でも、それって わたしはあのレースじゃ勝てるはずないって、トレーナーさんも思ってるの? わかってる わたしが一番、そうだよねって思ってる。 「…ね、トレーナーさん わたしどこかで、ライブでやるはずだったやつ、歌いたいな」 登録申請の書類をだしたとき、一着だったらこれをやろうってふたりで選んだ出しもの。 ダブルセンターライブ、それもデュエット曲を、いっしょになんども練習した。

    10 21/06/25(金)01:56:03 No.816714739

    他の人はもういないけど、邪魔にならないよう、夕日もだいぶ落ちかけているトレーニングコースの隅のほうへ。 トレーナーさんがヒト用のスマホで練習と同じく、デュエット曲のボーカルOFFバージョンを流し 私たちはマイクも衣装もなく、それまでの練習と全く同じような形で身ぶりをまじえて歌いはじめた。 大好きなトレーナーさんといっしょに、同じ歌をうたうのは楽しいはず。 楽しいはずだよ、わたしからさそったんだもの。 「ウララ?」 それでも、自分の気もちに嘘をついて、笑顔でいることも、歌い続けることもできなかった。 一番はなんとか歌い終わったけど、二番に入ったらわたしが歌うべきパートをほうり投げて 普段とくらべて、ごくかるい振り付けもみんな止めてしまって。 言わなきゃいけないことを言う勇気がほしかったから、 目の前の大切なひとが、どうか受けいれてくれますようにと…祈ってから、自分の言葉で話をはじめる。 「…三着でも、二着でも、同じ ダメだよ、トレーナーさん」 とまどったトレーナーさんの目にうつった、沈んでいく夕日の、紅(べに)のいろがとてもきれいだった。

    11 21/06/25(金)01:56:22 No.816714798

    レース当日だったこともあって、コースにはもうわたし達しかいない。 わたしの言葉はかならず相手につたわるはず。 「だって、あの走りはウララらしさがあって…ファンの皆も喜んでくれた」 トレーナーさんの言ってることはきっと間違っていない。 今までのわたしだったら、だいけんとう、って奴だよねって気もちは、わたしの中にもあった。 「一番さいしょにゴールをくぐって…そうじゃないと意味がなくて…」 「何着だって、その時なりの楽しみ方を見つけるのがウララだったじゃないか、なんで…」 「『ハルウララ』は、もう…もう遊びで走ってるんじゃダメだよ!」 強い声がでる、強い気持ちをトレーナーさんに押しつけてしまう。 神さま、お願いです 目の前のひとが、これでわたしを嫌わないように、助けてください。 「それは、それは、わたしとトレーナーさんが、一緒につくってきた名前だから!  みんなに、つたえたい…この人と一緒だから、わたしは走れるんだって…!」 スカーレットちゃんがトレーナーさんといっしょに作り上げたように。 わたしとトレーナーさんが作ってきた気持ちの形を、はんぱに満足させるのは、わたしは、嫌だ!

    12 21/06/25(金)01:56:37 No.816714840

    「わたしは…勝ちたい…勝ちたいよ…!」 言わなきゃいけないことを言いおわったら、目の前が一気ににじんで、大好きな人の姿もゆがんでしまって。 あとはもう、わたしはトレーナーさんに多分すがりつくようにして泣いていたんだとおもう。 気もちが多少落ちついて、周りのことが認識できるようになったとき、 わたしはトレーナーさんにほとんど抱きあげられるようにして、ハグをする形になってたから。 「…分かった、今までずっと、ごめん。 ウララ…勝とう、そのために戦おう  勝たなけりゃ意味がないレースだってあるのに、  どんなレースにも楽しみを見つけて、何着でもみんなと喜び合うウマ娘を目指すって甘えていた  今までの俺たち二人と、戦おう…!」 ああ、トレーナーさんは受けとめてくれた、いっしょに戦うっていってくれた。 今みたいにいっしょに泣いてくれる、同じ時間を生きてくれる。 「うん…うんっ… わたし、頑張るから…  力を…かしてね、わたしのトレーナーさん…!」 だったらもう、大丈夫 わたしは…戦えるよ。

    13 21/06/25(金)01:59:26 No.816715290

    【―――――――わたしの名前は『ハルウララ』―――――――】

    14 21/06/25(金)01:59:56 No.816715366

    「ふぅぅッ…ふぅぅぅッ…!」 そしていま、わたしはここ、比翼連理特別杯レースの中距離コースにいる。 第四コーナーを曲がって、最後の長いゆったりとした坂にはいるところ。 体力はよし、脚もつかれてない、進路もよし。 他の人が入ってこようとおもうほど左右が空いてはいないけど、 わたしの体の小ささなら、ぬけ出すことはできる程度の、特等席があいている。 トレーニングというより、特訓ってふるいかんじの言葉であらわすほうが正しいような、 そういうきびしく沢山の課題できたえたおかげで、息はまだもつとおもう。 あとはもう…いつこの空気抵抗へのたてにしている、先頭バ群を抜けだして 最後にしかけ、引っこ抜くのかだけを考えればいい。 「だいじょうぶ、いける、だいじょうぶっ…!?」 あといくつ数えたら抜けだそうかを考えていたわたしの、左右にある少しのすきまが潰されていく。 となりにいるのは誰だろうか、わたしには視線をむけて相手をたしかめるような余裕はない。

    15 21/06/25(金)02:00:18 No.816715438

    背がひくいわたしは、そばに来る他のひとの体格によっては、顔も見ることはむずかしかったりする。 なんとなくでしか、バ群の左右にいるひとがわからないから、 暗いモヤがかかったおばけみたいな、わたしを押しこめてしまう悪意のような、そんな感じにみえてしまったり。 ( お前はこれが限界なんだ、レースの参加者を覚えているだろう、ハルウララ ) ( 名前を見ただけでため息が出るような、立派な戦績を残してきた中距離レースの猛者達だ ) ( 諦めてしまえ、苦しい思いをして届かない物に手を伸ばすなんてしなかった ) ( 誰かの背中を遠くに見ながら、にこにこと笑って、自分なりの目標なんてものを掲げて『ゴール』する ) ( ハルウララは、そういうウマ娘だろう? ) そんな言葉を投げかけられている気もちになる。 誰かもわからないから、逆に誰かの姿をかりて、わたしの中にある弱い心のぶぶんが諦めようとさせてくる。 「それが…どうした…!」 わたしは、じぶんの中の弱い気もちをにらみつけながら、踏み込みはじめの息といっしょに言葉をはいた。

    16 21/06/25(金)02:01:03 No.816715566

    加速していく、頭をできるだけさげ、加速していくイメージそのままの体勢をつくる。 ただでさえひくい視線がもっと下がり、顔の目の前を左右どちらにもいる誰かの手が 風を切る音をさせながら、何度もいったりきたりしてる。 「わたしは、わたしはぁっ」 体勢のせいもあるけど、息がくるしくなってきた。 もう自分がじっさいに喋っているのか、それとも気もちだけなのか、それだってわからない。 バ群を抜けだそうとするわたしのまよこで、誰かの戦う気もちが目にみえる輝きになってちらちらと見えてきた。 「わたしはアスリートで、ウマ娘でぇっ」 負けるかもしれない。勝てないかもしれない。こわい。負けてしまおうか。 あきらめて、よくがんばったで賞をトレーナーさんからもらおうか。 わたしは…?どうしてこんなに頑張って走ってるんだっけ…? 『みんなに、つたえたい…この人と一緒だから、わたしは走れるんだって…!』 気もちが、はじけた。 何のためにはしっているのか、わたしは思いだした。 「トレーナーさんのっ トレーナーさんとわたしのっ 『ハルウララ』だっ!!」

    17 21/06/25(金)02:01:34 No.816715651

    抜きさってやる。 今そばを走ってる人じゃない、わたしのなかにある弱い心をおいぬいてやる。 どうせ見えやしないから、隣がどれだけ凄いだれかなんて、どうでもいい。 熱い。何かが当たった。手だ、隣のだれかの手があたった。 鼻から熱いものが落ちていくのが、最後におぼえている体の感覚だった。 「わたしの道を、ふさぐなぁっ!」 わたしは走りたい。 走って走って、その先に待っている人といっしょにみんなの前に出たい。 わたしは一人じゃなかったよ、この人とふたりで、おたがいの弱いところと戦ってきたんだよ。 それを、わたしを知っている沢山の人に教えたくて。 「そ、こ、を どけぇぇ―――っっ!!!」 わたしの前にひろがった道を、わたしが駆け抜けていくところを、わたし自身が遠くからみているような気がして。 あとはまっしろになって、何もわからなくなった。

    18 21/06/25(金)02:04:25 No.816716155

    「はぁっ、はぁっ…はぁ…は、は…はーっ、はーっ…」 意識が戻ったら、わたしはターフに寝転がるようにたおれていた。 遠くでスピーカーから実況の音声がながれている。 <<信じられません!第○回比翼連理特別杯、優勝者はハルウララ!!>> その意味を頭がとらえて、ぶんしょうとして認識するまで、すこし時間がかかった。 「あ、あぁっ、あ…」 わたしは、かったの? <<なんという末脚、これが本当にあのハルウララでしょうか!?>> <<春は終わらず、桜は散らず! ターフに春風をもたらす新たな奇跡の名、それがハルウララ!>> <<名だたる中距離のレジェンド達を押しのけ、文句なしの一着です!!>> 「う、うわぁ…わあぁ―――!!!あーっ!あぁ―――っ!!  うわぁぁぁん………!!」 はり裂けそうな胸の音が、言いあらわせない気もちの高まりと溶けあって。 わたしは、両方の頬をつたっていく熱い心の流れといっしょに『競走バ・ハルウララ』になった。

    19 21/06/25(金)02:06:01 No.816716439

    おしまい シンコウウインディのダイススレから始まった比翼連理特別杯スレ その三回目のダイスがいい感じに乱数の女神が面白いことをしてくれたので ちょっと膨らませて文章にしました

    20 21/06/25(金)02:08:20 No.816716832

    これはちょっととは言わねーよ…

    21 21/06/25(金)02:12:16 No.816717395

    第三回愉快なことになってるのか 探してくるか

    22 21/06/25(金)02:12:19 No.816717401

    突然超大作をぶち込んでこられてちょっとびっくりした 読む時間をくれ…

    23 21/06/25(金)02:12:38 No.816717458

    ウララが本気で勝とうとする話は問答無用で泣いちゃうのでだめ……

    24 21/06/25(金)02:14:57 No.816717840

    あれは確かにウラライケるか!?ってなったからね スカーレットには悪いけど実はウララ応援してました

    25 21/06/25(金)02:15:32 No.816717917

    画像に入れておいてなんですけど 比翼連理杯のスレ画像ということで使ったのでシンコウウインディ一度も出てないのでそこはごめんなさい

    26 21/06/25(金)02:18:19 No.816718326

    ダイスはたまにめちゃドラマチックなことするからな…

    27 21/06/25(金)02:19:25 No.816718471

    ウララがほんとに勝つまでスレをやるんだ

    28 21/06/25(金)02:21:35 No.816718750

    >画像に入れておいてなんですけど >比翼連理杯のスレ画像ということで使ったのでシンコウウインディ一度も出てないのでそこはごめんなさい まあ元凶だし 出場はしにくいんじゃない

    29 21/06/25(金)02:21:51 No.816718779

    気付いたらマジでシンコウウインディ出てねえこれ!

    30 21/06/25(金)02:21:51 No.816718780

    ウインディちゃんも速く走りたいのだ 実装してぱかチューブに紹介されたいのだ

    31 21/06/25(金)02:22:34 No.816718887

    「名前」と『屋号』の違いは面白い解釈だなあ 同じ音でも意味が違うのはなるほどなあ

    32 21/06/25(金)02:24:54 No.816719185

    襲名みたいでいいねえ

    33 21/06/25(金)02:28:45 No.816719654

    ウララがレースは楽しいだけじゃない勝ちたいからウマ娘なんだって事を自覚させるのがアプリストーリーだから これは親和性が高いですよ

    34 21/06/25(金)02:31:00 No.816719950

    >襲名みたいでいいねえ 先代バクシンオーって格好良いな

    35 21/06/25(金)02:33:51 No.816720363

    ウララが自分の弱さと向き合って泥まみれで勝つ話は全自動で涙腺を攻撃してくるから国際条約違反

    36 21/06/25(金)02:38:48 No.816720969

    >ウララがほんとに勝つまでスレをやるんだ 時間がたびたび不定期にはなりますが一応そこをとりあえずの目標に…

    37 21/06/25(金)02:40:11 No.816721133

    自分一人が負けるだけならよかった でもこれまで二人三脚でトレーナーと築き上げてきた屋号が傷つくのは絶対に認められない!

    38 21/06/25(金)02:44:40 No.816721679

    比翼連理特別杯は名勝負の宝庫として語り継がれることに...

    39 21/06/25(金)02:46:01 No.816721840

    >比翼連理特別杯は名勝負の宝庫として語り継がれることに... …どうしてこうなったのだ?

    40 21/06/25(金)02:47:06 No.816721949

    >>比翼連理特別杯は名勝負の宝庫として語り継がれることに... >…どうしてこうなったのだ? お前のイタズラが発端だろうがオラッ尻出せッ!

    41 21/06/25(金)02:53:42 No.816722700

    シンコウウインディが狂言回しとしての性能が強過ぎるのが悪い

    42 21/06/25(金)02:54:39 No.816722791

    英断をした理事長の株も上がるな

    43 21/06/25(金)02:57:01 No.816723058

    実際にウララが勝ったらそのスレ内に再度掲載しようかなあ…

    44 21/06/25(金)03:11:02 No.816724502

    たったひとりのファンだけのために走るレースはメイクデビュー以来なんだよこの娘ら 罪作りなレース創設してくれたもんだね

    45 21/06/25(金)03:13:29 No.816724757

    今日のレースはフクが夫婦漫才やるために気負いまくって圧倒してたな

    46 21/06/25(金)03:16:46 No.816725100

    第一回で惨敗したダスカが第三回で三人写真判定までもつれ込んだ上で満点取って勝つ流れが芸術すぎる

    47 21/06/25(金)03:25:09 No.816725874

    >たったひとりのファンだけのために走るレースはメイクデビュー以来なんだよこの娘ら >罪作りなレース創設してくれたもんだね いつまで開催されるかも分からんからね…

    48 21/06/25(金)03:45:03 No.816727470

    ウララがどこか諦めみたいなものを抱えてるのはアプリストーリーでもそうだよね

    49 21/06/25(金)03:47:38 No.816727618

    >ウララがどこか諦めみたいなものを抱えてるのはアプリストーリーでもそうだよね あれは本人が諦めてるのか「ハルウララ」がそうさせてるのか悩ましいところだ 普通じゃないからねどう見ても